第140話 グレーテル王都でお屋敷を準備しました。
もう、クリスマスは目前です。大家族のゴロタは、大変です。
(12月22日です。)
昨夜、ホテルへ戻ると、モンド王国の国王陛下から使者が来ていた。是非、お会いして歓待したいとの事だった。クレスタが、『年内は、忙しいので、来年の1月7日にお願いしたい。』と申し伝えた。僕達がこれから、グレーテル王国に帰る事は内緒にしていた。シェルさん達へのお土産類は、大体買ったと思うが、クレスタが、スイーツをお土産に買いたいと言ってきた。ホテルのフロントに聞いたところ、チーズを混ぜたケーキが美味しいと言うので、紹介された有名店で買う事にした。
チーズケーキは、要冷蔵だったが、イフクロークは、時間が停止している空間なので、傷む心配は無かった。その隣の店で、『デル・モンドの月』と言うお菓子が売っていた。カステラの中にクリームが入っているお菓子で、試食してみると、上品な甘さで美味しい。パッケージが月を見ている魔人の少女だったので、グレーテル王国にはないお菓子だと思い、これも大量に買った。
次の日、ホテルをチェックアウトしてから、シェルさんが待つグリーンフォレスト連合公国の王都に『空間転移』した。久しぶりにシェルさんに会ったら、いきなり飛びついてきて、キスの嵐だった。余りにも長いので、クレスタに引き剥がされていたけど、今日くらいは許してあげてください。直ぐに大公閣下に挨拶をして、お土産を渡した。僕達が、魔人の国へ行っていたと言ったら、吃驚していた。エルフ達には、昔、魔人の国と戦争した嫌な思い出があるらしいのだ。詳しい事は気かないことにしよう。
その後、ゼロス教大司教国に、3人で向かった。イチローさん達が居れば良いのだが。大聖堂に入って、案内を頼むと、直ぐフランシスカ大司教様が出てきた。大司教様、聖夜の前日だと言うのに、暇なんですか。
大司教様は、僕に飛びついてキスをして来た。あの、大司教様、貴女とはその様な仲では無いのですが。やはり、異様に長いキスだったため、シェルさん達に引き剥がされていた。
続いて、イチローさん達とトムとジェリーも出てきた。良かった。探す手間が省けた。意外な事に、ジェリーまで飛びついてキスして来た。まあ、僕はジェリーにとって冒険者としての指導員だから良いですけど。時間は短かったが、舌を入れようとして来たので、やはりシェルに引き剥がされていた。
続いて、サクラさん達が交代でキスして来た。彼女達だけしない訳にも行かないので、されるままにしていたが、舌は入れて来なかった。実は、猫人族の舌はザラザラして痛いので、キスの時、普通には舌を入れないそうだ。その代わり、股間を押し付けて擦るのやめて下さい。いつの間にか、フランシスカ大司教様が、一番後ろに並んでいる。当然、ユリさんで終了にした。
大司教様にお土産を渡して、皆でグレーテル王国に行こうとしたら、大司教様が、一緒に行くと言ってきた。お仕事があるでしょと言ったら、もう譲位したので、今は一般人だと言ってきた。少し涙ぐんでいる。ジェリーが、頷いていた。
無口の僕も、つい口を開いてしまった。
「一緒に来て、どうするんですか?」
「決まっておる。ゴロタと結婚するのじゃ。」
「はあ?」
僕は、顔が真っ赤になった。どう、返事をして良いか分からない。
僕が、無言でいると、シェルさんが中に入って来た。
「ちょっと、ゴロタ君には、私と言う立派な妻がいるのよ。」
「そうよ。私だって、そうなんだから。ねえ、あなた。」
「うん、そうだね。クレスタ。」
場がシーンとなった。
シェルさんが、顔を真っ青にして震えている。その内、大粒の涙を流して来た。僕には、何故、シェルさんが泣いているのか分からない。
「クレスタさん、何、その呼び方。いつからそんな呼び方をしているの?」
「え、結婚してからよ。だって、夫婦ですもの。」
ニコニコしながら、答えるクレスタ。
「ゴロタ君、私のことをシェルと呼んで。」
「シェル。」
「なあに、ゴ、あ、あなた。も、もう一度。」
「シェル。」
「なあに、あなた。もう1回。」
「シェル。」
「なあに、あなたーん。」
周りの者は、アホらしくて、聞いていられなかった。で、結局、大司教様も、婚約者候補として、一緒に行く事になってしまった。婆やさん達は、お役ご免となり、元の仕事に戻った様だ。大司教様は、これからは、『フランシスカ』と呼ぶ事にした。取り敢えずグレーテル王国のダッシュさんの店に転移する。フランシスカの荷物は、あとで、ゆっくり取りに行く事にした。
グレーテル王国のダッシュさんの裏庭に出た僕達は、一旦、部屋に入る事にしたが、流石に狭い。ノエルとビラは、僕にお帰りのキスをする暇も無かった。シズさんは、学校だった。僕は、ダッシュさんに、お土産の曲刀を渡した。ダッシュさん、曲刀を色々調べ始めたので、放っておくことにした。
次に、エーデル姫に会いに行く。一応、エーデル姫の部屋の外に転移したので、ドアをノックする。エーデル姫は、直ぐ出て来た。部屋で、ジェーンさんとお茶中だった。僕を見ると、泣きながらキスをして来た。ジェーンさんを追い払って、ベッドに誘う。この残念姫は、何考えているんだ。当然、エーデル姫の誘いは断固断ったのは言うまでもない。それから、僕は、国王陛下達に無沙汰の挨拶をするとともにある相談をした。20人以上が暮らす事の出来る家を探しているので、貴族邸の空家がないか、あれば購入したいとの相談だった。
一緒にいたジェルトン宰相が、良い物件があると言う。聞けば、領地を持たない侯爵閣下が、後継がないため、廃爵となり、現在、王家で手を入れて公売の準備中だと言う。場所は、王城の北側なので、ダッシュさんの店も王立魔法学院も近い。そこを不見転で購入する事にした。家具もある程度付いているそうだ。価格は、大金貨30枚以上を予定しているそうだ。即金で払うと言ったら、流石のジェルトン宰相も吃驚していた。
ジェルトン宰相が、手続きを代行するので、取り敢えず物件を見に行く事にした。案内は、ジェルトン宰相自らがしてくれたが、ジェルトンさん、暇なのですね。宰相と共に、ダッシュさんの店の裏に転移し、そこから皆で歩いて行く。何故か、ダッシュさんが先頭を歩いている。皆でゾロゾロ歩いていると、周囲の人達から不思議そうな視線を浴びてしまった。
侯爵邸は、王立学院の目と鼻の先だった。周囲をグルリとロートアイアンの柵で囲まれて、正門は、8頭立ての馬車も、そのまま入れるほどの大きさだった。当然、門番小屋には誰も居なかった。敷地の南側が正門だが、東西と北側にも通用門が有った。つまり4方向全てに門がある訳だ。敷地の中は、ほぼ森だった。森を抜けると、急に開けて、大きな石作りの屋敷がそびえ立っていた。3階建てで、寝室が20室以上、客間が8室あり、その他に、食堂が3つ、キッチンが大きいのが1階に1つ、2階と3階にも普通サイズのキッチンがあった。1階は、大広間と応接間と事務室そしてリビングとなっているが、各部屋の区別は分からなかった。
シェルさんが、この屋敷に元からいた執事さんやメイドさんは、どこに居るのかと聞いたら、今は暇を出しているそうだ。この家を買ってくれた人が雇ってくれれば、戻れるが、そうでもなければ路頭に迷うだろうとの事だった。使用人の住む家は、森の中に目立たない様に建っていた。シェルさんは、今日から、待機している使用人全員、来てもらう様にジェルトン宰相に頼んだ。ジェルトン宰相は、大喜びだった。きっと、彼らの処遇に頭を悩ませていたのだろう。
大掃除が始まった。まあ、掃除をするのはイチローさん達とサクラさん達だったが。部屋割りは、シェルさんにまかせて、クレスタと共に、クレスタの仲間たちが暮らしているあの洞窟に行く。彼女たちは、いつもの通り、汚い格好だったが、冬なので、ボロを重ね着していて、目のやり場に困ることはなかった。全員に自分の荷物を持たせて、侯爵邸の大広間に空間転移する。皆は、立派な大広間に吃驚していた。
直ぐに、それぞれの部屋を割り当てた。それから、洋服屋を呼び、皆の服をオーダーする。イチローさん達は黒の執事服上下、サクラさん達は、紺色のメイド服、洞窟の仲間達は茶色のメイド服にした。
そういえば、クレスタさんの仲間の名前を聞いていなかった。後、来年になったら冒険者登録をして、自分たちの生活費を稼いで貰うつもりだ。5人ずつのパーティーが組める筈だ。イチローさん達は、邸内の警備だ。サクラさん達は、屋敷内の警備を担当する。だから、全員、短剣を装備してもらう。
フランシスカさんが不満そうだった。聞けば、僕の寝室から一番遠い部屋だそうだ。僕の部屋は、2階の一番東側の部屋で、前の侯爵が寝室に使っていた部屋だ。書斎と繋がっており、風呂場と簡単なキッチン、トイレが付いている。南側の部屋に4人、北側の部屋に2人が入るが、フランシスカさんは、南側の僕の部屋から4番目の部屋になったそうだ。僕に近い方から、シェル、エーデル姫、クレスタそしてフランシスカさん。
北側にはノエル、ビラの順に入った。まだまだ大きな部屋が空いている。
僕は、自分との関係が微妙なフランシスカは、その部屋で順当だと思ったんだけど、フランシスカは、文句を言いながら、ポロポロ涙を流し始めた。皆、シラっとしている。僕が、フランシスカをそっと抱きしめていると、漸く泣き止んだ。僕と離れ際にキスをして来たが、ノエルとビラがまだお帰りのキスをしていない事に気が付いた。
しょうがない。忙しいが、時間をかけてあげた。イチローさん達が来て、自分達の部屋は、別棟にしてくれと言ってきた。3階が、圧倒的に女性が多いため、息苦しいのだと言う。3階は、キッチンやダイニングの他に、2階の寝室よりはやや小ぶりな部屋が16部屋あったで、女性陣に1人1室を割り当てたが、寂しいので、2人1室にしてくれと言ってきた。
では、これから来るメイドさん達も、皆、3階に住んで貰い、執事さんや庭師の方達男性陣を別棟に割り当てる事にした。
夕方、執事さん達が大きな荷物を持って尋ねてきた。シェルさんが、条件等を話し合っていたが、前の侯爵は、吝嗇家で、全てに倹約をしていたそうだ。見栄っ張りで、見た目は立派そうに振る舞うが、使用人の使う紙まで枚数制限していたそうだ。当然、給料から、食費と居住費が差し引かれたので、毎月の給料は僅かしか貰えず、それさえ遅配は当たり前だった。
シェルさんが出した条件は、破格だったらしく皆、喜んでくれた。直ぐ、部屋割りを決めることにした。執事さんは、セバスと言う50歳位の人で、若い時には、王国騎士団で中隊長をしていたそうだ。メイド長は、40歳位の銀髪の美人さんで、名前をダルビと言っていた。ただ、グレーテル王国には珍しい魔人族だったので、再就職が難しかったらしい。
若いメイドさんが3人、彼女達は、当然に人間族で18歳から24歳位の子だった。後、庭師のドワーフ夫婦と馬丁が1名だった。馬丁さんは、直ぐには仕事がないので、庭師さんの仕事を手伝って貰うことにした。前の侯爵の時もそうだったそうだ。
後、初老の門番の衛士2人が居たが、流石に衛士までは間に合っているのでお断りした。銀貨5枚を渡したら喜んでくれた。
執事さんとメイドさん達には、直ぐに服の注文をしてもらった。メイド服は、濃い緑色にした。ダルビさんには普通の丈のメイド服を着て貰いたかったが、顔を赤くしてミニスカを注文していた。
女性がどんどん増えています。でも、サクラさん達はモブの予定です。それは、理由が有ります。




