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第160話 シェルのダンジョン・ショップ大繁盛

ダンジョンショップとは、ダンジョンに来る冒険者を相手にするお店のことです。

(5月20日です。)

  シズちゃんは、日の出と共に起き出し、中庭で剣の稽古をしている。僕も一緒だ。最初の30分は、剣を正眼に構えて、無心になる。その後ゆっくりと振りかぶるが、その意識を感じないようにする。素振りとは言えない、ゆっくりとした動きだ。無我の境地だ。周りのあらゆる存在が無になる。剣と、剣を構えてる自分が見える。5月だと言うのに、汗が吹き出てくる。剣が白く光っている。次に、明鏡止水流の12の型をゆっくり行う。力を入れず、気を感じながら、正しい動きをトレースする。次第に、剣が白い軌跡を描き始める。


  その後、学院に登校する。授業は、面白くない。特に、騎士道概論がつまらない。『騎士道とは、死ぬことと見つけたり。』って、何、死ななけりゃいけないの。絶対、嫌よ。ゴロタさんとなら良いけど。ゴロタさん、毎日ハッシュ村に行っているんだもの。なんか、つまらない。ああ、お父さん、早く結婚、認めてくれないかな。学院を卒業するのを待っていたら、お婆ちゃんになっちゃうわ。


  そういえば、ジェイさん、学院やめるんだって。寿退学?相手は、あの、実習の時に告白していたジャガイモ君ね。お似合いだわ。おめでとう。ジェイさん。









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  ハッシュ村は、人口2000人程度の小さな村だった。その村に、100人近い冒険者が滞在しているのだ。後、近隣の村から、新しく出来たレストランを目当てに大勢の若い男達がやってくる。高い駅馬車代を払っても来るのだった。今は、臨時駅馬車だが、この調子だと、村の悲願でもある、定期駅馬車になるかも知れない。


  新しく出来た旅館は、『エーデル亭』という。併設されているレストランは、『シャトー・ワイス』という名前だ。客室が40室だが、ほぼ満員だった。急遽開設した民宿もお客さんが入っているようだ。後、元からあった、食料品店や雑貨屋も盛況だった。


  村の中を、イチローさん達がパトロールしてくれている。村の若い衆も、自警団を組んでパトロールしているが、イチローさん達には全く敵わない。耳と目が猫並みなのだから、当たり前である。ギルドも忙しかった。冒険者登録と報酬の支払い、回収品の買い取りなどと雑多な仕事が多い。新規冒険者の登録事務は、ヘレナさんが専門にやってくれている。報酬支払いは、テルがやっているが、大きなお金を扱った事が無いのでモタモタしている。それでフミさんとレミイさんが手伝っているという訳だ。


  マリちゃんは、回収品の買い取りだが、鑑定ができないので、白薔薇会のお姉さんにも手伝って貰っている。白薔薇会のお姉さんが鑑定した回収品について、マリちゃんが換算表で値付けをしているが、値段に不満を持っていても、白薔薇会のお姉さんたちがギロリと睨むと一瞬で決着してしまうのだ。


  白薔薇会は、2つに分けて、1チームは、ダンジョンに潜り、もう1チームは、ギルドの手伝いだ。手伝いのうちの2人は、ダンジョン入り口で、見張りだ。ダンジョンからの依頼請書を確認している。この見張り所は、簡単なものだったが、一時預かりの倉庫や、簡単な装備品販売カウンターを作らなければいけない。後で、バンブーさんに追加注文しなければと思う、僕だった。


  旅館の清掃や食事の準備は、村のオバサン達のアルバイトだ。アルバイト代は1時間、大銅貨1枚だ。3人、雇っているが、もう少し増やさないといけないかも知れない。食材は、僕が大量に持ち込んでいるので、不足することは無いが、いつまでも僕の収蔵品というわけにも行かない。近隣の村へ、買い付けに行かなければと思うビビさんだった。


  ギルドのレストランは、長蛇の列が出来ていた。ウエイトレスが、今まで見たことも無い刺激的な姿で、店内を歩くのだ。良い匂いもさせている。また、喋り方も、鼻にかかった甘い声だ。食事を取る客はほとんど居ない。1杯、銅貨60枚の紅茶の客が殆どだ。お陰で、20分で、一旦清算だ。だが、お釣りを渡す時に、手を握りながら、渡してくれるので、皆、大銅貨で払ってくれる。その代わり、お釣りをチップでくれる人が居ないのが残念だった。エリーさんは、考えてしまった。チップをくれたお客さんに、キスをしてもいいが、単価が安すぎる。最低でも、大銅貨1枚で、ほっぺにチュッだ。しかし口には、絶対にしない。口にするのは、マブだけだ。エリーさんは、店を何か間違えているようです。


  村の女の子が3人、この店で働いていた。歩き方は、訓練しているので、何とか出来るが接客が上手く出来ない。座っている男の人の目線が、自分の胸や股間に集まっているのを意識して、顔が真っ赤になっている。後、お釣りを渡す際に、いつまでも手を離さない人がいる。エリーさんが、追加料金を貰いますよと言って、漸く離している。困ったお客さmmが多い。


  ダンジョンは、宝の山だった。1階からゴブリン・ソルジャーが出るのだ。ゴブリン・ソルジャーからは武器屋に売れる防具が手に入る。魔石も、通常のゴブリンの5倍の単価だ。それに、全く探索されていないので、壁から隠しアイテムや鉱石が出てくることがある。鉱石も、銀鉱石が多いので、冒険者達は、鉱夫時々冒険者だ。


  ダンジョンの地下2階層以下は、強力な魔物が多い。既に、全滅したパーティーもいくつか出たそうだ。『C』ランクパーティーは、1階層専従員になっている。その中で、目覚ましい活躍をしているのが、白薔薇会のメンバーだ。魔道士中心のチームだが、ガンガン攻略している。現在、5階層まで行っていると言う噂だ。魔物のドロップ品も多く、稼ぎが良いみたいだ。


  ダンジョンばかりではない。周辺の森も薬草の宝庫だ。王都近辺では、採取できなくなった薬草が多い。しかし魔物もそれなりだ。採集と討伐が半々になっている。魔物、時々採集と言うクエストが多い。薬草の知識があれば、ダンジョンよりも効率が良いかも知れない。噂を聞いて、冒険者達が集まって来ている。これ以上、来られても泊まるところが足りない。村人の中には、農家をやめて、畑に旅館を建てようと計画している者もいるので、バンブーさんを紹介しているシェルさんだった。勿論、紹介料をバンブーさんから貰う約束になっている。


  夜、ギルドのレストランでトラブルがあった。酒に酔った冒険者が、ウエイトレスに、隣に座って酌をしろと言うのだ。そんなサービスはしていないとエリーさんが行っても、聞く耳を持たない。クルリさんが、ギルドのカウンターの中から出て来た。男の前に立つが、ミニスカメイド服なので威圧感ゼロだ。しかし、クルリさんが、冷めきった目で見ながら、


  「お客さん、火傷と切り傷、お好みをどうぞ。」


  白薔薇会の名前は鳴り響いている。通常は、この一声で大抵の冒険者は引っ込むのだが、運悪く、この男は冒険者では無かった。


  「えーっ?お前、何を言ってるんだ。なんなら、お前が相手をするか。」


  男は、クルリさんの豊かな胸を触ろうとした。クリスさんが、さっと躱して、『ポン』とミニ火球を男の目の前で破裂させた。男の前髪と、眉毛とまつ毛がなくなった。吃驚した男は、腰を抜かして、その場でへたり込んでしまった。クルリさんが、


  「大丈夫ですか。ズボンが濡れてますわ!」


  思いっきり、可愛い声でからかう。たしかに、男のズボンには、黒いシミが広がっている。


  「コレは特別サービスよ。」


  男の頭頂部を、ウインド・カッターで平らに削る。男の髪が、バラバラと落ちて来た。慌てて、頭頂部を確認する男。もう、カッパ状態だ。男は、這って逃げようとするが、逃がさない。前に立ちふさがるクルリさん。でも、その位置だと、男からパンツが見えてます。そんな事は気にしないで、仁王立ちになって、


  「お帰りですか?お代金は銀貨1枚になりまーす。」


  しっかり、割増しのお代を頂いたクルリさん。


  「ありがとうございます。またのご来店をお待ちしております。」


  と言って、男を店の外へ蹴り出していた。他のお客さん達は、シーンとしている。間違っても、店の女の子には手を出さないようにしよう。


  『シャトー・ワイス』も、てんてこ舞いだった。夜になっても、お客さんが引かない。この店では、紅茶だけのオーダーは受けていない。必ず料理を注文しなければならないのだ。また、アルコール類は、ワインのみで、グラスワインしか提供していない。そのほかに、特別サービスがあって、大銅貨5枚で、女の子が隣に座ってくれる。『いつも貴方と一緒』と言うサービスだ。それで、料理をアーンして食べさせてくれる。このサービスが、人気があり、3分の1のお客さんが注文してくれる。当然、料理は別だ。


  気に入った子の指名制度があり、指名料は、別に大銅貨2枚だ。ビビさんは、店が落ち着いたら、旅館の方を見なければならない。部屋を取る冒険者は、ある程度、汚れた状態で来るので、注意書きを説明する。怪我をしている冒険者は、教会で治癒を受けてなければ宿泊を受け付けない。後、必ず宿泊料は前払いだ。ツインで1部屋銀貨1枚、全て温水シャワー付きだ。かなりお安い設定にしている。特別室は、ツインが1部屋、ダブルが1部屋のコンビでバス付きだ。銀貨4枚を貰っているが、この特別室から埋まっていく。このダンジョン、よほど実入りが良いみたいだ。


  明日から、『シャトー・ワイス』では、シャンパーンを提供しよう。ボトルで、キンキンに冷やした銀のバケツに氷を入れてお酌サービス付きだ。大銀貨1枚半にする予定だ。


  ビビさんは、お店の方向性を完全に間違えています。


  ガチンコさんは、何もすることがなかった。店の配置から値付けまで皆、シェルさんがやってくれた。ガチンコさんは、僕が今まで溜め込んでいたドロップ品の武器・防具や冒険者が持ち込むドロップ品の武器・防具を鑑定するだけだった。ガチンコさんも自分の作刀の剣も出していたが、見た目が地味な剣は、誰も見向きもしなかった。一番人気は、ゴブリン・ソルジャーがドロップするミスリル・ソードだ。ガチンコさんが言うには、なまくらのなんちゃってソードだが、買う人が多いらしい。


  結構、高い値段を付けるが、それなりに売れている。こんな剣より、ガチンコさん作刀の『黒鋼の剣』の方が切れるのに、誰も買わないのだ。


  シェルさんは、忙しかった。毎日の収益を計算するのに、時間を取られてしまっている。1日の利益は、ダンジョンレストランのラビット亭が大銀貨3枚、旅館エーデルが大銀貨5枚、併設レストランのシャトー・ワイスが大銀貨4枚だ。武器屋は、銀貨2枚の赤字だった。売却益よりも買い入れ額の方が多いのだ。しかし、赤字額も想定の範囲内だった。これに、ギルドからの分配金があるので、全体としては、かなりの黒字だった。この調子なら、早い時期に、初期投資の回収が出来るはずだ。

やはり、予想通りの大盛況でした。

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