表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/753

第110話 シェルさんと結婚しました。

今までで最強だったかも知れないレブナントとリッチを撃退することができました。喜んだ大公閣下は、娘の結婚式を急ぎます。

(4月20日、イースト・フォレストランド市です。)

  大公国では、王女の結婚式で皆、ニコニコしていた。1か月程前、遠征から帰って、シェルさんの父君の大公閣下に戦勝報告をしたら、急に結婚式を挙げることにすると言われた。


  僕は、まだ早いかなと思ったが、シェルさんと結婚しないと、他の誰とも結婚できないことは、女性陣の暗黙の了解事項だったそうだ。


  また、シェルさんは、4月23日生まれなので、それを過ぎると、シェルさんは、暫くの間、僕より年上になってしまう。それで、急遽シェルさんが、僕に内緒で父君に頼んでいたそうだ。遠征から帰ったら式を挙げたいと。


  でも、本当は、この前、クレスタさんの実家に行った時、結婚式をあげなかったこと、つまりシェルさんと結婚しなければ、誰とも結婚できないことが影響しているのではないかと思ったが、黙っていることにした。


  結婚式を挙げたところで、僕の今までの生活は何も変わらないし、子供が作れるわけはない。僕だって、子供の作り方位は知っている。はずだ。細かい事は分からないが、毎日の夜のセレモニーを、もう少し発展させれば子供ができるだろうとは思っている。でも、自分の大事なところを見ると、まだまだ子供だなと思うので、やはり結婚は早いような気がする。


  シェルさんは、ウエディングドレスの着付けだと言って、今日は朝からいない。エーデル姫達も、ドレスの着付けとヘアセットで、皆いなくなっている。残っているのは、イフちゃんとコマちゃんだけだ。


  結婚式といっても、あの長老のお婆さんが、二人の結婚を精霊に報告するという儀式だけのようで、王国のように大きな教会で大司教様が儀式を執り行うという事はなさそうだ。


  最近、僕は良く夢を見る。誰かが僕を呼んでいるのだ。誰かは分からない。声だけが聞こえる。その声は、僕に東の国へ行けと言っている。東の国ってどこだろう。僕にはよく分からなかった。でも、行かなければいけないという気持ちになっているのは、間違いない。


  結婚式には、ワイちゃんと、ブラックさん、バイオレットさんも来てくれた。ブラックさんとは久しぶりに会ったが、僕を見て、不思議な微笑みを浮かべていた。目が笑っていないのが怖い。いつ、北の山に来るのかと言っていた。行こうと思えば、ワイちゃんに乗ってすぐいけると思ったのだが、どうも、そうやって行ってはいけないようだ。自分の力で行かなければならないらしい。となると、皆を連れて行くのは無理のような気がするが、それは後で考えることにした。僕が、東の国に行った後でも良いかと聞いたら、東の国にも必ず行くようにと言われた。ブラックさんは、一体、何を知っているのだろうか。謎だ。


  結婚式は、昼過ぎに行われた。僕が、大公閣下の屋敷の大広間で、待っているとシェルさんがウエディングドレスを着て、頭にはキラキラの大きなティアラを付けて入ってきた。手を引いているのは、大公閣下だった。お婆さんは、真っ白なケープを纏って、長い杖を持っていた。


  「天と地と精霊の御名において、汝ゴーレシア・ロード・オブ・タイタンよ、シェルナブール・アスコットを妻として認めるか?」


  「は、は、はい、認めます・・・」


  「同じく、汝シェルナブール・アスコットよ、ゴーレシア・ロード・オブ・タイタンを夫として認めるか?」


  「はい、認めます。」


  「ここに二人を夫婦と認める。これより、汝シェルナブール・アスコットは、シェルナブール・ロード・オブ・タイタン・アスコットと名乗るが良い。」


  え、とても長くて呼びにくいのですが。エルフ族のしきたりでは、女性は結婚すると、元の氏名に配偶者の名前をくっつけてしまうらしいのだ。あまり長くなると途中で端折ってしまうらしい。結構、いい加減だ。これで、結婚式は終わりだそうだ。近いのキスも、指輪の交換もない。まあ、さっぱりしていると言えばさっぱりしている。


  次に、大公閣下の宣下があった。僕を次期大公とするというのだ。え、まったく聞いてませんが。これは、シェルさんの夫となると、自動的にそういうことになるらしい。なんか、物凄く面倒くさそうなので、嫌だったが、シェルさんは黙って『はい』と言いなさいと小声で言ってきたので、その通りに答えた。反論など許されない雰囲気だった。


  夕方、結婚披露宴があった。各公国から公閣下や、名代の方が大勢いらして、大広間が狭く感じる程だった。王国では、オープン馬車に乗ってのパレードがあるのだが、エルフ国では、大通りと言うものがないため、パレードは無いそうだ。僕は、ホッとしていた。


  女性陣達の間では、今後の計画を立てているようで、この後、クレスタさんの実家で結婚式を挙げて、その後エーデル姫と結婚式を挙げることになっている。


  ノエルは、15歳になってからなので、今年の末頃になるかも知れない。ビラとは、そういう仲ではないので、放っておこうと思ったら、どうもそうでも無いらしい。しかし、皆、僕の気持ちを確認しているのか疑問である。


  披露宴が終わって、自宅に帰ったら、シェルさん以外は、ホテルに泊まるからと言って、シェルさんと二人きりにしてくれた。なんとなく恥ずかしい気持ちになる二人だったが、やることはいつもと変わらない。お風呂に入って、お休みのキスをして、夜のセレモニーをして寝るだけだ。


  でも、シェルさんが、


    「優しく、してね。」


  と言ってきた。何を優しくするのか見当もつかない僕であった。その夜、シェルさんは、とても優しかった。


  翌日、シェルさんが新婚旅行の話をしていたので、僕は東に行かなければならないと言った。度々見る夢の話や、ブラックさんに言われたことを話して、シェルさんの考えを聞いた。シェルさんも、『東の国に行ったことはないので、行ってみたいと思っていた。』と言ってくれた。


  新婚旅行なので、二人きりで行く事になった。その間、エーデル姫達は、この家で留守番をしているそうだ。僕は、初めて会った頃のように、二人で旅ができることが、何故かとても嬉しい気がしたのだった。


  クレスタさんは、僕と10月までに式を挙げたいので、必ずそれまでには帰ってきてと言っていた。きっと、自分の誕生日を気にしているのだろう。エーデル姫は、まったく何も考えていなかった。僕と結婚できる、そう考えるだけでニヤニヤしているだけだった。ノエルは、まだ結婚しなくてもいいかなと考えていたので、焦ってはいなさそうだった。


  ビラは、自分の気持ちがよく分からなかった。僕の事が好きかと言われると、嫌いではない程度にしか答えられない。夜のセレモニーも、経験したことはないし、お休みのキスも形式的なキスだけだ。


  お風呂に入っても、恥ずかしくて僕に触ることが出来ない。こんな状況で、結婚なんか考えられなかった。自分には、両親がもういないので、誰の了解もいらないが、自分の気持ちの了解を得るまでは、今の状態のままでも良いと考えていた。


  新婚旅行は、5月になってから出発することになった。その前に、シェルさんの17歳の誕生日祝いをしなければならない。僕は、シェルさんには内緒で、ワイちゃんに頼んで、グレーテル王国の王都に行って、誕生日祝いの品を買っておいた。ヘンデル帝国の帝都にある店もまあまあだったが、やはり王都にある『ティファサン』という店の方が、品揃えが良かったからだ。買ったのは、首飾りだ。大きなダイヤと真珠でデザインされているもので、金貨8枚もした。


  大公閣下のお屋敷での誕生パーティの席上で渡したのだが、エーデル姫達が、何故かとても目をキラキラさせていた。きっと、自分の誕生日には何を貰えるのか想像しているのだろうことは、いかに鈍い僕でも直ぐわかってしまった。


  大公閣下からシェルさんへの誕生プレゼントは、弓だった。なんでも、先祖代々伝わっている家宝の弓で、名を『ヘラクレイスの弓』と言うそうだ。


  この弓は、弦が付いていない魔法の弓だった。弓を構えただけで、魔法の矢が出現し、矢を放つ意識だけで、魔法の矢が飛んでいく。一度に放てる矢は10本だそうだ。また、弓に属性魔石を装着すると、その属性の矢が飛ぶようになっている。そんな大切な弓を壊してはいけないので、通常は今までの弓を使うことにした。


  二人だけの旅なので、ゆっくり歩いて行くことにした。馬車は道が狭くて使えない。


  連合公国では駅馬車という制度がないので、道の整備も、人や騎馬用に整備するだけだ。西への道は、国防上の必要性から、整備されているそうだ。東へは、馬を使っても良かったが、それも面倒なので、歩けるだけ歩こうという事になったのだ。これは、シェルさん、絶対お姫様抱っこを狙っているなと思ったが、何も言えなかった。


  東への道について、全く知識がなかったので、シェルさんが婆やに聞いたら、地図と旅行ガイドブックを持って来てくれた。イースト・フォレストランドの東には、一つの公国しかない。ウッドワン公国だ。東の端から西の端までは騎馬で20日の距離で、真ん中付近に公都オーク市がある。冒険者ギルドは公立ではないらしい。


  この公国の東端に標高3000m級の山があり、その山を超えた東側に海岸線がある。公国連合最東端の街ボール市には、東の島国に行く定期船があるという事だ。


  ポール市は、一応ウッドワン公国の統治下にあるが、住民の半数以上が和人で、遠い昔、和の国とエルフ国で戦争をしたこともあるらしい。


  和の国が海を越えて統治するか、ウッドワン広告が山を越えて統治するか難しいところだが、海は、天候に左右されることから、現在の形に落ち着いたらしい。当然、ポール市の代官はエルフ族だ。


  あと、旅行の準備として、和の国の入国許可証が必要だが、それはポール市に、和の国の領事館があるので、そこで貰えるらしい。


  和人というとノエルのお母さんを思い出す。ノエルと結婚したら、お母さんと三人で新婚旅行に行けば喜んで貰えるかなと、シェルとの新婚旅行以外の新婚旅行を考えている僕だった。


  シェルさんは、新婚旅行と言えば『初夜』、『初夜』と言えば『初体験』とエッチな事を考えて涎を垂らしているのであった。でも、それって絶対に無理ですから。


  旅行出発前日、大公閣下と母上君に、挨拶にいったら、和の国の国王への親書を渡された。必ず、直接渡すようにといわれたので、無くしてはいけないと思い、イフちゃんに預けた。


  和の国の正式名称は、ニッポニア帝国と言い、レイ・ワノ・ヒミコ26世という女帝が治めているとの事だった。こちら側の殆どの国では、和の国か東の国で通るので、誰もニッポニア帝国とは呼んでいないようだ。

遂に結婚してしまいました。しかし、結婚生活は、まだ不完全です。何が不完全化は、ご存じでしょうが、それでも二人は幸せです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ