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第100話 帝国極東の旅


ついに、本編100話目になりました。いよいよエルフ国が近づいてきますが、冬将軍も近付いて来ます。




(11月24日です。)

  朝早く、イーデル東部郡ラッシュ市を出発した。これから、街が1つ、村が3つ、野営が2つで、ファー極東郡郡都キオスク市だ。到着予定日は、12月2日だ。まだ雪は降らないので、1月中にギリギリ、エルフ公国に入れるかも知れない。でも、新年を森の中で迎えなければならないかも知れない。


  最悪、ある考えがあるが、それは皆には黙っていようと思う。駅馬車は、4両編成だった。結構、東に行くお客さんが多いみたいで、全部で29名が乗車している。僕達は、イフちゃんを入れて7名なので、8人乗りの馬車を貸し切りで乗っている。


  乗客用のほかに、馬の餌や水、それに御者さんのキャンプ道具を運ぶ馬車と警備の騎馬隊用の輜重車が1台の編成なので、大キャラバン隊となっている。警護の騎馬隊は、20騎だった。


  これから先は、辺境の地だ。エルフ国との交易があまりないことから、街道もどんどん寂れて来る。次の郡都ラッシュ市から東に行く駅馬車が、どれくらいあるのか分からないが、とりあえず行ってみることにする。


  馬車の中には、暖房用の魔火石がコンロの中に置かれているが、隙間風がひどくて、あまり温かくない。仕方が、無いのでシールドを掛けた。別に24時間かけていても、魔力には全く影響がないので、ずっと掛けていていいのだが、御者さん達に、あまり知られたくないので、こっそり掛けている。


  シェルさん達は、生地こそウール素材になっているが、相変わらずミニスカだし、ストッキングも薄いし、それで寒くないんですか?ビラだけは、冬用の『せーらー服』を着ていて、中にウールのセーターを重ね着している。


  シールドを掛けていると、暑くなるのか、皆、上着を脱ぎ始めるが、何か目のやり場に困る状況になってしまう。上着の下に着ているニットシャツが、身体の線にピタッとし過ぎているからだ。シェルさんは、常にスレンダーバディだ。


  今日は、隣のエール村までの予定だ。夕方に到着したが、もう陽は落ちていた。午後4時30分となると、陽が落ちてしまうので、馬車の速度が落ちて、より到着時間が遅くなってしまうのだ。


  村の旅館は、2つあったが、どちらも似たような旅館だった。僕達は、ダブル1つにツイン2つといつもの通りに部屋を取り、いつもの通りに泊まった。


  夜、皆が一度、僕の部屋に集まるときに、ビラも参加したいと言い始めた。シェルさんが、『それは、婚約者、準婚約者の特権だから。』と拒否したが、涙目になっているビラを見て、ちょっと可哀想になった。


  ビラは、まだ僕と満足に話をしていない。話す事が思い付かないし、ビラが話しかけようとすると、僕は真っ赤になって下を向いてしまう。


  僕から、話しかけることは、全くない。他の子とは、普通に話したり、笑ったりしているのに、何故自分だけ違うんだろうと、疎外感を感じるようになっていた。


  夜、寝る前に僕の部屋に集まるのも不満だった。自分だけ、仲間外れになった気がする。シェルさんが、皆とコソコソ相談して、一つの提案をした。


  「私達は、ゴロタ君の部屋に行って、一人一人、お休みのキスをしているのよ。それに、参加すると言うのなら、一緒に来てもいいわよ。」


  「え?キス?」


  「そう。キスよ。」


  ビラは、顔が、赤くなるのを感じた。まだ、キスの経験はない。ゴロタさんと、キス?


  考えたこともない。いや、あのお誕生日の時の、物凄いキスを見て、自分の時もと想像したことがあった。また、夜、皆はゴロタさんと二人で寝て、何をしているんだろうか?と、想像して、股間が熱くなった時もあった。ノエルちゃんなんか、私よりも年下なのに、きっと色んな事を経験しているんだと思うと、ちょっと悔しくなってしまう。


  でも、今すぐ、結論は出ないので、暫く考えさせて貰う事にした。シェルさんは、きっと、こうなるだろうと予想していた。これ以上ライバルは増やしたくないが、このままと言う訳にも行かないだろう。


  シェルさんは、小声で『どうしたいか?』と僕に聞いてきた。


  「僕には、決められないよ。ビラは嫌いじゃ無いけど、シェルさんほど好きでもないし。本当は、シェルさんだけで良いのに。」


  『え、それって、告白。』


  もう、しっかりした考えが出来なくなって、ニタニタ涎を垂らす残念エルフだった。


  僕は、もう一度、シェルさんと二人で旅をしていた頃に戻りたかっただけだ。いつだって、相手の事を考えて、『嫌』と言えなかったため、今の状況になってしまった。このまま、皆と結婚しても、皆を幸せにできる自信などは、全く無かった。


  とりあえず、ビラの事は、後で決める事になった。








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(11月28日です。) 

  今日の夕方、旅程で唯一の市である、グイロウ市に到着した。明日は、休養日だ。この都市は、ファー極東郡で第二の都市だ。エルフも大分多いが、奴隷制が廃止されても、汚れ仕事や、肉体労働に従事するエルフは多いようだ。しかし、彼らには、暗さは感じられない。働きにより、上を目指すことが出来るようになったからだ。


  僕達は、グイロウ市のボオラ4等認証官市長の案内で、市内で最も上等なホテルに案内された。当然、スイートは、断って、いつもと同様の部屋を取った。ボオラ市長は、この街の生まれで、地元採用の事務官から叩き上げで認証官になっただけあり、気配りが物凄い方だった。明日、市内観光をすると言ったら、僕と同い年の自分の娘を、案内に付けると言ってきたので、シェルさんが全力で拒否していた。


  翌日、市内観光で、色々見て回っている時、偶然、風俗街に迷いこんだ。女性の、殆どはエルフ族で、冬だと言うのに、生足の超ミニスカで、昼だと言うのに、店の奥で客と抱き合っている姿があった。中には、透け透けのネグリジェに、三角パンツだけの姿で、店の前に立っているエルフもおり、僕だけでなく、皆も顔が真っ赤になっていた。


  この街でも、冬物の洋服を大量に買っているシェルさん達だった。


  今日の夜、寝る前のお休みのキスに、ついにビラが同席した。シェルさんから始まって、交代で皆とキスする僕を見て、段々、唇が開いて涎が溢れてくるのに気付かなかったビラであった。


  その日、ビラはいつまでも眠れなかった。風俗街で、男の人と抱き合っていたエルフの女性。僕さんとキスをして、股間を押し付けているシェルさん達。考えただけで、自分の股間が熱くなってくるのが分かるビラだった。








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(12月2日です。)

  夕方、ファー極東郡郡都キオスク市に到着した。この都市は、極東郡総司令部があり、防衛の街でもあった。当然、仮想敵国は、隣国のエルフ公国であるため、市内には、殆どエルフはいなかった。だから、その手前のグイロウ市には、エルフが多かったのであろう。


  郡長官はホイル3等上級認証官であった。ホテルまで表敬訪問に来てくれ、聞きもしない市内情勢と防衛態勢について説明していた。あのう、ここにいるシェルさんは、隣国のエルフ公国の王女なんですが、そんな極秘情報をペラペラ喋っていいんですか?


  翌日、冒険者ギルドに行って、この前のワイバーンの落札状況に付いて聞いたら、大金貨8枚で売れたそうだ。そのまま、口座に入れて貰い、これで大金貨の合計は、48枚になった。


  ここでも、ワイバーン1匹をオークションに出す事にした。


  昼食は、お肉をパンに挟んだものとミルクのセットを食べた。その後、僕は一人で買い物に行きたいからと、皆と別れた。シェルさんが、何を買うのかしきりに聞いてきたが、笑ってごまかした。女性陣は、装飾品と冬物衣服を買い、スイーツを食べることにしていた。


  僕は、イフちゃんと二人で、武器屋を訪ねた。最初の武器屋では目的のものは売ってなかったが、次の武器屋では、奥の方に売っていた。


  ワイバーン騎乗用の乗鞍である。ワイバーンの体長5m用から、体長10m用まであったが、当然、体長10m用のものを買った。店の人が、一人で持つのは無理だから、指定した場所に送ると言ったが、僕がヒョイと持ち上げたら、吃驚していた。あと、轡も買おうとしたが、口の中に棘が刺さるようになっているもので、他のを探していたら、紐と取り付け金具だけを買い、轡そのものは、馬用のものを伸ばして制作すれば良く、1時間もあればできると言われたので、10mのワイバーン用の轡の幅で作って貰うことにした。


  あと、航空騎乗用の防寒ヘルメットと航空眼鏡、それに襟に狐の毛皮を使っている防寒ジャケットも購入した。店員に勧められて、防風ズボンと、長ブーツも購入した。鞭も進められたが、いらないと断った。


  今までの交渉は、当然にイフちゃんがしてくれたが、値段交渉は無しで、言い値の大銀貨5枚半を払った。店員は、こんな小さな子が、即金で払うなど信じられないと言う顔をしたが、思い直して、防風マフラーをサービスしてくれた。


  お店で、お茶を飲みながら待っていると、轡が出来上がったので、大きな荷物を持って、普通に歩いて店を出た。店を出てから、周りに人がいないのを確認して、イフちゃんに預かって貰った。


  ゆっくり歩いて、城門まで行き、市外に出た。人家が無くなるところまで小走りで、その後は、全速力で、近くの丘の陰を目指した。


  丘の陰で、ワイちゃんを呼びだした。


    「出でよ『ワイ』、その姿を現わせ。」


  『呼んだ?』


  「うん、ちょっと試したいことがあるんだ。」


  『なあに?』


  「騎乗用の鞍を買ったんだ。付けてみていい?」


  『いいよ。』


  僕は、イフちゃんから出した、鞍を付けてみた。首の付け根、型のところに置いて、後ろ側と前川の2本のベルトでしっかり固定した。ちょうど首の後ろの所に棘のような突起があるので、その突起に鞍の穴を合わせると、回転しないで安定するようになっていた。轡を噛んでもらったが、少し手綱が短かったようだ。これは、後で調整して貰おう。


  後、飛行服に着替えて、完全装備をした。別に平服でも、シールドを纏えば、どんな風圧でも大丈夫なのだろうが、何となく恰好良かったので、着替えることにした。


  いよいよ、初飛行だ。

ワイちゃんは、通常のワイバーンよりも大きいので、二人ぐらいは騎乗できそうです。

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