第98話 死の使い リッチ・ブラザース
遂に、遂に100話目突入しました。プロローグ2話があるため、表題はまだ98話目ですが。ゴロタのチートぶりは相変わらずですが、女性陣もなかなかチートです。
(11月21日深夜です。)
ホテルの階下に降りると、従業員と宿泊客が一固まりになって震えていた。玩具のような魔除けが、玄関ドアの脇で光っていた。
僕達の姿を見て、何となく安心したのが半分、不安が増したのが半分のようだ。
「皆さん、ご安心下さい。王国一、この帝国でも最強と言われてる『S』級相当パーティが、オークどもを殲滅しますので。」
シェルさん、言うことが、インフレーションしてます。それに『相当』って何ですか?『相当』って。
ホテルの人達を、3階に避難させてから、玄関ドアにシールドを掛けた。外に出てみると、帝国軍と冒険者達が、一団となって、オークと対峙している。既に、数人の兵士と冒険者が倒れて動かなくなっていた。
彼らは、オークどもを、これ以上、奥、つまり郡政庁方向に行かせないようにしているが、彼我の勢力は劣勢のようだった。
オークどもは、鋼の鎧、兜を装備し、武器も鋼鉄の大剣やバトルアックスであった。あれは、オーク・ソルジャー達だ。と言うことは、
オーク・ジェネラル
オーク・ロード
オーク・キング
の何れかが、指揮している可能性が高い。最悪の場合だが、『オーク・デビルキング』がいると、帝国が滅びかねない。今回の、オーク・ソルジャー達の装備、隊列の動きを見ると、かなり高位の指揮官だろう。
僕達が、帝国軍兵士達の前に出て行く。
「ここは、私達が何とかします。皆さんは、常に部隊行動をされ、単独では、動かないで下さい。お願いします。」
可愛らしい、超絶美少女エルフの指示を聞きながら、冒険者達が、声を上げて僕達の二つ名を呼んだ。
「殲滅の死神」
「聖賢の使い手」
「鬼畜ハーレム」
「絶倫ロリ殺し」
物凄く、ガッカリな二つ名が増えている気がする。
僕は、ベルの剣を抜いた。気を込める。剣が、青く光る。『身体強化』と『暗視』を発動する。身体が赤く光っている。シールドを纏う。シールドの白い光が、『身体強化』の赤と混ざって、ピンクになる。実際には、同時発現ではない。認識不能なほど、高速で切り替わっているのだ。
僕は、左脇構えのまま走った。『瞬動』は、使わない。高い身体能力だけで、オークの中を駆け抜けていく。
僕は、オークの太い足元の踝の上辺りを切り抜いていく。簡単に、アキレス腱から下が切断される。音は、ほとんどしない。骨も、バターのように切り離されている。
僕は、アルファベットの『Z』の形で、オークの群れの中を走った。後には、揉んどり打って倒れるオークどもがいた。早く止血しないと、間違いなく出血多量で死ぬだろうと思う位、片足から血を吹き出している。
帝国軍の隊列の所まで戻った時には、7割以上のオークどもが、死にかけていた。残ったオークどもを、各個撃破していったが、ちょっと大きめのオークを攻撃しようとして、ベルの剣が弾かれた。シールドが張られている。全体の姿を見ると、他のオークと明らかに違う。
鎧の、肩の所に、房付きの赤いマントをしているのだ。兜にも黒い羽飾りが付いている。
『オーク・ジェネラル』か、『オーク・ロード』の可能性が高い。
僕は、一旦、飛び下がった。
武器が、赤黒く光っている。魔剣だ。効果は分からない。僕は、ベルの剣を白く光らせた。
左正眼に構え、踏み出しての『突き。』
そいつは、魔剣で防いだ。光が、右上に弾かれた。だが、防ぐと言うことは、危険を察知していると言うことだ。
そのまま、そいつの剣は、『斬撃』を放って来た。黒い『斬撃』だ。僕は、聖なる魔力を右手に流して、その黒い瘴気を受け止めた。それは、霧散してしまった。
僕は、左脇構えから右上に切り上げ、返しで、面打ち、かわされて胴抜き、振り返って斜め袈裟斬りと、連続で打ち続けた。そいつは、最後の袈裟斬りに応じきれずに、肩から心臓付近までを切り裂かれた。
ガクッと、膝を付いたそいつは、左手を僕に向け、衝撃を放った。
危なく、スエイでかわした。そのまま、バク転で下がって、サンダー・ボルトを直径1センチに絞って、そいつの目を狙う。
眩い光線が目を貫いて、後頭部から抜けた。黒い煙がプスプスと漏れ出てくる穴に、ベルの剣を突き込む。瞬間、気を放つ。そいつの頭が爆砕した。血と、脳漿と骨片が僕を襲うが、シールドが防いでくれた。但し、ベルの剣は、そうはいかなかった。
なにか、気持ちの悪いものがベッタリと付着している。一度、地面に向かって、振るい落としてから、洗濯石で綺麗にした。
戦いが、終わった気がした。残った瀕死のオークどもに帝国軍兵士と冒険者達が、トドメを差していた。イフちゃんの警告が聞こえる。
『ゴロタ、外にもいるぞ。危険だ。』
僕は、走って城外に出てみた。そこには、アンデッドが瞬いていた。スケルトン、グール、ゾンビなどだ。数えきれないほどだ。その後方、黒い瘴気が立ち込めているところに小さなアンデッドがいた。杖を持っているからには、リッチだろうか。
『イフちゃん、コマちゃん。頼む。』
イフちゃんは、イフリートの姿で、コマちゃんは、デビル・ライオンの姿で、アンデッドどもを焼き尽くす。しかし、リッチは、全くの無傷だ。黒い瘴気を撒き散らして、ニタリと笑う。
イフリートが、地獄の業火をリッチに浴びせる。一点集中だ。流石に、リッチは、上空へ飛び退く。
僕は、ベルの剣を納め、力一杯ジャンプした。
リッチは、『黒い死の呪い』を地上に振り下ろすため、杖に瘴気を集めている。
空を飛翔しながら、『紅き剣』を顕在化させる。リッチの上から大剣を降り下ろす。大剣『一の形』だ。
リッチは、頭から胴までを切り裂かれ、黒い灰となった。
地上に降りた僕は、前よりは疲労感が少ないことに気が付いた。胸の力は、自然に発揮できたみたいだ。自分の身体を燃やした感覚は無かった。
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(11月22日です。)
翌朝、冒険者ギルドに行ったら、緊急依頼があった。北のノースレークの東岸にダンジョンが出現し、オークが異常発生しているそうだ。依頼内容は、探索と、ダンジョン攻略の二つだ。
じっくり探索しても良いが、このままでは、冬を迎えてから、エルフの森に入ってしまう。少し急ぎたい。
ダンジョン攻略を受けることにする。既に、4階層までは攻略できていたが、『B』ランクパーティでは、最終攻略は無理のようだ。
早速、そのダンジョンに向かう事にした。特に準備することはない。せいぜい、ダンジョンマップをメモする紙とペン位だ。
ダンジョンまで、ビラの足で、2時間だった。お昼前、ダンジョンに入っていった。1階層は、冒険者パーティが沢山いたが、3階層でグッと少なくなり、4階層では、魔物以外、誰もいなかった。
4階層のボスは、ゴブリン・ロードだったらしいが、討伐されたらしく、何も出て来ない・
5階層は雪山エリアで、ボスはブリザード・ウルフだ。遠吠えで吹雪を呼ぶのがウザかった。
6階層は、ロックエリアで、地上40m位の崖登りがあった。ボスはロック・ゴーレムで、全く刃物が聞かなかった。凍らせて粉砕した。ドロップ品があった。鋼鉄の大剣だった。重くて、僕以外は持てなかった。しかたが無いので、放置した。
7階層は、一本橋エリアだった。戦闘の一人だけしか戦えないという、いやらしいエリアだった。ボスは、サダコという女性の魔物で、四角い箱から、髪を振り乱して、永遠に出てくるのだ。あらかた、飽きたので、四角い箱をこわしたら討伐できた。ドロップ品は、鋼鉄の箱だった。さっき壊した箱にそっくりだった。中は空っぽだった。大きく重いので、放置した。
8階層は、廃墟エリアだった。スケルトン・アーミーにスケルトン・ウルフ、最後はスケルトン・ゴーレムだった。最後のスケルトン・ゴーレムは、バラバラになった骨がカタカタと集まって、巨大なゴーレムになるのは壮観だった。めんどいから、バラバラになったところを氷漬けにして、粉々にしてから、イフちゃんがローストした。ドロップ品は、鋼鉄の骸骨だった。それもかなり大きい。中までびっしり鋼鉄だった。重すぎて、僕でも持ち上がらなかったので、放置した。
9階層は、珍しく森林エリアだ、森林にはトレントと思ったが、ドライアドだった。しかも、木のコブから次々と現れる。めんどい。そのコブを凍らせて、凍らせて、凍らせてと三回位凍らせたら、何もでなくなった。9階層のボスは、大型のゴリラだった。牙も邪悪だが、もっと邪悪なのは、自分の糞を投げて来るのだ。これには、引いた。女性陣は全員が逃げた。コマちゃんも逃げた。仕方が無いので、水魔法で、シャワーを浴びつつ、サンダー・ボルトで木から落とし、げんこつで殴って気絶させたら、煙りになって消えた。ドロップ品は、鋼鉄の『うんち』だった。放置した。
10階層に行ってみた。真の闇エリアだった。魔光石に魔力を注ぎ込んでも光らなかった。当然、ファイアも使えなかった。僕は、『暗視』スキルを使ったので、支障は無かったが、皆を引き連れて歩くのは大変だった。イフちゃんにロープを出して貰い、それぞれに腕を結んで、はぐれないようにした。コマちゃんは、犬だから匂いで大丈夫だろうと思ったが、自分で首輪を作って、はめていた。器用だ。
ラスボスは、リッチ・ブラザースだ。名前に特に意味は無い。単に複数のリッチがいるだけだ。常に黒い瘴気を纏っているが、最近は飽きてきた。なかなか魔法が効かない存在なのだが、今日は、全員の攻撃でどこまでやれるか試してみる。暗闇の中で、ファイア系以外の魔法を浴びせることにする。
シェルさんの風を纏った弓矢2本を撃った。黒い瘴気を通って身体にささったが、刺さっただけだ。構わずに、どんどん撃っていく。ドカンドカンと当たっていく。リッチ達が嫌がり始めた。
ノエルとビラがホーリーを放つ。特にノエルのは、スペシャルホーリーだ。暗闇が白く光り輝く。リッチの黒い瘴気が霧散した。どんどん放っていく。完全に嫌がっている。
クレスタさんが、特大アイス・ランスを2本撃った。リッチの胸に大きな風穴があいてしまった。そこに、追い打ちをかけるようにホーリーがその穴に吸い込まれていった。
僕は何もしないうちに、ダンジョンクリアをしてしまった。
あ、エーデル姫も何もしていませんでした。エーデル姫は、明るくなったダンジョンで、珍しい石を探していました。
如何だったでしょうか。通常、リッチは1,000人単位の軍隊でも無ければ負けてしまうそうです。死の使いですから。




