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第124話 旅の仲間が増えちゃった。

大司教国では、たいしたイベントは有りませんでした。もう、西へ向かって出発です。

(8月29日です。大司教国を出発します。)

  僕達は、中央フェニック帝国を目指すこととした。中央フェニック帝国は、亜人の国だ。 皇帝は、獣人のライオン族が代々即位している。



  朝8時、停車場は、華やかな雰囲気で包まれていた。シェルさん達、若い子がミニスカート姿でキャピキャピしていたからだ。


  駅馬車は4台編成であったが、その後ろに、だいぶ離れて1台、豪華な馬車が付いてきていた。白馬の8頭立て4人乗り馬車で、紺色の漆塗りキャビンには、金彩色で唐草模様が描かれており、ドアには双頭の竜の紋章が浮き出ていた。


  大司教専用馬車だ。窓ガラスには、レースが引かれていて、車内の様子は分からない。


  僕達は、後ろから付いてくる馬車には、全く気が付いていなかった。昼食休憩の時、一番後ろの馬車を見て、あんな馬車、あったかなと思ったが、自分たちの食事の準備を優先して作業を始めた。


  僕達は、馬車から降りて来た女性が、僕達に近づいて来たので、あれ、誰だろうと思ったけど、直ぐ大司教様だと気が付いた。


  大司教様は、今日は真っ白な毛皮のローブを羽織っており、銀色の長い髪を結ばずに後ろに垂らしていた。


  大司教様は、僕達のテーブルの前に立ち、じっとしていた。しょうがないので、僕が椅子を引いてあげた。大司教様は、礼も言わずに黙って椅子に座った。お付きの婆やとメイドが温かいお茶やクッキーなどを出し、初老の執事が、暖房魔道具を持ってきてそばに置いた。


  「ゴロタ殿、今日の昼食は何にするのじゃ。」


  僕が答えられる訳がなく、準備をしていたノエルが、今日の献立を答えた。


  「本日の昼食は、熱々スープパスタとそら豆の甘煮です。大司教様。」


  「ふむ、私の分も用意して貰っても良いか。」


  テーブルは、2セット出しておいたので、大司教様の分どころかお付きの人全員が座っても十分だった。僕は、イフちゃんに追加の材料を出して貰って、料理の量を倍にした。食器は、全員一緒にはできなかったが、テーブル3つ分はあるので、足りないことは無かった。


  大司教を始め、お付きの人達は吃驚していた。何もないところから次々と食材や食器が出て来るのだから。準備をしている間に、シェルさん達が、枯れ木拾いから帰って来た。エーデル姫は、変わった形の骨を拾ってきて喜んでいた。


  シェルさんは、大司教様を認めると、ムッとした顔をしながら、


  「これは、大司教様。本日はどのようなご用件ですか。あらかじめ来られることを言っていただければ、準備もちゃんとできましたのに。」


  ものすごく、嫌みたらしく言ったので、お付きの婆やや執事のおじさんは、冷や汗をかいていたが、大司教様はまったく気にせずに、


  「気にせずとも良い。特に用がある訳ではない。これから、ずっとゴロタ殿と一緒に行動しようと思っている。」


  え、ちょっと待ってください。今、何か言いましたよね。ずっと一緒?ゴロタ君と? 妻である私の許可も取らないで。頭を抱えるシェルさんだった。これと言うのも、美女、美少女を引き付けてしまうゴロタ君が全ていけない。ジト目で僕を見るシェルさんだった。


  「でも、大司教様、お国を離れて宜しいのですか。毎日の神事とかお祈りはどうするのですか。」


  「心配には及ばぬ。教会の爺やに任せて来た。私の後任者を探すと言ったら、喜んで外に出してくれた。」


  これは、本当だった。教会としては、何事につけてもいい加減な性格の大司教様には、本当に困っていたそうだ。この前のニセ鑑定書事件など、本来ならば教会の威信を損なう大事件であるが、かなりの金額で被害者と示談をして隠密裏に処理した。


  しかも、今回が初めてではない。外国の公賓が来られるというのに、どこかに出かけて夜まで帰って来なかったりと、どうやら間違えた育て方と、天然の残念さがコラボしているみたいだった。


  次の大司教を見つけるのも、現大司教の務めなので、さっさと追い出し、次の候補者を見つけさせようとしたのが真実である。


  路銀や必要な物資については、各国のゼロス教会にお達しを出しているので心配ないし、何よりもゴロタ殿と一緒なら、危険は一切ないものと、警護の聖騎士を一人もつけずに旅に出したのである。


  「それじゃあ、なぜゴロタ君と一緒にいなければいけないの。いろんなところを探し回ればいいじゃない。」


  「それは、もっと心配することはない。私が、ゴロタ殿と一緒にいたいからじゃ。ウフフ。」


  ああ、エーデル姫の時とほぼ同じ展開だ。駄目だ、エーデル姫よりも遠慮がない。もう、何も言う気がしなかったシェルさんだったが、最後に一つだけ聞くことにした。


  「それじゃ、最後に一つ。何故、ここで一緒に昼食を食べることになったの。」


  「それは簡単な事じゃ。私が食べたかったからに決まってるからじゃ。」


  何も言えなくなった、シェルさんだった。


  まあ、食材はたっぷりあるし、御者さんも含めて6人分位、大したことは無いが、さも当り前のようにご馳走になる、大司教様の精神構造を疑ってしまうシェルさんだった。


  食後、片づけをしている僕に、午後は自分の馬車に乗れと命令してきた大司教様だったが、当然に拒否をして、大司教様の御不興を買ってしまった。その日の夕方、最初の宿泊地、ビイト村に到着した。僕達は、3軒ある旅館のうちでも一番上等の旅館に泊まった。店主も従業員も、全員、獣人だった。


  ダブル1室とツイン2室を取ったが、大司教様は、ダブル1室を取った。執事さん達は、下の階のツインとシングルを取ったらしいが、メイドさんが随分遅くまで、大司教様の部屋で世話をしていたみたいだった。


  いつものお休みのキスをするときに、部屋にシールドを張ったのは、大司教様の部屋が隣だったからだ。まさか、大司教様は壁抜けのスキルなど無いと思うが、用心のためであった。


  ビラは、お休みのキスには参加しないので、自分の部屋で寝ていた。夜、寝るときの順番には入りたがるのに、本当におかしな子だ。今夜のセレモニー当番は、ノエルだった。そして、事件は次の日に起きた。


  朝、神様へのお祈りのため、早く起きて、裏庭に行こうとする大司教様と、稽古のため、やはり裏庭に行こうとする僕が廊下で鉢合わせになってしまった。僕の部屋のドアが半開きになっているときに、ノエルが半裸のままトイレに行こうとして、大司教様と目が合ってしまった。


  目を大きく見開く大司教様。僕は、慌ててドアを閉めたが、もう遅かった。僕を押し退けて、ドアを開け、室内に入る大司教様。ベッドにもぐりこむノエル。状況は、不倫現場を見られた瞬間という状況だ。


  僕が大司教様に説明できる訳がない。仕方無く、シェルさんを部屋に呼んだ。ノエルは、ベッドの中でカッターシャツを着て、シャツのボタンを締めていた。当然、ズボンはベッドの下だ。


  シェルさんが、部屋に来た。部屋の状況を見て全てを理解したシェルさんは、大司教様に説明を始めた。


  ・メンバーのうち、私とビラ以外は、ゴロタ君の婚約者であること。


  ・自分も含めて、ゴロタ君とは誰も男女の関係にはなっていないこと。


  ・夜、交代で一人ずつ、ゴロタ君と一緒に寝ていること。その際にも、裸になっても男女の関係は無い事。


  ・9月末には、クレスタさんと結婚すること。年内には、エーデル姫とも結婚の予定だという事。


  以上、説明をしたのだが、聞いていた大司教様は、顔を真っ赤にして、「夜、ベッドの中で何をしているのじゃ、」と聞いてきた。シェルさんも、顔を赤くしながら「いろいろ。」と答えるだけだった。


  その後、僕達が朝食を摂っていると、執事さんと一緒に大司教様が、食堂に入ってきた。僕達を見つけると、プイッと顔を背けたので、シェルさんが、ニタアと嫌な笑いをしていたのを僕はしっかりと見てしまった。


  これで、大司教様は、呆れて帰られるだろうと思ったのだ。しかし、その期待は、見事に裏切られたのであった。


  駅馬車の停車場には、大司教専用馬車が止まっており、僕達の出発に合わせて、ちゃんと付いて来るのだった。


  昼食の際には、当然のように、テーブルに来て座ったが、椅子を引いたのは、執事さんだった。


  メイドさんは、食事の準備を手伝っていた。今日のメニューは、鹿肉の燻製の卵とじに、キノコのコンソメ、あとポテトサラダだ。


  洗い物は、全てメイドさんがやってくれた。うん、よく働く人だ。一緒にいる婆やと言う人が、何をしているのか分からなかったが、シェルさんが言うには、いるだけの人らしい。


  メイドさんや執事さんに用があるときは婆やを通じてお願いするそうだ。シェルさんの『郷』ではそうだった。


  他の駅馬車の乗客達は、大司教様の馬車が付いて来た段階から、僕達には近づかなかった。


  夜、執事さんが訪ねて来て、昼食代を支払いたいと言ってきた。シェルさんが、1人銅貨5枚で、6人分、大銅貨3枚を頂くことにした。1か月分銀貨9枚だ。前払いで払って貰った。


  それから、執事さんと色々話をして分かった事があった。


  フランシスカお嬢様が、大司教国へ来られた時から、お仕えしている事。フランシスカお嬢様のご両親は、元貴族だったが、2歳の時に、魔物に殺され、それからは親戚の家を転々としていた事。


  大司教になられたのは、12歳の時でしたが、いつも辞めて冒険者になるんだとお泣きになっていた事。


  シェルさん達は、それを聞いて不幸な少女の生い立ちに涙を浮かべていた。エーデル姫と僕以外は。


  次の日、優しい気持ちで接してあげようと思っていたが、相変わらずの高ビーな態度に、そんな気持ちが霧散してしまったシェルさんだった。


  大司教国を出発して5日目、僕の17回目の誕生日を迎えた。


  この日は、野営だったので、次の王都到着後に、お祝いをする事にした。


新たな女の子が増えました。でも、シェルさん達のようになるには、まだまだ時間が、かかるようです。

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