第197話 レヴィアターン天上界へ行く
リバちゃんは、天井界に帰れるでしょうか?
(11月29日です。)
リヴァイアサンの言うことに、僕は、思い当たるところが無かった。リヴァイアサンは、その姿を消し、光になった。形なんかない。ただの光だ。
『そなたは、記憶が無いかも知れぬが、ワシは覚えておるぞ。お主は、魔人の国を滅ぼしたのじゃ。ワシも、消滅してしまうところじゃった。』
僕が、国を滅ぼす?今の僕には考えられない。
『ワシは、この北の冷たい海の深い底まで逃げ帰ったのじゃ。間も無く、天上界に帰れるはずなので、こうして様子を見に地上まで上がって来ていたのじゃ。』
リバイアサンは、天上界に帰るという。では、何故、7000人もの将兵を殺さなければならないのか?
最初のキッカケは、この海で漁をしている男が、網にかかったマーメイド、いわゆる人魚を殺して食べた事だった。人魚の肉を食うと不老不死になるという迷信があったのだ。しかし、その人魚は、リバイアサンの使徒だった。
この地上に降りて来てから、1000年もの間、一緒に暮らして来た使徒だった。天上界に帰る時には、使徒として連れて帰るつもりだった。その使徒を殺されたばかりか、食われてしまったのだ。
この世界に、今度こそ災厄をもたらしてやろうかとも思ったが、1000年前に一度失敗している。失敗したことも含めて、創造神の思し召しと思うと、それ以上のことはできなかった。しかし、あの漁師は許せない。リバイアサンは、漁師の住む浜辺の村を焼いた。だが、心は晴れなかった。
そのうち、帝国軍がやってきて、攻撃を始めた。水の噴射で凪いだり、炎の油を降り注いで殲滅していたそうだ。今日も、脅しのつもりで、丘を2分した。それ以上の攻撃などする気もなかった。
僕は、リバイアサンの話を聞いて、クイール市やダブリナ市の惨劇を思い出していた。リバイアサンだって、最愛の人を殺されたのだ。村の一つや二つ消したとしても、僕には何も言えなかった。
海の氷を全て溶かすので、リヴァイアサンには海に帰って貰うことにした。僕は、力を放出した。力は熱エネルギーとなり、氷は、あっという間に溶けてしまった。7つの災厄のうち『嫉妬の神』は、リバイアサンの姿になって北の海に帰っていった。
何も分からない討伐軍は、リバイアサンが去っていったことに安心するとともに、生きて帰れる喜びを噛み締めていた。
その後、討伐軍の帰還は、明日以降となった。今回の犠牲は、水の噴射の時に、運悪く当たってしまった3名だけだった。だが、これからの帝都までの帰路も安心出来ない。冬将軍に睨まれたら、2000名の部隊など、一瞬にして全滅してしまう。
本当に恐ろしいのは、やはり大自然だ。僕は、パトロン将軍にゲートを使って簡単に帰還できる方法があると言おうとしたら、シェルに止められた。
シェルは、パトロン将軍に、帰還時の経費をいくら見ているか聞いている。将軍のそばにいる会計将校が、大金貨80枚はかかるし、天候次第では、その倍以上はかかると言った。さらに、将兵が凍死でもしたら、その保障だけでも莫大だ。今、帝国の財政は瀕死の状態だと教えてくれた。
シェルが、大金貨40枚で、全員を安全に帝都に送ることができ、食費等も心配することはないが、どうするか聞いた。会計将校は、是非お願いしたいと即答してきた。僕は、ゲートを3つ開けてあげた。その日のうちに、討伐軍全員が帝都に帰還できた。
僕達は、北の海の海岸に残ったままだった。念話でリバイアサンを呼んだところ、人間の姿になって現れてくれた。年齢は20歳位、身長は170センチ位、翠のロングヘアー、宮廷ドレスをビシッと決めた絶世美女だ。イフちゃんと同じで、老若男女どのような姿にもなれるのだろう。
リバイアサンと、天上界に戻る方法について話し合うつもりだ。そもそも、彼女(?)をこの世界に繋ぎ止めてしまったのは僕らしいのだ。キチンと、責任を取らないといけない。
リバイアサンは、戦って命が尽きると、天上界に戻れるらしい。さっきの戦いでは、天上界のお花畑が見えたらしいが、余りにも辛かったので、辞めて貰ったらしい。結局、戦いで死ぬのは諦めて、お迎えが来るのを待つことにしたらしいのだ。それで、これからずっと1人でいるのも寂しいので、僕と一緒に行動することにしたそうだ。
え?誰が良いと言いましたか?
シェル達は、いくら『災厄の神』だと言っても、神と一緒に行動するなんて、絶対に嫌だと思っているようだ。見た感じ、好感の持てる性格のようだが、あんな事や、こんな事を神様の前で出来るわけない。
神様達は、イフちゃんと同じで、具現化するのに性別は大して問題ではない。しかし、基本的には、本来の性に具現化するらしいので、今回は絶世の美女の姿で現れたらしいのだ。シェルは、また増えるのかと頭を抱えてしまっていた。
今日は、皆で帝都に泊まることにした。帝都の最上級ホテルに泊まるのだが、貴族専用の部屋を取る事にした。スイートが1部屋とダブルを1部屋を取ったが、勿論、リバちゃんがダブルの部屋に1人だ。
あ、『リバちゃん』と言うのは、リバイアサンの愛称だ。最初、『リバアさん』と付けたらえらい怒られたので、『リバちゃん』にしたのだ。
今日夕食は、ホテルの自慢料理、子羊のリブステーキをメインに、海鮮料理と肉料理のコラボディナーだった。リバちゃんは、1000年ぶりのディナーらしく、全てを食べきっていた。ワインも飲んでいたが、酔うことはないそうだ。
次の日、帝城に行って、報奨金と部隊の空間転移の手数料、合わせて大金貨50枚を受領した。すぐに、僕口座に入れたが、大変な額になっている。残額は、大金貨で1000枚近いだろう
その後で、皆で、タイタン市の領主館に戻った。リバちゃんの処遇だが、何もせずに、ボーッとしていてもしょうがないので、取り敢えずハッシュ町に行ってみることにした。僕の経営している各種店舗には、非常に興味を示し、就職先を自分で決めてしまったようだ。あの娼館『休み処 メリー・ドール2号店』だ。
理由は、新築で綺麗だからだそうだ。別にこの店で客を取るわけではない。いや、取りたくても物理的に取れないのだ。本当の女性ではないから。店の前の椅子に座っているだけだ。
結局、リヴァちゃんの住居は、領主館の2階、ジェリーちゃんの部屋の隣にして貰った。未だ2号店は開店していないので、それまでの間、タイタン市内をぶらついたり、1号店の様子を見たりしている。
タイタン市では、噂になっていた。あの翠の髪の超ミニスカ超絶美女はどこの子だろうかと。直ぐに男に声を掛けられる。リバちゃんは、基本、誘いを断らずに付いていって、お昼やスイーツをご馳走になる。
鼻の下を伸ばした男達は、それ以上を求めようとするが、『ウフフ』と怪しく笑うだけで、殆どの男は帰ってしまう。彼女が、領主館に新しく入った僕の『愛人12号』らしいと言う噂が立ってからは、誰も声を掛けてこなくなった。
愛人12号と言うことは、一体誰が愛人1号から11号なのだろうか?
リバちゃんは、取り敢えず、シェルから、金貨1枚を貰っているので、洋服を買ったり、バッグを買ったりしている。勿論、お金が無くなれば、また貰うことになっている。
クレスタの店を手伝うこともあった。制服を着て、店に立っているだけで、お客さんが倍増するのだ。神のスキルを使っているらしいが、詳しいことは分からない。
ハッシュ町に行って、『メリー・ドール1号店』で商売の様子を見ている。太古の昔からある仕事だ。リバちゃんも、その仕事の内容は知っている。
創造の神が人間を作ったとき、子を増やすために、あの行為に快楽を与えた。男は、快楽を求め、常に行為をするようになったが、女は快楽の対価を求めた。
あれから100万年、何も変わらなかった。男は女を求め、対価を払って行為をする。女は、それで生活の糧を得る。
夜、店の前で立っていると、寄った客がリバちゃんのお尻を撫でたりする。すると、必ず、側を通りかかった男が、その男と喧嘩になるのだ。これも神のスキルらしい。
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(12月24日です。)
今日は、聖夜だ。そして、ジェリーちゃんの13歳の誕生日だ。何時ものように、朝から七面鳥を狩りに行くが、今日、料理をするのは去年のものだ。イフクロークでは、時間が止まっているので、常にしまった時の状態のままだった。今日のプレゼントは、オパールの髪飾りだ。透明感のあるオパールは、何処かの国の名前が付いている。これを10個位使って作られている髪飾りにした。プレゼントの対象は、妻3人に婚約者4人、それにジェリーちゃんだ。
リバちゃんは宝石には興味が無いみたいだった。ジルちゃんが、涙目になっていた。婚約者じゃないのだから、当然なのだが、シェルから、予備を1個買っておくように、言われていたので、その予備を渡したところ、今度は、本泣きになってしまった。
ジェーンさんやフミさん、レイミさん達その他の女性たちには、高級店G社の財布にした。Gの形の留め具が可愛いあの財布だ。イチローさん達男性陣には、金一封の入ったカードだ。
次の日、『メリー・ドール2号店』が完成した。それまでホテル住まいだった女の子が、一斉に入居してきた。正月休みで、田舎に帰省する子はいなかった。まあ、まだ銅貨1枚も稼いでいないのだから、当然だろう。
リバちゃんが、この店に住みたいと言い出した。職住接近というか住み込みになるのだが、色々な人生の縮図を見るのが面白いらしい。
しかし、この店には、娼婦専用の部屋しかない。急きょ、3階にビラちゃんの居室を作った。3階といっても、屋根裏部屋だが、広さは十分だ。2階から3階に行く階段は、隠し扉の中に作った。ゲート部屋も作り、自由に領主館に出入りできるようにもした。お風呂は、さすがに作れなかったので、領主館の風呂を使うことにしたのだ。
まあ、リバちゃんにいてくれたら、防犯上も安心だ。天上界に戻るまでの間、3階いや『天井階』に住むのも悪くないのかも知れない。
すみません。駄洒落が酷くて。




