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紅き剣と蒼き盾の物語(コミュ障魔王と残念エルフの救世サーガ)  作者: 困ったちゃん
第15章 グレーテル市内に一戸建てを買いました
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第146話 グレーテル市の1日

今日は、まったりとしたお話です。グレーテル市に残っている女性たちの一日をトレースしてみました。

(グレーテル市のある一日です。)

  ジェリーちゃんは、とても不満だった。ゴロタ殿の屋敷に、あんなに一杯、彼女さん達が住んでいるのに、どうして自分は住めないのか。私だって、ゴロタ殿の婚約者候補のはずなのに。


  フランシスカちゃんだって、私と大して変わらない立場でしょ。年だって、二つしか変わらないし。(本当は4歳違います。)何で、彼女だけ、あの屋敷に住めるのよ。そりゃあ、シェルさんやクレスタさんは、しょうが無いわよ。結婚しているのだもの。エーデル姫様も許してあげるわ。国王陛下の娘だもの。


  でも、あのノエルって子とビラって子、何、ちょっと魔法が優秀だからって、可愛さじゃ、私だって負けていないわよ。あと、シズって子。あの変な名前の武器屋の娘でしょ。まだ中学生じゃない。(あのう、ジェリーちゃんは小学生ですから。)胸も無いし。それは私も、今は何も無いけど、直ぐに膨らむわよ。胸くらい。ああ、ゴロタ殿、早く帰って来ないかな。今度こそ、あんな事やこんな事をして貰うんだ。あ、貰ったネックスレス、明日、学校で自慢してやろう。将来のハズから貰ったって。キャッ。


  とても残念なお嬢様でした。







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  シズは、本当に嫌になっていた。中学校では、皆、進路を決めていた。高校進学か、家業を手伝うか、冒険者になるかだ。今日、学校の先生に呼ばれて、将来、どうするか聞かれた。『お嫁さんになる。』という進路はダメらしい。父さんが許してくれない。


  冒険者登録しても、『F』ランクだったし。少し飛び級したかったのに。まあ、明鏡止水流の道場でも3級止まりだったし。魔力が少ないのは、分かっていたし。でも、ゴロタ君の屋敷で同居できたんだから、放っておいて貰いたいのに。


  今は、学校が終わってから、ギルドのクエストをこなすのに忙しいのに。薬草の採取なんて、絶対1日じゃ終わらない量だし。もう、猫探しなんか絶対無理。この街に、何匹、猫がいると思っているのよ。大体、この街は大きすぎるのよ。街から出るのに1時間以上歩かなくちゃならないなんて、どうかしているわよ。


  クレスタさんのお友だちのクンニガさん達はいいわよね。毎日、シェルさんやエーデル姫と一緒にダンジョンや森に行って魔物退治が出来るもの。私なんか、採取に行って兎狩りよ。まあ、美味しいから良いんだけど。


  でも、進路はどうしよう。ゴロタ君と一緒に冒険に行きたいけど、きっと連れて行ってくれないだろうし。やっぱり、父さんの言う通り、進学しようかな。行くんなら王立騎士学院が良いかな。剣術は、ゴロタ君と父さんに教えて貰えるし。あ、受験日っていつだっけ。願書出さなくちゃ、浪人確実だわ。









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  クルリさんは、毎日が驚きの連続だった。今年になってから、シェルさんと一緒にダンジョンに潜っている。今までは、村の周辺の魔物をやっつけるだけだったし、大した魔物も居なかったので楽勝だったが、このダンジョンは全然違う。


  メンバーは、自分の他にクオン、クチバ、クオハナそしてクライの4名だ。基本、魔導士チームのつもりだった。でも、ゴロタ君の屋敷に来て、自分達の魔力なんて平凡そのものだという事が良く分かった。一緒に行動しているシェルさんだって半端ない魔力なのに、パーティではアーチャーですって。信じられない。しかも、1回に10本、それぞれが別の獲物をめがけて行くなんて聞いたことも無い。


  今日は、ダンジョンで、行方不明のパーティー救助ですって。なんでも、お貴族様の御子息が混じっているパーティーですって。禄でも無いパーティーの気がするけど、まあ、成功報酬が高いし、いいか。


  もう、第4階層に来ているのに、まだ見つからない。確か、『D』ランクパーティ-って聞いたから、この辺にいないと、全滅している可能性があるわね。第5階層に降りてみたら、森林エリアじゃない。ここって、確か、私のが嫌いなアイツがいるエリアよね。あの、8本脚の奴。


  シェルさんが先頭で、隊列を作って進んでいくの。私が一番後ろね。突然、クオハナが目の前でいなくなった。え、何、どうしたの。シェルさんが、叫んだ。


  「右横、いるわよ。」


  右を見ると、30m位離れた場所に、あの汚らしい毛の生えた8本脚の奴が、糸球を咥えてぶら下がっている。糸球の両端からクオハナの顔と足が飛び出ている。クオハナは、必死に叫びたいのを堪えているようだ。


  赤い閃光の矢が上から3本、降ってきた。え、上?見上げても、誰も居ない。シェルさんが、クオハナに当たらないように、上空から放物線を描いて撃ったのだ。矢は全弾命中しちゃった。奴は、クオハナとともに10mも下に落ちた。嫌な落下音がした。どこか骨折したんだろうか。


  すぐに駆け寄ったわ。奴の足がモゾモゾ動いているじゃない。私は、ミスリルの剣を抜いて、頭を切断したわ。ようやく動かなくなったの。それから、直ぐにクオハナの身体を巻いている糸球を切り裂いたわ。あ、かなり痛そうにしている。足首だ。変な方向を向いている。クチバがヒールを掛ける。しかし、骨折は、直ぐには直らなかった。そりゃそうよ。ヒールって、本人の治癒能力を増幅する魔法だもの。痛みは収まっても、骨がくっつくのは3~4日はかかるわよ。シェルさんが、足首に手を当てている。淡く光り始めた。光が白くなってきた。眩しい。見ていられない。しばらくで骨折が全快したようだ。え?くっついたの?


  周りに糸球が7個転がっていたの。古いのは、少し茶色がかっているので、ちょっと気味悪い。全部を切り裂いてみると、案の定、捜索中のパーティの1人が出て来た。まだ、眠らされているだけのようだった。


  でも、パーティ-は4人編成の筈、残りの茶色くなっている3つも切り裂いてみた。食べられたのか、皺皺になったミイラが3体出て来た。うえっ。あとは、お貴族様と同じ状態だったので、パーティメンバーだろう。


  最初の一人がお貴族様だった。首筋の2個の噛み跡が気になるが、とりあえずヒールを掛けて意識を戻してあげた。お貴族様は、寝転んだまま、私たちを見上げていた。その視線、間違いなく私達のミニスカの中のパンツを見ている。股間を見ていれば分かる。この色ボケ貴族。この状況で発情するんじゃない。


  立ち上がらせて、歩けるかどうか確認する。他の茶色くなったメンバーは全員、女性冒険者だ。なるほど、何をしていたのか良く分かる。金と立場を利用して女性冒険者を食い物にするパターンだ。女性達の恰好もブラとパンティそれにわずかの面積の腰巻だけだ。このお貴族様、しょっちゅう盛っていたのだろう。女性達も、首筋に噛み跡が2個付いていた。嫌な予感がする。


  第1階層まで戻り、間もなく地上と言うとき、異変が起きた。予感が適中したの。お貴族様が蜘蛛男に変身しちゃった。両目の周りに赤く光る眼が並び、口には左右に開く牙が飛び出ている。わき腹から手が2本、腰から足が2本生えて来た。服はびりびりに裂けてしまった。股間の一物は大きく上を向いてピクピクしている。え、それって蜘蛛と関係ないでしょ。


  背中を向いて、お尻から糸を吐き出して来た。しかし、全く当たらない。当り前よ。向こうを向いてて当たる訳がない。仕方がない。一生懸命、お尻から糸を吐き出すために、息んでいるお貴族様の首を落とした。


  女性達は、まだ発症していなかったので、シェルさんの『治癒』で毒素を首筋から抜いて貰っていた。とりあえず3人は救助したわね。お貴族様の首だけ持って、ギルドに帰ったんだけど、成功報酬は半分にされてしまった。ま、しょうがないか!







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  クスシさんは、エーデル姫がチームリーダーだという事に納得していなかった。いつもボーッとしているし、ピンク系統フリル付きの服ばかり着て、とても冒険者とは思えない。しかも、剣の中で最も攻撃力の低いレイピア使いなんて、まるで自分たちの攻撃力を頼みにしているのではないかと思えてしまうのだ。現に、ダンジョン1階層のゴブリンとか2階層のオークらには、剣を抜かないで、近くの壁をトントン叩いているんだもの。なんでも、たまに珍しい鉱石が出ることがあるらしいのだが、魔物が出て来た時位、やめて貰いたい。


  ゴブリンや、オーク達だったら、私たちの敵ではなかった。ゴロタ様にいただいたミスリルの剣の切れ味、素晴らしい。ゴロタ様とは、あの洞窟のパーティ-の時から目を付けていた。酔った振りをして、ゴロタ様に素っ裸で跨った時のことが忘れられない。ゴロタ様は、しっかりと自分の大事なところを見てくれていた。その後、気を失ってしまったみたいだったけど。ああ、もう一度、あんな機会が来ないかな。


  それなのに、なんで、こんなホンワカ女が婚約者なのかしら。やはり、地位かしら。まあ、顔は可愛いし、胸もそれなりにあるし、でも腕っぷしだったら、絶対負けない自信があるわ。


  ダンジョンの第6階層まで来た時、私たちパーティ-に緊張が走った。アイアンゴーレムだ。しかも3体同時。アイアンゴーレムは、魔法攻撃が効きにくく、物理攻撃は簡単に跳ね返してしまう。今の私たちでは、完全に火力不足だわ。クンニガなんか、さっきからファイア・ボールを連発しているけど、花火程度の威力じゃ、全く役に立っていないわ。


  動きが遅いから、足を薙ぎ払おうとしたけど、こっちの手が痺れてしまった。なんて硬いんだろう。一旦、退却を指示した。このままじゃ、全滅してしまう。


  その時、あのホンワカ姫が、突然レイピアを抜いて走り始めたの。戦闘のゴーレムの頭に向かって掌をかざしたと思ったら、そのゴーレムの頭の中から、くぐもった『ボン』という音がして、口と鼻と耳から黒い煙が噴き出した。え?何?


  それから手前で、大きくジャンプしたかと思ったら、赤く光るレイピアをゴーレムの胸に向けて突き出したの。目がおかしいのかな。レイピアが何本にも見える。それがプスプスゴーレムの胸に刺さり続けているの。たまらず、ズズンと倒れてしまったゴーレム。


  次の2体は、もっと可哀そう。両足を何十回も刺されて原形が無くなってしまって、倒れて動けないゴーレムにとどめを刺している。なに、あの動きとあの剣の威力。絶対、違反よ。あんなの、誰だってかなう訳ないじゃない。







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  フランシスカは、暇だった。朝、婆やのフミさんに起こされるまで、寝ていた。メイドのレミイが準備してくれた服に着替えて、顔を洗ったら、食事だ。朝食は、とても美味しい。大聖堂の朝食は質素だったし。バターだって欠片しかくれなかったのに、此処では食べ放題だ。お昼までは、お祈りとお茶だった。相手は、フミさんとレミイだった。


  午後は、3人で街を散歩する。いろんな人たちを見るのは楽しかった。美味しいスイーツも一杯見つけた。シェルさんから貰った金貨1枚、まだ一杯残っている。毎月、1枚ずつ貰うんだけど使い道がない。


  お屋敷に帰って夕食が終わると、何もやることが無い。早くゴロタ君帰って来ないかな。あの可愛らしい顔をずっと見ていたいな。

最初と最後に残念少女のお話でした。まあ、フランシスカさんは、ほぼ戦闘力0ですし。ジェリーちゃん、成人する頃には、お話が終わっているような気がするんですが。

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