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第157話 ああ、高校3年生。

今日の話は、ゴロタは出てきません。シズちゃんとフランシスカちゃんの学生生活をトレースします。

(王立騎士学院です。)

  シズは、とても、とても悔しかった。昨日からゴロタさん達はハッシュ村の魔物討伐に行っているのに、私とフランちゃんはお留守番で学校だったからだ。あ、フランちゃんというのは、フランシスカちゃんのこと。二人だけの呼び方なの。


  騎士学院は、校長先生との約束通り、女性騎士だけのクラスにして貰ったんだけど、7人しか居ないの。3年生は、全部で300人だから、本当に男地獄。あの男子達って、頭の中、あの事しか考えてないみたい。階段を上れば、下でしゃがみ込む子がいるし、更衣室なんか、壁が穴だらけ。大体、こんな制服じゃあ、どんなに覗いたって見える訳無いのに。


  そのくせ、実技になると、からっきしだし。何故、みんな私と稽古したがらないの。他の娘達は、行列が出来ているのに、私には一人も来やしない。この頃は、先生まで、私と稽古したがらない。授業料返せって。あ、払って無いか。


  女子生徒も、なんか変。一昨年、新入生で入学した時は12人いたらしいのだけど、この2年で6人も辞めたの。みんな、彼氏が見つかったからって辞めたのよ。何、それ。今、残っているのは、本当に騎士になりたいか、筋肉マッチョのゴリラ女だけ。ああ、剣の道を極めるは厳しいわね。


  そういえば、午後、ダンジョン実習があるらしいわ。ゴロタさんに貰ったミスリルソードのデビューよ。楽しみだわ。







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(王立魔法学院です。)

  フランシスカは、学校が嫌いだった。毎日早く起きなければいけないし、お昼寝は無いし。給食は美味しいけど、それだけだし。お代わりはないし。授業だって面白くない。世界の根源とか、力の流れとか、全く分からない。大体、鳥が空を飛ぶのに、飛ぶ原理を知っている訳無いじゃない。それと同じでしょ。魔法なんて、バーッと溜めて、ドーンと解放、それだけじゃない。ああ、私もゴロタ君と一緒にダンジョン行きたかったな。


  大体、まだ、入学祝い貰って無いのに。何くれるのかな?お菓子?ケーキ?美味しいのがいいな。婆やがくれるお菓子って、余り美味しく無いの。米の粉を焼いたのとか、甘く無いし。そうだ、ケーキにしよう。大きいケーキ、ゴロタ君に頼んでみよう。


  あ、今日の午後は、実技で近くのダンジョンだって。嫌だな。ダンジョンって、なんか臭いのよ。嫌な臭い。お屋敷に帰りたいな。でも、またサボったって婆やが怒るし。







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  今日の午後は、騎士学院と魔法学院の合同実習だ。王都近くの枯れたダンジョンに潜る。チームは、騎士と魔導士混成5名のパーティーを組む。シズとフランシスカは、同じパーティーになった。王宮騎士と魔道士が1名ずつ護衛兼指導員で付いてくれる。シズのパーティーは、女性ばかりだったので、指導員も女性だった。


  「シズちゃん、授業で一緒になるなんて初めてだね。エヘエヘ。」


  「うん、フランちゃんは、攻撃魔法持っていないんだから、後ろにいなよ。」


  「うん、わかった。頑張ってね。」


  同級生達は、不思議に思った。この美少女特待生2人が、どういう関係かを。勿論、2人が同じ男の子の婚約者同士という関係は、知る由も無い。勿論、学校に来る時は、婚約指輪は外している。ダンジョンに入って行く。シズが先頭、フランシスカが最後尾だ。指導の騎士と魔道士の女性2人は、少し離れて尾いてくる。2人を見て、高校3年生にしては、随分幼いなあと思っているようだ。残りの3人は、騎士学院生徒2人と魔導士学院の生徒1人だ。


  ダンジョンに入ると、皆、魔光石を取り出して、光らせている。『ライティング』の魔法の方が使いやすいのだが、魔力が勿体無いので、魔光石を使うのだ。フランちゃんは、すかさず『ライティング』で7個の光球を出して、それぞれの頭上に光らせた。一度に7個の『ライティング』など、誰も見たことが無い。


  フランちゃんは、エヘエヘ笑っている。何も考えていないようだ。


  明るいダンジョン内を進んでいく。前方にゴブリン3匹を発見。向こうも気が付いたのか、こっちへ向かって来る。魔法学院の子、エルさんがファイア・ボールを撃つ。先頭のゴブリンの前で破裂する。それだけ。ダメージはなさそうだ。次を撃つために、詠唱に入る。騎士学生の1人、ケイさんはアーチャーだ。ギリギリ弓を引きしぼっている。ゴブリンの早い動きで、狙いが定まらない。射った。狙いすぎて、引きが弱くなっていた。ヘロヘロ矢が飛んで行く。避けられた。もう1人の騎士学生ジェイさんは、剣士だ。前に出ているが、腰が引けている。あれでは、ゴブリンの餌か強姦相手になってしまう。あ、剣を落とされた。慌てて、シズちゃんの方に逃げて来た。


  騎士さんが、支援のため、剣を抜こうとする。だが、その前にシズちゃんがダッシュして行く。まだ、剣を抜いていない。ゴブリンの手前で、急に進路変更して、脇を通り過ぎる。それしか見えなかったが、先頭のゴブリンの胴体が、上下に分かれていた。次のゴブリンは、頭が飛んで行った。最後のゴブリンは、逃げようとするところを背中から左右に分けられてしまった。シズちゃんは、すぐ、魔石を取り出し、ジェイさんとケイさん、そしてエルさんに渡していた。


  騎士さん達は、吃驚すると共に、あの剣に興味を持った。大した力を入れていないようだが、ゴブリンの胴体を左右に真っ二つにする剣なんて見たこともない。それに、あの子の友達のフランという子、この子も凄い。魔物が現れたのに、全く動ずることなく、エヘラエヘラ笑っているだけ。一体、何しに来たんだろう。


  やはり、フランちゃんの残念さは変わりなかった。


  2階層に降りる階段の手前に、他のチームがたむろしていた。事情を聞くと、2階層の入り口付近にゴブリンソルジャーがいたので、戻って来たそうだ。何組かは、帰っていないそうだ。え、それって不味くない?


  シズちゃん達は、取り敢えず潜る事にした。下に降りた2階層は、ゴブリンソルジャーの群れだ。


  騎士さん達は、あれ、おかしいなと思った。このダンジョンは枯れきっているはず。上位の魔物は出ず、ゴブリンソルジャーみたいな中位だって単発で出現するはずだった。皆に、退避を命じようとしたら、既に戦闘が始まっていた。まあ、向かっているのはシズという子だけだったが。


  しかし、ゴブリンソルジャーの群れは、指揮官の上位ゴブリンが居るはず。このパーティーでは、全滅もおかしくない。騎士さんは剣を抜き、魔道士さんは詠唱を始める。エルさんのファイア・ボールが炸裂する。周囲が明るくなっただけだが、周りがよく見えた。不味い。30体はいる。


  シズちゃんが敵の手前で、剣を横に振る。白い閃光が横一列で走る。先頭付近のゴブリンソルジャーが10体位、胴体を分断された。『斬撃』だ。更に加速する。もう動きを追い切れない。青白い光の軌跡を見るだけだった。


  指揮官のゴブリン・ジェネラルも他のゴブリンと同じ運命を辿った。殲滅まで、あっという間だった。後ろで、フランは、両手で拍手していた。あれ、ワンド持ってなかったっけ?何処にしまったの?フランちゃんを除いた皆で、魔石を回収した。シズちゃんは、ゴブリン・ジェネラルの魔石だけ回収した。防具と剣は邪魔になるので、欲しい人が持てば良い。結局、騎士さん達が持つ事になった。


  それより、騎士さん達は、皆にこのダンジョンの異様さを説明した。これは、実習の範囲を超えていると。その事は、少し先に行って、直ぐ分かった。


  先行のパーティー3組が全滅していた。女性は、いなかったので、最悪の事態は避けられたが、3名は死亡していた。残りの18名も酷い重傷だ。


  フランちゃんが、両手を大きく広げる。真っ白な光が辺りを照らす。物凄く眩しい。怪我人が、みるみる回復して行く。5分後、怪我人が居なくなった。信じられない。大神官級いやそれ以上の『治癒』能力だ。騎士団や魔道士団にもヒーラーはいるが、そんなレベルではなかった。一度に18人、とんでもない能力だ。


  フランちゃんは、疲れたのか、オヤツのお菓子を食べ始めた。怪我人達を見る事は無かった。遺体の搬送は、怪我から回復した引率の騎士さん達に任せて、階層を下って行く。 


  3階層は、森林エリアだった。出現するのは、トレントと食人花だ。先頭のシズさんは、地面と頭上から伸びてくる触手を、見もしないで切り落として行く。途中、食人花の匂いがして来た。シズちゃんは、剣に気を込める。剣が赤く光る。そのまま、匂いの方向に剣を振る。『地獄の業火』が、剣の先に伸びて行く。真横に渦を巻きながら伸びて行く。木や草が消滅して行く。


  幅30m、奥行100mの焼け跡が出来た。


  階層ボスは、ウッド・ゴーレムだ。力が異様に強い。シズちゃんが、手のひらを振った。『地獄の業火』が、火柱となって、ウッド・ゴーレムを覆う。動かなくなった。


  4階層も森林エリアだった。しかも、頭上もビッシリ木の枝が覆っている。頭上から、何かが降ってくる。山ヒルだ。しかも、大きい。手のひら位の大きさだ。それに、あの音。ガラガラ、ガラガラ音がするが、姿が見えない。シズちゃんは、容赦がなかった。『地獄の業火』とファイア・ボールの重ね技だ。100m位先で大火球が膨れ上がる。まずい。あれでは、此方まで被害が出る。皆、逃げ出そうとする。


  大火球が爆発する。全てを焼き尽くす業火だ。業火の端が此方に向かって伸びてくる。その時、シズちゃんが『斬撃』を飛ばす。火球の真ん中を、火柱が真っ直ぐ向こうに伸びて行く。その衝撃で、火球は二つに割れて、こちらには来なかった。


  森林エリアが焦土エリアに変わった。煙が酷いので、一旦上の階に避難する。


  もう戻る事にした。実習にならない。今度は、シールドと水魔法使いを連れて来ようと思った騎士さん達だった。


  地上に上がると、さっきの死にかけていた騎士学生達が待っていた。シズちゃん達にお礼が言いたいそうだ。1人の騎士学生が前に出て来た。ニキビだらけの顔を真っ赤にして、右手を前に出してきた。


  「一目見て決めました。僕とお付き合いして下さい。」


  頭を深々と下げている。シズちゃんは、後ろのジェイさんを前に立たせる。ジェイさんは筋肉マッチョ女だ。しかし、顔が真っ赤だ。直後、男子学生の手を取って、自分の大きく分厚い胸に当てた。その後の事は知らない。シズちゃんは、フランちゃんと一緒に屋敷に戻ってしまった。

それなりに学生生活を楽しんでいるようですが、チートぶりは変わりません。ゴロタの所には、基本、普通の女の子は居ません。将来の戦闘に備えて、強力な助っ人を育成しておく必要があるからです。

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