第156話 シェルの18歳の誕生日。
シェルは、18歳になりました。でも、まだまだ子供みたいです。
(4月23日です。)
今日は、シェルの18歳の誕生日だ。少し胸が膨らんでいるかなとは思うのは気のせいだろう。まだ完全に子供体型なのはハイエルフの種族特性らしい。
今日は、市内のレストランを貸し切っている。屋敷のメンバーに、ダッシュさん、ジェリーちゃん、それにワイちゃん一家を招待する。今日は、セバスさん達使用人さん達もお休みで、パーティーに参加して貰う。
料理はディナーコースだ。バイオレットさんには、2人前を頼んでおく。ブラックさんは、最初の乾杯以降は、醸造アルコールを飲んでもらう。火が付きそうなほど度数の高いものだ。ほぼ燃料だ。
バイオレットさんは、紫色のロングドレスだが、左脇のスリットが腰のところまで入っていて、歩くと黒のレースのパンツが見えてしまう。そのドレス、誰が選んだのですか。
ブラックさんは、黒に金の刺繍の入ったロングドレスだが、胸のVカットが大きく、豊満なオッパイが溢れそうだ。当然、ノーブラだ。ああ、この龍達は何を考えているんだろう。イチローさん達男連中は、チラチラ二人を見るだけで、正視出来ない状況だった。皆さん、彼女達の真の姿、知ってますか?
パーティーは、滞りなく終わった。シェルは、何時もの通り酔っ払っていたので、お姫様抱っこで、店のトイレからシェルの部屋に『空間転移』する。
服を脱がせると、寝返りをした。ブラはしていない。必要ないのだ。パンツも脱がせて、お風呂に連れて行く。ユックリお風呂に浸かっていると、両腕を回して抱きついてきた。もう、酔いは醒めているようだった。
「ヴァイオレットさんみたいに胸の大きい方が好き?」
僕は、首を横に振った。
「じゃあ、私みたいに、胸がない方が好き?」
本当は、少しはあった方がいいと思ったが、首を縦に振る。
「良かった。」
キスをしてくる。無い胸を撫でる。肋骨が当たるが、撫で続けた。この日の夜も、甘い夜だった。
次の日、森のダンジョンを完全攻略することにした。ノエルとビラも参加することになっている。大学は、実習という事で、出席にして貰ったそうだ。その代わり、レポートを提出しなければならないそうだ。
ダンジョン5階層まで『空間移動』する。クラーケンが復活していた。やはり、ダンジョンマスターを討伐しないと、魔物の復活が早い。ビラが、電撃を流して、瞬殺した。塩水は、伝導率が高いので、あっという間に黒焦げになった。
6階層は森林エリアだった。食人花とハーピーの園だった。相変わらず、ハーピーは、赤黒い股間を広げて見せるが、女性中心のパーティーに効果があるわけなく、エーデルの指鉄砲で落とされ、火柱に焼き尽くされていた。食人花は、甘い匂いで誘ってから触手を伸ばすのだが、クレスタのウインド・カッターでボロボロにされていた。6階層のボスはリッチだった。近づくと同時に攻撃されてきた。早い。シールドを張るのが一瞬でも遅れていれば、直撃を受けていただろう。リッチは、奇妙な笑い声を上げながら、火球を次々と撃ってくる。シールドが持たない。破られそうだ。クレスタが、風のシールドを張ってくれた。ビラもシールドを張る。
ビラが、特大のホーリーランスを空中に浮かべる。リッチの見えない顔に恐怖の表情が浮かぶ。
ドゴーン!!
リッチは、消滅した。
7階層は、トロールのゾンビだった。大分、腐敗が進んでいる。棍棒を持ち上げると、ダラダラと嫌な汁が垂れてくる。それと臭いがきつい。気を失いそうだ。いや、ビラとエーデルが、もう貧血で倒れてしまっている。ノエルが。特大火球でトロールゾンビを包み込む。匂いと共に消え去った。後は、簡単、最初から大きな火球を出しておいて、進路に出てきたトロールゾンビを消して行くだけだった。
7階層ボスは、3人のリッチだった。これは、厄介だ。攻撃力が半端じゃ無い。間断なく攻撃が続く。しかも火、氷、風の混合だ。火炎の暴風がシールドに突き刺さってくる。僕は、シールドの重ねがけをしておく。上から、アイス・ジャベリンが雨あられと降ってくる。不味い。爆発性の氷のヤイバだ。最大シールドで防ぐことにする。ビラとノエルが、ホーリーランスを、20本以上打ち込んでいる。僕は、『ヒゼンの刀』に聖なる力を込めて、斬撃を放った。漸く、攻撃が止まった。リッチは、上半身のみになっても、笑っている。ホーリー・ボンブで聖なる大爆発を起こし、ようやく殲滅した。
8階層は、巨大な黒のGだ。隊長が3m位はありそうだ。女性陣は、7階層に戻ってしまった。こいつらは、火に弱い筈だが、どうも違うようだ。よく見ると、瘴気のシールドを纏っている。しかも、背中には、レブナントが乗っている。奴らは、瘴気弾を撃ってくる。僕は、ホーリーシールドで、完全防御をして防いでいる。アース・トラップで、土を粘土に変えた。粘着性の粘土だ。黒いGは、ジタバタしているが、足が粘土にくついて動けなくなってしまった。Gの上のレブナントを聖なる斬撃で始末した。瘴気シールドのなくなった黒いGを火球で焼き尽くした。灰も残さなかった。女性陣が、恐る恐る7階層から降りてきた。
9階層は、ムカデだ。しかも巨大だ。口から瘴気の涎が垂れている。脚を素早く動かして、空中を走っているように見えたが、尻尾の方が地面に接地している。完全に浮いているわけではない。シェルが、『ヘラクレイスの弓』を放ち、接地している部分を地面に縫い付けた。そこから前の方に、次々と縫い続けた。最後に、目と目の間を、極大の矢で射抜いて仕留めた。9階層のボスは、コイツだった。階層全域を占めていたのだ。何てデカいんだ。
いよいよ最終階層だ。
10階層は、廃墟エリアだった。廃墟の周りには、墓地が広がっている。正面には、教会だったであろう建物が建っている。嫌な予感がする。嫌な予感は、必ず現実になるという法則がある。墓地の周りをなにかがウロついている。犬?いや狼だ。ただし、腐っている。ゾンビ・ウルフだ。空をカラスが飛んでいる。飛びながら何かを垂らしている。腐汁だ。ゾンビクロウだ。
ボコッ、ボコッと墓の下からゾンビが出てくる。中には殆ど骨に成りかけているのもいる。物凄い臭いが漂ってきた。海で採った貝を3日ほど日向に置いてしまった匂いの100倍は臭い。堪らず、全員をシールドで覆う。
正面の教会からレブナントが、ゾロゾロ出てきた。本当にゾロゾロだ。教会の上空には、リッチが、浮遊している。その多さは、最下層としては異常だ。これでは、ダンジョンマスターと戦う前に殲滅されてしまう。僕は、聖なる気をヒゼンの刀に込めた。ドンドン込め続ける。『ヒゼンの刀』が、震え始める。
ノエルとビラも聖なる光の玉を上空に出現させる。シェルが、号令をかける。
「行けーーーーー!!!」
聖なる球が破裂して、四方八方に聖なる欠片が飛来する。僕は、聖なる斬撃を、左後方から270度の範囲で打ち出した。地上の腐った物は浄化されていく。モワモワッと消えていく。後は、上空のリッチどもだ。
シェルが、魔聖石を嵌め込んだ『ヘラクレイスの弓』10本を掃射する。全てのリッチが、墜落してきた。当たりどころの悪かったリッチ何匹かは、そのまま灰になってしまった。
僕が、全速力で走り寄り、全てのリッチを灰にした。
これで終わりだろう。僕は『ヒゼンの刀』を、下に向けて、血を洗濯石で綺麗にしようとした瞬間、横殴りに殴られ、10m位飛ばされた。敵は見えないし、気配も無い。
どこだ?
イフちゃんが、『地獄の業火』をある1点に放った。火柱の中で、何かが居る。そいつは、堪らず、避難のため火柱の外に出てきた。そいつは、人間のようにも見えるが、そんな筈がない。みるみる焼けただれた顔や手足が回復し、ボロボロになった服も修復された。
そいつは、不死の王、夜の帝王、歩く生殖器と言われるバンパイアだった。バンパイアは、最後の言葉に反応して、真っ赤な目を僕に向けた。どうやら取り消して貰いたいようだ。
冗談はさておき、そいつは僕目掛けて走って来た。早い。『ヒゼンの刀』で迎え打とうとしたら、完全に消えてしまい、右脇腹に、奴の手刀が突き刺さっている。構わず『ヒゼンの刀』を振り下ろす。奴の腕が脇腹に突き刺さったまま、切り離された。その腕は、黒い瘴気と共に消えた。僕は『復元』スキルで、脇腹の傷を修復した。防護服も修復された。
奴は、直ぐに腕が生えてくる。奴も『復元』スキルと似たような力を持っているのかも知れない。
無詠唱でホーリー・ランスを突き刺す。奴は、断末魔の叫びを上げたと同時に、何十羽ものコウモリになって逃げ出した。そして消えた。僕は、『ヒゼンの刀』を納刀し、自然体で目を瞑った。目の前にマッピングの地図が現れ、僕達は青い点、魔物や奴は赤い点で表示される。
7時の方向30mの地点に強い赤点がある。奴だ。僕は、目を瞑ったまま力を飛ばす。
ギャーーーー!!
奴が、燃え上がっている。火に包まれているのでは無い。燃えているのだ。僕は、『瞬動』で奴の前に立ち、『紅の大剣』で唐竹割りに斬り下ろした。切断面が無に繋がっている。左右の身体が、切断面からドンドン消えて行く。奴は消滅した。コロン。ドロップ品が出た。真っ白な杖だ。魔石が5個嵌められている。
魔石の色は、赤、青、銀、茶そして白。
『キルケの杖』
クレスタが呟いた。クレスタが拾い上げる。杖が白く輝いてクレスタを包み込む。光が消えて行った。クレスタは『キルケの杖』の所持者になった。
エルフでも、ハイ・エルフは特に成長が遅いみたいです。




