第155話 工事現場に魔物が出ました。
ハッシュ村の別荘を建築中ですが、トラブルがありました。
(4月20日です。)
今日、バンブーさんから緊急連絡が入った。ハッシュ村の森から、トロールが出てきて、作業員1名が被害にあったそうだ。連絡に来た人は、息も絶え絶えだった。バンブーさんの事務所から屋敷まで、3キロ近くある。おそらく全力で走ってきたのだろう。
直ぐに現場に『空間転移』で移動したところ、作業員さん達が僕の小屋に避難していた。今は、ゲートを屋内に設置しているので、王都に魔物が来ることはほぼ無いだろうが、油断は禁物だ。襲われた作業員さんは、トロールに連れて行かれたそうだ。
魔除けの石板を調べたところ、魔石が外されていた。おかしい。自然に外れることは、絶対ない。しかし、今はそんなことを言ってる場合ではない。石板に魔石を嵌め、魔力を注いでから、森に向かった。
トロールの匂いは、直ぐに分かった。それに人間の血の匂いも。イフちゃんに、上空から探査させた。情報を共有する。敵は、森の奥、2キロ位の場所にいた。見てみると、作業員さんは、服と頭が残っていた。
僕は走った。頭だけでも回収したい。森の中の少し開けた場所だった。そのままの速度で、トロールの右脇をすり抜け、『紅き剣』を振った。トロールは、そのままの姿勢で動かなくなった。まだ、顎でクチャクチャ何かを頬張っている。そのうち、目が白目になった。胴体から上の部分が前に落ちた。
作業員さんの頭と所持品を持って、森を出た。バンブーさんと作業員さんが、小屋の表に出ていた。僕の使ったゲートでシェルさん達が出てきた。イチローさん達も一緒だ。バンブーさんに、作業員さんの頭と所持品を渡した。亡くなった作業員さんは、長年、バンブーさんと一緒に仕事をしてきた監督さんだった。みんなを逃がすため、一人で立ち向かったらしい。シェルさんが、弔意金として金貨5枚を渡した。 バンブーサンが、涙を流しながら、僕達に礼を言った。
その時、作業員の一人が前に進んできて、バンブーさんに土下座をして謝ってきた。魔除けの魔石を外したのは自分だと白状した。1月から作業をしていたが、魔物など出てきた事が無いので、魔物が出るというのは単なる脅かしだと思ったそうだ。それで綺麗に光っている魔石を売れば、良い金になると思って、昨日、外してしまったそうだ。
ポケットから魔石2個を取り出して差し出してきた。裏の石板は、無事だったようだ。
その作業員の措置はバンブーさんに任せて、森の魔物を掃討する必要がある。『A』ランクの魔物はいないだろうが、レッサーウルフやサーベルキャット程度でも、数が揃うと脅威になる。この際、最大動員で森を消毒する必要があった。
もう、魔除けの石版が機能しているので、工事現場は、今日は大丈夫だろう。一旦、屋敷に帰ることにした。バンブーさん達も、僕の掃討作戦が終了するまで、作業を中止することにした。
あれ、シェルさんがいない。シェルさんは、2年前、『郷』からここまで一緒に来た、パーティーの人達のお墓に、お参りをしていた。目を真っ赤にして帰って来た。屋敷に帰ってから、明日の掃討部隊を編成する。
森を東西10キロ毎に区分けして、3ブロックにする。
西側を第1ブロックとし、シェルさんが部隊長、クレスタがサポート、白薔薇会が隊員だ。トラちゃんが斥候に付く。僕との通信要員だ。
中央部分を第2ブロックとして、僕とイフちゃんが担当する。斥候は、スーちゃんだ。
東側は、第3ブロックだ。エーデルが隊長だ。サポートにノエルとビラが付く。隊員はイチローさん達10人だ。連絡要員はコマちゃんだ。斥候にバルドを飛ばす。
森は、なるべく保存すること。魔石等は、放って置くこと。それから、もし、洞窟等を見つけたら、必ず僕に連絡すること。絶対に、自分達だけで潜らないようにと約束した。皆、フル装備だ。ポーション、毒消し、MP補給薬はふんだんに持たせた。
翌日、イチマルマルマル、掃討作戦を開始した。
僕は、『ベルの剣』を抜いて、走り始めた。魔物の位置は、全て分かっている。頭の中のマッピングに赤い点で光っている、『探知』スキルを最大限、発動している。
『ベルの剣』にしたのは、深い森でも振りやすいからだ。
まずは、ゴブリン12匹、1度に5匹ずつ斬り飛ばす。あ、面倒。2回目の『斬撃』で7匹に修正した。その先のレッサーウルフは、『威嚇』で、瞬殺した。次は、またゴブリンだ。ウインド・カッターで14匹をなぎ倒す。次も、ゴブリンだ。途中のトロール3匹は、見もしないで切断した。
ゴブリンが固まって群れでいる。大きなゴブリンもいる。ゴブリンロードだ。斬撃の横払いで殲滅する。そんな戦いを30分位したら、辺りがシーンとなった。
もう、エリア内にはレッサーウルフのはぐれと、樹上のタイガーキャットだけになってしまった。走るのを、やめて、1匹づつ、指鉄砲で仕留めた。
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シェルは、久しぶりの戦闘にワクワクしていた。今日は、思いっきり楽しんで行こう。白虎になったトラちゃんが、影に隠れているゴブリンを追い出している。ウインド・カッター10連発で殲滅して、残った4匹は『ヘラクレイスの弓』で掃討した。次にトラちゃんが、オーガを追い出してきた。足と腕を弓で飛ばして、頭をウインド・カッターで切断した。クレスタが、シェルの腕を引っ張る。え?後ろを見ると、白薔薇会の皆がジト目で見ている。あ、一人で殲滅してはいけないんだっけ。シェルが後ろに下がる。
トラちゃんが、オークの群れを追い出してきた。
白薔薇会の皆さんが、寄ってたかって切り刻んだ。逃げ出そうとしたオークを、足を切断して転がし、股間から切り裂いて行ったのには、流石に引いたわ。それからは、ゴブリンは、シェルが、ゴブリン以外は白薔薇会が殲滅した。1時間位で、トラちゃんが、首を振り始めた。しょうがないので、開けた場所でお茶会にした。トラちゃんもいつもの子猫に戻っていた。
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エーデルは、とても不満だった。ノエルとビラの実習を兼ねたいから、エーデル姫は、見ていてくれと言われたのだ。私だって、『指鉄砲』や『百刺しの剣』を披露したいのに。サクラさんが、気を利かせて、お茶とお菓子を出してくれた。これでは、話が違うわ。あ、でも、このお菓子、美味しい。切り株に座り込んで、涙目になってエヘエヘ薄笑いを浮かべているエーデル姫を見て、イチローさん達は、どん引きしていた。ノエルが、洞窟を見つけた。木のウロのように見せかけた洞窟だ。中から瘴気が漂ってくる。
ダンジョンだ。
無いはずのダンジョンが誕生している。コマちゃんに、ゴロタさんに連絡するようにお願いした。すぐにゴロタさんが現れた。シェル達も、こっちに向かっているそうだ。イチローさん達が、散開して、第3ブロックのはぐれ魔物を掃討している。
ダンジョンから流れてくる瘴気が酷い。臭いし、息苦しいし。この瘴気には、覚えがある。レブナントとリッチだ。ノエルとビラが、ホーリーを大量に発射して、ダンジョン内を清浄にする。
僕は、入り口に魔除けの石板2個を左右に置いておく。これで、魔物が出てくる事は無いはずだ。一旦、小屋に戻って、イチローさん達に屋敷に戻って貰う。『白薔薇会』の皆さんも、戻って貰った。ノエルとビラも大学の授業があるから帰って貰った。二人は、物凄く不満そうだったが、シェル達を見て、諦めて帰って行った。
その日は、昔の小屋に泊まる事にした。エーデルが期待に目をキラキラさせていたが、絶対に期待通りの事は無いから。無いはずだ。僕の期待は、裏切られた。シェルにクレスタにエーデル。正妻トリオに攻められてしまって、なす術もなかった。
次の日の朝、ダンジョン入り口に来た。魔除けの石板をしまう。クレスタが、土魔法で、入り口を広げる。僕が先頭で、ダンジョンに入っていく。
1階層は、お定まりのゴブリンだったが、ゴブリンソルジャーが、最初から混じっていた。シェルの弓矢で殲滅した。奥まで行くと、1階層から階層ボスがいた。レブナントだ。しかし、ジッとして動かない。死んでいる。昨日、ノエル達が打ち込んだホーリーのせいだ。
2階層は、オークとトロールの巣だった。エーデル姫の『百刺しの剣』の餌食だった。血も出さずに、刺し抜かれて絶命していた。2階層のボスもレブナントだった。やはり死体になっていた。本当に、聖魔法の耐性がない奴らだ。
3階層は、スケルトン・ソルジャーの部隊だった。スケルトン・ジェネラルもいる。しかし、動きがおかしい。足を引いたり、手が動かなかったり。ホーリーの影響が、ここまで及んでいたのだと思う。クレスタが、ウインド・ストームで、骨をバラバラにし、埋めてしまった。埋め跡を石のように硬くしたので、当分、復活しないだろう。3階層のボスもレブナントだった。こいつも弱っているようだった。僕の『ヒゼンの刀』で左右に切断した。
4階層の出現魔物は、レイスとファントムだった。僕のホーリーで殲滅した。4階層のボスもレブナントだった。シェルさんが、魔聖石を『ヘラクレイスの弓』にセットして、5連射で倒した。
5階層はビーチエリアだ。クラーケンが脚を伸ばして来る。僕が『斬撃』で切り離し、エーデルが焼きダコにする。いい匂いだ。折角だから、休憩にする。シェル達が全裸で泳ぎ始める。気持ち良さそうだ。僕も泳ぐ事にする。プカリと浮いていたら、シェル達の餌食になった。エーデルとクレスタの目が怖い。焼きダコを適当に切って、皆で小屋に戻った。今日は、小屋に泊まって、明日の朝、屋敷に戻る事にした。明日は、シェルの18歳の誕生日だ。プレゼントは渡しているが、パーティーをしなければならない。
その日の夜、僕と一緒に寝たのはのエーデルだけだった。クレスタは、午後の分で満足したみたいだった。シェルは、明日があるからと言っていた。シェルさん、明日、何が有るのですか?
ダンジョンを見つけてしまいました。これから、どうなるでしょうかね?




