表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
181/753

第179話 シズちゃんの誕生日

ジェリーの家出で、新年もゆっくりできませんでした。

(1月5日です)

  今日は、シズちゃんの16歳の誕生日だ。王都の『カメの甲羅武器店』へ、シズちゃんを迎えに行くことになっていた。久しぶりにダッシュさんもシズちゃんと二人、ゆっくり出来たようだ。シズちゃんと店をでてから、まず、シズちゃんの能力を測定しに冒険者ギルドに行ってみる。この1年でどれくらい能力向上をしたかが楽しみだ。冒険者ギルドは、新年にも関わらず、相変わらず冒険者で一杯だった。能力測定機の場所まで行き、シズちゃんのカードをかざす。機械がわずかに青く光り、結果が水晶板の上に投影されている。


******************************************

【ユニーク情報】

名前:シズ・ブレイン

種族:人間

生年月日:王国歴2008年1月5日(16歳)

性別:女

父の種族:ドワーフ族

母の種族:エルフ族

職業:高校生  冒険者ランク B

******************************************

【能力】

レベル    31( 25UP)

体力    210(120UP)

魔力    140( 80UP)

スキル   280( 90UP)

攻撃力   240(150UP)

防御力   100( 70UP)

俊敏性   270(110UP)

魔法適性  火 闇  

固有スキル

【地獄の業火】【傀儡×】

習得魔術  ファイア・ボール       

習得武技 【斬撃】【連射】

*****************************************



  え、『B』ランク、1年前の初登録では、確か『F』ランクだったのに、そんなにクエストをこなしているはずないのだがと思ったら、騎士学校では、常にトップの成績でダンジョンを踏破しているらしく、スターバ団長閣下から、すぐにでも騎士団の副長をしてくれないかとのお誘いもあるそうだ。ランクアップの窓口に行ったら、クエスト処理数も実績も文句なく、最速『B』ランクとなった。シズちゃん、この1年、騎士学院で何をしていたのですか。今度、保護者同伴でダンジョンに行ってみようと思う僕だった。まあ、保護者って僕なんですけど。その後で、ティファサンで、シズちゃんの欲しいものを買おうとしたら、宝石類は要らないから、弓が欲しいという。え、弓?そういえば、習得武技に【連射】ってあったが、あれは弓やボウガンの武技だった筈。ダッシュさんは、弓の製作はあまり得意ではなく、やはり弓と言えば、和の国の物が一番らしい。王都でも、年に1本くらいしか流れてこないほどの貴重品だそうだ。


  『では』とゲートを開き、和の国のナゴヤマ市にあるヒゼンさんの店に行ってみた。ヒゼンさんは、奥の鍛冶場で刀を打っていたが、僕が来たと知らせを受けるとすぐに出て来た。僕が背中に背負っている刀に気が付いて、見せてくれと言われた。あれ、たしかこの店で買ったはずだがと思ったが、何も言わずに、刀を渡した。いろいろ点検してから、


  「さすが『オロチの刀』じゃ。儂が研いでから2年近く経つのに、刃こぼれ一つしていない。」


  と言って、刀を返してくれた。え、研いだ?作刀したのではないの?と聞きたかったが、どうも様子がおかしい。1年半前のこの店で、ヒゼンの刀を発見して大金貨15枚を払ったことは、どうなっているのだろうか。口座残高を調べればわかるだろうが、当時の口座履歴が残っているかどうか分からない。それよりも、今回の用件は、シズちゃんの使いやすい弓を購入することだ。


  ヒゼンさんは、まずシズちゃんの筋力を調べた。弓を引く力、引いた弓を静止する力だ。次に、腕の長さを調べて、色々と紙に書いていた。壁のショーケースに飾られている弓の中から、1振りの弓を出してきた。和弓にしては短いが、形は洋弓よりも和弓に近い。


  裏の射場で試し打ちをしてみた。弓に矢をつがえ、的に半身になって構える。大きく頭上に掲げてから、ゆっくりと『引き分け』の形に持って行く。美しい。最も引き絞られた『会』の形から矢が放たれた。『離れ』から『残心』まで、一点の無駄も迷いもなかった。矢は50m先の的のど真ん中だ。


  次に、一度に3本をつがえ、同様に打つと、左右の的も含めた3的全部の真ん中に当たった。素晴らしい。風でスカートがめくれてパンツが見えなかったら、もっと素晴らしかったのだが。この弓を買うことになった。作者は『ヨイチ』という人らしいが、惜しいことに若くして病気で亡くなったらしい。和の国では、今、ボウガン全盛で、和弓を使う人が少ないため、余り売れないらしい。


  特にこの弓は、女性用のため、ますます需要が無いらしいのだ。それで破格の金貨2枚で良いと言う。おまけに矢筒と、弓のケースをサービスして貰った。


  あ、フランちゃんに切れ味は大したことないが、綺麗なナイフを買ってあげた。銀貨で数枚程度だ。しかし、何も無いと拗ねるので、安物ナイフでも買ってやれば、満足してくれるだろう。ヒゼンさんの店を出てから、二人で、平べったいスープパスタを食べた。『きしめん』と言うらしい。醤油ベースの味付けも美味しいが、やはり味噌味が最高だった。食後、『あんみつ』というスイーツを食べてから、グレーテル市に戻った。


  ダッシュさんに『ヨイチの弓』を見せたら、涙を流しながら、点検していた。こんな素晴らしい弓は見たことが無いらしい。この国では採取できない『たけ』という植物の幹を使って作るらしいが、ミスリルよりも固く、しなやかで、弓としてはこれ以上の作は不可能と言うレベルらしい。ただ、細いので、『矢の錬成』の魔法陣は彫り込めなかったのが残念だ。


  後は、大きなケーキを買って、ダッシュさんと一緒にタイタン市の領主館に『空間転移』した。ダッシュさんが領主館に来たのは、先月20日の入居祝いの時だったから、あれから2週間、街の変貌に驚いていた。ほとんどの店は、新年オープンを果たし、いまは近隣の村からの買い出し客で盛況だった。実は、領内全ての村にゲート用の門を作り、24時間、タイタン市と繋いでいるのだ。ゲート用の門は大公国に作った白い石門と同じものだ。無くても良かったのだが、何もないところにゲートだけ浮かんでいるのも気持ちが悪いので、石門を作っておいたのだ。ただし、村と村を直接結ぶゲートは作っていない。それを作ってしまうと、今までの駅馬車を運営している人達が廃業になってしまうからだ。各村には、特産品を置くとともに、特色を出させることにした。ハッシュ村は、領内唯一の娼館とギルドだ。ドビー村は、公立の中学と果物を中心とした農産物だ。朝市は、領内一の品ぞろえと安価な値段が売りだ。一番南のフライス村は、広大な敷地を生かした酪農と、豊富な肉類だ。牛、豚、鶏はもちろんの事、鹿、猪、兎に雉やカモもある。チーズとバターもこの村独自の風味溢れる者だった。いま、3村とも旅館や民宿の建築ラッシュだ。タイタン経由とはいえ、瞬間的に移動できるのだ。冒険者達は、自分の気に入った宿舎を選べるようになっている。


  タイタン市の賑わいとは違い、領主館は、ここが領都の中かと思えるほど、静かな時間が流れていた。聞こえるのは、ジェリーちゃんとジルちゃんの笑い声だけだ。本当に、あの二人はうるさい。お父さん、早く連れ戻しに来てください。


  誕生パーティは、盛大に行われた。シズちゃんの弓を見たシェルの顔色が変わった。良さが分かるらしい。しきりに値段を気にしている。誕生日プレゼントにしては、レベルを超えているらしいのだ。


  エーデルの『百刺しのレイピア』をタダ同然で買った経験があるので、今回もそうかと聞いてきた。小さな声で値段を耳打ちをしたら、結構高い値段ではあるが、この弓の貴重さから考えると破格に安い値段だったことにホッとした様子だった。今日の誕生日パーティは、誰一人、酔いつぶれることなく終わった。シェルが、弓を見るのに気を取られ飲むのを忘れていたからだ。


  翌朝、裏の修練場で、弓の稽古が始まった。当然、シェルとシズちゃんだ。古式弓道の作法にのっとり、3本の矢を100m先の的に正中させるシズちゃん。同じ弓を使って、1的に3本ずつ、9本同時に打つシェル。はっきり言って、シェルのスキルは違反なのだが、そのことは黙っていることにした。シズちゃんに、矢を『会』の位置で止めるとき、『気』を鏃に込めるように指示した。鏃が青白く光り始めた。その時、もう矢は『離れ』て、的に一直線だった。


    ズドドドドドドーン


  的は、跡形もなく消えてしまった。まあ、当然であるが。幸いなことに、隣近所はいないので、音を気にすることは無い。それから、シズちゃんの剣の型を見てあげた。最初の頃に比較して格段の差だ。明鏡止水流の道場でも、師範代をしているというのが頷ける。12の型、全てに基本動作の厳守が生かされているようだった。

シズちゃんは、剣も弓も行ける両刀使いのようです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ