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第182話 ジェリーちゃん、喧嘩はやめましょう

今日は、皆の進学問題です。

(1月20日です。)

  僕は、王都の屋敷にいた。今、学校に行っている子達の進路を決めなければいけない。


  ノエルは、この春、大学を卒業だ。卒業後、大学に残って研究室で研究を続けることもできる。その代わり、いくつか授業を持たなければならない。今、研究しているのは、魔石の属性付加についてだ。魔石は、ダンジョンで発見した際に、色々な属性を持っている。この属性を自由に変換しようというのだ。魔法と属性、この課題は永遠の研究テーマだ。そもそも、殆どの人は、生まれた時から、魔力と属性を持っている。魔力は、成長や環境で増加するが、属性は変更する事ができない。従って、自分にない属性の魔法を使おうとすると、魔道具や魔法陣に頼らなければならない。属性の持った魔石などにだ。魔光石などは、光属性の魔石となるわけだ。ノエルの研究が完成したら、画期的だが、それだけ難しい。ノエルは、研究半ばで投げ出す事が嫌だった。でも、僕君とは結婚したいし。結論は、なかなか出なかった。


  ビラは、大学を辞めようか悩んでいた。大学の一般教養課程については、ほぼ単位を取ってしまった。これから、専門課程になるわけだが、本来、学びたかった召喚術については、教授でさえ、ビラの召喚能力には及ばない状況だった。召喚魔法は、魔力さえあれば、属性に関係なく成功させる事ができる。そのために、緻密な魔法陣の作成が必要となるのだが、ビラは、それ程の困難を意識しなくても、描くことができるのだ。というよりも、基本形だけ書けば、あとは適当でも良いのだ。属性記号と隷従の印、そして魔界とのリンクと魔獣への合図となる印。これだけだ。呼びたい魔獣は、声に出して言えば良いだけだ。他の皆んなは、魔獣固有の記号を延々と書き続けている。本来、魔獣には固有の名前などない。レッサーウルフにしても、ワイバーンにしても、人間が勝手に付けた名前だ。魔法文字と絵では、何を意味しているのか分からない。そもそも、この魔法文字は誰が作ったのだろう。研究したいかなとは思うが、自分が解明できる自信は全くなかった。


  帝国の魔法学院に通っていたのも、ナレッジ村の両親に楽をさせたいだけだった。小さな村の酪農家では、1年中働いても、決して生活は楽にならなかった。魔物や獣が牛を襲うと全てを失ってしまう。毎日、借金を返すために働いているようだった。魔法の才能があっても、高給を得るためには、高校位は卒業する必要があったので、両親に無理を言って進学させて貰ったのだ。もう、両親はいない。僕さんと結婚することも決まっている。あの、一緒に旅をしていた頃の高揚感は、今は全くない。タイタン市で何か仕事でもしようかなと思ってしまうビラだった。


  ジェリーちゃんは、今、スターバ邸から通学している。中学受験で揉めているみたいだった。ナデシコ女学院への入学願書締め切りが迫っている。入学金が金貨3枚、授業料が年に金貨1枚半だ。領地を持たないスターバ家にとっては、大金だろう。何とか、入学金は準備できたようが、授業料は分割にして貰うつもりだと言っていた。その他にも、寮費や制服代など、王立魔道士協会の役員給与では、かなり厳しいのだろう。義父のスターバ騎士団長閣下に支援して貰うのは、僕との結婚を認めるのが条件らしい。あの、その条件、僕の意思が無視されてますが。ジェリーの父親、ブロックさんは、僕が気に食わなかった。彼は、男爵家の3男だったから、自分で仕事を見つけなければならない。しかし、剣の腕はからっきしだったので、魔力の高さを生かして王立魔道士協会に就職しようと思っていた。そのためにも、王立魔法学院大学を優秀な成績で卒業しなければならなかった。毎日、働きながら一生懸命勉強して、やっと王立魔道士協会に就職できたそうだ。大学主席の成績が評価され、幹部候補生としての採用だ。それからも、一生懸命働き、偶然スターバ将軍の婿養子になって、この地位に就くことが出来たのだった。それなのに、あのゴロタという少年、3年前のスタンピードの時の常識はずれの魔法。誰からも教わっていないし、小学校も出ていないのに、あの実力。今は、領地持ちの公爵閣下だ。何故、こんなに差があるのだ。それに、彼からは良くない噂が聞こえてくる。


    『淫乱ロリコン魔王』


  ああ、うちの可愛い1人娘のジェリーが、彼の毒牙にかかるなんて、絶対に許せない。完全に、誤解しているブロックさんでした。


  ジェリーちゃんは、学校に行く時以外は、ずっと部屋に篭っている。ジルちゃんとは、普通に遊んでいるが、父親とは口をきいていないそうだ。ブロックさんは、本当に困ってしまったようだ。娘の育て方を間違えてしまったのだろうかと思ってしまう。義父のスターバ将軍閣下からは、『一回、ゴロタ殿のところに戻せ。』と言われているが、そうすれば、もう二度と帰ってこない気がする。聞けば、ゴロタ邸では、何も、いやらしいことは無く、キスさえしていないそうだ。それは、ジルもそう言っているので確かだろう。そうだ、一度新しく出来るという新設中学校を見てみよう。それから決めることにしよう。しかし、ジェリーと口を聞いて貰えないブロックさんは、奥さんにその事を伝えて貰った。


  次の日、ブロックさんは、初めて僕の王都屋敷を訪れた。予想していたよりも、ずっと立派で、また女性が多いのにもビックリしたようだ。シェルもクレスタもエーデルも在宅していたので、フルメンバーがそろっている。ブロックさんにとって、エーデル姫とは、王城内で見るだけで、こんなに近くで会うのは初めてだった。3人の美女に囲まれたブロックさんは、自分の娘の何と平凡な事かと卑下してしまたようだが、絶対に口に出すことはなかった。


  僕が、ブロック夫妻を、新しくできた領主館に案内した。当然、ゲート部屋を使っている。ブロックさんは、あの失われた大魔法を目の当たりに見て、目を大きく見開いてしまった。いや、これは魔法ではない。ブロックさんには魔力の流れを全く感じなかったからだ。タイタン市の領主館に行って、もう呆れてしまっていた。決して派手な作りではないが、厳選された素材で、贅を凝らして作られた部屋。真冬だというのに、暑いくらいの空調。洗練されたメイド達。余りにも、自分達の屋敷と違うので、領主とはこう言うものかと驚いてしまっていた。ブロックさんにしてみれば、領主の屋敷に来たのは初めての経験らしい。しかも、この領地では、まだ年貢や税は一切取っていないという事だったので、僕の財力の奥深さにさらに驚いた様子だった。お茶を飲んでから、タイタン市の行政庁にブロックさんだけ連れて行った。当然、ゲート部屋を通じてだ。


  事務室に行くと、事務員全員が、立ち上がって挨拶をしてくれる。明るい職場だ。受付に、大勢の人が並んでおり、また待ち合い席にも多くの人が座って呼ばれるのを待っていた。庁舎の外に出ると、全ての建物が新しいことと、街を歩く人々も楽しそうだったことにブロックさんは何も言えなくなっていた。新設の学校は、行政庁の隣の街区にあり、未だ建築中だったが、小学校から大学までの一貫校で、高校から、一般課程と魔法課程に分かれている。学校敷地は、広大で、周囲を森で囲まれてて、敷地の真ん中を、東西に大きな通りが通っている。通りの南側が初等部と中等部、通りの北側が高等部と大学部になっている。校舎はほぼ完成しており、今はグランドや魔法演習場の整備をしているそうだ。市の中心部に近いのに、周囲の森が都会の喧騒から隔絶してくれていた。


  本来、小学校から有料なのだが、奨学金制度があるため、一定の条件を満たせば、授業料が免除される。希望すれば、寄宿舎に入ることも出来る。それよりも、ブロックさんを驚ろかせたのは授業料の安さだ。ナデシコ女学院の10分の1だそうだ。これで、運営できるのかと聞かれたが、『学校で儲けるつもりはないので、これで十分です。』と答えておいた。一番、大事な教師陣は、現在王都から募集中だが、ほぼ決まっている。ブロックさんは、この素晴らしい校舎で、大学まで進学できるのなら、ジェリーちゃんを行かせても良いかなと思うようになっていたのだが、まだ黙ったままだった。


  ブロックさんは、その日の夜、喧嘩をしてから、初めてジェリーちゃんと話し合ったそうだ。結局、いくつかの条件付きで、タイタンの学校への進学を認める事にしてくれた。


  その条件とは、


  小学校卒業までは、自宅から通学すること。


  中学に進学しても、土曜日は帰ってくること。


  ジルちゃんと一緒の部屋で暮らすこと。


  学校の成績が悪ければ、すぐに帰ってくること。


  ジェリーちゃんは、それまでの膨れっ面が、たちまちいつもの笑顔になって、ブロックさんのほっぺにキスをして、自分の部屋に戻っていった。ブロックさんは、その時、まだ知らなかった。タイタン学院大学附属中学校の入学試験を受けようとする子が、現時点で、定員の10倍を越えていることを。


  ジェリーちゃんは、普通に入学試験を受けるので、かなり厳しい12の春になりそうだ。それよりもジルちゃんだ。今、中学1年だが、4月に転校しなければならない。転入試験があるのかどうかもわからない状態だった。


  うん、ちゃんと勉強しようね。

ジェリーちゃん、よかったですね。お父さんは、もう一つ知らないことがあります。ジェリーちゃん、小学校では、クラスのトップの成績なんです。

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