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第173話 魔人兵と神の怒り

何故か、魔人兵はのんびりしています。激しい戦闘が無いままに、北進を続けていたみたいです。

(はるか昔に戻ります。)

  僕達は、魔人軍を殲滅してから、ノラ村に戻った。女性村長に、魔人軍は殲滅したので、北に避難する必要はないと説明した。ある程度の事情は、先に逃がしたエルフの女性たちから聞いていたし、僕の力の凄さは、キノコ雲を見ていたので理解しているみたいだった。その日は、村長の家に泊まり、翌日、エルフの郷、フォレスト国に出発する事にした。フォレスト国には、森の中を1か月近く歩かなければならないのだ。


  昨日助けたエルフ達は、南に行くのは危険だから、やめた方が良いとしきりに言っていたが、どうしてもヘラさんの叔母さんと、シェルちゃんの身寄りを探さなければならないと言って出発をした。


  森の中に入ると、予想通り魔物の巣窟だった。小人のようなサイズのトロールやゴブリンなどの低級魔物は、『威嚇』で追い払い、大型トロールなどの中級魔物はヘラさんの3連射で殲滅していた。ミノタウロスやワイバーン等は、僕の『斬撃』で討伐した。


  森の中の野営は、森の開けた場所で、キャンプをした。周辺には、エルフや魔人兵の死骸が埋もれており、何体かはゾンビ化して、さ迷っている。僕は聖なるシールドを張って、ゾンビの近付くのを防いだ。


  森に入って20日程経ったが、生きているエルフも魔人もいなかった。途中、エルフの村が幾つかあったが、皆、廃墟となっていた。死骸が沢山あったが、ヘラさんの叔母さんと同じ服や装飾品は見つからなかったようだ。


  探している間に、変わった魔方陣を見つけた。僕が見たことも無い魔方陣だった。そっと、魔力を注いでみると、魔方陣が白く輝いた。呪文を唱える必要は無かった。光の中から『矢』が出てきたのだ。鏃は、ミスリル製のようだった。矢羽は、白かったが、じっと見つめても、形がはっきりしなかった。この魔法陣は、矢を作るための土魔法の魔法陣のようだ。僕は、この魔方陣の超小型版を、ヘラさんの弓に錬成で彫り込んだ。その上から土魔法と錬成でガラス状のコーティングをして、簡単に魔法陣が消えないようにするとともに、一見して魔法陣が分からないようにしておいた。それから、ヘラさんに、弓を構えて貰った。魔力を、弓を持っている左手と、弦を持っている右手に流すように教えたところ、何も無いところから突然『矢』現れた。3本の矢をイメージさせながら、魔力を流させたら、3本の矢が現れた。もう、矢筒を持って歩く必要は無いはずだ。


  しかし、確かシェルの持っていた『ヘラクレイスの弓』には、弦が無かった。イメージするだけで、飛んで行ったはずだ。あの仕組みが分からなかった。まあ、分からないことは、いくら考えても分からないのだからと、諦めて、村を出発することにした。さすがに、至る所に死骸が散乱している村の中で1泊する気にはなれなかった。


  森に入って1か月目、いよいよフォレスト国の中心部に近づいて来た。物凄い瘴気が、漂ってきている。おかしい。魔人だからと言って、こんな瘴気を放つことはできない。この瘴気は、リッチやレブナントなどの高位アンデッドが放つ瘴気と似ている。遠くから見てみると魔人たちが、至る所に固まっている。家の中にいる者もいるが、殆どの物は野営をしている。エルフの生存者は、見つからなかったが、どこかに幽閉されているのかも知れない。僕達は、魔人達に見つからないような場所を探して、今晩は野営することにした。気配を消すためのシールドを張っておき、夕食は、固形パンと干し肉のように火を使わないような物にした。


  翌朝、日が昇るとともに行動開始だ。ヘラさんとシェルちゃんは危ないので、野営キャンプで留守番だ。僕は、気配を消すシールドを身にまとうとともに、イフちゃんを飛ばして、エルフの生き残りを探させた。しかし、この都市には、もう生きているエルフはいないそうだ。ただ、東の果てに物凄い瘴気の発する場所があるらしいとの事だった。


  僕は、東の方角を目指した。途中、魔人の大部隊と遭遇した。身長の高い巨人族の魔人達による歩兵部隊。小人族の魔人たちによる魔法部隊、そして、人間と同じ位の身長で、魔法と剣の両刀使いの魔法戦士部隊だ。エルフの女性でも捕らえられて、魔人たちの慰み者になっているかと思ったがそういう状況も無かった。おかしい。戦場の後の割に、街は戦火の後が無いし、兵士達にも悲壮感が感じられない。


  その原因は、東に進んだら直ぐに分かった。リッチだ。しかも明らかに通常のリッチとは違う。まず大きさが異常に大きい。通常のリッチは、通常の人間程度の身長なのだが、このリッチは2m以上ある。そして、頭の両脇から山羊のような角が生えている。魔人それも特大の巨人族の魔人がアンデッドとなったリッチだ。通常、魔人の高位魔導士は、小人族が多いのだが、まれに巨人族からも、魔法使いそれも極めて優秀で強力な魔導士が現れるらしい。そのような魔導士が、『悪の堕天使』に魅入られると、とんでもないリッチになる場合があるそうだ。


  それが、エルフの墓場というか、エルフの死体の山の上に居るのだ。その他に、死んだエルフの怨念を蓄え続けている小人サイズの魔人リッチが3体もいた。ヘラのためにも、死体を残しておきたいが、かなり痛みが進んでおり、気持ちの悪い汁が出て来ていて、着衣や装飾品から叔母さんを見つけるのは不可能に近い状況だった。


  僕は、念のため、もう一度イフちゃんにエルフの生存者がいないかどうか探索させた。イフちゃんの答えは、『エルフは、ここにはいない。』だった。僕は、『空間転移』で、今の場所から2キロ位、北に戻ったところまで移動した。ヘラさんに街の状況を説明し、叔母さんを探すことは無理だと説明した。ヘラさんは、今まで、森の中で見て来たエルフの村の状況から、ほぼ諦めていたようで、全てを僕に任せてくれた。


  シェルちゃんの身寄りの人については、本来、出身の村がどの辺かも知らないようなので、探しようがないが、このままこの国に置いておくわけにも行かず、魔人族の侵攻部隊を殲滅したら、一緒に人間の国に行って、生活できるようにするつもりだ。当てはないが、まあ、行ってみればどうにかなるだろう。駄目だったら、僕の世界に連れて帰ればいいとも思っていた。帰り方は知らないが、何となく帰れるような気がしている。


  もう一度、僕だけで市街に近づいた。今回は、わざと魔人兵に見つかるようにした。『ベルの剣』は抜いていない。魔人兵10名位が僕を取り囲んだ。7歳位の女の子を、どうするつもりなのだろう。様子を見ていると、魔人兵の中から女性兵が一人出て来て、僕に話しかけた。


  「お嬢ちゃん、ここで何をしているの。どこから来たの?」


  簡単に返事ができる訳がない。僕は、北の方角を指さした。そのとき、僕が指さした先にイフちゃんが現れた。魔人兵達は、急に警戒を強めた。10歳位の、真っ赤な見たことも無い服を来た女の子が、急に現れたのだから、驚くなと言う方が無理だろう。


  「お主らの総大将か司令官に遭いたい。」


  「あなた達は、誰ですか?神の使いですか?それとも悪魔の使い?」


  「我らは、遠い世界より来し者なり。其方らの総大将は居るのか?」


  兵士達は、警戒しながらも部隊の中心に位置する総司令部に案内してくれた。総大将は、中人族の魔人だった。話を聞くと、この国に侵攻してきたのは、天より来たりし神の『御言葉』によものだそうだ。奴隷として若い男女を差し出せば、特に争いごとをするつもりは無かったのだが、国家単位で抵抗してきたので、戦争になってしまったそうだ。必要な奴隷は確保して、南の神の王国に連れて行っている。役に立たない、年寄りと子供は、何もしないで放置していたが、魔物に食べられてしまったようだ。


  天より来たりし神は、今、どこにいるのか聞くと、それは教えられないと言う。最後に、わずかばかりのパンをやるから、この地を立ち去るようにと言われた。僕のような小さな女の子には用はないようだ。


  イフちゃんが、総大将に部隊を引き上げるように申し入れたところ、『それは、できない。』と言われた。理由は、あの巨人のリッチと小人の3人のリッチ達だった。あの不浄なる者達が、神の使いとして、作戦当初から、行動をともにしており、戦闘になれば魔人兵よりも先に、敵に対して魔法攻撃をして、相手を撃破してしまうらしい。もし、神のお言葉に逆らうような事をすれば、今度は我々もただでは済まないので、神から許されない限り、侵攻を止めることはできないそうだ。


  今も、北の村々から奴隷を集めるため1500名の部隊を派遣中だと言っていた。その部隊はもういないと言いたかったが、黙っていた。


  僕は、『これからリッチを討伐するが、構わないでくれたら、この部隊には何もしない。』という事をイフちゃんに言って貰った。


  大笑いする総大将たちに、僕は『ベルの剣』を抜いて、上空に向かって斬撃を放った。目も眩むような真っ赤な光が虚空に向かって走り昇って行く様子を見て、全ての将兵が黙り込んでしまった。僕は、高エネルギーの球体を上空に生じさせ、そのままリッチ達のいる上空まで移動させてから破裂させた。6000度の超高温がリッチの特殊個体達に襲い掛かった。膨大な熱エネルギーは、リッチの纏っている瘴気さえ霧散させてしまった。周辺に配置されているレブナントと若干の魔人兵も消滅してしまったが、真仁平さん達、ごめんなさい。


  魔人族の総大将達は、何が起きたのか理解できなかったようだ。この女の子達は、呪文も何も唱えていない。最初に剣を抜いて、上空に向けて赤い光を放っただけだったのに、次に東の方で発生した大爆発は、人知を超えるものだった。


  すぐ、伝令が走って来て状況を知らせた。東部方面は、リッチら魔物も含めて消滅したという報告だった。


  「お前たち、何をした。」


  総大将が叫ぶと同時に、周囲の兵士たちが剣を抜いて僕達を囲んだ。木の上のアーチャーは、弓を引き絞っている。僕は、『ベルの剣』を納めて、ずっと立っているだけだった。


  僕の肩を掴もうとした兵士がいたが、シールドに阻まれて、右手首から先が無くなってしまった。アーチャーが弓を打ってきたが、シールドが跳ね返してしまった。イフちゃんが、総大将に言った。


  「そなた等の貧弱な力では、指1本、我らに触れることなどできんぞ。このまま、部隊が全滅しても良いのか?」


  そう言われて、初めて、正気を取り戻したのか、総大将が全員を引かせた。


  「このまま、引き返せば我らを許してくれるのか?」


  「先ほどから、そう言っておろうが。そなたらの先遣隊は、1か月ほど前に殲滅しておる。お主らは、十分に罰を受けている。」


  「あなた様たちは、これからどうするおつもりですか?」


  「お主らの国に行って、捉えられた奴隷を開放するつもりじゃ。」


  「もし、それを断ればどうなりますか?」


  「国が無くなる。」


  「分かりました。部隊を引き上げましょう。」


  総大将が、そう言った時、急に辺りが、目を開けていられない位にまぶしい、白い光に包まれた。

あれ、誰が魔人兵を掃討してしまったのでしょうか。いよいよ、壮絶な戦いが始まります。

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