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私、この世界を征服します。  作者: イイコワルイコ
5章「世界を守る力」
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第12話「迫り来る終焉の時」





無音…とはいかない。しかし、自然の脅威を全て向けられた彼にとってその数秒間は派手さとは裏腹にとても静かな時間だった。


葉が、風が、切り裂かれた空気が、空気中の水分までもが、彼の肉体を削り取ろうとしていく。

降り注がれるのは切断を目的とした嵐。それを迎撃するわけでも防御するわけでも回避するわけでもなく真正面から無防備に受ける。


そして最後に彼に到達するのは"神の意思"とも呼べる魔法により巨大化した長剣。

魔力により形成された刃がちっぽけな存在を無慈悲に消し去ろうとする。

ついに彼の頭部に到達した神葉剣は、容易く彼という存在を


「一刀両断した…。すげえな。1分くらいあったか?まさか脳内でちょっとした文とか考えられるほど時間かかる攻撃だったとは。カッコいいと思うし、必殺技感もある。男心的採点なら100点満点くれてやる。うんうん。」


「なっ、ど、どうなっている!?」


彼1人の力ではない。女神レスナの力を借り受けて放った攻撃だ。

今の攻撃は人間の到達出来る領域を大きく飛び越えた神の攻撃と言ってもいい。

それをカヒリは受けた。確かに受けた。

レイゼンの目にもそれは確認出来る。黒い布はほとんど破れ、下に着ている服や肌が見えている。

もちろん、あれだけの攻撃を受けたのだから出血だって見られる。

それなのに。


「でも致命傷には程遠いな。見た目はマジで合格なんだけどなー。残念だ。」


「神葉剣を受けて死なないだと…。お前、一体何者だ!」


「悪いな。それ色んな人に聞かれるけど同じことしか言えないんだよ。…ダークナイト。」


いつの間にかカヒリの右手に現れていた漆黒の剣。

剣が鈍く輝く…すると、攻撃を受けて体から漏れていく血を吸い込むように吸収していく。

血を吸われて露出した肌。それを見てレイゼンは再び驚かされる。

神葉剣によるダメージは細かい擦り傷を多数作っただけだった。

さらにその擦り傷はみるみる塞がっていく。



「バカな…回復魔法か…だとしてもあの威力を超える回復量など」


「そうやって連続でびっくりしてくれると新鮮だな。俺の周りじゃあ見慣れてる光景だしさ。じゃ、終わりにすっか。」


終わりにすっか。それを口にしてから言い終わる頃にはカヒリはレイゼンの後ろに立っていた。


「あらゆる付加効果を解除。さ、元に戻れよおっさん。」


何事かとカヒリの方へ振り向くレイゼン。

振り向きながら彼の肉体には変化が起きていく。


「あ…が…っ…」


「女神の力にフルに頼ってたもんな。施しのチアンには超回復をしてもらって若返りをさせてもらった。裁きのレスナには自然を操る力を借りてお前の必殺技を異常なほど強化してもらった。そんで専愛のモアには、人間には抱えきれないほどの女神の力をその体に無理やり定着させてもらったんだよな。でも全部おしまいだ。」


カヒリの説明を聞きながら、レイゼンの体は急激に衰えていく。

一瞬で歳を重ね、本来の年齢よりも老けてしまったようにも見える。

若返り大きくなっていた肉体は、多少鍛えられてはいるが現役の戦士には叶わない程度のものに成り下がっていた。


「人間ってのはさ、長身にも限界があるもんだぜ?個人的にはチャドぐらいの大男がギリギリ許容範囲だと思う。」


「私は…死ぬのか…」


「いや、死なないけど?」


「…!?」


変化についていけず死を覚悟したレイゼンだったが


「俺はお前に与えられた女神の力を斬っただけだ。あ、あとちょっとだけ体も斬ったけど。」


カヒリが指さしたのはレイゼンの脇腹。

確認してみるとほんのり赤くなっていて、触れるとヒリヒリする。

その程度の傷しかなかった。


「少なくとも本来のお前はちょっと偏った考え方してるだけで自国民を大切に思う国王であることに違いはないからな。"人間側"だろ?」


「………」


うなだれるレイゼン。

そこへ防御魔法を解いたギーナが駆け寄りカヒリに抱きつく。


「見てる方はたまったもんじゃないわ!」


「ごめんて。」


どれだけ心配していたのかギーナがカヒリに全て吐き出しているのを見て


「まだまだかかりそうなのさ。後はこっちで片付けるとして」


アルタがレスナを睨む。

2人は視線を重ね、ソフィーが不安そうに2人を交互に見る。


「あのカヒリは強い。ギーナだってお前達が用意したレイゼンの攻撃を防いでみせた。どこからあんなのが湧いたのかは分からないにしても、あれが人間の希望なのさ。ソフィー、手を」


「う、うん」


アルタがレスナ、チアンそれぞれから"力"を手に入れてソフィーに手渡す。


「チアンの慈愛の羽衣、それからレスナの制裁の宝杖。この2つは女神の力の中でも強力なのさ。使い方を間違えないように」


「はい…」



「こ、ここは…?」


レイゼンに続いてクロアも正気に戻ったようだ。

目覚め、体が縄に縛られていることに気づき


「ど、どう、あれ?え?」


「よし、整理と解決の時間だな。」


そこにカヒリ達が戻ってきた。




/////////////now loading......





「想定してたよりかなり手間取ったよな。」


「でもこれで全部なのさ」



◆信念の十字架

"信仰のアラビタ"の力を具現化したもの。

信じる者はあらゆる困難を跳ね除けるという。

※毒などの体の異常を治療出来る。


◆守護神の肌

"再燃のプロティア"の力を具現化したもの。

与えられた者はあらゆる瞞しに強くなるという。

※魔法など特殊な攻撃から身を守る。


◆女神の左目

"真実のソフィー"の力。

真実を見抜き、全てを記憶するという。


◆免罪の右目

"許しのアルタ"の力。

あらゆる事象を許し、それらを剥奪するという。

※対象そのものを完全に忘れ去ってしまう。


◆占有の指輪

"専愛のモア"の力を具現化したもの。

所有者の想う相手を女神の力で縛りつけるという。


◆慈愛の羽衣

"施しのチアン"の力を具現化したもの。

※所有者に永続的に回復魔法を付与する。


◆制裁の宝杖

"裁きのレスナ"の力を具現化したもの。

※所有者に自然を操る力を付与する。



「ソフィーとアルタ。それからレスナ達はともかく、アラビタ様とプロティア様はどうして姿を見せない?」


「レイゼン。お前しれっと仲間の感じで入ってくんなよ。後々俺達に大きな貸しを作りつつ仲間にしてくださいお願いします的なオーラをさ…いってててててて!」


カヒリの意地悪な発言をギーナが抓り攻撃で黙らせる。


「その2人はカヒリ達を信じているということなのさ。選ばれし者とみなして完全に身を任せた。…レスナ。お前達もそろそろ」


「……」


「なるほどな。女神って一部は面倒臭いのな。アルタが可愛く見えてくる。」


「お前…」


黙り込むレスナ。それを見てふざけるカヒリに静かに怒りを燃やすアルタ。


「アルタ様…」


「ソフィー。お前の言わんとしていることは分かっているのさ。まだ問題ない。目は差し出さなくていい」


「ほ、本当に…!…でも、やっぱりいつかは」


「お前達の抱える心配事より、やたら女神の力に詳しいカヒリの方が心配なのさ」


「まあ細かいことはいいじゃん。説明の手間も省けるだろ?」


「ねえ、女神の力は揃ったわ。境界を越えて魔国に向かいましょう。」


ギーナがまとめる。


すると、


「私はまだ、完全には認めません。とはいえあなた達は力を示しました。しばらく見守ることにします」


「チアン…!」


「レスナ。あなたは私達の代わりに彼らの旅に同行してください」


「モア…!」


縄を解かれたチアンとモアは、一旦カヒリ達に力を託すことにして自身を抱きしめて消えてしまった。


残されたレスナ。


「……モアの願いを聞く。お前達についていく。アルタと同様に…。そして人間が再び敗れるようなら」


「その心配は要らない。今回で終わらせてお前ら女神が安心して天国に帰れるようにしてやるから。」



それを聞くと、レスナは空に手を向ける。

異常だった空は元に戻り、ハートの人々も正気を取り戻した。



「では急げ」


「せっかちだなお前。」



レスナに急かされ準備もせずそのまま出発を決めた一行。


「ま、待って…僕も行く」


それをクロアが呼び止める。


「クロア、あなたはまだ幼いわ。これから私達が行くのはあなたが経験してきた戦場よりもっと」「行きたい。キャルのこと助けたい」


「ギーナ。いいよ。連れていこう。」


「でも…」


「クロアのお母さんが泣きそうな顔で遠くから見てるけど、お前がクロアの安全を誓えば問題ないだろ。な。」


カヒリはレイゼンに向けてそう言った。

それは、"どうせお前もついてくるんだろう?"という意味合いも込められていた。


「クロアの弓は馬鹿に出来ないからな。狙撃が役に立つこともあるだろうし。そんで接近に弱いクロアをレイゼンが守る。これでいいじゃん。」


「ありがとう…カヒリ」


「カヒリ兄ちゃんでいいぞ。クロアってなんか弟属性強いしな。」


「だそうだ。国王としてその子をしっかり守るのさ」


「心得た」



こうしてカヒリ、ギーナ、ソフィー、アルタ、レスナ、クロア、レイゼンの7名がハートを離れ魔国へ向かうことにした。





/////////////now loading......





ハートを発ってしばらく。


「もう少しだ。その道を抜ければ魔国との境が見えてくる」


レイゼンの案内で森を抜ける頃。



《ワギャアアアア!!》



「鳥人間!!すげー!鳥人間!!」


「ふざけないの。魔物よ!」


「ふっ」


木の上から飛び降りてきた魔物。

それをクロアが即座に撃ち抜く。


「ヘッドショット絶対外さないマンかよ…」


「違う技術に応用出来ないかなとか考えてない?」


「一切考えてませんよ?ほら、先行こうぜ」



《ジャギャアアアアア!!》



「うお!今度は蛇と馬の融合!」


「私が斬る!」


続けて駆け込んできた魔物をレイゼンが斬った。


「おお、新入りが活躍してる。助かるー。」


「境界付近となるとやっぱり魔物が出てきやすいのかしら。」


「そうでもない。ゴルゴラならまだしも、ハートは森への魔物の侵入を一切許さない。」


「へえ。国王のこだわりか。」


「構えろ。次が来る」


レスナの知らせを受けてクロアが弓を構える。



《ニュララララララ!!》



「ふっ」


「山羊男…だよな。ちょっとキモい。特に鳴き声が。」


「レイゼンの顔色が悪いのさ。こうも魔物が襲いかかってくるのは何か問題がありそうだ」


「その通りだ。何かがおかしい」




その後も数体の魔物をクロアとレイゼンが倒す。

そして森を抜けると…




「うーわ、前と違う。」


真っ先にカヒリが印象を口にした。


人間の国には青空が広がって鮮やかな色がいくつも存在するのに対し、魔国の空は"無"と名付けたくなるほど黒く暗く…目の前には焦げ茶色の荒野が広がっている。


「私達が侵入しようとした時はこんな風じゃなかったわ。こっちの景色が向こうまでずっと続いていて、空の色も同じだった。そして向こう側に入るとすぐに何もかもが真っ白になって見えなくなる…はずなのに…なんで…」


ギーナが言い切ることはなかった。

その理由は、


「ねえ、私だけ?いっぱい魔物がこっちに走ってきてるように見える」


ソフィーが代弁した。


「向こうの世界が見えるってことはさ。もしかしてだけど、結界的なものが無くなったってこと?」


カヒリが女神2人に確認をとる。

アルタとレスナは互いに見合わせ、カヒリに視線を戻し


「今すぐに」「隠れるのさ!」


「はあ!?」


「ならばこっちだ!」



レイゼンに導かれて一行は森の中、一部だけ意図的に掘られた穴から地中へ隠れることにした。

中はあまり広くはないが地下室のような空間になっていた。



「なあ。どうなってんの?」


「魔物が人間の世界に飛び出てくるのは不可能じゃないのさ。とはいえ境界を越える時には女神の力の影響で多少弱体化する」


「そして力が抑えられた魔物達を人間達は必死に倒してきた」


「レスナのひと言が地味にレイゼンを傷つけてんだけど。」


苦い顔をするレイゼン。


「でもさっきのは違うのさ。人間の世界と魔物の世界を隔てる境界が取り払われているのさ」


「それって女神の力を全部揃えたからじゃなくて?」


「違う。向こうに渡る人間だけに特別な魔法をかけて渡る予定だった」


「静かに。」


ギーナが言うと、一行の真上をいくつもの足音が過ぎていく。


(つまりは?)


カヒリが小声で会話を続ける。


(魔王が力を増した…いや、取り戻した。隔てた境界を消したのは他に考えられない)


(レスナの言う通りなのさ。さっき見たのはほんの一部。急がないと人間の国が魔物に占領されるだけじゃ済まないのさ)


「なら隠れてる場合じゃなくね!?」


(カヒリ!!)


すると外からいくつかの鳴き声が聞こえる。

移動中の魔物の内、数体が気づいたようだ。



「一部なんだろ?先行部隊だろ?隠れてる間にどうせもっと大群が押し寄せてくるんだから!全部ぶっ殺しながらこっちも進軍するしかねえよ!もうな、これはな、旅とかそんなんじゃない。戦争だ戦争!」


カヒリが飛び出すとギーナがそれを追う。さらにそれを追うようにして全員が外へ出た。



「走れ!俺とギーナで道を作るから遅れずについてこいよ!特にアルタ!!」


「なんで唯一心配されなきゃいけないのさ!」


「一番見た目が子供だからだろうが!幼女女神!万扇!!」


「はぐれないようにして!一気に行くわよ!」


カヒリとギーナは走りながら強風を発生させた。

一行を守るように、一筋の道を作るように。

魔物の群れを割り、風で吹き飛ばす。



ちょうど魔物達の真ん中を駆け抜けるようにして、一行はようやく…ようやく、人間の世界を離れ魔国エンヅォルトの地へ足を踏み入れた。





/////////////To be continued...




次話からついに最終章に突入です。

最後までお付き合いをお願いします。

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