表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
164/753

第162話 北の大地のスタンピード

北の大地は、人間と亜人が仲良く暮らしている国のようです。

(6月10日、北の大陸です。)

  駐屯部隊の後方に、メレンゲさんが最初に着陸した。僕達の事を説明してから、ワイちゃんを降下させた。部隊長を始め、全ての兵士達は、始めて見る黒龍に驚いた。部隊は、亜人種と人間の混成部隊だった。1大隊1500名の12個大隊編成だ。3個大隊で1個師団と呼んでいる。総司令官はザイランド防衛軍陸軍のムンガ元帥閣下だ。


  僕達は、作戦司令部へ案内された。ムンガ閣下は、虎人だった。ザイランド王国には、グレーテル王国から行く道はない。大雪山脈が行く手を阻んでいるのだ。唯一、ザイランド王国に行くには、ヘンデル帝国の北の港からの海路しかない。しかし、北の海は1年中、時化が続き安全に渡るのは運次第だ。そのため、一般の交易船はない。まして、以前は亜人を差別していた帝国だ。亜人の多いザイランド王国では、交易を避けている状況だった。


  なので、ムンガ元帥閣下はグレーテル王国の人間に会うのは初めてだった。その者達が、いくら黒龍に乗っていると言っても、僕のような少年と、シェルのようなエルフの少女では戦力になる訳がない筈だ。そのため、最初は、何しに来たのかと言う態度だった。


  魔物討伐の援助に来たと言うと、


  「相手は、ゴブリンなどの低級な魔物ではないが、そなた達で大丈夫か?」


  と言った。僕は、ワイちゃんに、『炎のブレス』を、空に向かって撃ってくれるように、『念話』で頼んだ。大きな火柱が、上空500m以上に駆け上っていった。それを見たムンガ閣下は、腰を抜かした。ワイちゃんの側にいた兵士達は気を失ってしまう者もいた。空に浮かんでいた雲が消えてしまった。


  ムンガ閣下は、参謀たちと作戦を練り直すことにした。それまでの、正面突破に最大動員を掛ける作戦から、両右翼を部隊が担当し、正面を僕達が担当する事になった。僕は、ムンガ閣下に中央部の戦闘結果を見るまでは、両翼の部隊は、遠距離攻撃以外は控えて貰うようお願いした。


  会敵時間は、明後日のマルロクマルマルマとなった。この日は、駐屯地の外で夜営だ。夕食は、ムンガ閣下の招待だった。


  大きな野営テントの中には、ムンガ閣下と参謀、師団長の4人が集まっていた。メニューは、干し肉のスープとチーズ、乾燥黒パンだった。ワインも出たが、酸っぱいだけで、余り旨くなかった。


  次の日、進軍の合間に、兵士の稽古の相手をしてやった。と言うか、無理やり引きずり込まれた。僕を、女連れの黒龍使いと思っているみたいだった。訓練は、木刀や木槍での打ち合いだった。何時もは、柳の細枝で稽古をつけているが、ここには適当な木が生えてないため、よしの茎を切って剣代わりにした。


  それを見て、僕を笑い者にしようとしていた兵士達が、顔を真っ赤にして怒っていた。


  そんな事には構わず、葭の茎を左手に下げて、ゆったりと立っていた。僕が立ち会うと言うことは、部隊中に知れ渡り、ムンガ元帥閣下以下、大勢の観客が集まった。


  僕の相手をする兵士は、ムンガ元帥閣下の御前試合と言うことになったので、殊更、力が入っているようだった。


  稽古が始まった。最初の相手は、人間だった。僕は、相手の構えを見て明鏡止水流の2段相当と思い、構えはとらずにいた。審判の『始め』の号令で、相手が上段から打ち込んできた。素晴らしい速度だった。誰もが、僕の頭が割れてしまうと思ってしまった。僕は、左足を大きく踏み出し、相手の木刀を紙一重で避けた。避けられると思ってなかった相手は、木刀が大きく下まで流れてしまい、上半身が隙だらけだった。僕は、軽く相手の右手に葭の茎を当てて勝敗が決した。


  次は、木槍が相手だった。構えを見ると、4段相当だった。相手は、『始め』の声とともに、木槍の3段突きが僕ーを狙って来た。しかし、突いたのは、僕の残像だった。同じく、左に踏み出した僕が、木槍の中ほどを右手に掴んだ。もう、相手は動くことが出来なかった。そのまま、右手を、相手の手元に移動させて、相手の右手首を葭の茎で、ピシリとうち据えた。相手は、余りの痛さに、木槍を落としてしまった。


  次の相手は、木刀と木の盾を構えた軽装歩兵だった。5段相当だった。『始め』の声で、僕が大きく前に踏み出した。相手は、盾を上段に構えたが、胴がガラ開きだった。僕は、ゆっくり、相手の胴を叩いた。パチーンと言う大きな音を立てたところで稽古はおわった。


  皆、シーンとしていた。王国軍には、僕以上の剣士はいないどころか、足元にも及ばなかった。パチパチパチとムンガ元帥閣下が、一人、拍手をしていた。他の皆も、拍手をし始めた。


  それから、弓の試射を披露する事になった。50m以上先に、木製の標的を10個、適当に並べた。僕がシェルに『ヘラクレイスの弓』を、イフクロークから取り出して渡す。


  シェルは、火炎石を弓にセットして構えた。当然、矢は見えない。シェルが射る真似をする。


    ドビュビュビュビビュュビュビュビュビュビュ


  10本の炎の矢が、それぞれの的に向かって放たれた。


     ドゴーーン!!!!


  全ての的が、爆炎と共に消滅した。部隊のアーチャー達は、開いた口が塞がらなかった。50m以上先の的に当てるのさえ至難の技なのに、それが10本同時、かつ『地獄の業火』もかくやと思えるほどの威力。人外の技としか言いようが無かった。


  アーチャー部隊の将校が、『ヘラクレイスの弓』を、持たせてもらったが、1本の矢さえ引けなかった。シェルにコツを教わっていたが、スキルと魔力が足りないようだった。


  この日の夕食は、僕が皆を招待した。野営テーブルを6セット出し、ライティングで煌々と照らす。メニューは、カレーライスと鳥の唐揚げだ。当然、僕1人で準備する。シャンパンをキンキンに冷やし、赤ワインは、それなりに冷やしておく。オードブルに、生ハムとサーモンの薫製を準備していた。ワイちゃんも、6歳の女の子の姿になっていた。イフちゃんも実体化している。


  晩餐会が始まった。この国では初めて食べる料理らしく、皆、感動しながら食べていた。また、シャンパンもワインも、余りにも自国産のものとレベルが違うので、このワインの作り方を教えて貰いたいとお願いされた。しかし、僕の専門外だったので、その内、交易ができるようになったらと言うことにした。


  師団長と参謀の中に女性将校がおり、シェルとイフちゃんの履いているミニスカートの事を色々聞いてきた。『恥ずかしくないのか?』とか、『グレーテル王国では、皆、履いているのか?』と言う質問だった。


  シェルは、最初は恥ずかしいが、慣れると男達の眩しいような視線が気持ち良いと、女性にしか分からない答えを言っていた。


  食後、女性将校とシェルが、テントの中に入って行った。きっと、色々試着していたようだ。当然、イフちゃんも一緒だった。テントから出て来た時、女性将校達が紙袋を持っていたのは、絶対に、シェルが何点かプレゼントしたのだろう。女性将校達は、皆、ニコニコしていた。ああ、女って。


  6月12日の早朝、対戦が始まった。魔物の先頭部隊は、集団の中心に密集していた。先頭で、レブナントが瘴気のシールドを張っている。遠距離攻撃を防ぐためだろう。その後方に、ゴブリンソルジャーの大部隊だ。所々に、トロールを配置している。ゴブリンソルジャーは、その戦闘力の高さで、通常兵士5人が当たる必要がある。ゴブリンジェネラルやトロールは、1個小隊、30名で、レブナントは、1個中隊100名以上で、漸く倒すことができる。しかし、レブナントの魔法攻撃が先制されると、一瞬で全滅の可能性もある。そのレブナントが、先頭に100名は並んでいる。


  後方には、アンデッドの群れとリッチが多数だ。このレベルは、国家危機レベルだ。僕は、ヒゼンの刀を抜き、気を込めた。刀が、赤く光る。気を溜めたまま、敵の先頭が近づくのを待つ。100mの距離まで近づいた時、ヒゼンの刀の『斬撃』を飛ばした。


    シュバッ、ドゴーーーーーン!


  幅300mの赤い閃光が、敵の中心部に向かって迸る。遥か向こうまで、魔物が消滅した。僕は、魔物が消滅した先頭地点まで『瞬動』して、更に左右に聖の気を込めて『斬撃』を飛ばした。先頭左右のレブナント達が消滅した。これで、瘴気の遠距離攻撃を受ける危険が無くなった。


  左右の部隊から、先頭となったゴブリンソルジャーに遠距離攻撃が仕掛けられた。多くの弓矢が、空から降り注ぐ。ファイア・ボールやアイス・ランスが次々と放たれていく。シールドのない魔物達には、受ける術がない。


  しかし、左右の魔物達は、警戒して、僕の居るところに近づこうとしない。つまり、敵勢力が2分されたわけだ。


  僕とシェルは、空を飛翔しているワイバーンを仕留めていく。僕は、指鉄砲で、シェルは『ヘラクレイスの弓』だ。百発百中だ。3斉射で空の驚異はなくなった。しかし地上に降りたワイバーンも、毒ブレスが厄介なので、近づかないようにする。


  僕は、ゲートを開いて、シェルを部隊の後方に『空間転移』させた。これからは、僕一人で、殲滅ショーの始まりだ。僕は、ヒゼンの刀を納めた。左右のゴブリンソルジャーの群れに、上空から極大の光球を降り注がせる。


  光球は、地上部に触れると、熱爆発を起こして、中心部は、原子レベルで消滅する。その消滅の際に生じる熱エネルギーで次々と連鎖反応を起こし始める。不味い、このままでは、このエリア一帯が消滅してしまう。僕は、大量の氷雪を降り注ぎ、熱反応を抑え込んだ。その瞬間、大きな水蒸気爆発が起きた。僕は、ウインド・ストームで爆発力の方向を横にずらし、部隊に被害が行かないようにした。


  まだ、しぶとく残っている物がいる。アンデッドとアイアン・ゴーレムなどが、爆風を避けるために、伏せていたのだ。変に頭が良い。きっと、リッチ達の指示だろう。大勢は決したが、敗残兵処理がある。生き残ったリッチでも、大隊レベルで殲滅される可能性があるので、彼らが前線に移動してくる前に、掃討しておく必要がある。


  イフちゃんとワイちゃんに左右を頼み、僕は、中心付近の後衛にいる魔物を掃討することにする。ヒゼンの刀を再度抜き、右手にはベルの剣を抜く。久しぶりの二刀流だ。持つだけで、刃体が赤く光っている。今は、気を込めることを意識していない。そのまま、走り始め、目に付いた敵から、『斬撃』で首や胴体を飛ばし続ける。不用意に近づいた魔物は、2~3回切り刻まれる。


  戦闘開始から、1時間位立ったろうか。漸く、後続の部隊が、生き残っている瀕死の魔物達のとどめを刺し始めた。僕は、全てが終わったことを確認して、剣を納めた。

相変わらずチートでした。シェルさんも活躍しましたが、相手はリッチです。用心のために、下がらせたようです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ