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第181話 フランちゃんの憂鬱

シズさんは、王立騎士学院のでもトップの成績だそうです。

(1月11日です。)

  次の日の朝、僕は王立魔法学院に行く準備をしていた。


  昨日は、あれから、ダッシュさんと色々相談して帰りが遅くなってしまった。あの『ヒヒイロカネ』のショートソードの柄と鞘をどう作るか相談していたのだ。僕は、柄に魔石を1個嵌めることが出来るようにスロットを作って貰いたいという希望と、シズちゃんが使うのだから、シックで可愛らしいのにして貰いたいと言った。


  ダッシュさんは、質実剛健、可愛らしさの無い実用一辺倒が良いと言う。しかし、シズちゃんに使わせるとなると、どうして良いか分からなくなってしまうようだ。結局、ガチンコさんに任せるという事になり、エクレア市まで行ってきたので、屋敷に帰ったのは、午後8時過ぎになってしまった。


  寝る前に、フランちゃんの婆やのフミさんから、お願いがあった。明日、フランちゃんの学校に保護者参観に行って頂きたいと言うのだ。僕には黙っていたが、フランちゃんの学校での態度が良く無く、このままでは、卒業できないかも知れないと言うのだ。とくに学科試験の成績が悪く、赤点3つ以上だと留年確実だそうだ。2つ以内だと補修で何とかなるが、それでも、もう一度試験を受けて、それでも赤点だと留年確定だそうだ。シズちゃんの学年トップの成績とは雲泥の差だ。僕としては、別に卒業しなくても良いと思うのだが、フミさんとしては、それは許されないことらしい。自分の義務を果たせなかったという事になり、死をもって償わなければならないと恐ろしいことを言い始めた。とりあえず、学校での様子を見ようという事になった訳だ。




  そう言う訳で、今日、フランちゃんと一緒に学校に行く事になったのだが、フランちゃん、全然起きてこない。『いつも、こうなの?』と聞くと『そうだ。』と言う。そこから鍛え直さなければいけないのではないだろうか。シズちゃんは、日の出とともに起きて、剣の型の練習をし、それから今日の予習をしてから朝食を食べているのに、フランちゃんは未だ寝ている。フミさんが、さっきから、何度も起こしに行っているようだが、全然いう事を聞かないらしい。僕は、自分で起こしに行くからと言って、フランちゃんの部屋に向かった。


  フランちゃんの部屋に行くと、未だベッドの布団の中に潜り込んでいる。バッと布団を剥がすと、お腹を丸出しにして眠っている。そのまま、肩に担いで、下の部屋に降りて行く。パンツが丸見えだが構うもんかとそのままにしておいた。


  朝食のテーブルに座らせると、漸く目が覚めたのか、プッと膨れている。でも、バターたっぶりのパンケーキの香りが食欲を刺激したのか、目がパッチリと開いて、バクバクとパンケーキを頬張りだした。レミイさんが給仕をし、フミさんが、今日の授業の準備の事で、小言を言っている。ああ、こんな状況が毎日だったなんて、迂闊だった。きっと、フランちゃんは精神的に発達不良で、まだ小学生レベルの精神年齢なのだろう。まあ、胸も発達不良に間違いない。とても、もうすぐ16歳になる女の子の体型とは思えないのだ。


  王立魔法学院の制服は、可愛らしいブレザータイプで、今は寒いので、ベージュ色のハーフコートを着ている。しかし、ミニスカの下は生足だ。本当に、今の女子高生は、寒くないのかなと思ってしまう。フランちゃんと一緒に学院に登校していると、他の女子生徒達が必ず僕達を見て行く。もう、僕の身長は、170センチ近くになっており、160センチもないフランちゃんと並んで歩くと、お似合いのカップルに見えるらしい。しかも、学年一の美少女と、それに負けない位の美少年だ。注目されない筈がない。貴族の子女は、僕の事を知っているらしく、軽く会釈してくるが、平民の子達は、僕の事など知る訳もなく、どこのイケメンが転入して来たのかと噂になっていた。もう1月なのに、転入性がある訳ないと思うのだが、希望的観測と言うものは、いつだって独り歩きするものらしい。


  フランちゃんは、いつもは気怠そうに登校するのだそうだが、今日は僕と一緒なので、ニコニコして僕と腕を組みながら歩いている。左手薬指には、ダイヤの婚約指輪を嵌めている。それ、校則違反だから、フランちゃん。教室に入る時に、僕が指輪を取り上げておいた。無くしでもしたら大変だ。少し頬を膨らませて講義をしているが無視をする。授業は、『魔法応用学』と、『魔法陣の構造と解析』の2教科が午前中のカリキュラムだった。僕は、授業内容に興味があったし、教師の教え方もうまいので、熱心に聞くことが出来た。ほとんどは、観念的に知っていることばかりだったが、体系的にかつ細かく教えてくれたので、物凄く分かりやすかった。


  フランちゃんを見ると、涎を垂らしながら眠っている。前の生徒の背中に隠れることもなく、座ったままの姿勢で舟を漕いでいるのだ。これじゃ絶対、授業が分かる訳が無い。途中の休み時間にきちんと授業を聞くように注意したのだが、全く効果が無かった。校長先生の話では、頭が悪いわけではなく、きっと授業の中身に興味を持てないのだろう。理論など知らなくても、魔法陣はきちんと書けるし、魔石を使えば、全ての魔法を、学年中でも誰もできないレベルで使いこなすそうだ。しかし、学科試験で赤点だと、王立学校だけに卒業させるわけには行かないらしい。ナデシコ女学院なら無試験で卒業できるのだが、この学校は国民の税金で運営されているので、不正は許されないらしいのだ。まあ、試験のことはどうしようも無いので、フランちゃんの自覚に任せることとしよう。


  給食の時間になった。フランちゃんは、一目散に食堂に走って行く。誰よりも速い。僕は、余裕でついて行ったが、クラスの皆は、完全に置いて行かれている。食事は、バイキング形式で、好きなものをトレイの上に乗せて、テーブルに持って行くのだ。僕は、簡単なパンとチーズのセットにしたが、フランちゃんは明らかに他人よりも多く盛っている。そんなに食べられるのかと思ってみていると、平気で平らげていた。もっと食べたそうだったのだが、お代わりは厳禁だそうだ。


  お昼休みは、皆でおしゃべりをしたり、ゲームをしたりするのだが、フランちゃんは、お昼寝だ。保健室に行って、ベッドで本格的に寝ている。最初は、保健室の先生に怒られたそうだが、毎回毎回の事なので、諦めてしまったそうだ。午後の授業のチャイムがなると、保健室の先生に起こされているとのことだったが、今日は、僕が起こすことにした。肩を揺らすとすぐに起きて、僕に抱きついて来る。保健室の先生が吃驚した目で見て来るが、僕の婚約者であるという事を言っていないので当然だろう。


  午後は、実習だ。今日は、修練場で、魔法陣を描く練習だ。テーマは風だそうだ。少しでも風が起こせたら合格らしい。しかし、この修練場の様子がおかしい。地面は、ところどころ溶けているし、大きな穴が開いているところもある。壁に至っては、至る所に板を張って補修している。


  教師が、黒板に魔法陣の基本形を描いている。僕が見ても、直ぐ分かる魔法陣だ。自然のエネルギーを少し借りて、気象に変化を与える魔法陣だ。現在、この魔法陣を直ちに使える魔導士は、学院に2人しかいないそうだ。学院長と、大学生のノエルだ。あとは、少しばかり、何かが変わったかなと感じる程度のレベルらしい。確かに、皆、長い呪文を詠唱し、地面に書かれた魔法陣が光り始めた段階で終わっている。僕は、教師の描いた魔法陣の欠陥を見つけている。あの魔法陣で欠けているのは、風の記号だ。それも4か所に。演習場にそよ風が吹いた。漸く、風を召喚する魔導士が現れてくれたようだ。女の子だったが、全ての魔力を使い切ってしまったようだ。これは、もう今日一日、使い物にならないだろう。


  フランちゃんの番が来た。フランちゃん、魔法陣を描くための木の棒を持つと、スタスタと魔法陣の中にまで進み、要所要所に風を意味する文様を書き足していた。書き終わってから、呪文の詠唱に入る。ワンドを天空に向けて、光を集めている。その光を魔法陣の中心に向けて放つ。魔法陣が青く光り始めた。他の教師、学生たちは演習場の避難防護シールドの陰に隠れている。


  『ウインドーー!』


  フランちゃんの掛け声とともに、大きな竜巻が起きてしまった。フランちゃん、スカートがめくれて、パンツが見えてますよ。僕は、フランちゃんにシールドを掛けて、スカートがめくれるのを防いであげた。


  僕は、逆向きの『トルネード』を掛けて、相殺させた。教師達が恐る恐る出てきた。今日の被害はゼロだったのでほっとしているようだ。いつもだったら、間違いなく校舎の屋根瓦が飛ばされていた筈だと言っていた。授業は続けられたが、僕は校長先生から呼ばれた。フランちゃんは、このままでは、卒業できないが、留年はさせたく無いそうだ。理由は、学校存続のためだ。え、意味がよく分からないんですが。聞くと、これだけ魔法を使いこなせる者を卒業もさせなかったら学院の大きな損失になるらしいのだ。要は、『王国随一の治癒魔導士』に学院卒業者というレッテルを貼りたいらしいのだ。


  フランちゃんは、自宅学習となり、試験は、レポート提出だけになった。ああ!

ああ、フランちゃんにも困ったものです。

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