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第122話 聖ゼロス教会大司教国

官僚主義というか、共和国の実態がこれでは、そのうち革命ですね。しっかりした統治者が出てほしいものです。

(8月20日です。まだ、魔物を掃討中です。)

  南の森に逃げていた、アリモア市の人たちが戻ってきた。森の中なら、飛翔する魔物からの攻撃を樹々の梢が邪魔をするので、無事だったようだ。だが、あの魔石の攻撃を受けていたら、無事では済まなかっただろう。


  大型の飛翔魔物は、殆どいなくなり、ムクドリや化けガラス程度の魔物は、街の自警団の人達が排除していた。問題は、スタンピードを起こした北の丘の上のダンジョンだ。


  とりあえず、避難して無事だった市長の意向を確認する。そのダンジョンを残すのか、つぶすのか。冒険者ギルドの無いこの国では、ダンジョンの存在は、脅威以外の何物でもない。可能ならば、つぶして貰いたいとの事だった。


  僕は、市の北側に出て、ダンジョンの方向に向いた。先ほどのように、人差し指と親指で何かの形を作り、今度は、瞑想を始めた。力が指先に集まる。力が圧縮される。力が熱せられる。力が臨界点を超えている。


  構わずに、周囲から光と何かの粒を集めて行く。目の前の空間が裂けた。あのダンジョンの上空にも裂けめを作った。天の怒りがダンジョンの上に落ちた。あまりのまぶしさに目を開けていられない。


   目を開けると、ダンジョンがあった丘が消えていた。大きなキノコのような雲が、上空10000m以上のところへ立ち上って行った。汚らしい灰などは一切振ってこなかった。いわば、小さな太陽を丘の上に作ったようなものだ。表面温度6000度のミニ太陽を。


  南の森の方角から変なものが飛んできた。人間の体に、鷲の頭と翼を持ち、翼は炎のように紅く、音よりも速く飛翔する。イフちゃんが、そいつが何者かを教えてくれた。


  『ガルーダじゃ。今は無き、ヒンドの国の伝説の魔物で、炎を司り、不死の肉体を得たものじゃ。アンデッドではないので、聖なる力は効かぬ。』


  なんか、面倒くさい。ノエルがウインドカッターで右手を切り落とした。右手は、地面に落ちる前に消えてしまい、あっという間に、ガルーダの右手が生えてしまった。


  シェルさんが、雷属性の矢を放ったが、深々と額を打ち抜き、頭からプスプス黒煙を吹き出していた。しかし、ガルーダが自分の右手で引っこ抜いたら、何も傷跡が残っていなかった。


  面倒臭い。非常に面倒臭い。空は飛んでるし、炎は吹いて来るし。あの、人を小馬鹿にしたような顔が気に食わない。


  僕は、力の剣を振った。ヒゼンの刀と同じ形をイメージして振った。振り終わったとき、何も無かった左手に、力の剣が握られていた。光も何も走らなかった。空気も揺らがなかった。


  ガルーダが縦に真っ二つになった。切り口からは、血の一滴も零れなかった。右半身の切り口と、左半身の切り口は、それぞれ異なる空間に繋がっていた。ガルーダは、再生が出来ずに、自らの体内の熱で灰となってしまった。魔石も何も残らずに。


  市長は、僕を見ていた。何をしていたのか理解できなかった。ただ、北の丘が無くなった。ほとんどが岩でできた、何も役に立たなかった丘が無くなった。丘のあった場所の、はるか向こうの山地がうっすらと見える。


  それから、見たことも無い恐ろしい魔物。人なのか、鳥なのか、悪魔なのか。それが、真っ二つになって落ちて来た。切り口からは血が出て来ない。どうなっているのかと見てみるが、ゆらゆらと揺れているようで、切り口が良く見えなかった。


  市長と、各行政機関長官が集まっていた。僕達に感謝状を贈る相談をしていた。シェルさんが、そんな暇があるのなら、街の中を早く片付けたほうが良いと言ったのだが、もう夕方に近いので、兵士の遺体などを集めるだけ集めて、後は明日にする予定だという。


  今は、真夏なので、遺体が傷むのが早いし、魔物だって匂ってくる。その措置はどうするのかと聞いたら、明日、皆と相談して決めるという。


  市民の犠牲者や、行方不明者はいるのか聞いたら、現段階では、全く分からない。担当部署も決まっていないので、明日、職員組合と相談して決めるという。


  それでは、魔物だけでも処理して良いか確認すると、そうして貰えれば助かるとの事だった。各機関の長官も同意見だったので、エーデル姫、ノエルが魔物焼却を担当し、僕とシェルさんが魔石等の素材回収、クレスタさんが瓦礫整理、ビラが負傷者の救護に当たることにした。


  全部処理するのに夕方6時過ぎまでかかったが、市民の人達は協力してくれたが、市庁舎の職員は誰も手伝ってくれなかった。こういうことは、今回が初めてではなく、風水害や地震、火事のときもこういう状況だと説明してくれた。


  政治に全く興味が無かった僕でも、これはおかしいと思ってしまった。


  ホテルの施設、従業員は無事だったので、ホテルに泊まることにした。あまり大きなホテルではなかったが、民営だったので、色々サービスして貰った。


  翌日、夕方に僕達の乗っていた駅馬車が到着する予定だったが、朝、出発する別の馬車に空きがあったので、そちらに乗って先を急ぐことにした。


  次のナイスモル市は、県庁所在地だったので、今回の騒動で、県の駐屯部隊等が動いているのかと思ったが、何も変化が無かった。


  僕達には関係なかったが、県と言っても、他の王国のような統治機能がある訳でもなく、各市の連絡・調整が主な業務で、国軍兵士の指揮権は当然ないし、財政も市ほどには裕福ではないとの事だった。


  何のための県かと言うと、市長経験者が昇格するためのポスト確保が目的らしい。


  うん、腐ってる。


  この国には、余り魅力は感じなかったので、どんどん西に進み、ようやく聖ゼロス教会大司教国に到着した。









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  この世界は四人の神が作ったとされている。


    光と闇の神 ゼフィルス。


    想像と滅亡の神 センティア。


    誕生と死の神 ゼロス。


    愛と慈しみの神 アリエス。


*************************************************


  聖ゼロス教会大司教国への入国手続きは、非常に簡単だった。冒険者カードを見せて、機械で身分確認をすればOKだった。


  特に大きな荷物もなく、シェルさん達の小さなハンドバッグと僕が背負っているベルのザックについても、禁制品などがある訳もなく、ほぼスルーだった。


  ただ、入国手数料が一人銀貨2枚、旅券しか持っていなかったノエルが銀貨3枚というのは暴利のような気がした。しょうがないので気持ち良く支払ったが、これからの事がちょっと心配になってしまった。


  この国は、非常に小さな国であったが、ゴーダー共和国と中央フェニック帝国との国境が接しないように南北に長い国だった。居住者の殆どは、聖職者か準聖職者である。


  準聖職者とは、農業や工業、サービス業に従事していながら、聖職者の位を与えられている者である。聖職者は、結婚を認められていないが、準聖職者は普通に結婚できるらしい。


  この国の守護神は『誕生と死の神ゼロス』なのであるから、誕生のもととなる結婚を認めても良いと思うのだが、誕生のもととなる行為と、結婚は別と考えられている。


  結婚しなくても、子供は作れるのが神の教えだそうだ。それって、男にとって狡い気がするのだが、僕は余計なことは言わないようにしている。


  基本的には、女性が妊娠、出産するのは、ゼロス神の福音であり、死はゼロス神のもとに召され、現世の労苦が報われる瞬間であるとされている。


  僕は、無神論者ではないが、誕生と死は自然の摂理であり、誕生の無い世界、死の無い世界など絶対に有ってはならない。それは、生きとし生けるものが、皆、受け入れるべき摂理なのだと思うのだ。


  僕の周りには居なかったが、結婚しても子供のできない夫婦や、年老いても長生きをしたいお金持ちに、ゼロス神の信者が多いそうだ。寄付もそれなりに多く、財政的にもゼロス教は裕福であるとされている。孤児院や救護院よりも病院や産院を運営していることが多いのも教義によるのだろう。


  国内のホテルやレストランは、全てゼロス教直轄運営で、利用料や飲食代の他に、協会への寄付を求められる。概ね料金の20%とされており、そのほかに宿泊税や飲食税が10%とられるので、併せて30%も余計に取られることになってしまう。


  僕達は、大聖堂に近い、最高級ホテルに泊まることにした。いつもの通り、ダブルが1室にツインが2室だ。料金は、ダブルが大銀貨1枚、ツインが大銀貨1枚と銀貨2枚となっている。それに教会への寄付と税金なので、ダブルが大銀貨1枚と銀貨3枚、ツインが大銀貨1枚、銀貨5枚と大銅貨6枚だ。非常にめんどうだ。


  今日は、クレスタさんが、僕と一緒に寝る番になっている。シェルさんと結婚したが、その辺は全く変化なしだそうだ。何となく背徳の気持ちになっているのは僕だけだろうか。


  大司教国には、行政市という概念は無く、国内全域が神の福音を受けた場所だそうだ。軍隊は、大司教軍が常備されており、兵士たちは、聖騎士とか聖鎧兵とか呼ばれている。


  真っ赤な旗と、胸のシンボルマークが特徴となっている。何故か、シンボルマークは剣が2本斜め十字に重ねている物だった。


  チェックインが、済んでから市内観光に行く事にした。この国は、子供を作る行為には寛容なので、シェルさん達のミニスカート姿にも、皆、平気だった。


  さすがに、履いている人は、旅行者位だった。国民の殆どは聖職者なので、女性は皆、黒いロングワンピースを着ていた。今は、真冬なので、分厚い黒のウールコートを着ている。


  レストランは、グレーテル王国風の料理が多く、ワインも懐かしい味がした。ただし、僕は舐めただけで、飲んだのはシェルさんだった。


  夜、クレスタさんと一緒だった。眠ったら夢を見た。久しぶりの夢だった。姿の無い声が聞こえた。


    『全能の王にして世界を救う者よ。目覚めの時は来た。南の谷を目指せ。』


    『全能の王にして世界を救う者よ。目覚めの時は来た。蘇りし雛を探せ。』


  僕は、目が覚めた。ひどく疲れていた。 

新しい啓示がありました。今度は、南ですか。南の守護神は、たしか?

最近、PVが少しだけ増えてきました。少しでも面白いかなと思われましたら、ブクマ登録とポイント評価をお願いします。とても、励みになります。

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