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第134話 ガーリック男爵領のピンチ

クレスタさんとの甘い新婚生活が始まります。

(11月6日です。)

  クレスタさんが、ハッシュ村の僕の育った家に行ってみたいと言ったので、一旦、王都から西へ向けて飛び続けた。3時間で2000キロを一っ飛びだ。僕の家は、回りは草ぼうぼうだったが、中は、そんなに荒れてはいなかった。埃っぽかったが、住めないことはない。ワイちゃんは、一旦、帰ってしまった。


  クレスタさんが、家の中、僕が家の外を掃除した。昼食は、準備していたサンドイッチだ。食後、クレスタさんと2人でハッシュ村に挨拶に行った。


  衛士さんや村長、シスターは変わりがなかった。僕の身長が、15センチ以上大きくなっていたのには吃驚していたようだった。それよりも、クレスタさんと結婚したと、紹介した時には、もっと吃驚された。身長差もそうだが、クレスタさんが、この辺の村には、絶対にいない美人さんだったからだ。


  その日の夜は、僕の結婚祝いパーティーだった。食材とお酒は、僕が準備した。村の殆どの人が居たようだが、若い男の子は、ミニスカ姿のクレスタさんの長い足を眩しそうに見ていた。若い女の子は、クレスタさんの左手薬指のダイヤの指輪と、イヤリング、ネックレスを見て嫉妬の眼差しを向けていた。


  教会で一緒に勉強した女の子達が、お祝いに来たが、皆、僕とお祝いのキスをしてくる。でも、舌を入れてくる子や、股間を押し付けてくる子には、ニコニコ見ていたクレスタさんだったが、僕の股間を触ろうとしたり、手をとって自分の股間に持っていこうとする子は、直ぐに引き剥がしていた。クレスタさんなりの許容範囲があるようだった。


  パーティーが終わって、今日は自宅に泊まれと言う村長の誘いを断り、森のほとりのベルの小屋に帰った。


  お風呂に、二人で入り、お互いに背中を流し合った。


  もう11月なので、夜は、かなり冷えるが、暖房石をセットして、家全体をシールドしていたので、ちっとも寒くない。クレスタさんは、しっげき的なエプロン姿で紅茶を入れてくれた。


  二人で、向かい合ってお茶を飲んだ。


  「フフフ、二人っきりって、初めてじゃない。」


  「そうだね。結婚してからも、二人っきりはなかったね。」


 「ねえ、お願いがあるの。私のことを『クレスタ』と呼び捨てにして。」


  「うん、いいよ。クレスタ。」


  「はい、あなた。」


  「クレスタ。」


  「なあに、あなた。」


  切りがない。もう、寝ることにした。しかし、未だ大人になっていない僕は、新婚初夜といっても何も起きるわけがなかった。


  朝、起きるとクレスタは、もう起きて朝食の準備中だった。格好は、昨日と同じエプロン姿だった。「お早う。」のキスをしてから朝食にした。


  今日は、森の北、谷川まで行ってみることにした。谷川から、一気にクレスタの実家に戻ろうと言ったら、もう一晩、ここに泊まりたいと言う。その意味を理解した僕は、ニヤッと笑ったら、クレスタが顔を赤くしていた。


  森の中は静かだった。魔物が逃げていくのが分かる。途中、キノコや木の実を採取しながら北に向かう。森を抜けた原っぱに、オークがいた。僕達を見つけて逃げ出そうとしていたが、『はぐれ』を放置するとろくなことがない。オークの肺の中に、小さなファイアボールを破裂させた。瞬殺だった。オークの遺体は、そのままにした。森の肥料にでもなるだろう。


  崖の上に出た。クレスタをお姫様抱っこをして崖を降りる。ウインドを上向きに吹かせ、その上に乗ってゆっくり降りていく。瞬間的には、上昇も可能だが、バランスが難しいので、降下専用魔法だ。大雪山脈はもう雪が積もっているのか、谷川の水は、手を切るように冷たかった。また、クレスタをお姫様抱っこをして飛び石で川を渡った。


  崖の下でクレスタを待たせ、独りで崖を登った。200m位登ったところで、薬草の『蛍の光』を見つけた。もう、既に枯れていたが、花ガラがまだ付いているのが20株位あったので、丁寧に採取した。


  下りは、崖の出っぱりを利用してピョンピョン飛び降りた。最後は、10m以上の高さを一息で飛び降りた。


  クレスタの小さな悲鳴が聞こえた。地上に降り立つと、クレスタが涙目で駆け寄ってきた。僕に、抱きついて、キスをしてきた。よほど怖かったのだろう。それから2時間ほど、河原で時間を潰していた。


  『空間転移』で、家に戻ってから昼食を摂った。午後、まったりとしていると、もう冬鳥の鳴き声が聞こえる。


  クレスタが、将来、ここで暮らしたいと言って来た。生活する基盤は全て揃っている。この家の周辺は、全てベルの土地だった。井戸もあるし、小麦粉と塩など最低限の物を村から買えば、何も困らなかった。


  後は、家を増築する必要がある。今は、2LDKの家だが、後、5部屋は必要だ。クレスタは、もう2軒新しく建てて、リンダバーグの仲間達と、イチローさん達も一緒に暮らせば良いと言っていた。


  もともと、僕は、全てが終わったら、ここに住む予定だった。『全てが終わる。』、一体、何が終わるのだろうか。考えても分からない。しかし、何となく、ここには帰って来れないような気がした。そう、思ったら、少し涙が出てきた。クレスタが、優しく僕の頭を抱えていた。


  次の日の朝食後、家の中を整理し、周囲の魔除けの石板に魔石をセットした。かなり大きなものなので1年以上は持つはずだ。


  時空の切れ目から、ガーリック男爵邸のクレスタの部屋に『空間転移』した。居ない筈の僕達が2階から降りてきて、お義母様をはじめ皆、吃驚していた。今日は、このまま男爵邸に泊まることにした。


  翌朝、ガーリック男爵から相談があった。ガーリック男爵領は、カーマン王国の最南端に位置しているが、その南は標高8000mの南ヒラマヤ山脈である。その麓、奥深い森から魔物が出没するらしい。


  魔物といっても、ゴブリンやオークレベルではない。レブナントの大群とリッチ達が、辺境の村々を襲っているらしいのだ。男爵も騎士隊200名を出したが、一晩で全滅したらしい。


  このままでは、領地の南半分が魔物のものになってしまいかねない。近く、第二次討伐隊を出すが、是非、応援して頂きたいと言ってきた。


  僕は、応援することには応じるが、少し時間を貰いたいと言った。僕は、ある考えがあった。レブナントもリッチも強敵だ。通常部隊では、みすみす、敵に餌を与えるようなものだ。もう、魔物の侵略地域には、生き残った人間は居ないだろう。となれば、最大火力で敵を殲滅するしかない。


  ガーリック男爵に現状を確認したところ、南方地方には、3つの村があり、その全てが魔物に占領されているそうだ。南の村は東からヨーキ村、サタデ村、そしてトマト村だった。もう、魔物の先遣隊は、次の村目指して北上している。早く、対応を取らなければ、チェダー市そのものが危なくなる。


  次の日、チェダー市の郊外に出て、ワイちゃんを呼び出した。背中に二人乗り用の鞍をセットした。クレスタさんは、飛行服の上下セットを着ていた。


  僕も、飛行服上下を着ていた。腰には、ベルの剣を下げている。ワイちゃんだけでなく、バイオレットさんにも来て貰っている。女王陛下のブラックさんは、カーマン王国が滅びかねないので、遠慮して貰った。


  最初は、ヨーキ村に向かう街道を南下した。イフちゃんが斥候に出た。30分も飛んだら、レブナントとオークの群れを発見した。北に向かっている。


  最初に、イフちゃんの『煉獄の業火』を3連発した。ほぼ壊滅状態となったが、残党をヴァイオレットさんが、『ブレス』で黒い灰にした。


  ヨーキ村上空に到着した。眼下にはレブナント、オークそしてゴブリンソルジャーの群れが見えた。リッチは、きっとどこかの屋内だろう。


  僕は、ヨーキ村の郊外に降りた。ベルの剣を抜く。剣に魔力を流し込む。青白く光り始める。色合いは変わらないが、見ていられない位に眩しく光る。ゆっくりと上に向けて、詠唱なしに雷撃魔法を放つ。


    「サンダーボルト・ヘル・ストーム」


     ピカッ、ガラガラガラガラ、ドッゴーーーーーン!


  村を中心に半径500mの物体は、全て溶けてしまった。当然、地面も溶けている。そればかりではない。雷撃が、500mを超えて地面を這っている。雷撃耐性の無い魔物は、全て、その雷撃で黒焦げになってしまった。


  空に黒い瘴気が浮かんでいる。5つだ。瘴気の中にリッチがいる。瘴気を纏ってワイちゃんの『炎のブレス』や、僕の雷撃を躱したようだ。僕は、すかさず、ベルの剣に気を込めて、白い斬撃を放つ。真っすぐ、リッチを目指して斬撃が飛ばされるが、リッチの瘴気のシールドに跳ね返される。僕は、次に『聖』なる魔力をベルの剣に流し込む。ベルの剣が白く光り始めた。そのまま、ベルの剣を振って、聖なる魔法を放つ。


    「ホーリー・ゴッド・プロミネンス。」


  『聖なる神の陽炎』が剣から迸って、5体のリッチに降りかかる。リッチは、瘴気のシールドを失って、地に落ちた。すかさず、僕が全力ダッシュで駆け寄る。左手には、力の剣が紅い光を放ちユラユラと揺れている。


  リッチが、魔弾を撃ってくる。瘴気を固めたものだ。しかし、僕は『聖なる盾』を現出させている。六角形の白い魔法陣が蜂の巣のように広がっている。黒の瘴気の魔弾に当たると、六角形の一つが消えるが、直ぐ外周から補充される。


  リッチの傍に寄った時に、『紅の剣』をふるう。大剣の形に具現化した『紅の剣』は、リッチを真二つに切り裂いて、その後方のリッチも切り裂いてしまった。


  これで、ヨーキ村の魔物達は全て殲滅されてしまった。

南の国では、何か良くないことが起きているみたいです。

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