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第126話 獣人の国 奴隷狩り

獣人を奴隷で売り飛ばすのは、帝国の人間のようです。 

(9月8日です。)

  帝都まで、あと3日だった。今日は、小さなこのレイド村に泊まる予定だ。村に到着すると、何か騒がしい。男の獣人達は、目が血走っており、女性達は泣き崩れていた。


  何かがあったようだ。


  シェルさんが、近くの男性に聞いて見たところ、賊に襲われ、子供達が誘拐されたそうだ。6歳から10歳までの子だけ30人程が連れて行かれたらしい。抵抗した男達は、皆、殺されるか大怪我を負わせられた。また、若い女性のうち、何人かは酷い目に遭ったらしい。子供達は、馬車に乗せられ、北の方へ行ったので、今、近くの村に応援を貰いに行っている最中だそうだ。


  相手は、50人位の人間族で、魔導師が何人かいたようだ。


  ビラとノエルと大司教様が、治療を行ったが、大司教様の治癒の力は強烈だった。治療所に集まっている怪我人達の間に立って、ブツブツ言っていたら、建物全体が金色に光り、診療所の中にいた怪我人全員の傷が、みるみる回復を始めた。


  スキル『神の御技』だった。こんなスキルがあるから、大司教に選ばれたのであろう。


  大司教様は、その場にしゃがみ込んでしまった。スキルの消耗が激しいのだろう。婆やが、肩を貸しながら宿に連れて行った。後は、ノエル達が、ヒールを掛けて、完治させていた。


  僕と、イチローさん達は、北へ向かった。イチローさん達は、全速力の僕の走りに必死に付いて来る。


  イフちゃんが、既に賊を見つけていた。あと5キロ。子供達が乗っている馬車があるから、奴等もそんなに早くは走れない筈だ。


  イフちゃんが、彼らの行く先に『煉獄の業火』を打ち込んだ。


    ドゴーーーーーン!!


  賊の一団は、急停止した。賊の騎乗していた馬が、棹立ちになり、何人かが落馬した。彼らが、態勢を立て直す前に、僕達は追いついた。サクラさん達は、子供達が乗っていると思われる馬車を囲む。イチローさん達は、散開して身を隠している。賊の目には、少年にしてはかなり小さな子供と、変わった格好をした女性4人だけしか見えなかったようだ。忍びマスクをしていても、ミニスカメイド服では、女性だとバレバレであった。


  彼女達は、忍刀を右手で逆手に持ち、左手には、大きな3本の爪の付いた小手を嵌めていた。子供達の馬車の周りには、5人位の賊が囲んでいたが、彼女達が接近して数合やりあうと、あっという間に倒されてしまった。


  突然、彼女達の近くで、火柱が上がった。ファイア・ボールだ。彼女達のうち、2人が爆風により、吹き飛ばされた。動けなくなっている。


  そばに行こうとする僕の頭上に、氷の槍が降り注ぐ。アイス・ランスだ。しかし、僕の近くに寄ることもなく、消滅してしまった。構うことなく、女性忍びのところに行き、傷を見る。怪我をしていたのは、ツバキとユリだ。火傷が酷い。メイド服も焼け焦げている。パンツは、見なかった事にしよう。


  また、ファイア・ボールが撃たれて来た。僕は、チラッと視線を向けた。瞬間、火球が消滅した。意識せずに、空間の歪みに火球を吸い込ませた。さっきのアイス・ランスも同じだった。


  ツバキ達にヒールを掛け、焼けたメイド服に『復元』を掛けて、パンツを見えなくした。イチローさん達は、草叢から飛び出ては、1人また1人と賊を倒していく。魔導師が、呪文を詠唱し始めると、十字型の鉄板、それは『十字手裏剣』と言うそうだが、それを投げて、詠唱を中断させる。早くやってほしかった。僕も戦闘に参加する。赦してやる気がないので、ヒゼンの刀を抜いた。命までは取らないが、日常生活を送れないようにするつもりだった。


  僕は、ヒゼンの刀を一閃させた。3人の腕が肩から落ちた。後は、目で追いかけられない。腕の本数が見る見る増えていく。武器を持っていない魔導師も同じだ。杖ごと腕を切り落とす。勿論、両腕が落ちた者もいた。


  腕が、35本位になったところで、戦闘は終わった。イチローさん達は、賊にトドメを刺している。サクラさん達も馬車の周りに倒れている賊にトドメを刺していた。残りの賊のうちの首領らしき男が、泣いて命乞いをしている。


  きっと、あの村では、命乞いをした村人達を殺し、女を犯したのだろう。この馬車の中の子達だって、酷い目に合わせてから、売り飛ばすつもりだろう。北の帝国では、奴隷制度は改善されたが、まだまだ需要はあるのだ。獣人の愛玩用なら大金貨2枚、労働用なら金貨5枚で売れるので、いい金儲けになる。


  首領は、ただ一人の人間族である僕に向かって、下卑た笑いをしながら、


  「あんただって、金がほしいだろ。半分やるから勘弁してくれよ。こんな汚らしい獣人どもの味方なんかしねえでよ。何だったら、この中の子、好きにしたっていいんだぜ。なあに、減るもんじゃ無し。上玉も、ヘッブ?」


  僕は、躊躇う事なく、首領の首を刎ねた。馬車の中には、大勢の子供達がいた。殴られたのだろう。顔を晴らしたり、口の周りに血がこびりついている子もいた。サクラさん達が、忍びマスクを脱いで、馬車の中に乗り込んでいった。あのう、ミニスカートで、その格好は不味いのでは。僕は、しっかり見てから、見ぬフリをした。


  帰りは、ゆっくり帰ったが、途中で追い掛けて来た村の人達と合流した。


  村に戻ったら、喜ぶ親子と、泣き崩れる子供達に分かれた。僕達は、教会で炊き出しをした。ありったけの鍋で、豚肉とジャガイモと大根などの根菜類を味噌で煮たスープだ。和の国では『トンジル』と言っていた。


  後、ライスを炊いて、丸めて塩を付けたものも作った。クレスタさんと、ノエルとメイドさんとサクラさん達で料理していたが、サクラさん達は手際が良く、あっという間に準備が終わった。


  夕食後、旅館に戻ると、村長がお礼を言いに来た。シェルさんが、親が死んでしまった子達は、どうするのか聞いたら、この村は、種族こそそれぞれ違うが、皆、親戚みたいなものなので、『村子』として村で育てていくとの事だった。シェルさんは、金貨1枚を子供達のために使って下さいと言って渡した。


  大司教様は、亡くなっった村人の葬儀で大忙しだった。大司教様がお祈りをすると、遺体が、何か黄色い光に包まれ、その後、上に昇って行って、天井にぶつかって消えてしまう。


  後で聞いたら、霊でも何でもなく、ただ光で遺体を包んでやるだけだそうだ。皆が感動するから、やってあげているとのことだったが、宗教的行事には、そんなことも必要なのだろう。これは、ゼロス教の大秘術で、大司教様と司教様の何人にしか伝えてないそうだ。


  うん、ペテンだね。それで、執事さんが、祈祷料銀貨3枚を貰っていた。洗礼名を付けると、金貨1枚以上だが、今回、頼む人はいなかったそうだ。


  僕は、黙ってしまった。シェルさん達も同じだった。


  翌朝、村のはずれに『形』の稽古に行ったら、イチローさん達が訓練をしていた。トンボ返りを連続でしたり、手裏剣を投げたり、絶対にお金を取れるレベルだと思った。


  イチローさんが、僕に、剣術の稽古をお願いして来た。僕は、細い柳の枝を50センチ位に切って、左手に構えた。彼らの実力は、昨日見たので知っているが、指を5本立てた。5人でかかってこいと言う意味だった。


  イチローさん達は、最初、直刀を抜かずに、鞘のままかかって来たが、僕は、右手で受け止め、真剣でかかって来るように手真似で教えた。


  結果は同じだった。誰一人、当てることができない。それどころか、柳の枝が切れないのだ。


  皆には内緒にしたが、柳の枝に剣が当る瞬間だけ、シールドを掛けていたのだ。


  稽古が終わった。腕にバラツキはあるが、他の武術と併用すれば、そこそこ負けないレベルだ。特に3本爪の小手との併用は、人間では避けることのできないレベルだった。さすが、猫人族、引っ掻くのは達人級だった。


  後、サクラさん達、ミニスカメイド服で回し蹴り、絶対にやめた方がいいです。僕相手以外の時は。


  僕は、聖剣と言われている大剣の木刀をイフちゃんに出してもらった。


  イチローさんに振らせてみる。全く振れない。


  僕が、唸りを上げて振ってみせた。100回位振ってから、イチローさんに渡した。今日の稽古は終わった。


  それから、イチローさんは100回振れるようになるまで、他の稽古はしなかった。


  稽古が終わったら、ユリさんが側に寄って来た。耳が丸い虎模様の毛の子だった。まん丸の目が可愛い。


  昨日、猫人族の子を助けた事のお礼がしたいと言った。僕は、お礼なんかいらないと言って、首を振っていたら、急に抱きついてキスをして来た。


  ギュッと背中に回した腕に力を込めて、そして、舌を入れて来た。ザラザラの舌だった。サクラさん達も後ろに並んだので、僕は、思いっきり腕を伸ばして、ユリさんを引き剥がし、ダッシュで旅館に戻った。


  後で、この事を知ったシェルさんが、僕を正座させて説教したのを、他の子達は知らなかった。でもユリさん達を説教して貰いたかった。


  シェルさんが、サクラさん達に、『ゴロタ君には近づかないこと。既に結婚しているし、婚約者も3人いるので、誘惑されても困る。』と言ったが、彼女達の言い分はこうだった。


  『ゴロタさんに近づくのは、勤務時間外だから、自由な筈だ。それに、そんなに婚約者がいるなら、愛人なり恋人を増やしても問題ないはず。もう、やった者勝ちよ。』


  え、怖いんですけど、と思うんですけど。シェルさんは、諦めにも似た深い溜め息を付いていた。


  次の日、帝都に向け、駅馬車が出発した。僕達の馬車が先頭で、次に大司教様の馬車。次はサクラさん達の馬車で、他の乗客の馬車が続く。最後尾は、イチローさん達の馬車だ。トラちゃんは、サクラさん達の馬車に乗っている。サクラさん達は、トラちゃんが『白虎』であることを勿論知らない。


  ところで、大司教様、早く後任の候補者を見付けて貰いたいんですが。最近は、僕達の馬車に乗ってきたり、サクラさん達の馬車で、お菓子を食べながら、ダベったりと、好きにやっている。


  それに、お付きのメイドさん、確か名前はレミィさんと言ったが、何故、サクラさん達と同じミニスカメイド服なんですか。ご主人様は、聖職者でしょ。


  僕は、知らなかった。大司教様の白の高級毛皮ローブの下がどうなっているかを。

本当に、次から次、旅は多難です。

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