第184話 フランちゃんの誕生日
前回、タイトルではタイタン市が消滅しかかるかとおもったのですが、出来上がったばかりの街を消すのもなんですので、ダジャレのようなことで胡麻化しました。
(3月3日です。)
今日は、フランちゃんの誕生日で、王立魔法学院高等部の卒業式だった。僕が、保護者として出席し、貴賓席に座っていると、女子学生たちが騒ぎ始めた。皆、僕の方を見ている。校長先生から、皆から見える貴賓席ではなく、舞台の袖のカーテンの陰から見ていただきたいとお願いされた。このままでは、式典が台無しになるので、お願いしますと言われたので、言われるとおりにすることにした。
卒業式は、卒業生一人一人に卒業証書を渡して行われるようだ。フランちゃんも緊張しているのかなと思っていたら、単に眠たかったようで、名前を呼ばれてもすぐに返事をしなかったため、皆から失笑を買っていた。
卒業式が終わって、校門を出ようとしたとき、フランちゃんが10人位の男子生徒に囲まれてしまった。何事かと思ったら、皆、一斉に声を出した。
「「「「「「一目会ったその時から決めていました。僕と付き合ってください。」」」」」」
皆、頭を下げ、右手に赤いバラの花を持ってフランに差し出していた。
「ごめんなさい。」
小さな声で、一言言って走り去るフランちゃん。涙にくれる男子学生達。うん、青春だ。
フランちゃんは、卒業後、大学へは進学せずタイタン市で治療院を開く予定だ。治癒師5人、看護師50人でベッド数が50床の大きな治療院だ。
その治療院の院長兼治癒師をするのだが、はっきり言って、フランちゃん一人がいれば、十分なのだ。しかし、今まで重宝されていたヒーラー達を失業させてはいけない。やはり働く場所の提供も領主の大切な役割なので採用している。
そのほかに、治療院には、薬を調合する薬師や義足を作ったりする職人、マッサージ師などの医療関係技師が必要だ。
それと掃除や洗濯をする衛生係と入院患者の食事を作る給食係も必要なので、総勢100人位の人が働いている。フランちゃんのサポートにフミさんとミレイさんが付いているが、まあ、サボらないようにお目付け役となっているのかも知れない。もう既に、院長不在のまま治療院は開業しているが、遠くエクレア市からも患者が来ている位なので、この調子では、第二治療院も作らなくてはいけないかも知れない。
フランちゃんと一緒に、誕生日プレゼントを買いに行ったが、宝石類には興味が無いみたいで、美味しいものが良いと言う。大きなケーキは買ってあげるが、そのほかにも欲しいらしく、王都で一番と言われる果物専門店に行った。冬場には食べることのできない筈の珍しいフルーツの盛り合わせをご馳走してあげた。その店は『野高フルーツパーラー』という店で女性で一杯の店だった。フランちゃん、一体いつになったら大人になるんでしょうね。フランちゃんと腕を組んで、王都を歩いていたら皆が振り返る。どうしたのかと思ったら、僕の似顔絵というか似顔絵集が王都にも出回っており、その僕がどう見ても高校生のフランちゃんと腕を組んで歩いているのだ。注目されないわけがない。恥ずかしいので、フランちゃんとともに、二人の気配を消しておくことにした。これで、見えていても気が付かないはずだ。
二人で冒険者ギルドに行ってみる。もう、僕を見ても子供が来たとは誰も思わない。それどころが、ここでも有名人らしく、みなヒソヒソと僕の事を話している。
『絶倫ロリ殺し』
『幼女コマシ』
『淫乱ロリコン魔王』
なんとなく、二つ名が偏ってきている気がするのは僕だけだろうか。それに最後の二つ名、誰が付けたんですか?
フランちゃんの能力を測定してみることにした。冒険者カードを機械に翳してみると、いつものように水晶板に文字が浮かび上がる。
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【ユニーク情報】
名前:フランシスカ・エド・ゼロシッシュ
種族:人間
生年月日:王国歴2008年3月3日(16歳)
性別:女
父の種族:人間族
母の種族:人間族
職業:元大司教 治癒師 冒険者ランク D
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【能力】
レベル 12( 8UP)
体力 60( 40UP)
魔力 380(100UP)
スキル 240(120UP)
攻撃力 30( 20UP)
防御力 20( 15UP)
俊敏性 40( 30UP)
魔法適性 聖 光
固有スキル
【神の御技】【祝福】
習得魔術 ヒール
習得武技 なし
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魔力とスキルのアップが著しいが、レベルがそんなに上がっていない。これでは、Cランクがせいぜいだ。それにレベルから行っても、冒険者ランクの認定が低い。これは、ギルドの依頼を受けたり、高位レベルの魔物討伐が足りないために、認定が低くなってしまうのだ。
しょうがないので、依頼ボードを見ると『C』ランク依頼の中に、アンデッド討伐依頼があった。王都からも近い場所で、僕の足なら30分位で行ける。久しぶりに、依頼を受けることにした。というか、受けるのはフランちゃんだ。
受付嬢が、ちょっと吃驚していた。とても『SSS』ランクの僕が受けるような依頼ではなかったからだ。しかし、構わずに受けさせてから、二人でその場所に行く事にした。
フランちゃんは、卒業式からそのままだったので、制服姿、僕も上等な貴族服で、ベルの剣を帯刀しているだけだ。それでも、全く心配していない。『C』ランクアンデッドならスケルトンかゾンビの集団位だろうから、フランちゃんなら、一瞬で殲滅するはずだ。
依頼場所は、墓地だった。かなり気持ちの悪い雰囲気だ。腐臭が漂ってくる。墓地に入って、暫く歩いていると、周囲の地面が盛り上がって、半分以上腐った死体が地面から湧き出て来た。いつものシーンながら、あまり見たくない。
フランちゃんが、聖なる光を爆発させた。フランちゃんを中心に白い光が拡散していく。半分地上に出ていたゾンビの身体が消滅した。お腹から下の部分が、地面の中でモゾモゾ動いているが、そのうち動かなくなった。うえ、気持ちが悪い。
そのまま進んでいくと、ゾンビ犬とゾンビカラスが襲ってきた。同じく、聖なる光で灰にしてしまった。小さな魔石がカランカランと落ちて来るが、拾う気がしない。あ、絶対に見たくない物が見えてしまった。ゾンビの死体にブラックGと蠅がたかっている。ゾンビの死体が見えない位だ。これは、フランちゃんには荷が重いので、僕が綺麗に焼いてあげた。虫の焦げる変な匂いがしたが、無視することにしよう。
一番奥に、朽ちた聖堂があった。半分開いた扉の中から、瘴気が漏れて来る。この瘴気の正体は、あいつだ。レブナントだ。
扉が、ギギーとかすれた音を立てながら開いた。中から出てきたのは、やはりレブナントだった。それも3体だ。これで『C』ランク依頼とは、ギルドは一体何を考えているんだ。
受けたCランクパーティは間違いなく全滅だ。何で、こんな間違いが発生するのか不思議に思ってしまう。依頼の難易度認定は、ギルドの重要業務であり、これを間違えると無駄にパーティを失うことになるのだ。きっと、依頼者が依頼料を安くするために、ごまかしたのだろう。フランちゃんが、聖なる光を強める。どんどん明るくなっていく聖なる光。もう、見ていられない位にまぶしい。レブナントも、その光を遠くから浴びて、動きが止まっている。逃げたくても、足が動かないみたいだ。
フランちゃんは、光を爆発させた。僕にとっては、さわやかでいい匂いのする光だ。身体の疲れが取れるような心地よさだ。まあ、疲れてはいないが。しかし、レブナントにとっては『地獄の業火』以上の災厄だ。光が止んだ時、地上には何も残っていなかった。レブナントの魔石が3個と、ドロップ品として真っ赤な杖が出て来た。とりあえず、収納してから、王都の自分の屋敷に戻り、それからギルドに向かった。
ギルドに戻って、完了報告をしたところ、余りの速さに受付嬢が吃驚していた。魔石を納品したところ、レブナント3体がいたことにも驚かれた。通常、複数のレブナント討伐は、『A』ランク以上のパーティの依頼なのだ。
ドロップ品の杖を鑑定して貰った。『炎の杖』というレア・アイテムだそうだ。スロットが2つ付いており、火属性魔石を嵌めると、4倍の火属性魔法が使えるようになるそうだ。売れば大金貨2枚以上の希少品らしい。色も派手だし、フランちゃんは大喜びしていた。
早速、フランちゃんの能力測定をしたところ、
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【ユニーク情報】
名前:フランシスカ・エド・ゼロシッシュ
種族:人間
生年月日:王国歴2008年3月3日(16歳)
性別:女
父の種族:人間族
母の種族:人間族
職業:元大司教 治癒師 冒険者ランク C
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【能力】
レベル 16( 4UP)
体力 60( 0UP)
魔力 390( 10UP)
スキル 250( 10UP)
攻撃力 40( 10UP)
防御力 25( 5UP)
俊敏性 40( 0UP)
魔法適性 聖 光
固有スキル
【神の御技】【祝福】
習得魔術 ヒール
習得武技 なし
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ようやく『C』ランク認定だ。早速、受付で冒険者カードの書き換えをお願いした。まあ、これから治癒師として生きて行くのなら、全く必要のないランクだが、冒険に行く事もあるかも知れないので、ランクアップは必要だろう。その日の夜は、フランちゃんの誕生バーティだったが、よっぽど杖が気に入ったのか、魔石を嵌めたり外したりしながら、ずっと遊んでいた。どうやら、クレスタの持っている『キルケの杖』が気になっていたらしい。
その夜、フランちゃんは、僕のベッドの中で、杖を抱きながら眠ってしまった。杖が、とても邪魔だった。杖が僕の腕に当たってゆっくり眠れなかったのだ。
フランちゃんも、いよいよ本格稼働かなと思いましたが、見た目、幼児なので、それなりに創作しました。