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私、この世界を征服します。  作者: イイコワルイコ
最終章「世界を変える力」
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第3話「仇討ち」




《我、不滅!》


「くっそ!こいつもう何でもありだな!自分ルールで勝負しにきてやがる!」



ギーナが雑魚を相手する間、カヒリは何度もバルディンと激突する。

これまでどんな相手にも圧勝してきたカヒリだったが、唯一苦戦し敗北もしてしまったのがバルディンだ。

そのバルディンは今、人間ではない何かに変わって殺しにきている。

彼から感じられるのは強者を求める欲望と、ひたすらに勝利を求める欲望。

2つの欲が邪悪に染まり混ざり合い、バルディンは今



《うンンンンンンンンッ!!》


「馬鹿力か!」


変形した"背骨"を体から抜いて武器化したそれは、振られて姿が見えなくなった。

それは異常な怪力により一振りが高速化したおかげか。

とはいえカヒリはそれを身を屈めて回避、続けて



「消し飛べぇ!プリズム・ピラー!!」


バルディンの足下に放つ魔法。

地面が白くなり、魔国には似合わない輝きが創造され、柱となり対象を焦がし貫く。

以前使用した同魔法より明らかに威力が違うのはカヒリが手加減をしていない証拠。


光の柱はあっという間に空まで延びた。

そして光が収縮し消えたその時、バルディンは



「……」


直立不動。しかし、彼の代名詞とも言える翠の鎧はただの鉄屑に変わっていた。


「やられたフリだな。」


バルディンは反撃の機会を伺っていると判断し、カヒリは下腹部を回転しながら蹴り上げる。


「結構重いな…鎧込みで200は超えてるか?」


約子供一人分の高さに打ち上がったバルディン。

カヒリはさらに追撃、追撃、追撃。

瞬間移動を思わせる速度で彼の右、左、下、右下、左上…何度も殴り、蹴りつけ、可能な限り痛めつけていく。


されるがままで振られるバルディン。


「鬼裂蹴!!」


高速状態から姿を現し、そのまま空中で力を溜めて蹴りをバルディンの首へ。


《不滅!!》


ようやくバルディンが動き出し蹴りを腕で防ごうとする。


「やっぱり生きてたか!でもこれは」


止められない。

カヒリが自信を持って放った蹴りは、ただの蹴りではない。

振られた右足の先には赤黒い化け物の顔が浮かび上がり、それはそのまま標的を喰らおうとする。

バルディンが構えた左腕は


「おらああああっ!!」


《……》


蹴りをまともに受けて喰らわれてしまった。

鎧ごと千切れて体から離れる腕。

手応えを感じて笑みを浮かべたカヒリは


「鬼ってのは最強の化け物なんだよ…お前が相手してるのは…"2人の鬼"なんだぜ?」


振り抜いた右足の勢いを利用しその場で一回転。

そして今度は左足が…


「裂鬼蹴!!今度は首を狩る!」


《ダークホール》


「あ?」


カヒリは攻撃を中断し、先に着地。

続いて不格好ながらバルディンも着地する。

空中にはバルディンが使用した魔法により出現した…


「ダークホール…。見た感じだとあれに入ったら体がバラバラに分裂するか、どこかにワープするか…」


渦巻く闇。そこにはそれがあった。

仕組みも分からず触れてはいけないのは誰にだって分かる禍々しさで、渦の中心には口を開ける漆黒が見えた。


「バルディンが使うっていうより、人間を辞めさせてくれた"誰かさん"に仕込んでもらったな?」


《強き者…お前をココデ殺し、》「お喋りなんかしねえよ!」


懐に飛び込み、


「プリズム・ソード。」


瞬間に抜いた魔法の剣を彼の体に


《ダークホール》


「うわっ!…ぶねぇ!」


剣を突き刺そうとした腹に突然生まれる闇の渦。

攻撃を続行させていたらちょうど腕が飲み込まれていた。


「めんどくさ…」


今後の戦闘でバルディンはこのダークホールとやらを頻繁に使用するだろう。

カヒリが攻撃を仕掛ければ防御に、逆にカヒリに接近すれば攻撃にも使える。

バルディンとしてはダークホールに触れさせた時点で勝負が決する…と見ても良さそうで。


「中距離以上だな。でも嫌な予感はしてるんだけどさ。」


バルディンと距離を…と、すぐに駆け出して距離を詰めてくるバルディン。

ならばと高く飛び、上下で距離を稼ぎ



「即席の散弾!!」


拾っておいた石を蹴り砕く。

と、細かく分かれた石の破片は高速化し全てバルディンに向かっていく。



《ダークホール》


眼前に展開された闇の渦は石の破片を吸収。

渦が消滅するともちろんバルディンに攻撃は届いていなかった。



「石も消えた、バルディンは無傷。ホントやだそういうの。」


ほぼ無敵化。

最初から殺しにかかっていたカヒリだが仕留められなかったことを悔やむ。


「ギーナ!バルディン殺せない!」


「そう!ならこっちを手伝ってくれるかしら!」


「うげ。」


ふとギーナに視線を送れば、彼女は彼女で酷い目にあっていた。

空中から見えるのはこちらに向かってくる魔物の"波"。

隙間なくぎゅうぎゅうに、押し合いながら声を上げて自分達を目指している。

その数は…


「万で収まる…よな、流石に。」


自信が無い。

範囲攻撃や爆発で巻き込むにしても限界がある。

これはよくないと判断し、


「ギーナ!飛べ!」


ギーナは炎鳥を召喚し空へ逃げる。

代わりに着地し、


「質より量が正当化された瞬間だよな。でも、お前らと違って質も量もって選択出来ちゃうのが俺なんだよ。…プリズム…!!」



カヒリの体から虹色の光が乱反射する。

それぞれの光の先には人影…あっという間にカヒリは分身していく。


「俺1000人vs魔物数万!レディーーーー…ファイッ!」


オリジナルのカヒリの合図に合わせ分身したカヒリ達が動き出す。

どのカヒリも少しずつ違う。

1人は双剣、1人は斧、1人は大盾、1人は銃、1人は剣…1人は扇、1人は双銃、1人は素手、1人は氷剣…1人は錨…それぞれありとあらゆる物を武器として構えていた。



"うおおおおおおおおおおおおおお!!!"


カヒリ達が声を上げ魔物達と激突する。



「っと、バルディンバルディン。」


振り返ればすぐそこに迫るバルディン。

カヒリは高く飛び炎鳥に乗るギーナに合流する。



「あいつ飛べないみたいだな。しばらく飛び回りつつ上から攻撃して魔物を減らそ。」


「そうね。でもどこからこんなに湧いてくるのかしら…個々の力は弱くても、ここまで多いと…」


「バルディンも何でもありな感じだから、黒幕が絡んでるのは間違いないな。」


「あなたの言う通り、すぐに探してどうにかしないといけないわね…」



揃って小さくため息…そこに、


「きゃっ」


「は?」



空から降り注ぐ雷。


「天気も?ねぇ、ついに天気も?」


「撃ち落とすつもり…!?」



再び雷。さらに雷は連続で落ちていく。



「冗談じゃねぇぞ!バルディンか!新手か!?」


見下ろせばバルディンは自分達を見上げながら走り回っている。

どうやら追いかけるので精一杯なようで


「バルディンは違う。じゃあ誰だよ!」


「この雷、魔物にばかり落ちてるわ。」


「…本当に?」


魔物の波に降り注ぐ雷。

落雷の度に魔物が数十体打ち上げられ、見ていて爽快ではある。


「味方?自然を操る的な発想だとレスナか!女神ならこの大惨事も頷ける!」


「……違う。あそこよ。」



ギーナが指さす先には、ポツンと孤立した人影。

どうやら大きな斧を空に掲げているようで。



「マジ…?」


「マジよ。あれは、チャドだわ。」



雷の雨に気をつけながら、ギーナ達はその人影を目指して飛ぶ。

そして彼に向かって炎鳥から飛び降り



「本当に本当に本当にチャドだった!!」


「どうしてあなたがここに?」



「カヒリ、ギーナ。オイラにも分からないねぃ!でも今は話してる暇はないよねぃ!」


「少しは何があったかを話せよ!」


「キングエルのハイドシークの森でゼグエグを見た!それを倒して奥に進んだら魔法陣があって…気づけばここに!」


「てことは城の中じゃなくて森の中に魔国と通じる道があったのかよ!…あ、お前がいるならリーファンも来てるのか!どこだ!」


「……」


それには首を横に振り返答するチャド。


「でも来てくれて助かったわ!あなた達を置いて先に来てしまってごめんなさい。」


「気にしないねぃ。こんなに大量に魔物がいるなら…ん?」


「気づいたか。あれ、バルディンだぜ?ダークホールとかいう黒い渦が危険すぎて倒せない。だから一旦あいつは後回しにしようと思って」


「1人では難しくても、2人なら変わるかもねぃ?カヒリもギーナも、1人でも十分に強いんだから…それに、魔国に来られたなら女神様の力を借りることも出来るんじゃないかぃ?」


「…女神…か。」


「試す価値はあるわね。」


「…オイラはそれよりもソフィー嬢に会いたい。キャル嬢もどこかにいるんだろうしねぃ」


「ソフィーか…ここから西の方で別れちまったな…」


「分かった。じゃあ……だああああっ!!」



掲げていた斧を振り下ろす…と、一際大きな雷が魔物達に直撃する。



「オイラはそっちに行く!」


「そういうカッコつけた顔されると…分かったよ。こっちは俺達が片付ける。」




「「任せた」」



カヒリとチャドは拳を合わせた。


置き土産としてチャドは移動しながら落雷を披露する。


おかげで魔物達は随分と



「減ったんだろうけどさ。元が多すぎるんだよな。」


「バルディンを避けながら魔物を駆逐して、それから…」


「おう。んじゃ、派手な攻撃ガンガンいこうぜ!」




/////////////now loading......





「あまりよく観察していなかったけど、立派な建造物がいくつもあったねぃ…恐らくカヒリ達がいたのは都市部…魔国の中心かもしれないねぃ」


魔物を退けながら走るチャド。

彼の踏み出す足には何度も降らせた雷の影響か、


「体に雷が…宿った?」


気づけば踏み出す1歩が大きい。

移動速度も違う。

馬より断然速い。


斧を振る腕も軽く、向かってくる魔物は簡単に絶命していく。



「必ず…もう少しだからねぃ…ソフィー嬢…」



「うわぁ!今度は何!?」



勢いよく抜けていくチャド。

それを見た何者かが声を上げて


「えいっ!!」



光線を放った。


「おっと!!」


斧を盾にし受け止める…が威力が大きくチャドは軽く吹っ飛んだ。

どうにか受けきるも魔物達は迫る。

それを斧で振り払うと、再び光線が飛んできて目の前の魔物を消し飛ばした。



「うそ!チャドなの!?」


「…ソフィー嬢…!」


チャドの前に現れたのは、服装が乱れたソフィー、アルタ、クロアだった。


「チャド?お前何でこんなところにいるのさ!?」


「約束…守るために!」


「約束って…違うよっ…ここまで私達に傷をつけずに連れてくる…でしょ?」


「そうだったかぃ?オイラは最後まで2人を守るって約束だと思ってたけど」


「私は真実の女神…細かいことも覚えてるんだよ?」


「…少しの間に2人とも変わったみたいだねぃ…」



会話の間も2人は魔物達を簡単に片付けていく。

落雷と斧、そして光線が咲き乱れて2人の再会を祝う。



「なんでもいいのさ!チャド、お前が来た方向には何があるのさ!」


「都市部だねぃ!大きくて眩しい建物と、ここの比じゃない量の魔物達…それから、カヒリ達がいるねぃ」


「カヒリ!よ、よし。なら多少魔物が増えることにも目を瞑ろう。全員で」


「アルタ様。向こうには何が?」


「精鋭部隊…。死んだ人を兵士に変えてて、私の攻撃じゃ倒せなくて、」


「それで?」


「レイゼン・ハートが残ったのさ。唯一、変わり果てた者達を葬ることが出来る…しかし、」


「…犠牲にならざるをえない…ということだねぃ」


「それから、ブラウンもいた。レスナを連れていかれちゃって」


「クロアはもうだめそうだねぃ…」


「彼のお父さんも精鋭部隊の中に居たんだ…」


「ソフィー嬢、約束…もう少しだけ待っててほしいねぃ」


「え?」


「カヒリ達と合流してほしいねぃ!2人は女神の力が必要だから!オイラもすぐ追いつく!」


「待ってよ!チャド!」


「もたもたしていられないのさ!ほら!走るのさ!」




ソフィー達との再会は嬉しい。

しかしチャドは1人残ったハート国の王を放ってはおけなかった。


「短い間とはいえ、ゴルゴラの王を迎えてくれたんだからねぃ…間接的に恩がある」


再び走ってソフィー達が来た方へ進む。


すぐに戦えるように、すぐに助けられるように。


気づけばチャドの全身を雷が覆っていた。




「…あれだねぃ」


夢中で走って、そして見つけた。


横たわる人間と、今まさにとどめを刺す瞬間の



「ブラウン…!」


キングエルでのことを思い出し、怒りがこみ上げる。

さらに体が加速し、チャドの体の大きさでカヒリにも負けないような速度で…





「深焔魔将!そう名乗ってたっけねぃ!!」




斧よりも先に拳が動いていた。

無意識に斧を左手に持ち替え、右腕は殴るために振りかぶって。



「っっっ!!」


今までで1番威力のあるパンチ。

気持ちいいほど手応えを感じたチャド。

視界からブラウンが退いた。そして視線を下ろせば仰向けになって目を閉じた国王がいた。


見るに堪えない姿になっていたレイゼン。

長くは見ていられない。それでも。



「国王レイゼン殿。都市部はカヒリ達がもうすぐ制圧する。ソフィー嬢達もそこに合流するだろう。もうお休みください」



最後の瞬間には希望を持っていてほしい。

チャドはレイゼンに当然のように報告した。

そして彼の胸に1度だけ、優しく手で触れる。



《お前はキングエルで…なぜここにいる!!》



向き直れば、ブラウンがこちらを見ていた。

その目は泳いでいる。



「大将軍改め…大雷将軍…、チャド・サンダーバーグ」


《なにを…!》


「ブラウン。借りを返しにきた…友、リーファンの分もねぃ!!」



愛斧を構え、覚悟の眼差しを向ける。


その時、レイゼンの体が深緑色の光を放ち、その光は自然とチャドへ流れていった。



「レイゼン殿はリーファンの父親だったねぃ…」



《馬鹿なことを。お前に再び苦しみをくれてやる》



力を溜めるチャドの斧は深緑色の雷を纏った。



「お前を魔物と同等とみなし、この一撃を見舞う。…覚えておけ…お前が敵に回したのはゴルゴラの人間ではない…!」


落雷。


深緑色の雷はブラウンの体を縛りつけ、身動きを封じた。


《なっ!ぐっ!?クソォっ!動かない!》


「ハートの英雄だ!!」





((サンダーオブハート))





大斧の刃を延長する深緑色の雷。

身動きを封じられたブラウンの頭上から振り下ろされ、異色の雷がその体を一刀両断した。


空中で体が縦に割れ、地に落ちるとブラウンだった体は弾けて黒い液体になってしまった。



「死んでも苦しむだろうねぃ…」


ブラウンを瞬殺したチャド。

リーファン、そしてレイゼンの仇討ちを果たした。



「……レイゼン王……」


目を閉じ、改めてレイゼンの冥福を祈る。

そして魔物に食い荒らされないように、目立たない場所へ運ぶ。




「それじゃあ…オイラはこれで…」


なるべく服装も整えてやって、手には長剣を握らせた。

最後まで…死してもなお戦意を宿す…レイゼンを残して。



「ソフィー嬢と一緒にキャル嬢を助けて、みんなで帰る。それがいいねぃ」



チャドは来た道を戻っていった。






/////////////To be continued...

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