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第186話 タイタン市の治安維持

タイタン市も発展していきます。発展すると、悪いことをする人も増えて行くようです。

(4月になりました。)

  タイタン市も毎日、顔付きが変わって行く。新しい建物や店が次々に出来ているのだ。


  人口も、公式には2万3千人だが、転入者が毎日200人程いるので、この調子だと年内には5万人位には行くのではないだろうか?エルフ公国からの移住者も多いようだ。今度は、帝国からの獣人移住も考えようと思っている僕だった。


  4月1日から、タイタン大学付属中学と高校が開校した。大学は、来年度から開校する予定だ。王都からの入学希望者は、既に入学試験を実施するのに時期が遅かったし、教授の着任も間に合わなかったのだ。


  大学設置とともに付属小学校も開設する。もう施設は出来ているが、教師が間に合わなかった。それに、基本的には、地域に小学校があるので、高い学費の小学校に入学させようという親は、まだいない。


  高校と中学の男子学生用の制服は、詰襟の騎士団公式制服に似せて作っている。女子学生用は、中学はセーラー服、高校はブレザーにしたが、夏・冬ともに白を基調にしている。途中でピンクのラインを入れているため、病院の看護師などの白衣と間違われることは無い。タイタン市に入って来た制服屋さんに、いくつかデザインを作らせて、領主館の女性陣による人気投票1位のデザインを採用したものだ。王都の『コシダケ・ジュンコ』も参加したがっていたが、地元産業育成のために、今回は辞退してもらった。


  僕は知らなかったが、『コシダケ・ジュンコ』の店は、その後、タイタン市に本店を移し、世界のトップブランドになるのだった。


  既に、新入学生徒からの注文が殺到して、制服屋さんは、店舗の拡張を考えているようだ。同時期に、ドビー村にできた中学校も、タイタン大学付属ドビー中学として、同一制服にしたので、中学入学希望者は圧倒的に女子が多かったらしい。


  フランちゃんは、驚いたことにフランシスカ治療院に毎日出勤している。フミさんが看護師長、レミイさんが事務局長をしている。


  基本、週6日の開院だが、休日も救急診療を行っているので、年中無休のようだが、5人の治癒師で交代交代に休みを取っている。というか、入院患者がいるので、夜間は、必ず1人、当直医が必要だ。交代でないと持たないらしい。もう一人、治癒師を採用したいが、なかなか適任者がいないのが悩みだ。


  外来患者は、最初、診断室に行って、病気、けがの程度を診断される。これは、病気の知識が豊富なヒーラーが、手をかざして悪い部位を特定するのだ。それに応じて、今度は治療室で、治療専門の治癒師が患部に手を当てて、病巣や損傷個所を治療する。直ぐに直るわけではないが、痛み等は軽減される。あとは、処方箋に従って、投薬治療が行われる。治療費は、結構高いが、領民は、ある一定以上は負担が無いように軽減措置を講じている。エクレア市などの他領から来る人には、それ相応の費用を負担して貰っている。


  フランちゃんは、最後に患者の様子を見て、最終措置を決定する。入院治療か、投薬治療か、それともヒール等の施術治療の選択である。時々、『神の御業』を発動して、院内の全患者を治療しているが、それは皆には内緒にしている。入院患者も早期に回転するので、病院経営も順調であった。


  フランちゃんは、血を見るのが嫌いだった。今のやり方なら、フランちゃんのところに来るまでに出血等は止まっているので、安心して患者を診ることができる。腕が取れたとか、目が見えなくなったと言うと、エリクサーなどの超高級治療薬が必要になるが、それでも僕の『錬成』と『復元』の能力が無いと、完全回復は難しいのが現状だった。


  フランちゃんは、今の仕事がとても気に入っている。皆から院長先生と呼ばれるのもそうだが、患者から喜ばれるのが一番うれしかった。聖ゼロス教会大司教国の大司教をしているときは、異端審問とか、教会のための仕事ばかりで、やりがいも何も無かった。今、人々に喜ばれる仕事ができるのは、みんなゴロタさんのお陰だと思うのであった。朝も、自然に目が覚めて、直ぐに治療院に行きたいのだが、フミさんに、『身だしなみをきちんとしないと駄目だ。』と言われるので、我慢している。お昼休みに、街の中のレストランを食べ歩くのも気に入っている。スイーツも美味しいし、この街には、いろんなレストランがあって、飽きることが無い。明日は、どこで何を食べようかなと考えて、涎が垂れているのに気づかないフランちゃんだった。






  タイタン侯爵領騎士団長のダンヒル大佐は、毎日、忙しかった。300名の騎士団の他に200名の衛士隊の訓練も任されていた。衛士隊長は、ダンヒル大佐の幼馴染で、部下だったロンソン中佐が就任している。衛士隊と騎士団は、基本的に同一組織の中の担当違いという事になっている。領内の治安維持は、第一義的には衛士隊が当たるが、手に負えない時は、騎士団が応援する。また、防衛とか災害級魔物の討伐の際は、衛士隊も一緒になって戦闘に当たることになっている。


  結果、訓練も合同でやるのだが、500名の部隊を鍛えるのには、補給や指導員等100名以上のスタッフが必要だ。今日も、タイタン市郊外で、魔物相手の実践訓練を実施していた。その時、タイタン市の見張り所から大きな花火が上がった。危険襲来の合図だ。上級将校10人で、戦闘中のトロールを殲滅して、すぐ、部隊をタイタン市に向かわせた。


  タイタン市に近づくと、特段、変わった様子はない。見張りの衛士に聞くと、市内で重大事件が起きているらしい。本日の市内警備担当の責任者ギリ大尉に事情を聞くと、宝石店に賊が入り込み、強盗を働こうとしたが、巡回中の衛士隊に見つかり、今、店を包囲しているが、店員数名が人質に取られているらしい。敵の中には魔導士がいるらしく、衛士隊の内、何人かのケガ人が出ているらしい。


  賊の要求事項がダンヒル大佐に伝えられてきた。店の周りから衛士隊を退けること。8頭立の馬車を準備すること。絶対に後を追わないこと。以上3点だ。要求を飲まない時は、人質を一人ずつ殺すと言われた。散発的に、ファイア・ボールが撃たれてくるが、きっと1発撃つと魔力回復に時間がかかるのだろう。困った。最悪、踏み込むしかないかも知れない。とりあえず、領主様つまりゴロタ殿に報告しようと行政庁に向かおうとした。ちょうど、その時、僕が行政庁から出て来たのだ。現場は、行政庁の目と鼻の先だ。領主館に連絡が行ったのだろう。


  僕は、全ての将兵を撤退させ、要求通り8頭立ての馬車を準備するように指示した。ダンヒル大佐は、一部、群衆整理要員以外を隊本部へ撤退させた。その内、馬車が到着した。御者は、顔を真っ青にして、馬車を置いて逃げて来た。


  宝石店の扉が開き、人質の首にナイフを当てた賊が5人出て来た。見たことの無い連中だ。きっと流れ者だろう。賊は5人、人質は女性ばかり3人だった。僕は、前に進み出た。敵が振り向く前に姿を消した。それを見ていた群衆から感嘆の声が上がった。僕は、消えたわけではなかった。気配を消したのだ。気配を消すと、傍にいても、いることに注意が向けられない。結果、心理的に見えなくなるのだ。


  馬車は、猛スピードで逃げ始めた。進路上の市民が逃げ惑うが、そんなことに構っていられず、逃げるのに必死だった。僕は、普通に走り始めた。馬車に追いついたが、直ぐに乗り移りはしない。安全に人質を解放できる場所まで移動させるつもりだ。タイタン市郊外に出て、漸く開けた場所に来た。馬車が止まった。追跡部隊は無いようだ。賊が人質を馬車から降ろす。馬車を軽くしてから速度を上げて逃げるつもりだ。僕は、気配を消すのをやめた。急に現れた僕に賊は吃驚していた。それよりも、女の子のような顔をした僕が、背中の剣をスラリと抜いたのに、二度吃驚しているようだ。宝石店の女の子達は、僕の事を知っていたので、もう安心と、泣きはらした顔に笑みを浮かべていた。


  逃げて来る途中に、賊に胸やスカートの中を触られまくられていたので、これで恨みを晴らせると思っているようだった。僕は、ようやく一言、『降参しろ。』と言ったが、賊は、僕が一人なことに完全に油断していた。


    「ふざけるな。あばよ。」


  捨て台詞を残して、馬車を走らせようとしたが、どんなに鞭を振っても、馬は走り出そうとしないばかりか、ジャージャーと尿を垂れ流している。僕が、『威嚇』で馬を走れなくしていたのだ。諦めた賊の一人が、馬車の中から僕に向かって杖を突きだした。ずっと詠唱を唱えていたのだろう。


    『ファイア・ボール』


  僕は、火に包まれた。人質だった女性達が悲鳴を上げる。しかし、火が消えた後には、全く何も無かったかのように僕は立っている。髪の毛1本たりとも焦げてない。シールドを、その時だけ張ったのだ。すでに、シールドは消していた。僕は、剣を納刀する。剣を使う程でもない。僕は、敵の魔導士に向かって、指鉄砲を構えた。僕を殺そうとしたのだ。死をもって償って貰っても、誰も文句は言わないだろう。


   「ズドン。」


  魔導士の胸に大きな穴が開いた。血が心臓の鼓動に合わせて噴き上げて行く。続けて、首領と思われる男に向けて、指鉄砲を撃った。頭が、吹き飛んだ。血と脳漿を浴びた仲間達がその場から逃げ出そうとするが、僕のシールドが邪魔をして馬車から出られない。


  「降参しろ。」


  もう一度、僕は言った。3人の賊は、両手を挙げて、馬車から降りて来た。僕は、大きな穴を開け、そこに3人の賊を埋めて、逃げられないようにした。さあ、帰ろう。人質だった女性の一人が、賊の顔に唾を吐いている。身体を触られたのが、余程悔しかったのだろう。僕は、シャワー石で、人質達の血と気持ちの悪いものを洗い流してあげた。あの、そこでパンツを脱ぐのはやめて下さい。僕は、しっかり見てしまったが当然、黙っている。


  馬車には、死体と気持ちの悪いものが大量に付着しているので、衛士の人達に任せることにして、ゲートを開いた。女性達が、恐る恐る入ってみると、自分達の店の前だった。大群衆が歓声を上げている。最後に、僕が出ていく。先ほどの女性達が、かわるがわる僕に感謝のキスをしてきた。かなり濃厚なキスだ。あまりにも長いキスのため、店から出て来たクレスタに引きはがされていた。


  この後、騎士団と衛士隊に入隊希望者が殺到したことは、僕が知らないことだった。

ゴロタは、女の子の憧れ、アイドルになっているようです。

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