第165話 ハッシュ村にいかがわしい店を作ります。
ダンジョンの運営って、色々面倒です。特に、冒険者の扱いには困ってしまいます。
(6月25日です。)
ハッシュ村で問題が起こった。酔った冒険者が、村の娘を襲ったのだ。幸い、気が付いた村人達が、必死にその娘を守ったので大事には至らなかったが、やはり、冒険者のように気の荒い男性が100人以上も集まっていては、色々と問題行動が発生してしまう。
エリーさんは、僕に娼館の設置を願い出た。このままでは、店の女の子達まで危なくなってしまうと言うのだ。シェルも同意見だった。村長さんやシスターも同意していた。村の奥さん達も、特に作るのには反対していなかった。この世界では、女性が春をひさぐのは罪でも何でもない。但し、15歳以下の男女を娼館で働かせるのは、重罪で、財産没収の上、店主と従業員全員は犯罪奴隷として娼館に売られてしまうのだ。若い男性は、当然、性奴隷で働かせるが、年老いた男は、下働きで汚れた下着やシーツを洗い続けるのだ。また、誘拐等による非合法の娼婦を雇用したり、娼婦に体罰や拷問をしたりするのも同様である。
娼婦は、3日に1度、公営の検査所で身体検査を受けなければならない。その検査で、新しい痣や外傷があった場合には、暴力被害があったと言う事で直ちに営業停止となり、事情によっては雇用者は奴隷落ちとなる。その辺の事は、やはり専門家でなければ分からないので、僕は王都のドエス商会のドエス社長に相談することにした。あのエリーさんとの交渉でも良心的だったような気がするからだ。
僕とシェルさんがドエスさんに、今のハッシュ村の現状を話したところ、やはり冒険者達にとって、娼館等の性欲のはけ口がないと、素人の娘さん達が被害に遭ってしまうと言われた。そこで、対応策を検討したところ、娼婦20人が働ける娼館を建てたら、ドエスさんの支店を開店しても良いとの事だった。しかし、店は僕の直営としたいので、支店の話は断っておいた。実際には、娼婦1人に1室を与え、営業場所兼住居として使わせるのが原則なのだそうだ。各室は、シャワー及び簡単なキッチンが必要で、バックヤードには、事務室と娼婦の娯楽室及び専用食堂が必要だとの事。それと、領主の許可が必要だというので、僕が領主だと言ったら、ドエスさんは、目を丸くしていた。
その後、料金及びピンハネの話をしたが、ドエスさんには、利益の20%を顧問料として渡すことにした。それから施設使用料として、娼婦は1室に付き、月に銀貨5枚を僕に支払う事にする予定だ。また、食費及び諸雑費については、マネージャーと相談して決めたいので、ドエスさんの会社から経験者を派遣して貰いたいとお願いした。
ドエスさんは、顧問料として売り上げの50%を頂きたいと言ったが、運営のノウハウだけで、投資をしている訳ではないので、利益の20%以上は払えないという事で納得して貰った。結構えぐい要求をされてしまった。なお、ドエスさんとの契約は1年毎の更新とした。ドエスさんの店からの娼婦の派遣については、おおむね1か月後に開店したいので、それまでに決めたいが、シェルさん達が面接して、派遣者を決めるので、希望者を募っておいて貰いたいと言った。
その足で、バンブーさんの所に行って、娼婦20名が働く娼館を建てたいと言ったら、娼館はピンキリがあるが、ベッドのみが置かれる安普請で良いのなら、3週間で建てられると言ってきた。シャワー等の最低限の設備が欲しいので、もう少し丁寧に建設して貰いたいと言ったら、1か月で何とかすると言ってくれた。建設費用は、大金貨10枚だそうだ。すぐ、契約をして、現地調査をお願いした。
シェルさんと一緒に、『快楽の穴』に行き、そこの女性店長から銀貨1枚で色々と情報を聞いてきた。娼婦は、正規奴隷と一般募集の2種類で、怪しい男からの斡旋は受けない事にしているそうだ。誘拐等の被害者を雇用したら、社長や店長が犯罪奴隷として売り飛ばされてしまうからだ。
本人の希望で採用する場合には、色々事情を聞いてから採用しなければならないそうだ。怪しい理由しか言わない女は、男に騙されたり脅かされている場合があるので、採用しないそうだ。一番安心なのは、公営の奴隷市場で、奴隷証明書がある女奴隷を買う事だそうだが、奴隷証明書の職種欄に『娼婦』と記載のない者を娼婦として使用すると、やはり違法な奴隷のしようと言う事で奴隷落ちになるそうだ。
若い女性を雇用する場合は、年齢確認が一番難しいらしい。冒険者ギルドの能力測定装置があれば良いが、無ければ、色々と聞いて年齢に矛盾が無いかどうかと、大事なところの使用状況を確認することにしている。それを嫌がる女は、娼婦に向いてないので、採用しないそうだ。あと、変な傷が合ったり、刺青があっても客が嫌がるので、必ず全身をくまなく調べるそうだ。シェルは、顔を真っ赤にしてメモしている。しかし女性の大事なところの変化状況と、経験量については、よく分からなかったようだ。
あと、月に1度は、専門の治癒師に病気の有無を見せるか、ヒーラーに金を払って、悪い瘴気を払って貰わなければならない。ヒーラーでも、『治癒』のスキルが無いヒーラーでは、病気を治せないので、キチンと能力を確認してから依頼しないといけないそうだ。
娼館経営って、本当に大変なんだなと思ったが、最終的には、エリーさんに経営を頼むつもりだ。エリーさんなら、可哀想な女性を食い物にするような事はないと思う。ラビット亭の経営は、サリーとメリーにやって貰えばいい。娼婦の女性達は、4班に分けて、4日に1回は休みにする。泊まり勤務は4日に1回、午後5時から、翌日午前10時までの勤務だ。泊まりの前日が遅番で、午後2時から午後10時までだ。客単価は、AランクからCランクまであり、1時間銀貨1枚半から3枚までの区分だ。泊まりは午後10時から時間に関係なく、銀貨6枚から9枚だ。店で売り上げの50%を食費や管理費として徴収する。実費を清算して、残余金が出たら、娼婦と折半だ。
普通に考えても、遅番の1日に6人の客を取ると、売り上げは、最低でも銀貨9枚。泊まり勤務は、時間客4名で銀貨6枚、泊まり客が銀貨6枚だから、計12枚。4日1勤務で銀貨21枚を稼ぐ。1か月に7勤務働くとして、月に銀貨147枚。その内の半分が自分の取り分だから、銀貨74枚が最低ランクの娼婦の月収だ。
店側の収入は、施設使用料が銀貨5枚、食費が銀貨3枚、掃除、洗濯などの管理費が銀貨2枚、制服貸与費が銀貨1枚、人件費や医療費が銀貨3枚が必要経費なので、残りの銀河59枚が荒利益となる。これから、銀貨12枚がドエスさんの顧問料で、残りの47枚を、娼婦と折半だ。結局、娼婦は、月に銀貨97枚以上が実収入になる。15歳の女の子で、月に金貨1枚を稼ぐ商売は、他にはない。
お客さんからの指名料は、銀貨1枚で、店は大銅貨3枚を手数料で貰うが、お客さんからのチップやプレゼントは、全て娼婦の取り分だ。普通の都市では、裏社会に上納金を納めているそうだが、僕から巻き上げようとする者は、この国にはいない。ドエスさんも注意情報を業界に流しているので、どんな命知らずも、僕の店に近づきはしないみたいだ。
面接の前に、シェルとエリーの二人と一緒に王都の公営奴隷市場に行ってみた。獣人が多いが、年齢を15歳から20歳までの娼婦が出来る奴隷に限定したら、候補者は18人だった。容姿で限定したら、12名が候補者だった。売値は、獣人が大金貨2枚以上で人間族が大金貨3枚以上だった。
面接をしてみたが、娼婦となるのは全員が覚悟済みだった。借金のカタで奴隷に落ちたのは良いが、犯罪奴隷の場合は、何をしたか事情を聞くことにした。殺人や誘拐の罪人は、採用できない。結局、10人を買った。獣人が5人、ハーフエルフが2人そして人間が3人だった。
エリーの調査では、処女は1人もいなかったそうだ。購入金は、奴隷の借金となるのだが、金利は、相場の4分の1の年5%とした。大金貨3枚の奴隷の場合、年に金貨1枚半だ。年に大金貨1枚以上を稼ぐ彼女達だ。普通に返せば、5年位で完済できる筈だ。それ以上は、自由に働いてもらって良いが、エルフ以外は30歳が定年なので、それまでの間に、自立の生きる道を立てて貰う。自立のための資金も低利で貸し出すこともするつもりだ。
この娘達は、これ以上借財が出来ないように制限をかけた。親や悪い男が、金をせびりに来ることが予想できたので、法的に出来ないように司法省の仮処分決定を貰っておいたのだ。これで、無理やり証文にサインさせても、無効となるわけだ。
ドエスさんの店で、募集していた一般娼婦には、長蛇の列ができていた。僕の店の条件が良かったこともあるが、『お客様接待業、容姿端麗で若い子に限る。』と言う条件が、女心を刺激したようだ。
書面審査員で24人に絞られた。面接では、仕事の内容や待遇について、丁寧に説明してそれでも娼婦として働くか確認したところ、8人が吃驚して辞退していった。
残りの16人のうち、既婚者と婚約者のいる女の子を除外し、容姿で選考して、8人に絞った。エリーさんが身体検査をしたところ、処女が1人いた。その子にもう一度面接したところ、男女の営みは十分知っているし、知らない男に処女を奪われても何とも思わないと言った。どうしても自分の夢を叶えたいので、収入の良いこの仕事を選んだそうだ。できれば、僕に処女を奪って貰いたいと言って、短いスカートを捲り上げてきたがシェルに阻止されていた。最初の相手は、エリーさんが選ぶことにしたようだ。
ハッシュ村でも、近隣の村から募集した娘達の面接をした。さすがに、ハッシュ村出身者はいないだろうと思ったら3人もいたのには吃驚した。中には、僕と一緒に教会で勉強していた娘もいた。何でも男に騙されて、家の財産を全て失ったと言うことだった。エリーさんが確認したところ、処女は1人もいなかったそうだ。さっきの娘と、隣村の娘の2人を採用して、募集枠は埋まってしまった。
彼女達は、とりあえず娼館が出来上がるまで王都の屋敷の従業員宿舎に滞在して貰った。イチローさん達が落ち着かない様子だったが、自由恋愛は、制限しないので放置しておくことにした。
彼女達に制服を着せるため、採寸をすることになった。彼女達は、初めての体験なので、ワイワイ、キャピキャピ騒いでいた。制服は、ミニスカだったが、膝上程度で、あえて扇情的なものにはしなかった。勿論、エリーさんの発案だ。
それと透け透けの衣装で、店内や村内を歩くことは厳禁にした。どこにでもいるお嬢さんが、春を売ると言うコンセプトで営業することにしているそうだ。後、行為の後に洗濯石を使っての避妊方法とか、病気の検査方法を教えた。エリーさんが、ベッドの上の作法について特別講師をしていたが、僕は入れて貰えなかったので、何を教えていたのか分からなかった。シェルも聞きたかったようだが、エリーさんに頼んで入場禁止にしてもらった。
なんだかんだで、いよいよ、娼館が完成した。8月1日がグランド・オープンの予定だ。
ついに、禁断の商売に手を出してしまいます。でも、特に悪いことをしている訳でも無く、ドエス商会に比べたら良心的です。