第175話 ハッシュ村の別荘ができました。
3か月ぶりに帰ってきました。とても忙しいです。
(2023年11月30日です。)
僕は、自分の部屋のベッドの上で目が覚めた。
今、何時だ。この部屋は、自分の部屋のようだ。戻って来たらしい。
その時、ドアが少し開いた。中を覗いている者がいる。エーデルだ。ドアを目一杯開け、走り込んできた。薄いパジャマで、大きなオッパイがブルンブルン揺れている。僕に抱きついてきた。もう、キスではない。僕の顔を嘗め回している。あの、エーデルさん、オッパイが胸を押しつぶしそうなんですが。僕にキスをしながらパンツを脱ぎ始めた。一体何をする気ですか。
騒ぎを聞きつけて、シェルが部屋にやって来た。一瞬、何が起きているのか理解できなかったようだ。しかし、僕が帰って来たという事に気が付いたと同時に大きな涙を浮かべながら、僕に飛びついてきた。エーデルを押し退けようとする。しかし、エーデルも僕の首に回した腕を離そうとしない。クレスタが部屋に来た。エーデルとシェルさんを引きはがす。クレスタも泣いていた。学校に行く前のノエルとビラ、シズちゃんとフランちゃんも全員部屋に来た。
僕は、漸く、ベッドから起き上がり、剣の置き場を見た。ちゃんとヒゼンの刀とベルの剣が置かれていた。良かった。無くしていなかった。ヒゼンの刀を見ていたら、シェルが、不思議そうな顔で、
「どうかしたの、『ベルの剣』と『オロチの刀』ならちゃんとあったわよ。」
え、『オロチの刀』って何ですか。僕が不思議そうな顔をすると、
「何言ってるのよ。この『オロチの刀』は、私と和の国へ新婚旅行に行って、オロチを退治した時に、腹の中からドロップした刀じゃない。忘れたの?」
全く記憶が無かったが、そう言われると、そうだった気がする。記憶がボーッとしている。それよりも、この妻達と婚約者達に謝らなければいけない。長い間、留守にしてしまって。
とりあえず、朝のシャワーを浴びることにした。シェルとエーデルが一緒にシャワーを浴びようとしたが、独りで浴びたいからと言って断った。魂胆は、見え見えだ。
皆で、朝食にする。イフちゃんも実体化して、一緒に食事をした。あれ、セバスさんやイチローさん達が見当たらない。聞けば、皆、ハッシュ村の方に働きに行っているそうだ。これは、早急に人材の確保をしなければならないようだ。とりあえず、ビビさんの交代要員とギルド要員の補充、別荘の管理及び運営をする人を採用しなければいけない。シェルの話によると、領主直属の騎士団と衛士隊を雇わなければならないそうだ。頭が痛い。まあ、今日は、長い間留守にしていたお詫びのために、グレーテル国王に会いに行こう。勿論、エーデル姫と一緒だ。
それから、グリーン・フォレスト連合公国に行って、アスコット大公にも会わなければいけない。その時、今から3000年前の戦争の事などを聞こうと思った。3000年前から、シェルは何度死んでいるのだろうか。全てのシェルが僕の事を知っていた。あのシェルは一体、誰なんだろうか?謎は、深まる一方だった。
グレーテル国王陛下に会って、長い間の御無沙汰をお詫びしたところ、朗報があるという。何かと思ったところ、ハッシュ村の東側にあるアント村をタイタン公爵領に編入すると言うのだ。エクレア辺境伯は、エクレア伯爵になったのだが、タイタン公爵にご結婚のお祝いに進呈すると言うのだ。実体としては、エクレア伯爵領よりもタイタン公爵領の方が、交通の便も良いし、村民もかなりの頻度でハッシュ村に行っているので、その方が何かと便利らしい。謹んでお受けすることにした。
国王陛下の謁見終了後、ジェンキン宰相閣下にお会いして、ハッシュ村の運営について色々とお願いすることがあった。まず、最初に有能な官吏を数人、派遣して貰いたいとお願いした。新しい街の居住許可に建築許可、それに営業許可、とてもセバスさん一人ではできないし、セバスさんは王都の屋敷に居て貰わなくてはいろいろ困ってしまう。次に、僕の別荘、いわば領主館の運営に携わる執事とメイドの配置をお願いした。いま、王宮で働いているメイドでも良いし、その縁者の娘でも良いので、是非紹介して貰いたいと。
それから、スターバ騎士団長にお会いして、衛士及び騎士団の候補者をお願いしたら、儂よりも明鏡止水流の本部長及び師範に斡旋をお願いした方が良いと言われた。また、3年位だったら、幹部として数名派遣することは可能だという事だったので、お願いすることにした。
反対にお願いされたことがあった。ジェリーちゃんを是非、王都の屋敷に住まわせてくれという事だった。ジェリーちゃんは、確か今12歳で、来年から中学に入学する予定の筈。そのことは、妻のシェルと相談して決めたいと言ったら、物凄く喜んでいた。団長閣下、何か、大きく誤解しているような気がして困ってしまった。
王城を出た後、ダッシュさんに挨拶に行ったら、泣きながら帰りを喜んでくれた。シズちゃんが、毎日、ここに来て、『ゴロタさんは、今日も帰って来ない。』と泣いていたそうだ。ごめんなさい。
次に、バンブーさんの事務所に行った。事務所が大きくなっていた。簡単な作りだが、広さが倍になっていたし、隣では本格的な事務所の建築が始まっていた。え、何でと思ったが、ハッシュ村の仕事が次々に入り、今の事務所の広さでは、全く狭いため、臨時に拡張しているらしい。本格的な新社屋完成は、来年6月だそうだ。景気が良いですね。
公爵邸の内装仕上げと造園作業の打ち合わせをした後に、新都心の建築計画について説明を受けた。あの、新都心って何ですか?聞くところによると、大通り沿いの区画は、すべて完売になったそうで、今は、細街路に面した区画の分譲を始めているそうだ。それに、小学校、中学校、高校と一貫校を作る計画もあり、広大な敷地を新都心郊外に開発しているそうだ。もう、頭が痛くなってきたので、とりあえず、シェルと良く相談して決めて貰うことにして、事務所を出た。
次に、ドエス商会に行って、顧問料の中間金を支払った。来年3月で、顧問契約を解除する旨を伝えると、残念そうな顔をしていたが、これはしょうがない。もう、ドエスさんに聞きたいことは何も無いから。
屋敷に帰ったら、驚いたことに、もうスターバ将軍の孫娘ジェリーちゃんが荷物を持って来ていた。広間で、チョコンとソファに座っている。一緒にいるお姉さんは、ジェリーちゃんのお母さんだろうか。とりあえず、挨拶をしてから、用件を聞くと、今日からこの屋敷で暮らすことになったらしい。シェルに聞いたら、僕が了解したので、仕方が無いと言っていた。それは話が違うと思ったが、こうなったらもう仕方が無い。ジェリーちゃんの部屋は、フランちゃんの隣の部屋にした。お母さんにも確認して貰ったら、この部屋で十分だとの事だった。今のジェリーちゃんの部屋の3倍はあるそうだ。ジェリーちゃん、まだ小学生なので、勉強机と本棚を準備させることにした。
そのほか、必要なものを聞くと、ピアノも毎日練習しているそうなので、1階の大広間にピアノを置くことにした。スタイン兄弟のピアノで、中古で購入したのだが大金貨1枚半もした。あ、別荘にも同じものを置かなくちゃいけない。中古品の在庫がないというので、こっちは新品を注文しておいた。大金貨2枚半だった。
次の日、シェルと一緒にアント村に『空間転移』した。村長に会ったら、非常に興奮した様子で、事前に知らせてくれれば歓迎式典をしたかったのに、準備が間に合わないなどと詫びていた。アント村のカーク村長に、今後の村の運営について指示をしたが、他の辺境3村と同様の条件だ。
1、来年の年貢及び税金は免除する。
2、今雇っている衛士には1人当たり、年金貨2枚を支給する。
3、村長、村役人の経費として年金貨5枚を支給する。来年からは、年貢から差し引く。
4、ハッシュ村北の森に領主邸が出来るので、何か困ったことがあれば相談に来ること。
5、来年度以降になるが、各村に小学校を建設する。ドビー村には中学校も建設予定である。
6、以後、領地はタイタン公爵領と呼称する。
カーク村長は、非常に驚くとともに、涙を流して喜んでくれた。今いる衛士達は、村の皆から集めた互助金から給料を出しているが、食住を世話する代わりに、年間、大銀貨7枚しか払えなかったし、村長、村役人は無給で、年貢をほんの少し軽減して貰っているだけだったそうだ。これで、人間らしい暮らしができるそうだ。
カーク村長に、駅馬車の護衛隊のダンヒルさんの事を聞いたら、この村に母親と一緒に住んでいるそうだ。住まいを聞いて、訪ねてみると、ちょうど非番で、自宅にいた。今度、騎士団と衛士隊を作るので、どちらかの隊長をお願いできないかと言ったら、母親と一緒でなければ、移動できないと言った。当然、隊長宿舎も準備するし、給料も年金貨5枚を支払うと言ったら、驚くとともに、騎士団団長の任官を承諾してくれた。
ダンヒルさんの階級は、タイタン大公領騎士団大佐に任じることにした。早速で悪いが、早い段階で引っ越して貰い、新騎士の採用業務をお願いすることにした。またまた、バンブーさんに忙しい思いをさせることになるが、儲かっているから良いかと思う僕だった。
それから、ホテル「エーデル」に行って、ビビさんと色々相談した。どうしても、護衛の男性が必要だそうだ。今は、白薔薇会の皆さんがいてくれるが、従業員として護衛が出来る男性職員を採用したいと言ってきた。僕達は、もう一度アント村に戻り、旅館「蟻の塚亭」で有望な人材をお願いしたら、独り、冒険者上がりの従業員がいると言う。
会ってみると、35歳位のベンという男性で、冒険者として『B』ランクまで行ったが、パーティーメンバーの殆どが死んでしまうという不幸があり、冒険者をやめたそうだ。今、慣れないホテル従業員の仕事をしているが、望まれるなら、ハッシュ村に行っても良いという事だった。
それから、『蟻の塚亭』で働いていた従業員で、僕達が初めて泊まった時の受付の女の子は、今はやめて、家事手伝いをしているそうだ。訪ねて行ったところ、僕達の事はよく覚えてくれていた。僕が、新領主となったことに驚いていたが、僕が立派な男の子になっていたので、その事にも吃驚していた。名前をデラと言い、今23歳だそうだ。ハッシュ村のホテルで働いてくれないかと言ったら、親の面倒を見ているのだが、親と一緒ならということだったので、村内の中古住宅を購入して暮らしていいので、とりあえず就職をお願いしたら、それならという事で応諾して貰った。
『蟻の塚亭』の主人から、今度できる新都心で、ホテルを経営したいのだが、力を貸して貰えないかと言ってきたので、今度できる行政庁で調整をしているが、是非お願いしたいと言っておいた。
着々と準備を進めていたところ、漸く、別荘いや領主館が出来た。
何か、留守にしていた割に、仕事が一杯になってます。




