第138話 魔人の国の都市デザイア市
ダンジョン、1日でクリア。先を急ぎます。
(11月30日です。)
この世界に、『魔』と言う文字が付く種族がいくつかいる。今、僕達がいる国の『魔人』族。これは、エルフや獣人と同じ亜人種だ。能力的にも、それほど人間と変わらない。ただ、魔法能力が、人間族よりも高く、少し長生きだ。
それから、『悪魔』族。これは、魔物だ。そもそも人間の血は流れていない。天の神が、地下世界に落とされたのが起源とされているが、よく分からない。眷属も多く、アンデッドとも相性が良い。最下級悪魔のレッサーデーモンから、上位のデビル・エンペラーまで知られている。デビル・エンペラーは魔界と言われる異空間にいるとされている。そもそも、魔界が何故出来たのかさえ、よく分からない。魔界から、この地上界に来た魔物達は、人間や亜人を食料として狩り始める。そこで戦いが始まるのだ。
最後に『魔』族。魔族も人間とは違う存在だ。妖精族と同じく、精神的というか、思念の存在だ。イフリートやサイクロンの様な存在も魔族と呼ばれている様だが、少し異なっている。この世界を司る4大神も、妖精族や魔族から昇華した精霊と言われている。魔人族は、精霊たる魔族から生じたと信じられている。と言うことは、僕も同じルーツを持っているかも知れない。
魔人の国に来て、初めての都市、デザイア市に到着した。人間族の都市と変わりがない。貴族が、各領地を統治しており、その頂点に国王陛下がいるそうだ。
僕達は、まずデザイア市役所に行った。この国への入国手続きをしていないので、身分証明がない。ホテルに泊まるにしても、困ってしまう。ただ、このデザイア市でも、その様な手続きはしたことが無いため、一般の魔人が旅行する際の、旅行時身分証明書を発行してもらった。ブッシュ司令官の裏書きがあったので、特例であった。冒険者証は、読取機が無いので、名前と冒険者ランクが分かる程度の役にしか立たなかった。殆どの人が、冒険者の存在を知らない世界だった。証明のために差し出した冒険者証の『S』ランクを見て誰も驚かなかった。
市内では、僕達は、注目の的だった。人間族がこの街に来た記録はないそうだ。市長から、記念のサインを求められてしまった。そして、クレスタのミニスカートに、男女を問わず痛い程の視線を感じる。11月は、北の大陸では5月位のはずだが、体感は3月頃の気候だ。皆、未だコートを着ている。カップルとすれ違った時など、クレスタに見とれていた彼氏が、彼女にひっぱたかれていた。ああ、きっと明日には、スカートの裾を切った女性が現れるのだろうと思った僕だった。
魔人の見た目は、人間族と殆ど変わらないが、大きく3つに分かれていた。魔法能力に優れている小人族。通常の中人族。そして怪力の巨人族。小人と言っても、身長は120〜150センチ位だし、巨人と言っても180〜230センチ位だ。昔は、異種間の結婚は禁止されていたが、今は、両性の合意により自由に結婚できるようになった。しかし、親や親類の了解を得るのは難しいそうだ。
ホテルに入る前に両替屋に行った。貨幣価値が異なる筈だ。金貨と大銀貨、銀貨の含有量を計って貰った。その結果、この国の通貨の概ね倍の価値がある事が分かった。
グレーテル王国の金貨1枚は、この国の金貨2枚である。僕は、金貨5枚を両替した。銅貨は中銅貨が有り、銅貨50枚の価値だった。また黄銅貨が有り、銅貨の2分の1の価値だそうだ。鉄貨が、最小貨幣で10枚で銅貨1枚は同じだった。
ホテルは、いくつもあったが、市長がすすめるホテルにした。嫌な予感がしたが、やはりスイートルームが予約されていた。断ろうとしたが、ブッシュ司令官の指定だそうだ。料金は、既に貰っており、ブッシュ司令官の隣の部屋だそうだ。ブッシュ司令官って良い人だ。夜、デザイア伯爵からブッシュ司令官と共に夕食会の招待が有った。僕達は、正装で出席したが、勲章は付けなかった。
クレスタは、シルクのオレンジ色ミニスカート上下に銀色の超高級毛皮コート、ダイヤのイヤリングにネックレスに指輪と、どこの成金叔母さんと思われるような格好だったが、邸内に入り、コートを預けた時には、伯爵を始め、居合わせた全ての人々が、息を呑み込んだ。
食事内容は、カーマン王国のものと大差なかった。まあ、鳥や獣は国境が無いから自由に往来し繁殖するし、交易が無いからと言って、人間族と全く交流が無いわけではないので、当然といえば当然であった。
伯爵は、カーマン王国の事について詳しく知りたいようだった。特産品や、食料品の値段等についてだ。今後、この伯爵領が、カーマン王国との交易の窓口になるのは間違いない。クレスタが、ガーリック男爵の娘と聞き、是非、紹介状を書いてくれと頼まれた。特に、断る理由も無いので、すぐに書いて上げることにした。伯爵は、暫く考えてから、自分も王都に一緒に行くと言い出した。何でも、モンド国王陛下から、交易の許可を御裁可頂くそうだ。その辺は、特にスルーしたが、僕達は、伯爵の専用馬車に乗る事になってしまった。これから交易をしようと言う国の領主の娘を、疎かに出来ないと言う打算も有ったようだ。
それは、いいのだが、伯爵の末娘さんを、一緒に王都に連れて行くそうだ。その娘さんは、さっきから僕をチラチラ見ているあの子のことだろう。名前は、デビちゃん、13歳で、魔人にしては珍しく髪の色が茶色だった。目は、皆と同じく赤みがかった瞳である。イタズラ盛りという感じの女の子だった。巨人種ではなく中人種のようだった。
出発は、準備があるので明後日以降という事になり、ブッシュ司令官は、部隊とともに明朝出発なので、ここでお別れだ。王都に来たら、王国軍総司令部へ必ず寄るようにとの事だった。
ホテルに戻ってから、クレスタとのんびりしていたが、クレスタに急かされて、一緒にお風呂に入った。それから、長い夜が始まった。翌朝、ゆっくり起きたら、ブッシュ司令官はもう出発していた。ホテルのフロントで、部屋をスイートからダブルに変更してもらおうとしたら、既に今日の分も貰っていると言われてしまった。ブッシュ司令官は、とても良い人だった。
今日、1日、街を見物をしようと思っていたら、デビちゃんが訪ねてきた。街を案内すると言う。それは良いけれど、デビちゃん、もうスカートの裾、切っちゃったんですね。裾から、下着のフリルが出ていますよ。クレスタが、ああいう格好もあるとのことだった。あ、そういえばメイド服もそんな感じだった気がする。
それは良い、良いけど歩く時に、クレスタと反対側の腕に自分の腕を絡ませてくる。話す時に、極端に顔を寄せてくる。昔のノエルを思い出してしまう。流石に、クレスタも、度が過ぎる接近は阻止しているが、うん、困ったもんだ。
デビちゃんが通っている王立普通学院女子中等部があった。当然、今は授業中だ。校内を案内したいと言ってきた。僕は、女子校だし興味は無いし、遠慮したかったが、どうしても校内を一緒に歩きたい。しかも、クレスタは、後ろを付いて来てくれと言って来た。
クレスタは、全て分かったようで、深い溜息を付いて、『言う通りにしてあげて。』と言って来た。
校内を歩いている間中、ずっと腕を組んだままだ。教室の窓からは鈴なりの女子生徒が顔を出して僕達を見ていた。デビちゃんが一点を見つめている。女子生徒の中で、生意気そうな子が悔しそうな顔をしていた。
校長先生が出てきた。僕達は、伯爵の賓客となっており、その案内でデビちゃんは、今日、お休みを取ったらしい。そのまま校長室に案内された。流石に、デビちゃんも、もう腕は組んでいなかった。初期の目的は、達成したらしい。
校長先生は、40歳位の男性で、クレスタをガン見していた。クレスタと目線が合うと、顔を真っ赤にして横を向いてしまった。なら、見なきゃいいのに。教頭先生は、女性教諭で、デビちゃんが、優秀な生徒だと説明していた。僕が見ても、頭の良さそうな子だと言うことは分かるが、きっとクラスメイトとは上手く行っていないのだろう。
今日の朝、伯爵家から使いが来て、デビちゃんが暫く休むとの連絡があったのだそうだ。しかし、意地が悪いクラスメイトは、ズル休みだとか、伯爵の特権とか言うらしいのだ。そのため、僕を敢えて自分の学校に案内したという訳だ。しかし、腕を組む理由が分からない僕だった。
僕は、中学校はおろか小学校もまともに行っていない。パーティーの中で僕だけが、ちゃんとした学校に行っていないのだ。この頃は、もう一度学校に行っても良いかなと思い始めていた。複雑な計算とか、王国の歴史など殆ど分からなかったからだ。シェルさんやエーデル姫は、家庭教師や婆やさんから、かなり高学歴に匹敵する学習をしているし、ノエルなどは、今、大学に行っている。
でも、僕が学校に行くのは、今の使命が全て終わってからの話である。あれ、今の使命って何だっけ。
校長室で、お茶を飲んでから、授業参観をすることになった。授業は、体育館でデビちゃんのクラスの体力測定だった。みんな、飛んだり跳ねたりしていた。校長先生が、人間族の平均的な体力を教えたいので、参加して貰えないかと言って来た。僕は、どう見ても、15歳位の体格で、女子生徒でも通用する美少年らしいのだ。生徒達も、目がキラキラと光って来た。
盛大な拍手の中、僕は最初、立ち幅跳びをした。2mを超える子は殆どいない。僕は、予備動作無しでピョンと軽く飛んだ。5mだった。思いっきり飛べば、10mは飛べるが、見物の生徒がいたので、ぶつからないように半分にした。
垂直跳びは、体育館の天井に、手が付いた。降りてくるときに3回転で勢いを殺し、音もなく降り立った。握力測定は、機械を壊さないように注意してやった。
反復横飛びは、早すぎて誰も数えられなかった。
最後に、ボール投げだったが、校長先生が、危険を感じて中止させた。クレスタが、しきりに、彼だけが異常なのだと説明していた。生徒さん達は、シーンとしてしまった。
僕は、『あ、いけない。やってしまった。』と思って、赤くなりながら、生徒さん達にニコッと笑ってやったら、黄色い歓声とともに取り囲まれ、揉みくちゃにされてしまった。教頭先生、何混じっているんですか?そして、どこ、揉んでいるんですか?
外に出るとお定まりのスイーツ屋さんだ。そこで、デビちゃんは、さっきのいじめっ子のことを色々クレスタに言っていた。デビちゃんは、伯爵の子だからと言って特別扱いはして貰いたくないし、皆んなと仲良くしたいのに、あの子が、色々意地悪をしてくるみたいだ。家は、街一番の商店を経営しており、経済的には負けていないのに、伯爵の子だから、顔が可愛いからとデビちゃんが人気者になるのが気に食わないらしい。
デビちゃんも、小学校の時は、身体が弱く、家庭教師で勉強していたので、集団生活は、中等部が初めてだった。まあ、もう少し時間が経てば、平気になるかも知れない。午後は、クレスタとは腕を組んだが、デビちゃんとは、手を握って歩くだけになった。
デビちゃん、可愛らしいです。ロリには堪りません。でも、ゴロタは、法律違反はしません。