第141話 新居で聖夜を迎えます。
ついに、王都で家を買ってしまいました。売値は、大体3億円位でした。安いと思いますが、物語ですから。
(12月24日です。)
今日は、聖夜で、朝から忙しい。王都の北の森に、七面鳥を狩りに行かなければならないからだ。屋敷には、総勢30名以上がいる。最低でも5羽位は必要だろう。ダッシュさんやワイちゃんも招待するとなると10羽位になるかも知れない。既に、他の冒険者達は北の森の中に入っている。至る所で、七面鳥の断末魔の鳴き声が聞こえる。彼等は、早く狩って、街で売らないとならないのだ。遅くなると、お店でも十分な量が確保出来て、買い取りしなくなるからだ。
僕は、焦らない。売る気は無いからだ。七面鳥は、森の中では、草木に隠れて、ジッとしているので、中々見つからない。僕は、探知を使う。いた。木の上に2羽、草の陰に1羽だ。『威嚇』を使って、動けなくするのだ。木の上の2羽が落ちて来る。僕は、近づいて、逆さに持ち上げ首を落とす。生きたまま、血抜きだ。七面鳥は、意識が無いので騒がない。首を落としてから、少し動き続けるのが、ちょっと気持ち悪い。
お昼前には、街に戻った。屋敷の裏手で、お湯を沸かして七面鳥の羽毛を処理する。屋敷のオーブンだけでは足りないので、中庭に簡易オーブンも2個作った。後は、クレスタに任せて、ケーキ屋さんに行って、デコレーションケーキを3個頼んでおく。出来上がりは、夕方になるそうだ。それから、冒険者ギルドに行って、ギルドマスターのフレデリック殿下に会った。
1時間位、待たされてしまった。相変わらず、忙しそうだったので、モンド王国のお土産を渡すだけにした。シェルがいないので、ほぼ無言だった。受付の子達にもお土産をあげた。ついでに、この前オークションに出しておいた、ワイバーンの応札代金を受け取る。大金貨12枚になった。屋敷の支払いに大金貨20枚を下ろそうとしたら、年内は準備できないと言われた。小切手でどうかと言われたが、換金の手数料が高いので、来年、下ろすことにした。まあ、宰相も待ってくれるだろう。
後、この前、モンド王国で狩ったワイバーンの特殊個体をオークションに出しておく。ほぼ無傷だったので、最低落札価格を大金貨20枚にした。これが売れれば、屋敷の購入代金は完済出来る筈だ。
僕は、王城に行き、宰相に屋敷の代金の内金として、大金貨10枚をお渡しした。宰相は吃驚していたが、『ゴロタ殿ならそうだろう。』と一人で納得していたようだった。宰相を通じてモンド王国のお土産を、かなりの量、渡しておいた。勿論、宰相だけではなくスターバ将軍や、マリンピア魔道士長、それにディーンさんなどの分も入っている。
宰相から、マリンピア魔道士長が会いたがっているとの事だった。あまり時間が無いけれど、会わない訳にはいかない。マリンピア魔道士長の用件は、ノエルについての話だった。『今すぐ、ノエルを魔道士長心得として、任官させたい。それで、ずっと帝国に住んでいて貰いたい。』との事だった。僕は、一言だけ喋った。
「分からない。」
そのような重大事項は、ノエル本人にして欲しい。どうして僕に頼むのだろう。僕に判断できる訳がないのに。何でも、この前の、ダンジョン実習で、ノエルの実力を垣間見たが、現在の宮廷魔道士には、ノエルに対抗できるほどの魔道士は自分も含めて、居ないそうだ。あの、多彩な魔法と、無限の魔力。全ての魔道士が目指しているものを兼ね備えているのだそうだ。ノエルは、うちのパーティーでは、4番目の実力だ。魔力は強いが武器が使えない。どうしても、物理攻撃が必要になる時がある。それが、ノエルの課題だ。結局、後日、回答することにして王城を後にした。
王城の次は、王立魔法学院に行かなくてはならない。確か、明日から、冬休みの筈だ。王城を出ようとしたら、スターバ将軍閣下から声を掛けられた。今日の聖夜パーティーに、孫のジェリーを招待して貰いたいとのことだった。シェルさんの嫌そうな顔を思い出したが、断れない僕だった。あれから、2年、きっと大きくなっただろうと思う。
王城を出てから、訪問した王立学院では、主任教授達と会えた。ノエルは、今は、教授補として、授業を受け持って貰っているそうだ。卒業後も、引き続き教授として残って貰いたいそうだ。それも本人が決める事なので、僕には答えられなかった。どうして、皆、僕に聞くのだろう。ビラは、高等部の冒険者チームリーダーだ。学科も首席だそうだ。是非、大学に進学させて欲しい。卒業後は、教授か王宮魔道士への道、間違い無しだそうだ。これも本人の意向次第だ。
教授達と、クラスメイトの皆さんへとモンド王国のお土産を渡した。これで、お土産は無くなった。また、買っておかなくっちゃ。それよりも、校内の女子学生達が、ほぼ全員、ミニスカートになっているのには驚いた。特に、高校生は、絶対にパンツが見えてしまう位に短い。学校でも、規制しているが、隠れて巻き上げるので、手の打ちようがないそうだ。
それから、宝石店で簡単な買い物をした後、海鮮専門店で大きなエビを買った。髭の長い、赤黒い海老だ。余りにも大きいので、テーブルへ乗らないかも知れない。
夕方、ワイちゃん一家を呼んだ。2階の一番奥の部屋に、3人のドレスを準備して、シェルと一緒にワイちゃんを呼んだのだ。シェルが、直ぐ、僕を部屋から押し出した。やはり、何回見ても、ヴァイオレットさんはナイスボディだ。ワイちゃんは、6歳児の幼児体型のままだ。ブラックさんは、謎の視覚効果で、胸と股間が見えないようにしている。ヴァイオレットさんも、できる筈なのに、と思ったら、
『ふふ。見せたいのじゃ。』
ああ、神龍のへそ曲がりにガッカリしてしまう。階下に降りると、フランシスカさんが暇そうにしていた。大聖堂にいた頃の、忙しさを思い出しているのだろう。居間のソファに2人で座っていたら、急に膝の上に乗ってきた。え、と思ったら、肩を震わせて泣き始めた。昨日からずっと1人だったので、寂しかったらしい。しょうがないので、『婆やのフミさんかメイドのレミイさんと一緒に住むことにしたら。』と言ったら、2人とも呼びたいそうだ。
とても喜んでいるフランシスカさんと一緒に聖ゼロス教会大司教国に『空間転移』して、2人を連れてくることにした。2人とも今すぐいけるとの事だった。部屋は、フランシスカさんの向かい側の空き部屋にした。2人は、来年春に、それぞれの田舎に帰る予定だったが、フランシスカさんと一緒の頃が懐かしくて、落ち込んでいたそうだ。お給料は、協会から貰えるそうだ。流石、金持ち教団だけのことはある。きっとシェルもそれを聞くとニコニコだろう。
夕方、暗くなってから、ダッシュさん達が来た。シズさんが、もの珍しそうに屋敷内を見て回った。ノエルが、屋敷の中を案内している。それまで少し悲しそうにしていたのだ、2階の空き部屋を見てから、急に顔が明るくなった。ノエルは、嫌そうな顔をしている。僕には、どうしてそうなっているのか良く分からなかった。僕は、知らなかったが、シズさんとノエルは、同い年だそうだ。シズさんはハーフエルフなので、年齢は見た目では分からない。
暫くして、スターバ将軍閣下のお孫さん、ジェリーちゃんが来た。2年前に比べて10センチ位伸びただろうか。生意気にも馬車で来たが、まあ、お貴族様の御令嬢なのだから当然だろう。お付きのメイドさんが一緒だった。メイドさんもお客さんなので、一緒に座って貰った。ジェリーちゃん、ご挨拶のキスをして来たが、流石に舌は入れて来なかった。胸が少し膨らんでいたけが、感触から、偽物と直ぐに分かった。当然、そのことは黙っている僕だった。シェルが、目を三角にしていたが、無視した。シズさんが、自分は、まだキスをしていないと騒いだが、これも無視した。
パーティーが始まった。オードブルは、チーズをメインに生ハムなどだ。後、大きなエビ、本当に大きいエビのボイル。そしてローストターキーだ。ブラックさんには、最初にワイン1本を飲ませ、後は醸造アルコールを薄めたものを飲ませた。バイオレットさんには、ターキーを丸ごと1羽あげて、お代わりはないと言ったら、とても残念そうだった。
屋敷の執事さんとメイドさん達には2羽を別棟に届けている。後、ワインを1箱だ。パーティーの片付けが終わったら、ゆっくりして貰うつもりだ。明日は、全員、お休みだ。いつものように、シェルは酔い潰れ、バイオレットさんは、卑猥な目付きになっていた。フランシスカさんが、酔って僕に卑猥なことを始めたので、婆やのフミさんとメイドのレミイさんに、引き剥がされていた。どうして女性は酔うと皆あんなになってしまうのだろう。
ジェリーちゃんが、ジュースを飲んでいるのに、酔ったふりをして、僕に抱きついて来た。首筋にキスをしまくっている。お付きのメイドさんは知らんぷりだ。シズさんが、力一杯引き剥がし、自分が、膝の上に乗ってキスして来た。ダッシュさんは、見て見ぬふりだ。ノエル達もそうだ。なんか、おかしい。いつもなら、直ぐに引き剥がす筈なのに。パーティー最後のケーキは、テーブルに2個置き、別棟に1個送っておいた。
お待ちかねのプレゼントタイムだ。シェル達にはブレスレットを買っておいた。ブラックさん達には、イノシシ4匹だ。今日、七面鳥と一緒に買っておいたものだ。シズさんには、モンド王国で買ったイヤリング、フランシスカさんとジェリーちゃんには、ネックレスを買っておいた。誕生日を知らなかったので、2人とも黒真珠にしておいた。
シズさん、ネックレスを貰って喜んでいたが、しきりにシェルやエーデルのブレスレットを見ている。シェル達の腕輪は、かなり高価なものなので、単なる知り合いにあげるレベルではありません。でも、シズさんの顔を見ていると、同じものを買っておけば良かったかなと思ってしまった。
パーティーは、終わった。これから聖夜ならぬ性夜の始まりです。あれ、シズさんとフランシスカさんは、除外でしょ。後、ヴァイオレットさん、目が怖いです。特に、シズさん、何故、ここにいるんですか。しかも、ネグリジェを着て。聞くと、ビラの隣の部屋を確保したそうだ。パーティーの前、ダッシュさんがシェル達にお願いしたそうだ。シズさんを見ていると、可哀想だ。この1年半、学校に行っても、店にいても、ボーッとしている。結婚出来なくても良いから、僕と一緒に冒険に連れて行って欲しいとの事だった。それで、取り敢えず婚約予定という事で、一緒に住むことになったらしい。『聞いて無いんですけど』と思う僕だった。
お休みのキスは、シズさんも含め、全員とすることになり、夜は、エーデル姫と一緒のベッドで寝ることになった。聖夜と言っても、いつもと変わりない。まだまだ大人にはなり切っていない僕だったが、性夜は、いつもの様に更けて行きました。
ついにシズさんまで一緒に暮らし始めてしまいました。もう、限界です。1台の馬車に乗れません。




