第105話 ビラサンカさん 第5夫人でも良いですか?
ゴロタの周りには、残念な人達が多いようです。残念なお姫様に、残念な国王様、公国にも残念な方達がいるのですね。
(王国歴2022年1月1日です。)
新年を迎えた。エルフ公国の新年が、他の国と特に変わっているという事はない。
去年は、グレーテル王国の王都で迎えたが、今年は、グリーンフォレスト連合公国の公都である。僕は、ハッシュ村で、何の変わり映えもしない新年が懐かしく感じていた。ベルがいなくなってからは、正月も雪かきか狩りをして過ごしていた。
今日は、大公閣下と母上君に、新年の挨拶をしに行く事になっている。シェルさんは、大公閣下から、僕達と一緒に住む許可が貰えないので、大公屋敷にいる。
なんでも、婆やと一緒なら良いと言われているそうだが、シェルさんが、それだけは嫌だと言っているらしい。母上君は、僕と住むのには賛成らしい。『競争に勝つには、それくらいしないと駄目だ。』と言っているそうだ。何の競争か分からない僕だった。
今日は、大公閣下と近しい人だけでの挨拶らしい。閣僚や将軍たちは、1月4日に、初出勤となり、その時に新年の挨拶をすることになっている。僕の番が来た。こちらから挨拶を言わなければならないのに、緊張してうまく言えなくなってしまった。シェルさんが、近寄ってきて、僕の手を取って、『頑張って。』と応援してくれた。
「あけ、あけまして、お、おめでとうございます。」
ようやく言えた。シェルさんの手をギュッと握りしめていた。これで、儀式は終わった。それからエーデル姫達が、華麗なカーテシを決めて挨拶しているのを、遠くの景色を見るように見ていた僕であった。
ビラが挨拶をしようとしたとき、コマちゃんが腕から逃げ出して、僕の方に走ってきた。僕の前で、本来の姿つまりデビルライオンになり、念話で新年の挨拶をしてきたが、大公閣下や衛士の方達は、剣を抜いて構えてしまった。
そういえば、コマちゃんの本当の姿を見せたのは、今が初めてだったことを思い出した。僕は、念話で新年の挨拶をしてから、すぐワンちゃんの姿になるようにお願いした。対抗閣下の顔が引きつっていたのは見なかったことにしよう。
今日の夕食は、ノエルが、お母さんの母国、『倭の国』で新年に食べる食事を準備していた。
お米をこねて団子にし、お魚と海藻の煮たスープに他の具と一緒に入れて食べるのだが、本当に美味しかった。『お雑煮』というらしい。今度、野営の時にでも作ってみようと思った。
食後、シェルさんが僕達の家に来た。婆やと一緒だ。今日は、此処に泊まるという。部屋はシェルさんの分もあるので、そこに婆やと一緒に寝て貰うことにした。
僕は、ダブルベットの部屋を使っている。他の部屋は、クレスタさんとノエル、エーデル姫とビラという組み合わせだ。本当は、今日はエーデル姫と一緒に寝る予定だったが、シェルさんと婆やが来たので、明日に順延となった。
婆やは、カイさんと言って、今、180歳だそうだ。しかし、人間で言ったら、どう見ても40前、僕は知らない言葉だが、『女盛り』真っ最中という見た目である。シェルさんが一緒に暮らすのを嫌がるはずだ。それにこの前のパーティで分かったのだが、酒癖もあまりよくないみたいだし。シェルさん達にも、お雑煮を食べて貰ったら、この料理は絶品だと褒めてくれた。ノエルは自慢そうにして、『倭の国』に行ったらもっと美味しいらしいと言っていた。その夜、僕は変な夢を見た。姿は見えないのに声だけ聞こえるのだ。
全能の王にして世界を救う者よ。目覚めの時は来た。高き山を目指せ。
全能の王にして世界を救う者よ。目覚めの時は来た。東の島を目指せ。
ハッと目覚めた。頭の両側が熱い。今まで、こんなことは無かった。それに、あの言葉、あの言葉は何を意味しているのだろう。そう言えば、ブラックさんが、必ず立ち寄れって言っていたような気がする。春、雪が解けたら行ってみようかな。
僕は、また深い眠りについた。隣にシェルさんが寝ているのにも気づかずに。朝、カイさんが食事を作っていた。ふと、母親のシルがいたときの事を思い出した。朝、いつも僕より早く起きて朝食を作っていたな。シルの作るスープ、美味しかったな。
皆が起きてきた。カイさんは、これからお屋敷に戻るそうだ。奥様つまり母上君からの言付けを伝えてきた。
シェルさんは、今後ここで暮らして良いそうだ。大公閣下には、母上君から良く言っておくとの事。最後にがんばれと。
シェルさんは、カイさんに抱きついてお礼を言っている。そのお礼って、母上君に対するものだと思う僕だった。午後、シェルさんとエーデル姫、ノエル、クレスタさんの4名でヒソヒソ相談している。これからの夜のセレモニーとか、お風呂でのセレモニーをどうしたら良いか。問題は、ビラだった。
ビラは婚約者でも何でもないし、僕にも興味がないみたいだ。でも、彼女がいれば、今までのようなことはできない。どうしたら良いか。悩むところだ。
ビラだけ、別の貸し部屋か何かに住まわせるという意見も出たが、それは可哀そうすぎると『ボツ』になった。では、ビラがいないものだとして、今まで通りに自由にやる。それで嫌だったら出て行けば良い、という意見もでたが、それもやり過ぎのような気がする。
ノエルが言った。
「ビラさんは、私よりも2つも年上なんだし、私が経験していること位、絶対に経験しているから、気にしないようにしましょう。」
皆も、その意見に乗ることにした。早速今夜から、始めることにして、最初は、ノエルからという事になった。でも、ノエルは知らないだろうが、シェルさんやエーデル姫、特にクレスタさんとノエルでは、決定的なところが違うんですけど。
その日の夜。食事も終わり、お風呂の時間になった。僕が、のんびりお風呂に入っていると、ノエルが入ってきた。背中を流すためだ。久しぶりだったが、僕は黙っていた。
途中、何回もキスをしてくる。でもそれだけだった。洗い終わったら、お湯で流して、ノエルが上がって行く。
夜、寝るとき、ノエルは、カッターシャツとパンツだけになってベッドに入ってくる。夜のセレモニーが無いときのような、いつものパジャマではない。ビラは、さっきノエルが素っ裸で僕の入っているお風呂に入って行ったのもショックだったが、今のノエルの恰好も煽情的でショックを受けている。
とても真っすぐ見ていられない。お休みのキスも、長く煽情的なものだったことに吃驚してしまったようだ。
ノエルが、今までクレスタさんと寝ていたのに、今日は僕の部屋で寝るといったら、『え、ゴロタさんの部屋って、ベッドが一つしかないのに。』と思ったが、直ぐに気が付いたようだ。いかに鈍いビラであってもノエルが、今晩、何をするか気が付き、顔が真っ赤になってしまう。きっと、あんな事やこんな事もするんだろう。本当は、ほぼ何もしないのだが。
深夜、ビラが聞き耳を立てている様子だったが、僕はきちんとシールドを張っていたので、ビラには聞こえるはずがない。新年の夜は、こうして更けていった。
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(1月7日です。)
今日は、シェルさんと2人で、朝からギルドに行ってみる。ギルドの受付のお姉さんは、『ケイ』さんと言うそうだ。もう、顔なじみになってしまった。
ケイさんは、僕を見ると、手招きをしてくれた。ちょっと難しい依頼が来ているらしい。聞くと、北の森でトレントが大発生しているそうだ。移動しないので、脅威はあまりないが、通りがかりの旅行者が狙われているそうだ。
公都の北の森を支配するノートン公国からの依頼らしい。ノートン公国までは、馬車で1日なのだが、今、雪のため、馬車が動いていないので、徒歩で片道3~4日位かかるらしい。それで、誰も受け手がいないそうだ。シェルさんは、報酬を確認すると、大銀貨5枚と、このギルドにしてはかなり高額のため、受けることにした。
別に旅の準備など全くしないままに、北に向かった。大公国が見えなくなると、僕はシェルさんをお姫様抱っこして、街道を走る、走る、走る。雪が積もっているところは、可能な限り飛び越え、それでもダメな時は、滑るのも構わずに走り続けた。
午後3時には、ノートン公国の森に着いた。シェルさんを降ろし、気配を探知すると、確かに魔物の気配を感じた。森を北に進んでいくと、トレントが3匹ほどいた。雪を被りながらモゾモゾ蠢いている。
僕は、トレントの触手が絡みつくのも構わずに樹木のような肌に手をあてて、ファイアボールを内部爆発させた。爆砕されたトレントは、コロンと魔石を落として動かなくなった。残りのトレント2体もこのようにして爆砕してから、ノートン公国の公都バスター市の城内に入った。
公国の依頼主を探した所、行政長官からの依頼であった。ノートン公国には、冒険者ギルドがないため、公国軍兵士で対応していたが、かなりの数の兵士が返り討ちにあっているので、今回、初めて大公国のギルドに依頼を出してみたらしい。
詳しく話を聞くと、このバスター市から少し南に行ったところに、3匹のトレントがおり、旅人を狙って、触手を伸ばしてくるとの事であった。僕は、さっき爆砕したトレントの事だろうと思ったが、シェルさんは、そのことは長官には黙っていた。今日は、もう遅いので、ホテルに泊まることにして、人目の付かないところでイフちゃんとエーデル姫達4人を呼んだ。全員揃ったところで、ホテルを予約するのだ。いつものとおり、ダブルが1つにシングル2つだ。なんか、久しぶりの気がした。
食事は、ホテルのレストランで取ったが、大公国の一流レストランと大差ない味だった。ただ、雉の蒸し焼きは特別に美味しかった。
今日の当番は、クレスタさんだ。クレスタさんは、いつもの三角パンツにスケスケネグリジェを来て、羽毛入りのガウンを羽織って、僕の部屋に来た。ビラは、この1週間、シェルさん達の過激な行動を見ていて、何をしているか大体分かってしまった。シェルさんに、『自分も当番をしようかな。』と言ったら、『結婚の意思もないのに、そんな事をするのは不謹慎で、許しません。』と言って、拒否されてしまった。もののはずみで『それなら結婚するから。』と言ってしまったが、その時のシェルさんの引き攣った顔が思い出された。
やはり、恐れていたことが来たかと思うシェルさんだった。ゴロタ君に聞いても、絶対に嫌とは言わない筈。本当に、そんな時くらい、キチンと拒否してもらいたいのに。
ああ、これで第五夫人が出来たのか。もう、いい加減あきらめたシェルさんは、クレスタさんに、今日だけ、ビラも一緒にゴロタ君と寝てくれるよう頼んだ。クレスタさんも、いつかそうなると思っていたのか、特に嫌がることも無く、承諾してくれた。
僕は、この日、クレスタさんの他にビラが素っ裸でお風呂に入って来て、クレスタさんのやっていることを見ていたり、ベッドに一緒に入って、じっとしていたことを特に不思議にも思わず、『また一人増えたんだな。』と思っただけだった。
ビラサンカさんの心は揺れています。まだ世間知らずです。JKです。エッチを知りません。