表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
195/753

第193話 ゴーレムを作ってしまいました。

国王陛下が御光臨されることになり、準備が大変です。

(11月4日です。)

  この日の朝、何故か太陽が眩しかった。クレスタは、恥ずかしそうにしていて、僕をまともに見ないようにしている。いつもの様子と違う事を敏感に感じたシェルが、ジト目で僕を見ている。女の勘は怖い。


  今日は、領内の巡回と、午後は土いじりをしようと思っている。朝食後、領内2町2村を回ってみる。どこも、荒れた様子はない。子供達は、全員、学校に行き、町や村をうろついている子供は一人もいなかった。男性たちは、店で商売をやっているか農作業に従事している。今は、農閑期だから、畑の土起こしや、家畜の世話がメインだ。奥さん連中は、掃除、洗濯、買い物そしておしゃべりと忙しい。


  南のドビー村とフライス村は現金収入が無いので、ハッシュ町やタイタン市に働きに出ている者も多いらしい。ハッシュ町の町長と、来年以降の年貢及び徴税について話し合った。徴税官によって、随分、納税額が違うらしい。必要経費や損耗を控除してくれる徴税官と、認めてくれない徴税官では倍以上も差があるそうだ。


  キチンとした徴税基準が必要だ。必要経費をすべて認めると、毎日の生活費まで必要経費にする者も出て来る。と言って、全く認めないと、実質税率が高くなりすぎ、生活に支障が出る。その辺のところは町長が原案を作ることにして、領主が徴する実質税率は、年収の15%程度にしたい旨を伝えた。徴税官や代官の私的徴収は認めないことも決めた。今までは、それを含めて、4割以上を納めていたらしい。


  午後、土いじりを始めた。泥で、小さな人形を作る。高さ30センチ位だ。間接部分に小さな魔石をはめ込む。目玉の部分も魔石だ。背中に『服従』の魔法陣を彫り込む。『錬成』スキルを使いながら、形を作り、魔石に魔力を流し込む。土くれ人形が赤く光った後、立ち上がり、静止した。念話で、話しかけてみる。


  『こんにちは。』


  『コンニチワ。ゴシュジンサマ。ゴヨウケンヲドウゾ。』


  『歩いてみて。』


  『カシコマリマシタ。』


  机の端まで行って、その場でUターンをして帰って来る。成功だ。


  『君の名前は、ゴーレム1号だ。』


  『ワタシノナマエハ、ゴーレム1ゴウデス。』


  外側を錬成魔法で銀色にしてから、本体の土の硬度を上げて、崩れないようにした。うん、なかなか綺麗だ。夕方、ゴーレム1号は動かなくなった。魔力が枯渇したようだ。まあ、はめ込んだ魔石は、関節とか目玉に使っただけで、魔力を貯蔵するための物ではないので、仕方がない。


  これは、試作品だったので、魔石を全て外し、土魔法で、元の土に戻した。明日は、もう少し大きなものを作ろう。最終的には、庭の草取りや、水撒きなど簡単な事ができる人形を作りたい。それまでは、試行錯誤を繰り返すことになる。


  夕方、王都屋敷のセバスから連絡が入る。明後日、グレーテル国王陛下、同皇后陛下がタイタン市に行幸になられるとの事だった。


  タイタン市の市街地に入る場合は、南側のシェル・ダンジョン街道から入るのが正規ルートだ。そのため、城門も一応作っている。しかし、周囲を囲んでいないので、城門はセレモニー用という事だ。


  僕は、タイタン市の南側郊外に石柱で大きな門を作った。いかにもと言う雰囲気で、グリフォンと盾の紋章を一番上に彫り込み、意味不明の記号と絵を周囲に彫り込んでいく。これで、転移用の門が完成だ。次に、王都の王城に行って、ジェンキン宰相と面会する。王城内に、タイタン市に行けるゲートを作りたいと申し出た。


  ジェンキン宰相は、王宮正門の内側右手に作るように指示したので、その場所に、タイタン市郊外の作ったものと同じ大きさと仕様の門柱を作った。ゲートを常設し、ジェンキン宰相と共に、タイタン市の門に『空間転移』した。ジェンキン宰相は、行幸コースを確認したのち、王城に帰って行った。騎士団及び国王陛下専用馬車が楽に通れる大きさの門なので、正門並みの大きさだ。用心のため、すぐにゲートを占めておいた。こちら側から、王城内に自由に入れてしまうからだ。


  次に、約1mの大きさのゴーレムを20体作った。今度は、心臓部に大きな魔石を埋め込み、16時間は稼働できるようにした。全てが完成してから、防具屋で、子供用の皮鎧セットを20個買い、ゴーレムに着せた。あと、青銅の短剣を20振り購入して帯刀させた。名前は、当然ゴーレム1号からゴーレム20号だ。


  ゴーレム兵を整列させてから、僕が、剣舞の模範演技を見せてあげた。それから、彼らに1時間くらい練習したら、それなりにできるようになった。皆が、1秒のずれも無くできるのは、やはりゴーレムだからだろう。


  『念話』で、僕の領主館の正門前に、5m間隔で左右に10体ずつ整列させた。今日は、これで訓練終了だ。全てのゴーレムに魔力を補充しておいた。これで、明日の朝までは、屋敷を警戒できるはずだ。


  夜の当直に来た衛士が、整列しているゴーレムを見て、怖がっていたが、何もしないので、ホッとしている。但し、衛士の動きに合わせて、首を動かしてくるので、やはり不気味だったそうだ。


  その日の夜、クレスタとのことがシェルさんに全てばれてしまった。いつもの夜と、ほんのわずかな違いがあって、誤魔化せなかったのだ。しかし、シェルさんは、自分がもう少し大人になるまで、僕に求めないことにした。というか肉体的に無理らしい。シェルさんは、『エーデルとビラにはしても良いが、子供はクレスタさん以外には作らないで。』と言ってきた。やはり、シェルが、タイタン家の跡継ぎを生みたいらしい。僕は、自分が闘いで死ぬ運命にあるかも知れないが、それでも子供を作りたいか聞いたら、泣きながら『当り前じゃない。』と言われた。


  翌日、午前10時、僕は、タイタン市南側に作った国王陛下専用行幸門の前にいた。最初に騎士団200騎が騎乗のまま、3列隊形で転移門から出て来た。その後、徒歩部隊が200名、魔導士部隊が60名と続き、最後に国王陛下の専用馬車が出て来た。その後にジェンキン宰相や各閣僚及び外交団が馬車に乗って出て来た。


  僕も、領主専用馬車に乗って、タイタン市に入る大通りをパレードする。現在、タイタン市は、市民4万人の大都市だ。市民の大歓迎を受けて、ダンジョン街道を粛々と北に進み、中央広場を左折してシェル通りを西進する。市内を出て、桜並木の間を行進していく。


  領主屋敷内に宿泊するのは、国王陛下が貴賓室、各閣僚が1階の応接室と2回の客間だ。外交使節団は、タイタン市内のホテルに泊まることになっている。騎士団達は、領主館の外に張られた幕舎の中だ。幕舎は1張りに簡易ベッドが6つセットされており、100張りが通りを挟んで、50張りずつ張られている。寒くないように暖房用の魔石で幕舎内は22度の温度に保たれている。


  食事は、屋外の仮設テーブルで500人分の用意がされており、ハッシュ町や近隣から接遇の応援に来て貰っている。タイタン市民の中からも、臨時メイドを雇っている。全員、メイド服を新調しており、このイベント終了後は、持ち帰っても良いことにしているのて、応募者が殺到したそうだ。


  本日の騎士団用の食事は、鹿肉と野菜のバーベキューだ。勿論、食べ放題、飲み放題だ。領主館周囲の警戒は、ゴーレム兵が24時間、不眠不休で実施するので、騎士団には安心して飲食して貰う。本当は、イフちゃんと、コマちゃん、トラちゃんそれにイチローさん達忍びの衆にも頼んでいるのだが、それは内緒だ。


  晩餐会は、大広間で盛大に行われた。僕の妻3人と婚約者4人それにジェリーちゃんとジルちゃんが僕側に座る。当然、僕の隣は皇后陛下だし、国王陛下の隣はシェルが座る。反対側には、ジェンキン宰相、スターバ騎士団長、マリンピア王国魔導士長を始め、各閣僚が座っている。執事は、セバスさんが総執事長を務め、セビリアさんが副執事長をしている。メイドさんも、王都屋敷からと元々の領主館のメイドの他に白薔薇団の方達もメイドになって手伝って貰っている。


  料理も、王都屋敷から応援に来て貰っているので、手が足りないという事は無い。また、下拵えとレシピは、クレスタが予めしておいたので味は保証済みだ。本日のメインディッシュは、グリーンフォレスト連合王国のユキウサギの燻製、トリュフ添えだ。去年の暮れに、大量に捕獲して保存していたものだ。あと、和の国から取り寄せたウナギという細長い魚を醤油の甘ダレで焼いたもので、これも昨年、大量に仕入れていたものを出している。飲み物は、ワインの他に、コメから醸造した和の国の酒、小麦から作った苦みのある発泡酒など、世界各地から取り寄せたものを提供した。デザートは、当然、『クレスタの思い出』で一押しの『タイタンの月』とクリームチーズケーキのイチゴクリーム添えにした。皆、初めて食べる珍味に驚いていたが、その洗練された料理に、誰が料理長をしているのかと聞かれた。


  実は、クレスタが準備をしたものを、シェフ達が料理していると言うと、前例がないと驚かれた。領主夫人は、貴族の娘で料理などしたことも無いのが普通で、奥様が調理場に立つなど、うらやましい限りだと言われた。本当に、クレスタの『料理』スキルは素晴らしい気がする。


  食後の茶会では、今後のタイタン市の運営について、王国としてもぜひ、参画したいとの申し出があったが、シェルがニコニコ笑いながら、やんわりと断っていた。王国の許認可等があっても、利益にはならないし、単に商売敵が増えるだけなので、現状のままで運営していくそうだ。


  その日の夜、皆さんに露天風呂を楽しんでもらった。当然、女王陛下には、専用露天風呂を作っておいてシェルやエーデル達と一緒に入って貰った。国王陛下、その囲いの上に登って覗くのやめた方が良いですよ。見つかったら、女性陣のリンチですから。

ゴーレムを動かすのは、魔法だけではできません。『錬成』スキルと土魔法の両方を持たなければなりません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ