表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、この世界を征服します。  作者: イイコワルイコ
5章「世界を守る力」
69/83

第11話「大将軍、出陣」




ため息。


その理由は、共に旅をしてきた仲間が自信を失い恐怖に心を支配されついに負けを認めてしまったから…だろうか。

単純に、"穏やかな暮らし"を選んだからだろうか。


「はぁ…。切り替えないといけないのは分かるんだけどねぃ。戦いで仲間を失うよりも耐え難い…」


チャドは拾ったリーファンのベルトから剣のみを抜く。斧を愛用するのは変わらないが、いざという時のために剣を自身のベルトに装備しなおした。


改めて視線は目の前に広がる森へ。

逃げてきたのと同じ場所だ。


わずかな甘い香りはゼグエグの残り香だろう。



「もういないみたいだねぃ」


リーファンはゼグエグに勝てないと言っていた。

確かにチャドの攻撃を受けても余裕を見せていた…なので、


「だからこそ倒したい」


次に会った時はどうしても倒したい。

諦めたリーファンとは違う道を選んだことを後悔しないように。

世界を守る一端を担うと彼に宣言したことを忘れないために。



森に踏み込む。ゼグエグはおろか、魔物も含め生物の気配が全く感じられない。

ハイドシークの森。陽の光を程よく受け止め、森林浴に良いとまで思える。

なんだか魔物がいる危険性を忘れてしまいそうで。



「獣道。…糞や足跡も特に見つからないねぃ。まさかゼグエグが森に棲む魔物達を…?」


魔物同士の縄張り争い、ということだろうか。

そんなわけないか。と自然に癒されながらチャドはどんどん奥へと足を進める。


「ん?」



整備された道は無い。なので適当に奥に進んできたが、


「今羽音が聞こえたような…」


気のせいか。

耳を澄まし、立ち止まる。




「………………………」



チャドは勘を信じた。

視認するより先に斧に手をかける。握ってすぐに斧が雷撃の予備動作としてバチバチと音を鳴らし、攻撃の準備が整いつつあることを確認。

そして…



「サンダー…ストライク!!!」



後ろに振り向き、斜め上方向へ攻撃。

斧からは雷が放出され狙いは正しくすぐそこまで迫っていた



《ギャウ!!?》


ゼグエグに命中した。

しかし、不意打ちに成功したとはいえさっきとは反応が違うことにチャドは困惑する。


「効いてる…!」


ゼグエグは雷撃が直撃して空中で仰け反ると落下した。

地面に落ちてのたうち回るその様子は死にかけてもがき苦しむ虫のよう。



「攻撃を受けたからかねぃ?羽根の色が」


虹色が汚れていく。

輝きを失い、代わりに黒が羽根に染み込んでいく。

いよいよ羽根から鮮やかな色が消え失せ黒一色になると、ゼグエグはさらに変化を見せた。



《うがっ…が…あ…》


羽根の活動が停止。体が動かなくなり、それまで無かったものが出現する。



「これは、頭…だねぃ」


小刻みに震えるゼグエグの頭部。

迫る死を拒絶し生存を望もうと最後の抵抗をしているようだった。



「よっぽど効いたみたいだねぃ」


斧を振り上げ、胴体と頭を繋ぐあまりにも細い首に狙いを定めて


「オイラは、まだ戦う!!」



一刀両断。



ゼグエグの頭部は地面を転がる。

残された胴体はすぐに腐敗が始まった。



「勝てる。ゼグエグだろうとなんだろうと、オイラ達は勝てる」


チャドは足でゼグエグの頭部を踏みつけた。

虫の顔だ。しかし人間に似ていないこともない。

中間だ。あまりにも不気味だ。

体重をかけるほど頭部が軋むのが分かる。


「迷ったりしない。キャル嬢とソフィー嬢を守ると約束したんだからねぃ…っん!!」


一気に踏み抜いた。

甲殻は想像より柔く、簡単に砕けて体液をぶちまけた。


「甘くて臭いねぃ。頭の中に匂いの元があるんだねぃ」


恐らく今の情報は他の誰でもなく自分が最初に知っただろう。

そんなことを考えて、チャドは両足のブーツにゼグエグの体液が付着したのを嫌悪する。


「しばらく口で呼吸を……あれは」



目を見開く。それは2つ発見があったから。


1つ、地面に虹色の足跡が見えること。


2つ、それがこの甘い香りによる影響であることが確定していること。



特に後者は、この香りが人体に影響を与えるということが分かってしまう。それが良い効果か悪い効果かも分からないのに。



「毒だった場合、助かる可能性は低いねぃ。かなり嗅いでしまった。唯一助かるとしたら、カヒリ達に合流してアルタ様に救ってもらうくらい…」


気づけばチャドは虹色の足跡を追っていた。

そこそこに大きい足跡。人間のものだろう。

さらに言えば男性の足の大きさだ。

比較のため足跡に自身の足を重ねてみる…不思議なことに足跡と一致した。


「……」


言葉が出ない。

とはいえ、無意識に足跡を辿ることは止められず。

さらに森の奥へと進むと、周りの植物の色が変わってきた。

緑の葉、茶色の幹、白い花、黄色い花…比較的よく見かけるそれらが、全て真っ青になっている。



そして、開けた場所に出た。



「森にこんな場所が…?今度も幻覚…ではなさそうだねぃ。これは考えてなかった…!」



チャドが目にしたもの。

それは森の中に突然現れた、開けた場所。

そこに広がる白く光る魔法陣。


「魔法陣。もしかして、キングエルと魔国を繋ぐ道は城の中じゃなくて森の中に?」


魔法陣の端に立つと、チャドを歓迎するように魔法陣が点滅する。

もし予想通りであればこの魔法陣の中心に移動すれば



「魔国に……行ける…」


慎重に考える。

今頼れるのは自分1人。

リーファンを呼びに行くのも選択肢に入るだろうが、やはり無理強いは出来ない。

カヒリ達と合流する…それも悪くはない。


しかし、戻ってくるまでこの魔法陣は機能しているだろうか。

そもそも、キャルが連れ去られてからどれだけ彼女を待たせてしまっているだろうか。


「考える必要はなかったねぃ。今行くから、待っててほしい…キャル」



恐る恐る魔法陣の中心へ。

チャドがついにその場所に立ったその時、魔法陣が強い光を放ち発動を予感させた。



「ふ…うわああああああああああ!!!」


魔法陣の外側から光が収束する。

チャドは光に包まれ、





………………………………………。






消えてしまった。






/////////////now loading......






聞き覚えのある音。



金属音、叫び声、速くなる心音。


土を蹴る足音。



この場所に、必要とされている。

誰もが、必要としている。


勝利を約束し、今こそ武器を掲げる時。



「………必ず、勝つ。この、大将軍が来たのだから」



ゆっくりと目を開ける。


そこは森の中ではなかった。


ではここはどこなのか。


分かることは1つだけ。




「戦場…それだけは分かるねぃ」




ゴルゴラで見た光景と似ている。


人間と魔物が波となって激突する。

侵略者に負けまいと歯を食いしばる人間達。

すぐにでも目の前の生物を喰いちぎろうと口を開き唾液を散らす魔物達。



空を見上げれば永遠の夜。

そして、いつから地上に星が降り立ったのか。

建ち並ぶ建造物は眩しく輝いている。



「…っと、いけない。オイラはやるべき事がある」


大斧を掲げ、力を溜める。

漆黒の空に黄色の稲光が出現し、チャドに呼ばれることを今や遅しと待っている。



「ゴルゴラの大将軍、チャド・サンダーバーグ…出陣…!」



大将軍は雷の化身となり、戦場に雷の雨を降らせた。





/////////////To be continued...


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ