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第121話 南の大陸に着きました。

いよいよ、南の国へ着きました。残念な国ばかりで申し訳有りません。基本、コメディですから。

(8月7日です。)

  この国から、西へ向かう街道は、海沿いをゆくメディテレン街道と、各国の首都を目指すセントラル街道に別れている。


  僕達は、セントラル街道を通って、西国に向かう事にした。海沿いは、風が強く、海岸線に沿っているので距離も長くなってしまう。


  モッツアレラ市から共和国の首都ゴルゴンゾーラ市までは、国有駅馬車で20日の道程だ。どんどん南下して行くと気温がぐんぐん下がってきた。ここは、南半球なので今が真冬になるわけだ。3日に1枚、着るものが増えてゆき、首都についた頃は、女性陣は、ビラ以外、毛皮のコートを着ていた。





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  この国の行政機関は優秀だ。職員は、皆、厳しい採用試験に受かっているので、誇りと自信を持っている。しかし、共和国という制度は、国民の権利を尊重しているが、それは行政機関の職員の権利も尊重しているのだ。


  国民は、1日8時間以上働いてはならないし、同一労働、同一賃金なので、行政機関の職員も、階級が同じならば、給料も同じであり、一生懸命働いてさえいれば、成果を問わず評価される。当然、働かない者は、組織から排除されるので、皆、陰ひなたなく、国民のために働いているが、それは国民のために働いてさえいれば良いという事なのだった。


  先日の、大使館での対応も納得がいく。皆、一生懸命働いているのだが、仕事の効率については、評価対象外なので、誰も改革しようとはしない。仕事を合理化することによって、余剰人員が生じるとしたら、それは労働の機会を奪うということで、絶対に許されないことなのだ。


  はっきり言って、とっても残念な国の統治機構と言える。これは、大手商店やホテルなども同様で、驚いたことに、大規模な物はすべてが国公立となっており、かつ効率が悪いのだ。


  商店に入ると、直ぐに店員が来てくれて、店内を案内してくれるのだが、もしその人が、他のお客さんを案内しているときは、客は店の入り口で案内をしてくれる人を待たなければならない。


  地元の人は、あらかじめ予約をしているらしく、直ぐ案内が付いたが、僕達が入ったときは、予約客が空くまで30分以上待たされてしまった。


  食事もそうだった。料理は全て、標準労働時間が定められており、1時間に作ることのできる料理の数は、職人の能力に関係なく一定だった。能力のある人は、時間が余ってしまい、のんびりしているが、能力の足りない人は、死に物狂いで料理を作らなければならない。


  結果、能力の足りない人が作った料理が標準仕様となってしまい、どこで食べても同じ味が提供されることとなった。不味い方の同じ味にである。


  行政市の市長は、長年、市の職員として働いて来た職員の中から選出される。中央は、口を出すことはなく、口を出す根拠法令も無かった。


  いくつかの行政市長が集まって、県知事を互選により選出する。県知事数人が集まって、管区長官を選出する。管区長官は、互選により総代表を選出し、国の運営を任せるようだ。


  行政市長が、地域の統治者であるから、収入も一般職員の年収に市長手当てが付く程度で、毎日、御馳走を食べたり、芸術品を集めたりしない。住居にしても、市長公舎に居住し、市庁舎までは、徒歩か乗り合い馬車だ。これは、県知事も同様だ。45も県があって、大丈夫かと思ったら、市は、馬車で8時間以内、県は馬車で3日以内の距離の広さが標準なので、こうなったそうだ。


  首都も、総代表が、特別のことをしないので、発展もしなければ、衰退もしない。国家収入のほとんどは、海産物と乳製品、特にチーズの輸出に頼っている。そこそこの利益があるから、何とかやっていけるようだ。








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(8月28日です。)

  僕達は、首都の公立ホテルに泊まったが、宿泊税が20%も掛かっている。それに、何か買おうとすると、税金が掛かってしまう。国民は免税か軽減税率だが、旅行者は、最高税率を掛けられてしまう。これでは、観光収入も得られないだろうが、それを改革しようとするトップは現れないようだ。食事は、非常に美味しかった。料理の技術に関係ない海の幸と乳製品が美味しく、また牛乳で作る鍋料理は癖になりそうだった。


  冒険者ギルドはなかった。最低限の生活は、国が保証してくれるので、命を掛ける危険な仕事をしようとはしないみたいだ。従って、市内を外れると、魔物が氾濫するエリアが多い。街道も、決して安全ではなく、僕達も、モッツアレラ市から、ここまでにゴブリンやレッサーウルフなどの低級魔物を殲滅して来た。県の職員が、魔物情報を告知して歩いていたが、本格的な討伐は、脆弱な国家軍では、無理なようだ。


  この国は、他国に侵略されたことがない。北と東は海に囲まれ、南は、地の果て山脈で、それより南は極地エリアで前人未到、神々の国とされている。西は、聖ゼロス教会大司教国なので、侵略される心配はない。ということで、国民の3割が公務員のこの国が存続できるのも納得できる。


  翌日、僕達は、首都には用事はないので、とりあえず西行の国有駅馬車に乗ることにした。毎日、2便、午前と午後に発車する。お客さんがあっても無くても1日2便、1便で駅馬車4台が出発する。午前発の駅馬車は、夕方4時に隣の市まで行くが、午後発の駅馬車は、夕方4時に市境までしか行かない。もっと夜まで走れば良いのにと思うが、御者の勤務時間が夜勤にならないようにしているらしい。


  僕達は、当然に午前便で出発した。宿泊するのは13回、野営は無い予定だ。日の出から、グレーテル王国では、急ぎの駅馬車なら1日200キロ位は進むのだが、午前10時から午後4時まで、途中3回、計2時間の休憩をとるので、1日80キロしか進まない。


  途中、ゴブリンや変な虫が出ていたが、ビラとコマちゃんが一人で討伐していた。聞けば、コマちゃんが倒した魔物の経験値もビラに入るそうで、間もなくレベル30に到達するそうだ。とても狡いやり方だ。しかし、ビーストテイマーってそんなものらしい。


  僕達の活躍は、情報として他の市にも伝達されているみたいで、行き先々で歓迎された。歓迎ついでに魔物の討伐を依頼されたりするのだが、先を急ぐので、丁寧にお断りした。この国の人々は、平素から国軍を鍛えて、魔物の脅威に備えるという意識が無いようだ。


  本当に、スタンピードでも起きたら、どうするつもりなのだろうか。そんな心配をしていたら、本当に起きてしまった。僕達が向かっている方角の先、3つ先のアリモア市、この北側にある丘の頂上付近にダンジョンが出現し、魔物が大量に発生しているそうだ。


  しかも、飛翔系の魔物ばかりが湧いてきており、市に駐屯している衛士と国軍の戦士による剣や弓矢の攻撃では、まったく役に立たなかったそうだ。


  住民は、南側の森に避難したそうだが、防衛組織は、ほぼ壊滅、市内にめぼしい餌(人間)がいなくなれば、南側に侵攻して、避難している住民が襲われることになる。共和国首都に向かっている早馬の国軍兵士を捕まえて聞いた情報は、以上の通りであった。僕は、シェルさんと共に、アリモア市に急いだ。シェルさんの期待に応えず、オンブ紐でオンブしての疾走だ。


  空間移動は、行ったことの無い場所なので使えない。僕は、『身体強化』、『持久力強化』のスキルを発揮して先を急いだ。駅馬車の全力疾走の1.3倍の速度、時速36キロで、休みなしに走れる。アリモア市までの距離は、約150キロ、今日の夕方までには到着するだろう。


  アリモア市が見える場所まで来た。市内では至る所で黒鉛が上がっている。上空には、首の長い水鳥の魔物が飛んでいる。また、ハゲワシの魔物、双頭のハゲワシも大きく輪になって旋回している。


  翼を持った蜥蜴の仲間も、飛んでいるが、魔物なので、首が蛇のようになっている。チロチロと舌なめずりをしてから毒霧を吐き出す。市に近づいてみると、至る所に兵士が倒れていた。


  家々の軒先には、カラスのような魔物が大量に泊まっている。目が赤く、クチバシの先が尖っていて、上向きに牙が生えているので、魔物と分かった。それに、ムクドリの仲間だろうか?数えきれないほどの数の鳥が、家の屋根を覆いつくして、ピイピイ泣いている。こいつらも屍肉を喰らう魔物だ。


  アリモア市は死の街だった。生存者の気配はない。イフちゃんに女性達を連れて来て貰う。


  全員、戦闘態勢だ。飛翔中の魔物に対しては、シェルさんが1番の有効火力だ。シェルさんは、雷属性の魔石を弓にセットし、次々と矢を放っている。一度に10本だ。しかもかなり遠い距離でも威力が落ちずに飛んで行く。堕ちてきた魔物を、エーデル姫とノエルが焼き尽す。これで、双頭のハゲワシや化けカラスなどを次々と落としていく。


  カラスとムクドリの大群は、クレスタさんとビラが雷魔法で、軒先から落としていく。ほぼ、落ちて来た段階で絶命しているが、しぶといのが空に飛び立っても放っておくことにした。


  嫌な声が聞こえる。甲高い鳴き声で、その声を聞くと、一気に闘志がなえてしまう。見ると、人間の身体に鳥の羽がびっしりと生えている女だ。胸と、股間だけには何も生えていない。汚れ切った黄色の髪の毛を振り乱し、真っ赤な目でこちらを見ながら飛んでいる。ハーピーだ。


  僕達の頭の上から人糞を投げて来る。女性陣は、悲鳴を上げて逃げ惑う。僕は、シールドを頭上に水平に張って防いだ。クレスタさんが、超強力雷撃魔法を撃って、ハーピーの黒焦げを作った。


  体中の羽毛が無くなり、素っ裸の女性の黒焼きだ。それを見たビラも、同様に撃つが、ハーピーの羽毛だけが焼け落ち、身体は無事だったので、色っぽい女性が裸で落ちて来る。すぐに、エーデル姫が焼き尽した。


  変な音がする。上空からの落下音だ。見ると、大型ワシの魔物が、超々高度からの急降下攻撃だ。脚に大きな魔石を持っている。魔石は、赤く光っている。火属性の魔石だ。危ない。僕は、全員を集まらせて、すっぽりとシールドを張った。


  大型ワシは、素晴らしい速度で、地面に接近し、その勢いのまま、魔石を放すと、急上昇をして上空に戻っている。


  すさまじい衝撃が来た。音速を超える速度で地面と激突した魔石の衝突時の衝撃と、衝撃を受けて爆発した魔石からの衝撃である。市内の直近の建物が、すべて半壊以上に損傷してしまった。爆発の後、噴煙が空高く昇って行ったが、煙の頂上の付近は、内側に煙が巻き込まれ、キノコの頭のように見えた。爆発地点から半径500m以内が消滅した。上空には、まだ大型ワシが飛翔している。あの距離では、シェルさんの弓矢でも届かない。


  僕は、上空にいる、小さな点のような大型ワシに右手を向けた。軽く握り、人差し指だけを伸ばし、親指を立てた形にして、大型ワシを狙った。わずかに、人差し指の先が、上に上がった。光が一条、上空に向かって迸った。大型ワシが、上空で燃え尽きるのが確認できた。次々に、光を撃ち続けた。これで上空を飛翔する魔物は居なくなった。

いやはや、初登場の魔物が一瞬で消滅では、考えるのが苦痛になってきます。2話連続位には頑張って貰いたいです。

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