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私、この世界を征服します。  作者: イイコワルイコ
1章「王女の行方」
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第3話「ミフィーリアの魔物」




《お母さんに会いたい。お母さんに会いたい》



妖精のそれは、問いかけでも確認でもなかった。



私の中の本心を"決めつけた"言葉だ。



だけど、その身勝手な誘惑は、願いはどんな理由であっても断らなければならない。

なぜなら私のお母さんはもう死んでいるから。

会わせてやるということは、つまり。



《お母さんは遠くにいる。とても遠く》


「………」


よかった。私が正気で。

考えた通りだ。

その"遠く"とやらに行くには死ぬしかないのだろう。



「ふひっ」


妖精の顔から考えは読めない。

でも、考えを知ってしまったらこんなにも…優越感というのはリンゴのように甘い。

それでも溢れた笑いは自分でも気持ち悪いと思った。



《エンヅォルトまで一緒に》


「待って。…今、エン…え?じゃあ私のお母さんは」


《エンヅォルトはここから遠い。とても遠い》



妖精の顔が笑ってるように見えた。

してやられたのは私の方だった。


「生きてるの…?」


《あなたの願いは?》


これが嘘なら、私はどうなるんだろう。


もし本当なら、私はどうなるんだろう。




「連れていって。お母さんに会いたい」



何を1人で駆け引きしていたんだろう。


どう転んでも私は受け入れられるはずなのに。


騙されて殺されたとしても、無理やり生かされていた未来より明るい。


私は今、生きる目的を手に入れた。



ペンダントが冷たくなって、すぐに世界が白と黒と赤に染まった。


妖精の姿が見えない。



《ミフィーリアで待ってる》


ツンと甘い香りが鼻を刺激した。



「ミフィーリア…」


私は知らない場所。

商人との交換で手に入れた鏡がたしかミフィーリアで作られたものだって聞いたけど。



「地図をどこかで手に入れないと」



出発した。


新たな目的のために1歩踏み出した。


舗装された道は黒く染まっていて、それ以外が白い。


私のための道だ。この"黒"を辿れば私の目的に近づく気がする。



「お母さん…」




/////////////now loading......




「そこの女、止まれ」



私の向かう方向から馬車が来た。


生き物の赤は馬が2…人間が…



「8。守られてる」


「女、お前は旅人か?武器を持たぬのならこの先へ進むのは諦めろ」


「あなたは兵士?」


鎧かな。金属がカチャカチャと鳴ってるのは。


「目が悪いのか…ならば尚更、先へは進むな」


「そんなに危険なの?どうして?」



「何をしている。チャド様を待たせるつもりか!」


「はっ!」



荷台から違う人が顔を出した。

何人かでチャドって人を護衛してるんだ。



「命が惜しければこの先のミフィーリアには絶対に立ち寄るな。いいか、忠告はしたぞ」


馬が鳴いた。

馬車が動き出して、たくさんの赤が私の来た方向へ進む。



「この先にミフィーリアがあるんだ。もう少し」



知らない世界ばかりだから、そこまで歩くのは苦じゃない。

それでも少しずつ疲れてしまうから。


リンゴをひと口。



「うん」


妖精の甘い香りが遠くから漂ってきてる。


呼んでる。




/////////////now loading......




香りに誘われてたどり着いたのは、国じゃなくて村だった。


「ちょっと難しい」


白と黒と赤でしか世界が見えない私には。


たくさんの赤があちらこちらへ動き回ってる。



「もうおしまいだー!」

「待てよ親父!家族を置いて逃げる気か!?」

「ふざけるな!あんな化け物に襲われて家族も糞もあったもんじゃない!ここに居たいなら勝手にしろ!」


どこに行っても、父親はクズじゃないか。


変な親近感。



「ソフィー!ソフィー!どこなんだ!」


「逃げろ!村長が化け物に殺された!!」


「大将軍様はどこに行ったんだ!」


「こ、こっちに来るなー!」




騒がしい。


人々は私を避けて街道の方へ逃げていく。


「あ、そっか」


何かよく見えないと思ったら。

人間が逃げ回っていて、それに気を取られてた。


家とか建物が全くないから村の中の雰囲気が分からない…だから



「倒れてる…」


地面に2人。1人は赤がだんだん薄くなってる。


「死ぬの?」


「……す、け、…て」


「私には無理。ごめんね。こっちのはあなたの家族?」


「妻…」


「そう」


既に赤を失った奥さんの手を、赤が残り少ない男の人の手に触れさせた。


「よかったね。死ぬ時に一緒で」


置いていかれたら寂しいから。



目が慣れてきた。


建物がほとんど壊されてる。


騒がしくなくなって、静かになってきた。




「私はこの村で何をしたらいいんだろう」


妖精がここで待ってるって言った。

でも化け物?がいるらしいこと以外の情報がない。



「あ、地図だ」


思い出した。


今の私なら生き物の赤を見つけるだけでいい。

隠れてる人に聞いて地図を持ってる人から譲ってもらおう。



周囲を見回して、うずくまってる赤を見つけた。



「そこで何してるの?」


「っ…びっくりした…あなたこそ。今この村は」


「私、地図が欲しいの。世界を旅出来るような地図…持ってない?」


「旅?そんなこと出来るわけないじゃない!」


「なんでそんなに怖がるの?相手も生き物だよ?それに」


私はその化け物の場所が分かる。


「……あなた武器を持ってる?」


「短剣なら」


「戦える?」


「いいえ」


「………私に協力して。そしたらあなたの欲しがってる地図をあげる」


「化け物を殺したいの?」


「自分の生まれ故郷よ。守りたいと思うのは当然」


「私はそう思わないけど」


「…変な人。私についてきて。化け物…いえ、魔物…フライブルを見つけて背後から私が殺す」


「魔物…?」


「図鑑で見たから分かるの。あれはフライブル。怪力で邪悪な翼を持った魔物」


「ふーん」


「行きましょう…あなた、ミフィーリアの人じゃないわよね?」


「うん。…キャル。どこにでもいる"ただの町娘"」


「……私はソフィー。真実の女神と同じ名前」


「そうなんだ。ソフィー。魔物ならこっちに向かってる」


「え?」


面白い。

フライブルという魔物は、コウモリに似ている。

大きさは人間の子供ほどで、とても早く飛ぶ。


狼人間と同じように賢いのかな?

人間の言葉を


「キャル!伏せて!」


ソフィーに頭を上から押さえられて、そのすぐ上を魔物が飛んだ。


「いい?飛んでるフライブルに捕まってしまったら空までデートすることになる。もちろんそのまま空で…」


首を掻き切る動作を私に見せて、捕まることが死に繋がると忠告した。


「どうやって殺すの?ソフィー」


「フライブルは獲物を空で殺して陸で食べる。だから、あいつに何か肉を与えれば…」


「分かった」


「キャル?どこ行くの?」



死に際に手を繋がせてあげた男女。


ちょうど"肉"として使えそう。



「待ってよ!ちょっと!」


「肉だから。魔物が"これ"を食べてる間にソフィーが殺す。そういうこと」


「………」




目立つ場所に2人を引きずった。

食いつきやすいように、男の方は上だけ服を捲って肌を露出させた。



「……戻ってきたよ」


「隠れて」


半壊した建物に隠れて、広場で肉を啄む魔物を観察。

ソフィーはどう殺すつもりなんだろう。



「"真実のソフィー"よ、民を守りたまえ…」


ソフィーが魔物に向けた手に赤が集まっていく。


「正義を追求せし光、」



((ホーリーグレイヴ))



魔法だ。

初めてちゃんと見た。


手から武器が出現して、そのまま触れることなく武器が魔物に向かって飛んでいった。



直後、破裂音。



「ふぅ」


「終わり?」


「見えたでしょ。魔物が弾けたのを」


ソフィーの声が不安から安堵に変わった。



それから、2人でミフィーリアを歩き回って生存者を探した。


……いなかったけど。



「ベン…」


「恋人?」


「騒ぎのせいではぐれて…もうダメなのかな」


「逃げたかもしれない。私がこの村に来た時、たくさんの人が逃げてたし」


「だったらいいな…また会えるかもしれないから。キャル?何を探してるの?」


「妖精」


「え?」


「なんでもない。そういえば地図は?この村にあるの?」


「あ、うん…その…私の頭の中に」




ミフィーリアの唯一の生存者、ソフィー・ウィジャドが同行することになった。




「キャル。目的地を聞いてもいい?」


「ライヴァンからミフィーリア。このまま西に向かうとどこに着くの?」


「え?西?…人間と魔物の国境線だから、大軍国ゴルゴラだよ。世界を魔王と勇者で分け合っても、それに従わない魔物と人間がいる。だから魔物から人間を守るためにゴルゴラの戦士達が国境線を守ってる」



ソフィーの説明を聞き流しながら、遠くの空を飛ぶ妖精を見つけた。

西に向かってる。



「キャル?」


「そこに行こう。きっと待ってる」


「誰が?」


「知らない世界」



/////////////To be continued...


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