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第102話 残念なクレスタさんの故郷

クレスタさんは、実家に帰ってきました。勿論、ゴロタとの結婚を認めて貰うためです。

(12月13日です。)

  僕達は、クレスタさんの実家の応接室に案内された。立派な…応接室だ。壁には、歴代の御先祖男爵さん達の肖像画が飾られている。


  僕は、緊張していた。ノエルのご両親と会う時の倍位、緊張していた。


  クレスタさんと一緒に、ご両親が入ってきた。父親は、50年配の、長身のガッシリした人だった。貴族服が良く似合う人だった。名前を、ヴィンセント・ミカエル・ガーリックと言うそうだ。


  母親は、40代後半の、金髪の美しい人で、クレスタさんに良く似た人だ。あ、クレスタさんが、似たんです。濃い紫色のロング・ドレスを着ていた。名前を、クリスティーナ・ジンジャ・ガーリックと言うそうです。


  僕達のことは、クレスタさんが紹介してくれた。イフちゃんや、ワイちゃんの事も本当の事を言うと、驚いた顔をしたが、二人の態度を見て納得していた。


  それよりも、僕と結婚したいと言ってきたことに、二人は吃驚した様子だった。クリスティーナさんは、直ぐにニコニコしていたが、ヴィンセント男爵は、機嫌が悪そうと言うか、怒った顔をしていた。


  クレスタさんが、一生懸命説明を始めた。僕が、今、16歳で、グレーテル王国の名誉子爵で、『四精第1位白金大褒章』を貰ったり、帝国から『四大精霊栄誉帝国極光白綬褒章』を貰ったこと、最後に資産が大金貨50枚位有ること等である。


  ヴィンセント男爵は、ウレスタさんの説明に驚いてはいたものの、やはり良い顔はしなかった。クリスティーナさんが、助け船を出してくれた。


  「貴方、クレスタも、もう23よ。これから、新しい殿御を探そうとしても、財産目当ての男しかおりませんよ。宜しいじゃありませんか。地位も名誉も財産も全て揃い、こんな『じゃじゃ馬』を貰って下さるんですもの。それに、とても美形だし。」


  クレスタさんは、母親のクリスティーナさんの言葉を聞いて大泣きをし始めた。最後の言葉が気になったが、ここは泣くに限ると思ったのだ。昔から、そうだった。


  ヴィンセント男爵は、泣き始めたクレスタさんを見て、オロオロし始め、


  「儂は、駄目だとは言っておらん。ゴロタ殿の気持ちが聞きたい。」


  と、僕の方を見つめて言った。そんな質問に、初対面で答える事など出来ない僕は、真っ赤になって、下を向いてしまった。大粒の涙が、ポタリ、ポタリと零れ始めた。


  ヴィンセント男爵は、焦ってしまった。何か不味い事を言ってしまったかな。言葉が厳し過ぎたかなと思い、クリスティーナさんの方を見て、助けを求めた。


  それを見ていたクレスタさんは、『勝った。』と思った。小さい頃からこうだった。チョロい父親だった。


  「ゴロタさんは、クレスタと結婚したいと思っているんでしょう?」


  頷く僕。


  「結婚式は、早くしたい訳でしょう?」


  頷く僕。


  「結婚したら、どちらにお住まいになるの。」


  「ハッシュ村。」


  初めて、口を開いた僕だった。


  「え、それはどこにあるのかしら。」


  「ゴロタさんの出身地なの。もう、ご両親は、いらっしゃらないけど、冒険が終わったら、そこで暮らすんだって。」


  ヴィンセント男爵とクリスティーナさんは、その村が、僕の領地なんだろうと勝手に思ってしまった。これで、ご挨拶と、結婚のお許しを貰うセレモニーは終了だった。


  その日は、昼食は僕達4人と両親の6人で取ったが、夕食はクレスタさんの兄姉も来て盛大な披露パーティーになった。


  クレスタさんは、末っ子で3人の兄と4人の姉がいる。クレスタさんと同じ母親から生まれたのは、長兄と3女の姉だけで、あとは、第二夫人と第三夫人の子だ。今日は、全員が集まっている。皆、僕に興味があるのだ。


  クレスタさんは、僕に貰ったダイヤの指輪を自慢したり、王都や帝都での暮らしについて話したりと、忙しい。僕は、ジッと座って、料理をチマチマ食べていた。


  僕は、こんな会はとても嫌だった。知らない人ばかりだし、全員が自分を見ているような気がして、顔を前に向けられずにいた。


  ここで、ガーリック男爵から、爆弾発言があった。明日、教会で結婚式を挙げると言うのだ。


  僕には、初耳だった。クレスタさんと結婚するのは別に構わない。毎日、キスしたり、夜のセレモニーをしたりしているし。


  でも、明日、結婚するのは嫌だな。シェルさんが嫌がるだろうな。悲しむだろうな。そう思うと、涙が、ポロポロ落ちてきた。


  それに、気付いたクレスタさんが、思いっきり拒否してくれた。まだ冒険の途中だし、国王陛下にも謁見していないのに結婚など出来ないと。


  クリスティーナさんも、応援してくれて、結婚式の話は、無かったことになった。


  パーティーは、終わった。驚いた事に、寝室は、ウレスタさんと一緒だった。クリスティーナさん、何、考えているんですか?


  夜、寝る前にクリスティーナさんが部屋を訪ねて来た。クレスタさんに、本当の事を話すようにと言った。あ、ばれてる。クレスタさんは、全てを話した。


  ・僕は、人間ではなく魔族と精霊の子で有ること。


  ・将来、全てを統べる者になるかも知れないこと。


  ・コミュ障で、女性恐怖症であること。


  ・現在、自分の他に3人の婚約者がいること。


  黙って聞いていたクリスティーナさんは、


  「それでも、クレスタは、ゴロタさんが良いのでしょ。」


  と言った。クレスタさんは、クリスティーナさんに抱き付いて泣いていた。


  その日、夜のセレモニーは無かった。








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  次の日は、は、一日、チェダー市内見物の予定だ。もちろん、クレスタさんの案内付きだ。クレスタさんの通った学校とか、良く行ったスイーツ店とか。後、道場にも通っていたらしい。この王国は、『明鏡止水流』ではなく、『剣禅一如流』が国王指南役を努めているらしい。


  道場に寄ってみると、活気があり、気合いがビリビリと伝わってくる。クレスタさんは、魔法学院に入る前までは、ずっと通っていたので、師範に挨拶をすると言う。僕は、黙って付いていった。


  師範は、30代の長身の男性で、僕達の話は、街の噂で知っていた。クレスタさんが、子供を拐ってきて、無理矢理結婚したとか、お金で子供を買ってきたとからしい。


  クレスタさん、この街って、どうなんですか?


  師範が、僕を見て、流派を聞いて来た。どうやら、腰のベルの剣に気が付いたらしい。『明鏡止水流』と答えたら、是非、若い者に指導してくれとお願いされた。僕は、6歳児用の長さ40センチ位の細い木刀を選んで、道場の真ん中に立った。


  まず、道場首席と稽古した。上段からの、激しい打ち込みを、右、左と4回、凌を当ててかわし、回り込んで右親指の上に軽く剣を置いた。


  次に、次席以下3人を、同時に稽古した。子供用の木刀を、下段に構え、静かに瞑想した。右後方から、剣気を感じ、左回転で上段に振りかぶっていた相手の左親指に木刀を置いた。そのまま回転を続けて、正面の相手の起こりの剣の上から押さえて、やはり左親指に木刀を置き、最後は、左後方の相手を飛び越して、空中で身体を捻って、着地と同時に背後から、相手の左親指に木刀を置いた。


  道場の中に沈黙が流れた。その後、盛大な拍手と歓声に包まれた。師範が、涙を浮かべながら、剣聖の技を見たと感動していた。クレスタさんを見ると、横を向いて、口笛を吹いていた。


  道場を後にすると、レストランに行った。幼馴染み達が集まっているので、紹介すると言っていた。気が進まなかったが、仕方がない。イフちゃんは、興味がないのか、剣の中だ。


  大勢の女性達がいて、小さい子を連れている子もいる。ちょうどワイちゃんと同じ年回りの子達だ。


  僕はクレスタさんの隣に座ったが、恥ずかしくて下を向きっぱなしだった。僕を見て、女性達は、


    「可愛い、お人形さんみたい!」

    「どこで見つけたの。それとも、買ったの?」

    「私に、一晩貸して!」


  段々、酷いことをいい始めたが、クレスタさんがニコニコしてスルーしてた。


  夜は、二人で(4人)で、市内で一番人気のあるレストランに行った。クレスタさんは、今日、一日中、指輪をしていた。今日、会った友達の話をしていた。子供達の話になると、目の奥に、遠くを見ているような眼差しを感じた。








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(12月15日、帰ります。)

  今日は、ファー・イースト市に帰る日だ。飛行服に着替えてから、郊外に向かう。クレスタさんの家族と友達、それに会ったこともない人達がゾロゾロと付いて来ていた。


  郊外に出ると、クレスタさんが土魔法で壁を作り、その陰でワイちゃんが、黒龍に変身した。10mを超す黒龍に、皆、後退りをする。


  気分の乗ったワイちゃんが、上空に向かって炎のブレスを打ち上げた。誰も『たまやー』とは言わず、逃げ出そうとしている者もいた。


  僕は、黙ってワイちゃんに鞍を付けて、準備が終わった。クレスタさんの両親、兄姉に挨拶をして、クレスタさんを先に乗せる。僕が、乗って出発準備完了だ。クレスタさんが泣いている。ご両親も泣いていた。


  ゆっくり、ワイちゃんが、浮かび上がった。特に、羽ばたかない。羽を広げただけだ。上空100m位まで上昇してから、進路を北東に取って飛翔し始めた。地上の人達が、あっという間に見えなくなった。クレスタさんは、僕の背中で、いつまでも泣いていた。飛行眼鏡が曇ってもお構いなしだった。


  ファー・イースト市の郊外に到着した。ワイちゃんは、女の子の格好に戻った。僕達は、飛行服のままだ。


  ホテルに戻ったら、シェルさん達の飛行服でファッションショーが始まった。どうも色合いが気に食わなかったらしく、その日の内に、あの武器屋に行くことになったようだ。


  武器屋にさんはビックリしてた。突然、飛行服軍団が来たのだから。しかも、ヘルメット、眼鏡まで付けて。


  どうも、飛行服のアースカラーが気に入らないらしい、結局、赤とかピンクとか、ビビットな色の上着とヘルメットを特注していた。


  貴方達って、本当に。


婚約は、上手くできました。でも、クレスタさんとの結婚は、いつになるのでしょうか。ゴロタの性長と、帝王就任、どちらが早いか?

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