第159話 兎人の村 エリーが死にそうです。
エリーは、とても危ない状況です。抗生物質が無い頃は死の病でした。
(4月30日です。)
エリーは、家の中で寝ていた。以前と変わらず美人さんだったが、顔色が悪く、痩せていた。僕を見ると、起き上がろうとしたが、すぐに咳き込んでしまった。寝間着がはだけて、胸が見えたが、相変わらず大きなオッパイだった。
サリーが、涙目になりながら、『ラビット村には、お医者さんはいないし、隣町まで行って見せるだけのお金も無いし、ずっとこんな調子なの。』と言った。エリーには、寝たままにして貰う。手を握ると、熱があるのか、暖かかった。額に手を当てると、かなり熱かった。エリーは、涙を浮かべて、『会いたかった。もう決して会えないと思っていた。』と言った。掛け布団を少し剥がし、エリーの胸に手を当てた。乳首が硬くなってきたが、そこは無視した。
手のひらに瘴気に似たものを感じた。次に、下半身の大事な所に手を当てた。前の仕事で、悪い病気を貰っていないか調べるためだ。そこからは、瘴気は感じられない。そっと手を離すと、残念そうな顔をしていた。僕は、熱冷ましと、殺菌の薬草を錬成した。1か月分作って、紙に包んでおく。その内の1つをエリーに飲ませた。
次に、またエリーの胸に手を当てた。聖なる力を流し込む。胸が温かくなる。乳首が硬く立ってきた。気持ちが良いのだろう。ずっとそうしていたら、声を上げてきた。いや、それ、違うから。これ、治療だから。ようやく、熱が収まった。もう大丈夫だろう。胸の中の悪いものは無くなった筈だ。エリーの全身を撫でて、検査をする。首筋から、腕、脇腹、腰、太腿と調べていく。何処にも瘴気はなかった。手を洗って、部屋に戻ったら、サリーがキスをしてきた。本当はお姉ちゃんがしたいんだけど、胸が悪いから私がしてあげると言ってたが、キスをしたいのは絶対にサリーだから。
夕方、エリーの母親メリーさんが帰ってきた。人間の僕を見てビックリしていたが、サリーが説明してくれた。僕が、『来月、オープンするギルドのレストランを経営して貰いたい。』と言ったら、二つ返事で了解して貰った。村の若い子も何人か連れてきて貰うことも了解して貰う。
当面の準備費用として、金貨1枚を渡すと、メリーさんから、『前借金か?』と聞かれた。嫌な思い出があるのだろう。当然、『貸すのではなく、あげるのだ。』というと、メリーさんが涙を流しながら、『今日はここに泊まっていってほしい。』と言った。しかし、その目に感謝以外の女の目を感じたので、丁寧に断って帰る事にした。父親つまりメリーさんの夫は、去年、病気で亡くなったらしい。危ない。危ない。
帰り際、サリーが、またキスをしてきた。『今度は自分の分だ。』と言って下半身を押し付けてきたので、無理矢理離れた。それを見ていたメリーさんが、『自分もお別れのキスを。』と言って抱きついてきた。押し倒しそうな勢いの激しいキスだ。この家って、親子揃っておかしい。
屋敷に戻ってから、シェルにエリーの事を話したら、屋敷に呼んで、養生して貰う事にしようと言ってくれた。直ぐにラビット村のエリーの家に行って、事情を話したら、 メリーさんも来るという。『畑があるのに。』と言ったら、自分の畑ではなく、他人の畑を小作しているだけだそうだ。メリーさんの家の畑は、亡くなった夫と、エリーの薬代に借りた僅かなお金のかたに、取られてしまったらしい。簡単な身の回りの物を持って、皆で屋敷に『空間転移』をした。
屋敷の部屋は、取り敢えず、フミさん達の隣の部屋にした。シェルさん達は、3人を歓迎してくれた。エリーのやつれた姿に、涙を浮かべながら、ゆっくりして、早く病気を治しましょうと言った。夕食の時、お風呂から上がったメリーさんを見て吃驚した。エリーさんの双子と言ってもおかしくない。ラビット村では、農作業から帰ってきたばかりだったので、薄汚れていたし、髪もボサボサだったが、今は、風呂上がりの肌が上気して輝くばかりだった。白い髪の毛は、頭の上で丸めているが、うまく耳の間で丸めていた。
メリーさんの年は、33歳だが、兎人の特徴らしい。60歳位になって急に老け込み、70歳まで生きるのは珍しいらしい。だから、早熟で、現役が長いらしい。流石に、ミニスカートは、履いていなかったが、明日には履いているかも知れない。シェルが、皆を紹介した。第1夫人から第3夫人と婚約者、婚約者候補そして白薔薇会の皆さん、イチローさんとサクラさん達、後、ジェーンさんにフミさん、レミイさんだ。
僕が、既に数人と結婚している事を知ったメリーさんが、色っぽい目線で僕を見ていた。あれ、サリーさん、何か強い決意が目に現れてますよ。シェルが、母親の視線に気が付いて、僕をジト目で見ている。僕は、何もしていません。少ししか。その夜、正座で、全てを白状させられました。マリちゃんの事まで。
翌朝、妻達の緊急会議が開かれた。当分の間、僕が移動する場合は、シェルかクレスタを連れて行く事になった。エーデルは役に立たないので除外となった。基本的に、エーデルは、自分が気持ち良ければ、後はどうでも良いらしい。
翌日、シェルさんがエリーを診療所に連れて行って詳しく見てもらったら、どこも悪くないそうだ。シェルが、今、飲んでいる薬を見せたら、薬師が『どこで手に入れたのか。』と聞かれた。どうやら、かなり高価な薬らしい。1回分で、銀貨5枚分もするそうだ。それを聞いたシェルは、新しい商売を思い付いたようだ。僕とクレスタは、森の入口からダンジョンまでの道を作っていた。僕が、ウインド・カッターで、森を切り開き、ファイアで、切り倒した木を灰にする。クレスタが、地面をならして整地し、表面を固くする。半日で、馬車がすれ違える道が出来た。
5月10日、旅館やレストランの就職希望者の面接を行った。ビビさんとエリーさんが面接官だ。旅館のレストランに5人、旅館の運営に4人、ギルドのレストランに5人を雇う予定だ。既に、エリーさんの村から、3人とサリーが決まっているので、残り10人を採用する。応募者は、23人だった。12歳以下と25歳以上を足切りしたので、残り14人から選ばなければならない。皆、ナイスバディの美人さんばかりだった。
募集要領を見たら、『容姿端麗』条項があった。女性って、その条項に憧れるらしい。この条項はビビさんが付け加えたらしい。それぞれの施設ごとに採用したら、落選した子が、僕を見ながら泣いている。可哀想だったので、なんとか仕事を探してやる事にしたのだが、結局、全員採用となってしまった。
その子達は、採用が決まると、ニコニコ笑いながら、お互いに抱き合っていた。嘘泣きだった。
旅館の従業員達には、ビビさんが、手でハートマークを作る練習をしていた。また、喋り方も鼻にかかった声を出すようにと厳しい練習が続いた。
ギルドのレストランに採用になった子達には、ピンヒールの靴が配布された。銀のお盆を左手の指3本で、底から持って、真っ直ぐ歩く練習だ。エリーさんは、厳しく『顎を引いて。』とか、『ガニ股。』と叱っていた。歩き方にもコツがあって、お尻を左右に振りながら歩かなければ行けないそうだと。
料理を作るオバサンは、村のオバサンがアルバイトで来て、大量に作り置きしてくれている。
エリーさん達は、四角い箱に入れた魔火石で温めるだけだった。メニューの値段は、旅館の料理よりも、銅貨10枚分安くしていた。既に、テルとマリちゃんも来ている。宿舎は、今は民宿を利用しているが、ギルドの2階と武器屋の2階に従業員宿舎が出来れば、そこに住むことになっている。
工事は急ピッチで進んだ。ヘレナさんは、工事の指揮と、什器の準備、それに依頼の調整のためと大忙しだった。ハッシュ村周辺の依頼は、薬草の採取か鉱石採取位しか無い。後は、駅馬車の警護位だった。メインはシェルダンジョンの探索とシェルの森の魔物討伐だ。
開業1週間くらい前から、続々と冒険者が到着してきた。村の旅館と食堂は、直ぐパンクした。溢れた冒険者は、村外に野営を始めた。村長達は、村の警備を僕にお願いしてきたので、イチローさん達を派遣した。シャトル馬車と4台分準備し、馬丁と御者は村から採用した。
最後の仕上げだ。クレスタと一緒に、ダンジョンまでの舗装だ。馬車2台がすれ違えるだけの幅の道を均して固めて行く。村からダンジョン入口までの10キロは、かなりの作業量だった。クレスタが、疲れ切っていた。魔力を大量に使ったためだ。お礼のキスをしながら、魔力を流し込んだ。普通に手を握るだけでも魔力を流し込めるのだがお礼だから。
明日は、開業日だ。既にテルとマリちゃんも来ている。ギルド職員や旅館従業員用の宿舎は、一杯だった。
-----------------------------------------------------------------
(6月1日です。)
いよいよ開業だ。旅館の女子従業員は、皆、ミニスカセーラー服だ。例の『いらっしゃいませ。ご主人様。』のポーズ付きだ。村の娘達は、意味が分からないまま、ポーズを取っている。料理は、ちょっと高めだったが、朝から冒険者で一杯だ。いや、冒険者ではない村の男達も来店している。ギルドのレストランは、兎人が殆どだ。ウエイトレスの服装は、網タイツにぴったりした黒のレオタードだ。村の娘3人は、ウサ耳の付いたカチューシャを付けている。
娘たちは、最初は、顔を真っ赤にしていたが、その内、平気で歩くようになった。丸い銀のお盆で、前を隠しながら、練習した歩き方で、歩いているのだ。エリーもサリーも同じ格好だ。まさかと思ったが、メリーさんも同じ格好だった。まあ、誰もメリーさんの歳を知らないからいいんだけど。
ヘレナさんは、ギルドマスターなのに、やはりレオタード姿だった。当然、マリちゃんも同じ格好だ。このギルド、絶対おかしい。テルは、顔を真っ赤にしながら、皆の胸と股間を見つめている。時々、女の子達に『何処見てんのよ。エッチ。』とからかわれている。
武器屋兼道具屋は、暫くは、ガチンコさんと村の女の子に手伝って貰っている。女の子は、面接で除外された12歳の子だったが、とても不満そうだった。しかし、12歳では、ギルドや旅館では働けない。あのレオタード姿にあこがれてはいけません。
ビビさんは、期待通りの活躍です。ゴロタの領主としての活動は、うまく行くのでしょうか?