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私、この世界を征服します。  作者: イイコワルイコ
最終章「世界を変える力」
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第6話「敵に回したくないもの」




「聞きなおしてあげる。あなた達4人は、"私の国"に何しに来たの?」





もしかしたら、正確に日数を計算すれば言うほどでもないかもしれない。

それでもソフィーにとってこの再会は待ちに待ったものだった。


今となってはどう別れたのかさえ、定かではない。

記憶してはいる。真実の女神の力により、正しく、詳細に今までの様々な出来事を記憶してはいる。


だがそんなものがどうでもいい。個人的な感情に揺さぶられてしまう。



「私の国…はは。キャル、ここは」


「私の国だよ。ここは私の家で、2人は私の両親。家族揃って仲良く暮らしてる。あ、ブラウンもいるよ?」


「そのブラウンなら、今頃どうしているだろうな」


「レスナ…だっけ?」


「あの男は私の力を得た。しかし"不純物"を混ぜ込んだのはお前達だろう?力に溺れ、自ら破滅の道を歩むとも知らずに」


「そう…その言い方だとブラウンのこと殺したんだ?」


「悲しいか?」


キャロラインはレスナに笑顔を見せた。



「全然。死んだって、蘇らせればいい。ブラウンとももう仲直りしたんだよ。彼はもう独りじゃない。…戦う時は別みたいだけど」



「死者を蘇らせる、か。女神の力にも耐える屍の兵を作ったのもお前か」


「ねぇ、やめてよ。私達はキャルを」


「ソフィー」


アルタの声に被せるように、


「ソフィー。私の家はここなの。帰る場所はここだし、家族がいるのもここ。どこかに行く必要なんてない」


「…だって…ここに暮らすって…魔物の国だよ?…それに、魔国には魔王が…」


「それが?」


「動くな!マクシミリアン!」


レスナの一喝。

立ち上がろうと腰を持ち上げたマクシミリアンだったが


「やれやれ…。なぁ。君たちが娘と仲良くしてたのか知らないけど、お世話になったのかもしれないけど、キャロラインは俺と、妻と、3人で家族なんだよ。分かるか?"家族"。こっちからすればわざわざ家族を引き裂こうとしてるように見えるけど…?そうなれば、父親である俺が追い払うのは自然だろ?」


「お父さん大丈夫だよ。みんなもう帰るって」



「…キャル。教えて。ここに連れてこられた時、あなたは見てたはずだよ。…魔王の姿を」


ソフィーは諦めない。僅かに声を震わせながら続ける。


「私達が魔王を…殺す。そしたら絶対に正気に戻る。だから教えて…この国の…魔王はどこ?」



「……」


キャロラインは無言になり、代わりに右側から床に剣先が叩きつけられる音が2回。


《この国の王が誰か知りたいのか?教えてやろう》


そして発せられた不気味な声はソフィー達を驚かせる。

その声を聞いて4人の考えは瞬時に統一される。

それは。



「あなた」


ソフィーは右手を向ける。手のひらには光が生まれ、すぐにでも彼女の命令により光線が



「させるかよ、妻だぞ」


言葉より少し早く、マクシミリアンの蹴り上げがソフィーの肘に到達した。

裏から当てられた蹴りの威力は凄まじく、その場にいた全員がソフィーの右腕が可動範囲外に大きく跳ね曲がったのを目撃した。



「う"っ………」



「先に手出したのはそっちだ。ならこっちは家族を守るために反撃する」


「マクシミリアン王のお墓は荒らされて…蘇らせて…だから、あなただって魔物と変わらない!」


肘からは血が出ている。ソフィーは特別痛がる様子もなく、しかし、迂闊に腕を出さないように攻撃の機会を伺う。


「は?」


目線が重なり、間違いなくただの喧嘩では済まない争いに発展する寸前、キャロラインが割って入る。

マクシミリアンを押し退けて



「私のお母さんは魔王で、私のお父さんは魔物?」


玉座を離れ、ソフィーの目の前へ。さらに距離を詰めて


「ねぇ。ソフィー。本気で言ってるの?」


怒りを顕にしてさらに詰め寄る。

目を合わせた2人。



「…その目…怖いよ」


「私、怒ってるんだけど」


ソフィーの目に映るキャロラインの目の色。

それは元々知る彼女の色ではなかった。

透明な水に墨を垂らして広がっていく…そんな色。

綺麗だったものが邪悪な何かに染まってしまった色。

何色、と具体的に表現するのは不可能なキャロラインの目はソフィーには心が凍てつくほどの寒さと身体が焼けるほどの暑さを同時に感じさせた。


彼女はこの不可解な現象の正しいものを知っている。

"痛み"だ。



「私をどうこう言うのならもう何度も言った。ここが私の居場所なんだよ。もう用は済んだよね。帰って」


「ふん。情けか?ソフィーも今は立派に女神だ。お前達が全員魔王だとしても死にはしない。つまり、争えば結果は見えているわけだ」


「どうかな。分からないよ…死んでみる…?レスナ」


「無駄だ」「なら、」


「やめて!」「ここに来た時点で4人とも死ぬべきだったんだ。娘がどうしてもっていうから生かしておいたのに」


「待っ」《もう終わりだ》


キャロラインはレスナへ詰め寄り、止めようとしたソフィーにマクシミリアンが再び蹴りを入れようと接近、それを阻止しようとするアルタへは黒い球体が飛来する。



「っ。クロア。無理でも動くのさ!」


「うん!」


少なくともアルタとレスナは今から戦う相手がどれだけの強さなのかが分かっている。

守りきれないと判断したアルタはクロアをあえて突き放す。

クロアは押されたままの勢いで弓を構え、レスナに迫るキャロラインの足下へ一射。


踏み出す右足…のすぐ先に突き刺さった矢を見て


「私は私の家族を守る…誰にも邪魔させない」


キャロラインが呟き


「俺だってお前達を守る。絶対に」


マクシミリアンが宣言し


《故に、死ね》


…3人それぞれの一言をきっかけに、再会の場は殺し合いの場へ変貌した。



最もこの中で素早いのはマクシミリアン。

元勇者というのが動きに出ているのか、最小限の動作で最大限の効果を発揮する移動と攻撃が4人を翻弄する。


次点で素早いのはクロア。

持ち前の身のこなしは女神の力により強化された肉体を存分に活かし、攻撃に移るマクシミリアンへの牽制は正確。移動しながら射撃が出来るため隙をつかれることもない。


レスナはこの展開を待っていたと言わんばかりに笑顔を見せ、杖を出現させた。

「私と争うことの不幸さをその身に刻め」

杖を振るうと空気が震える。次の瞬間どこからともなく強風が、ハートの自然を思わせる葉が流れ込む。


ソフィーは負傷した右腕は使わず左腕を攻撃に使用することにした。

狙うのはキャロラインが母親と紹介した女性。

キャロラインともマクシミリアンとも違う雰囲気と、明らかに人間のものではない声。

魔王(彼女)が2人を操り人形に変えてしまった。そう確信したソフィーはマクシミリアンの急接近に警戒しながら力を溜める。



「どうしたの?探し物?」


無防備な状態で悠然と歩くキャロライン。

アルタは聞かれたまま、パタパタと自身の服を触り何かを探しているようだった。


「みんな戦ってるのに」


「見つかればそれで終わりなのさ」


「じゃあ見つかる前に殺せばいい?」


キャロラインがひらりと横へ1歩。

すると絶妙なタイミングで母親が黒い球体を飛ばしてきた。


「死ぬね」


直後、アルタに球体が到達し炸裂する。…が。


「入口まで走って戻ったり寝っ転がって壁に立とうとしたりしたせいで変なとこに入ったみたいなのさ…あぁもう…」


寸前と変わらない。何の反応もなく探し物を続けている。


「…え?」


もう一度、黒球が飛来するもアルタには何の被害も出さない。


「どういうこと?」


「…あ、あ!あった!あったのさ!!」


キャロラインを無視してアルタがようやく発見したもの。

それを適当に右手の親指に着ける。



「専愛のモア。お前の力が必要なのさ」


「誰?」


「暴れ回るあの輩をその愛で縛るのさ」



アルタが指をさすのは、クロアの矢を避けるマクシミリアン。

動き回るマクシミリアンに対しクロアの攻撃は調整されていく予測のおかげで回避が難しくなっていた。

きっちり眼前を通り過ぎていく矢に驚き立ち止まったところで


「まずは1人」


アルタがそう言うとマクシミリアンはそのまま仰向けに倒れた。



「お父さん!」


「女神の力で体の自由を奪ったのさ。さっきも聞いただろうが、女神は死なない。…つまり、お前の父親はこの許しのアルタが許可しなければ二度と動けないのさ」


「……っ!!」


キャロラインは左手を開いてアルタに向け、親指の横へ右手を持っていく。

右手は何かを摘むように指を閉じると今度は自身の顔の後ろの方まで引いた。


「ふっ」


小さく息を吐き、右手を開く…と



「……っ、あっ……」


アルタの脇腹に穴が開いた。

それは一瞬。何が起きたのかも分からない。


「死ぬんじゃない?ねぇ」


キャロラインはもう一度同じ動作を始める。


「やめて!」


が、アルタに向けた左手が横切った光線に貫かれ


「ああああああぁぁっ!!!」


今度はキャロラインの左手首に穴が開く。



「アルタ!」


「も、もんだいないのさ…」


駆け寄るソフィーの背後、迫るのは



《貫ケ、》


キャロラインの母親が向けた剣先。

剣先からは黒い球体と同様の何かが刃を延長してソフィーに向かって伸びていた。


「手のかかる女神だ」


しかし、剣先がソフィーに届く前に大量の葉が風に運ばれ壁を形成する。


「3人の内、お前だけだ。名前も分からなければ玉座から1歩も動かないのは。魔王よ、キャルという娘のために容姿を変えたか?」


ソフィーを守りながらレスナは問いかける。

マクシミリアンが不能になったことでレスナの隣には弓を構えるクロアが。


「クロアよ。お前は魔王を殺したという名誉が獲られる。迷うな、ここで終わらせろ」


「はい、レスナ様…」


レスナの言葉を受け取り、クロアは矢を引く力を強める。


「んんっ…!!」


矢を引く右手に深緑色の光が宿り、次の一射に女神の力が加わることが確定する。



「クロアぁっ!!私のお母さんを殺すなぁァァっ!!!」


怒号。

肉体は強化されているものの、クロアはつい声に驚き体を跳ねさせてしまう。

中断された攻撃、その隙に


「お母さん!」


《弾ケロ、》


母親の元へ戻ったキャロラインが連携を見せる。


両手をレスナ達へ向けたキャロライン。その両手の間に黒い球体を出現させる母親。


「もっと!」


キャロラインが要求して両手を合わせて腰に引くと黒い球体は縮小し耳障りな金属音を発した。


「切り刻め…っはああ!!」


キャロラインが引いた両手を前へ突き出すと球体は手を離れ飛び出した。



「クロア、私から離れろ」


レスナは両腕を前にし、防御姿勢で攻撃を受ける。



「レスナ様…!」


先のアルタの負傷を見ていたクロアは心配になる…が。


「プロティア。お前ならば防げると分かっていた」


被弾したレスナの両腕が燃えている。

しかし、炎はすぐに消え、彼女が無傷だと判明する。



「どうだ?女神を敵に回す気分は」



レスナが嫌味っぽく言い捨てると、2人の横にソフィーとアルタが戻った。


アルタの脇腹に開いた穴は塞がっている。


「でもこれはチアンの力じゃないのさ…」



「さて、こちらも改めて聞こうか。女神を敵に回すのはどんな気分だ?」







/////////////now loading......





「ん……、うお?ギーナ、起きろ。」



カヒリに揺すられて目覚めるギーナ。



「何…どういうことなの。」


「俺達戦闘中だったよな。超必殺撃ってたよな。」


「でも攻撃の後にこんな景色にはならないわ。」


「うー…んと、じゃあ、選んでくれ。1、自分達の攻撃の威力があまりにも凄まじいおかげで攻撃した本人達も巻き込まれて死んだ。つまりここは死後の世界。2、バルディンが直前で例のダークホールを発動。俺達はそのダークホールに飲み込まれた。」


「どう考えても2ね。2人とも見たはずよ、魔物達が死んでいくのを。」


「だよなー。あれはワープ効果があるってことか。にしてもさぁ…」


2人が気がついたのは、魔国らしくない場所。

下を見れば地面には茶色い落ち葉が敷き詰められ、上を見れば大木の緑。青空。

2人を囲むように円形に広がる大木。


「どっかしらの森的な?」


「森らしい森なんてハート以外にないわ。まさか魔国から追い出す力があるってこと?」


「わっかんないけどさ、どこでもない異空間って可能性も捨てきれないよな。」


「…歩きましょうか。ハートに戻ったのだとしたら、急いで戻らないと。」


「だな。」


立ち上がり、何度も見回しながら歩き出す2人。

どこを向いても景色は変わらない。

人のいる気配は感じられない。

ダークホールと呼ばれる渦に飲まれた時点で嫌な予感はしているが、あえて口には出さない。

もしかしたら悪い展開にはならないかもとカヒリは希望を捨てずに



「よっしゃ、あの木まで"かけっこ"しようぜ!」


「かけっこって…待って、どの木?」


「はいよーいどん!」


「待ってよ!カヒリ!」


どうせ何も無いのだから、とカヒリは走り出す。

つられて追いかけるギーナ。

少しだけ童心を懐かしんで遊ぶように2人は直線に走り、数ある大木の内の1本に迫った。


「っくぁー!普通に走ったの久しぶりだからすっげえ疲れる!分かる?わざとゆっくり走ってさぁ」


「もう。手加減してくれたのは分かるけどもう少し意地悪な言い方は控えて。」


「ごめん。…にしても、静かだなここ。」


「そうね。森の真ん中にポツンと置き去りにされたみたい。」


「なぁ、見てみ。くっそデカい木だとは思ってたけどさ、幹のとことか所々皮剥がれてピロピロしてんの。」


「……所々というか、…全体的に剥がれてる感じね…。」


「な。樹齢エグいんじゃないか?」


「………カヒリ。」


「ん?」


「なんか…変…だわ…。」


「何が?」


「走ったせいで口で呼吸してたけど、鼻で呼吸したら…」


「ふんふん……………………」


「ね?甘いの。」


「もしかして、木の幹の皮が剥がれてピロピロしてるんじゃなくて?」


「………だとしたらどうする?」


「え、慌てて逃げるよ?あ…」


「周りは全部この大木。私達が逃げるとしたら、気がついた真ん中に戻るしかないわ。」


「じゃ、じゃあ…戻るか。な。」


2人は大木から視線を外さないように、目覚めた真ん中の辺りまで戻ることにした。

カヒリもギーナも、"あえて"黙っているが、木の幹の皮が剥がれて…などと話している間に目撃してしまっている。

木の幹に止まり、モゾモゾと動くゼグエグの大群を。

それはつまり、自分達を囲む数百はある大木の全てにゼグエグが…そこまで考えたところで、



「ダークホールだもんな。まじでダークすぎる趣味だわ。考えたやつの正気を疑う。」


「正気の生き物はダークホールなんて魔法使わないわよ。」


「どうしよ。」


「困ったわね。」



真ん中に戻ってふとカヒリが座ろうとした時だった。


「…あれれ?」


「どうしたの?」


「…あ、あの…これね、落ち葉だと思ってたんです。ですけど…よーくよーく見てみたら、なんか…羽根っぽい…といいますか…。」


「………」


「あと、あと…ですね。…13時の方向、数匹飛び回ってるんです…よ…」


「やるしかないわね。」


「知ってた?俺、極度の虫嫌いだって。」


「よーく知ってるわ。でもいつもみたいに私が1人で処理するには…」



2人が覚悟を決めたその時、ドッという衝撃。

続けて羽ばたきの音がいくつも重なり騒音、そして轟音へと変わる。


2人の真上には無数のそれらが飛び回り、青空を埋め尽くしてしまった。



「最悪だ…!」


「いいえ。災厄よ。」


「違う。地獄。」


「うふふ。燃やし尽くしてあげましょう。」



2人は"ゼグエグ達"を見上げながらため息をついた。





/////////////To be continued...


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