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第123話 フランシスカ・エド・ゼロシッシュ32世

ゼロス教大司教国へ来ました。ここでも、トラブルが。

(8月25日です。)

  聖ゼロス教会大司教国の最高指導者は、当然大司教であり、名前をフランシスカ・エド・ゼロシッシュ32世と言う。なんでも、8年位前に前ゼロシッシュ31世が、神の啓示を得て、どこかの国から連れて来たらしい。その時、32世は、まだ7歳だったそうだ。という事は、現在15~16歳、僕と同じ年位か。


  そんなことは関係なく、僕は一人で、武器屋に寄っていた。シェルさん達は、当然、洋服屋さんとかカバン屋さんなどを見て歩いている。


  僕は、武器屋の奥の、高級サロン的な場所に陳列されている剣をみていた。全部で8本飾っているが、全て聖剣と言う名が冠についている。


    『聖剣エクスバカリー』

    『聖剣ラグナロックン』

    『聖剣ムラサメモドキ』

    『聖剣モモタロウの剣』

    『聖剣ドウタヌキのような剣』

    『聖剣ハチノヒトサシ』

    『聖剣ツバメノ恩返し』


  なんか怪しい。最後の方なんか、剣でもないし。しかし、現ゼロシッシュ32世の鑑定書付きだ。値段は、『要応談』と書いているが、その下に小さく『最低価格大金貨1枚』と書かれている。オークションじゃあるまいし、物を売るのに最低価格を表示して、一体いくらで売るつもりなのか分からない。僕だったら、最低価格以上は、鉄貨1枚だって払わない。


  それに付けても、この剣は怪しい。イフちゃんも、『こんな鉄くず、聖剣などではない。』と、言ってくれた。見ているだけで、飽きてきたので、もう帰ろうとしたら、店主が愛想笑いをしながら近づいて来た。


  「これは、これは。よう、おこしやす。如何でっか。この聖剣、素晴らしいものでっしゃろ。どや、ちょっと振ってみたらいかがでっか。何、振るだけやったら、ただでっせ。ただ。お足はいただきまへんってことでっせ。」


  と無理やり、『聖剣エクスバカリー』を押し付けてきた。僕は、仕方が無いので、店内の少し広くなっているところで、剣を抜いてみる。刃渡り85センチのロング・ソード。材質は普通の鋼鉄製。刃体に金模様を彫り込まれているので、聖剣っぽく見えるが、持った感じもしっくりこないので、きっと駄剣だと思う。それでも、少し気を流し込んでみる。


    パキン


  聖剣が、砕け散ってしまった。『はあ?』


  店主が、怒り始めた。弁償しろだの、どうやって割ったのかなど。その内、聖鎧兵を連れてきて、僕は、聖騎士団詰め所に連行されてしまった。僕は、後悔していた。一人で武器屋なんかに行くから、こんな目にあうのだ。武器屋は、ガチンコさんやダッシュさん、ヒゼンさんなど、皆、心の優しい人だったし、売れなくても素晴らしい武器ばかり作っている人ばかりだった。今日のような人は、初めてだった。


  僕は悲しかった。こんな詰め所に連れて来られて。これで今日から牢屋に入れられる。裁判で奴隷落ちが決まって、南の寒い鉱山で1日中、鉱石掘りをさせられる。シェルさんとは、もう会えないかも知れない。そう考えていたら、涙がこぼれて来た。


  その時、シェルさんが、詰め所に入ってきた。イフリートのお兄さんと一緒だ。イフリートのお兄さん、今日は黒のスーツを着ている。


  「こんにちは、私はシェル、このゴロタ君の妻です。今日は、ゴロタ君は何をしたのでしょうか。?」


  詰め所の係の人から、色々聞いていたシェルさんが、爆弾発言をしてしまった。


  「そもそも、聖剣っておかしくないですか?なんで聖剣が持っただけで砕けてしまうのですか?」


  「もしかしたら、これってニセの聖剣じゃないの。大司教の鑑定書だって怪しいもんだわ。きっと、お金を貰ってニセの鑑定書を書いているんだわ。」


  これで、シェルさんも、教会侮辱罪で逮捕されてしまった。詰め所から聖騎士団本部へ連行された二人は、僧侶の服を着た人に色々取り調べを受けた。身元は、冒険者カードがあるので、特に調べることも無かったが、シェルさんが『A』ランク、僕が『S』ランクとなっていることや、シェルさんがエルフ国の王女で、僕が同国の次期大公候補であることが判明して、聖騎士団本部は色めき立った。


  僕について知っている者がいた。その噂について聞いて、皆、戦慄を覚えたのである。


     『殲滅の死神』


     『聖剣の使い手』


     『鬼畜ハーレム』


     『絶倫ロリ殺し』


     『マダムキラー』


     『幼女コマシ』


  絶対、この評判って段々おかしくなっていると思ったが、何も言えない僕だった。逮捕されてから、46時間後、『大司教国最高検察庁』において取り調べを受けた。教会侮辱罪は、異端審問を受けなければならず、それは『大司教国最高検察庁』でしか取り調べが出来ないことだった。


  最高検察庁長官は、憂鬱だった。例の武器屋は、いつだって悪どかった。きっと聖剣なんて嘘っぱちだろう。問題は、そんな事ではない。現大司教が偽の鑑定書を書いているという事だ。


  以前から、大司教には、偽の鑑定書などにサインをしないでくれとお願いしている。しかし、大司教は『分かった、分かった。』と空返事をして、側近が出してくる書類にすべてサインをしてしまう。中をじっくり見れば、分かると思うのだが、大量の書類の処理に追われ、見もしないでサインをしてしまったのだろう。


  武器屋のおやじからの賄賂は、側近の誰かのポケットに入っているか、皆で分けているはずだ。しかし、証拠がない。明日は、異端審問をしなければならない。大司教ご臨席の上、審問などしたくない。どうしたらいいのだろう。








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(8月26日、異端審問の日です。)

  僕達は、大聖堂5階の大司教席前に座っている。二人とも、後ろ手に縛られていた。足も椅子に縛られている。


  頭に頭巾をかぶっている人が、僕達の傍に立っている。手には大きなダンビラを持っている。


  「フランシスカ・エド・ゼロシッシュ32世大司教様の御出座です。」


  大司教様が、奥の大きなカーテンの脇から出てきた。白い、大きな三角形の帽子を被って、手には宝珠のついた杖を持っている。驚いたことに大司教様は女性、女の子だった。しかも美少女だった。シェルさんが、あからさまに嫌な顔をした。


  検察官が、僕達の罪を読み上げた。最後に、異端審問に掛ける必要があるとの意見を述べた。


  大司教様が、何やら小さな機械を出してきた。広げたら、帽子のような形になった。宝石が一杯ついている。それを、僕にかぶせて、持っていた杖の宝珠の部分を帽子の天辺にあてて、何かブツブツ言い始めた。


  僕の前に白い煙のようなものが立ち込め、そこに独りの老人が現れた。顔は良く分からないが、確かに老人だった。その老人は、独りで喋り始めた。


    『古の伝承により全てを統べるゴーレシア・ロード・オブ・タイタンよ。』


    『全能の王にして世界を救う者ゴロタよ。』


    『目覚めよ。真実を知る時が来たれり。』


    『天と地と精霊に祝福されしゴロタよ。』


    『汝のしもべを求めよ。されば全てを統べる力を得るべし。』


    『王の中の王よ。4教の教えを超越すべき者よ。』


    『早く行くのだ。出発の時は過ぎた。』


  フランシスカは、吃驚していた。こんなことは初めてだった。今までは、杖を当てると、『異端者』とか『我が信徒』と一言教えてくれるだけだった。フランシスカは、色々考えていた。


  大体、この子は何。こんな可愛い顔して。これで男の子なの。それに隣のエルフ。『妻』ってなによ。『妻』って。一体、幾つよ。この子。そりゃ、うちの神様だって、子供を作る行為を奨励しているわ。でも、それでも限度があるのよ。こんな若い子と、関係なんて。なんて、うらやましいの。オホン。不潔よ。不潔。絶対、許せないわ。でも、判決はどうするの。私は、杖を当てるだけだし。これじゃ、異端審問にならないじゃない。よし、有罪にして、ずっと教会に置いておくわ。そうしよう。


  結局、自分勝手で、何も考えていなかった残念なフランシスカ大司教様であった。


  検察官は、困ってしまった。このまま『無罪』で、帰って貰うつもりだった。異端審問で、異端でないと判明したら、武器屋のニセ聖剣を種に脅して被害届を取り下げさせればいい。しかし、異端でないと判明してない段階で、無罪は難しい。


  うん、エルフが犯した教会侮辱罪は、有罪にして罰金刑、ゴロタ殿は、何もしゃべっていないので無罪。器物危機は、武器屋を脅して無罪。これで行こう。


  検察官の思惑通りとなり、罰金『銀貨1枚』をシェルさんが払って釈放となった。


  疲れていたので、ホテルに戻って、皆でお茶を飲んでいたら、お客さんだという。誰かと思ったら、フランシスカ大司教様であった。今は、平服、つまり白色のウールのニットシャツと黒のロングスカートを履いている。髪の色は紫色、身長は155センチ位と小柄であった。胸は、ほとんど無かった。


  僕達がお茶を飲んでいるテーブルの脇で、じっと立っている。気が付いたクレスタさんが、立ち上がって、席を引いてあげたら、漸く座った。


  シェルさんが、用件を聞いた。本当は聞きたくなかった。予想がついていたが、黙っている訳にもいかない。


  フランシスカ大司教様が口を開いた。


  「このような幼い子を毒牙に掛け、それで夫婦を気取るとは、そなたも悪よのう。シェルよ。」


  むっとしたシェルさんが、目を三角にして、


  「余計なお世話よ。ゴロタ君とは、正式に夫婦になったんだから。大体、毒牙って何よ、毒牙って。毒牙にかかったのは、私の方よ。」


  絶対に、違う事を言っているシェルさんだった。


  「言い訳は良い。わがゼロス教会では、ゴロタ殿のような被害者を放置することはできんので、これからゴロタ殿を保護することにした。良いな。」


  何か、いつか見たことのあるようなシーンだったが、そんなことはちっとも気づかないエーデル姫だった。シェルさんが、猛反対した。


  「え、おかしいんじゃない。ゴロタ君は、今、16歳、立派な大人よ。その大人が誰と結婚しようが、教会で保護する権利なんかある訳ないじゃない。だいたい、あなた、大司教様かなんか知らないけど、本当はゴロタ君を、自分のところに置いて、一緒に暮らしたいんじゃないの。」


  図星だったフランシスカ大司教様は、顔を真っ赤にして、


  「何を言うのじゃ。私は、そんな、ふしだらな女などではない。ただ、一緒にいたいのじゃ。」


  ポロッと本音を吐いてしまったフランシスカ大司教様。しかし、そのことに全く気付かない残念な女の子であった。

残念な大司教様、嫌な予感のシェルさんでした。

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