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第131話 カーマン王国の女商人イリアさん

いよいよカーマン王国へ向かいます。でも、その前に、お定まりのイベントが発生します。

(10月7日の朝です。)

  セバス市を出発した。これから、カーマン国との国境までは、野営1回だけである。駅馬車は、僕達以外に1台だけだ。護衛の衛士隊が同行する。狼人の部隊だ。


  いつものように7人で乗ったら、珍しく1人、相乗りで乗ってきた。人間の女性だ。年齢は30歳近くで、仕事で、セバス市に来ていたそうだ。


  獣人の従業員と一緒だったが、人数の関係で、こちらに乗って来たらしい。名前を『イリア』さんと言い、衣料品の製造・販売をしているそうだ。


  イリアさんは、僕達を見てビックリしていた。全員、女の子で、しかも殆どの子が、最近王都で流行っているというミニスカートだ。1人は高校生だし、もう1人は10歳位だし。


  イフちゃんは、僕の成長に合わせて大きくならずに今の姿のままだった。変なこだわりがあるようだ。


  イリアさんは、僕をズボンを履いている女の子と思ったらしい。最近、僕は、髪の毛を切っている。前のポニーテールは、やめて、オカッパ頭、いわゆるボブにしている。どちらも女の子の髪型だという事を僕は知らない。シェルさんに、そうしろと言われた通りだ。


  最近は、『妻の言うことが聞けないの。』が、口癖だ。とても怖い。


  イリアさんが、尋ねてきた。


  「皆さんは、どちらへ行かれますの?」


  クレスタさんが、答えた。


  「はい、私の結婚式のために、郷里に向かっているのです。」


  「あら、それはおめでとうございます。それで、郷里ってどちらですの?」


  「カーマン王国ベール侯爵領のチェダー市です。」


  「あら、それではガーリック男爵の所領ですね。」


  「はい、私の父です。」


  「え、貴女が!確か、あそこには、行方不明の行き遅れ、いえ、何でもありません 。」


  「その行方不明の行き遅れの娘が、私クレスタです。」


  「え、クレスタちゃん、私、父と一緒に男爵家へお邪魔した時、お会いしてますのよ。貴女が7つ位の時に。」


  クレスタは、覚えていなかった。父のところへは、来客が多く、覚えきれなかったのだ。


  「それで、ご結婚相手は、どちらの方ですの。」


  「このゴロタ君です。」


  「は!?」


  イリアさんは、僕を見て、目が点になった。この子、どう見たって14〜5歳の女の子だったからだ。そういえば、1人だけズボンだし、冒険者服だし、胸も無いし。でも、ここに居るエルフの子も胸が無いし。失礼な事を考えているイリアさんだった。


  「そう、可愛いお婿さんね。」


  何故、全員がニヤつくのか意味が分からなかった。


  「それで、皆さん、素敵なミニスカートを着ていますが、どちらでお求めになられたのですか?」


  「グレーテル王国の王都です。」


  イリアは、今年の夏前、グレーテル王国に仕入れに行った時は、このようなデザインや色の物は無かった。今年の秋物の新色なのだろう。パステルカラーを基調に、暖色系のストライプが数本、バイアスに入っている。可愛らしい感じとスポーティさが混じっている。


  「あの、明日、ギフト市に到着したら、ぜひ私の店に寄って頂きたいのですが。」


  聞くと、本店は、カーマン王国の王都だが、仕入れの関係で、中央フェニック帝国に接しているギフト市に店を構えているらしい。中央フェニック帝国は、羊毛と絹糸の主要生産国らしい。特に、カシミヤ山羊の毛で作った毛織り物は最高級品との評価を得ているそうだ。


  お昼は、イリアさんと一緒に食べた。従業員の方は兎人の女性だった。2人分増えても訳もない。今日のメニューは、海鮮パスタとジャガイモとキャベツとソーセージの煮込みだ。


  イリアさんは、ビックリしていた。何も無いところから物が出てくる事と、クレスタさん達の料理の手際が良いことだ。今日から、ビラも料理を手伝い始めた。セーラー服にエプロン、可愛い。でも、もう、そろそろセーラー服、やめませんか。この子が婚約者だと思うと、禁断の果実に手を出している感じがするのだ。


  食後の片付けは、僕も手伝った。手伝うと言っても、洗い終わった食器やテーブルなどをしまうだけだが。大きなテーブルを一人で持ち上げたので、イリアさんは、またまたビックリしていた。


  国境に差し掛かった。いつもと同じように、野盗が現れた。この辺は、街に近いから、捕まる可能性がありそうだが、衛士隊は、国境を越えるのは警護など特別の場合で、通常は越境しての権限行使はしない。それで、国境付近では野盗の類が多いのだ。


  中央フェニック帝国の警護隊も強いが、相手は30人、警護隊は、10人だ。数の論理で、劣勢になって行く。僕が、出ようとするが、ビラが、先に飛び出した。コロちゃんも一緒だから大丈夫だろう。ビラは、ワンドを敵に向けた。


    「サンダースピア」


    ドガン、ドガン、ドガン



  3本の雷撃の槍が敵3人の胸に突き刺さる。


  ビラが、口笛を短く吹いた。


  上空から白頭鷲のバルドが急降下で襲いかかる。


  コマちゃんをけしかける。コマちゃんが、大型犬の大きさになって襲いかかる。


  雷撃の槍が次々と襲いかかる。


  警護隊の方達が、一旦引き下がった。負傷者が多い。


  ビラは、長く口笛を吹いた。バルドとコマちゃんが離脱する。ビラは、ワンドを頭上に掲げ、


    「サンダーボルト・フラッシュ」


  地面を電撃が走る。事前に雨を降らせて無いので、気絶する程度の感電だった。


  敵は、ほぼ全滅した。


  警護隊の被害は、死者2人、重傷者3人、残りの全員が軽い怪我だった。


  ビラとノエルが、負傷者の怪我をヒールで治すが、重傷の者は、難しい。特に内臓損傷の場合、ヒールをかける場所が分からず、無駄に魔力を損耗してしまう。


  もう、虫の息の衛士に、シェルさんが手の平を当てる。肩からお腹にかけて手をずらしていく。お腹の右側で手が震え赤く輝いた。肝臓だ。早く治療しないと出血多量で死んでしまう。


  シェルさんが、光を白く変えた。『治癒』を使っている。肝臓の裂けているところに気を流し込む。衛士さんの呼吸が落ち着いたようだ。


  「まだ、お腹に血がたまってます。今日は、動かさない方が良いと思います。」


  急遽、野営の準備が始まった。今は、春とはいえ、寒暖の差が激しい時期なので、怪我人には辛い時期だ。


  他の重傷者は、生命に別状がないみたいだ。傷口を早く塞いだり、折れた骨を繋ぐのは、ヒールで何とかなるようだ。


  シェルさんは、さっきの衛士のところに行き、手の平をお腹に当てて、治癒の力を使う。お腹の中の血を、血流に戻すのだ。本来は、本人の治癒力でできるのだが、数日もかかる場合がある。その間に、腹膜炎を起こしたら、ほぼ死んでしまう。


  僕が『復元』を使えば、きっと直せるだろうが、シェルさんもスキルを使って、何とかしてあげたいと頑張っている。見守ってあげた。


  夕方、やっと山を越えた。もう、動かしても良いが、これからの移動は危険だ。衛士隊の責任者の人達と話して、衛士隊はセバス市に戻ることにした。


  これからの旅は、僕達の自主警備にした。


  夜、イリアさん達と一緒に食事をしてから、シェルさんが、ゆっくりお風呂に入りたいと言ってきた。土魔法で、バスタブを作り、中をスベスベにする。次に洗い場を作り、目隠しの壁を作ったら、シャワー石をセットする。高さ調節できるスタンドをフェニック帝国で用意していた。お風呂は、一度に2人が入れる大きさにしておいた。


  今日、僕と寝る予定のノエルは、先に入っていた。僕も、後でゆっくり入ろうと思ったら、ノエルから、早く入るように言われた。うん、ノエルも、もう15歳、ちゃんと発達しているようだった。


  全員、お風呂に入り終わったら、イリアさんも入りたいと言ってきた。綺麗なお湯に張り替え、イリアさんと従業員の方もお風呂に入った。


  イリアさんは、なぜか、タオル地のガウンだけだった。あの、豊かな胸の先っちょが、チラチラ見えるのはわざとですか。


  僕は、テントに戻って行った。寝袋の中には、既にノエルが待っていた。


  夜、イフちゃんが狼か何かを焼き殺している気配がしたが、放って置いた。


  翌日、警護隊の方々は、戻って行ったので、僕達の乗っている馬車が先頭になった。


  イフちゃんが先導し、バルドが上空を旋回している。コマちゃんとトラちゃんが大型獣の大きさになって左右を並走した。


  野党は勿論、並の魔物では近づけない態勢だった。イフちゃんは、後方の馬達に気を使って、見えないくらい先を進んでいる。


  その日の夕方、カーマン王国のナチュラル辺境伯領イーストウッド市に夜遅くに到着した。昨日、予定していたが、走れなかった距離も走破したことになる。


  ホテルは、駅馬車の到着を待っていてくれた。いつもの通り、ダブル1つと、ツイン2つを取った。


  食事は、夜、遅いこともあり、大したものがなかったが、僕達はカレーライスにした。


  馬車の旅は、結構疲れるもので、今日は夜のセレモニー無しで寝る事にした。そんな時は、シェルさんが一緒に寝る事になっているらしい。理由は分からない。


  翌朝は、駅馬車は1日休みだった。シェルさん達は、イリアさんの店でファッションショーをしたらしい。イリアさんの店には、シェルさん達の興味を引く服は無かったみたいだ。ビラは、近所の高等学院のセーラー服を買って、裾を詰めて貰っていた。ああ!


  グレーテル王国に戻ったら、絶対、王立魔法学院に、入学させてやると思った。あそこは、ブレザーだから、もうセーラー服は着れないだろうと思う僕だった。


  僕は、暇だったので、武器屋を覗いてみた。何が欲しいということはないが、何となく寄ったのだ。裏の方では、金属を叩いている音がした。


  ぶらっと見ていたら、奥の方の箱に、ジャンクの武器が沢山入れられていた。1本大銅貨1枚から銀貨1枚の値札が付いていた。


  ふと、古いが由緒のありそうなレイピアを見つけた。値札を見ると、大銅貨2枚だった。鞘から抜いて見ると、安い理由が分かった。先が折れているのだ。レイピアは、刺殺専用の武器だ。先が折れていては、刃全体を交換しなければならない。それに手入れが悪いのか、赤く錆びているし。錆びている?この赤は、あれだ。あれに間違いない。


  長さは、成人男子用より20センチ位短くなっているが、エーデル姫が使っているサイズとほぼ同じだ。僕は、剣の束から鞘を引き抜くと、そのままカウンターに持って行った。大銅貨2枚を出す手が、少し震えている。


  店の若い店員は、面倒臭そうに、『研ぎますか?』と、聞いてきたが、首を横に振って、剣を受け取り店の外に出た。


  こんなことがあるのだろうか。この剣が、大銅貨2枚なんて。大金貨2枚でもおかしくない。いや、桁が違うかも知れない。


  そう、この剣は『ヒヒイロカネ』の剣だった。

ビラの戦い方、如何でしたか。今のところ、コマちゃん以外、攻撃力の強いビーストがいないのですが、これからどんどん増える予定です。

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