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私、この世界を征服します。  作者: イイコワルイコ
5章「世界を守る力」
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第9話「女神の思考」




「カヒリ」


「分かってるってば。相手はお前みたいに俺達を知らない。人間相手だからって嘗めてかかってくるのは目に見えてる。俺とギーナで意表を突くから、お前の力であいつら全員黙らせてくれ。」


神を殺すことは出来ない。

それを改めてカヒリに言う前にアルタは頼られた。



「女神に勝つには女神…なんて思ってないよな?いくぜ…!」


続けて、カヒリが両手を前に出し拳を握る。少しの溜めの間に隣でギーナが虹色の炎を鎧のように纏う。



「魔法を使うとは聞いたが…少々毛色が違うか」


ギーナの変化を見てもレスナはまだ驚かない。




「……プリズム…」「ふ」


いよいよカヒリが動こうとする。

が、クロアが先に弓を構えて矢を放つ。…しかしカヒリの額を捉えていた矢は


「ツイン。81%。」


カヒリが"抜いた"一対の双剣により消失した。



「魔法剣…」


「お?流石の女神もビビったか?でもな、こいつは魔法剣なんて生易しいもんじゃない。」


「クロアは操られてるだけよ。殺さないで。」


「爆光乱撃!」


ギーナの言葉を置き去りに、カヒリは上へ飛ぶ。

高く高く、空に昇ると双剣を強くかち合わせた。すると耳に刺さる高音と共に



「なんなんだ…透明な…球か?」


「レスナ。あれは太陽を模しているのですよきっと」


「モア、あの男を"縛って"みては?」


現れた大きく透明な球体…を見ても、敵対する女神達は大きな反応は見せずまだまだ余裕な様子。

チアンに提案されたモアがカヒリを強く見つめる。


「残念ね。次は私なの。」


ギーナが炎を纏ったまま宙に浮かぶ。

素早くカヒリに近づき


「太陽は直接見てはいけないの。眩しいだけじゃなくて…熱くて焼けてしまうから。」


彼が出現させた球体にギーナが両手いっぱいに溜めた魔力を注入する。

球体の中に虹色の炎が溜まっていき、全てが満たされると



「会心の出来だな。」「撃ちましょう。」


カヒリとギーナが同時に手を挙げ、振り下ろす。

球体は突如強烈な光を放ち、森を、ハートを、そして異常な空をも自身の光で満たしていく。



「眩しい…」


「味方も巻き添えになる攻撃なのさ…。…っ!?目を閉じても眩しく、熱い…!?」


ソフィーとアルタが巻き込まれその場にしゃがみこむ。



それを見てレスナ達は咄嗟に片手で目を覆うことで防ごうとするが


「どうなっている…どうして光が遮れない…!?」


レスナは目を閉じ、手で覆い隠し、俯く。それでも強制的に与えられる眩しさに驚く。


「あぁ…あぁっ…!あぁぁ…!!」


チアンは両手で目を守ろうとするも防ぐことは叶わず、レスナの背に隠れる…が、それでも何故か遮断出来ない光にいよいよ声を上げて苦しむ。


「ここは私が。…くぅっ…はあっ!!」


誰もが光から目を守ろうとする中、モアは目を見開いて光の中のカヒリ達を探す。

目から脳へと伝わるのは"命の危険"。チアンが人間と同じように苦しむように、モアにとってもこの光は危険なものである。

カヒリ達を探そうにも、どうしても目は光を放つ球体…"擬似太陽"へと向いてしまう。そして球体が放つ光に目を焼かれてしまいそうになる。


「愛しています…」


しかし、モアはそれを耐え抜き一言呟いた。




「ちっ…やられた…。」


「私も…。」



すると光が徐々に弱くなり、球体は透明に戻った。

カヒリとギーナは攻撃を受けて飛ぶ力を失った鳥のように真っ直ぐ落下した。

高所からの落下で地面に直撃し小さく呻く。



「モア。よくやった」


レスナが確かめるように目を開く。とはいえ光の影響が強いのか、視力に異変を感じている様子。


「全身光になって消えてしまうかと…」


チアンは地面にへたり込む。


「レスナ。あとはお願いします」


モアは身を守るように自身を抱きしめる。そして直立したまま動かなくなった。




「つくづくお前達は…全く。でも十分によくやったのさ」


すぐに立ち上がり何事も無かったように話すのはアルタだった。


「自分自身に力を使うのは久しぶりなのさ…」


「よく分かったな。さすが女神。」


「カヒリ、お前のやることだ。眩しいと感じた時点で"目の感覚を忘れることを許した"。てっきりもっと痛みに訴えかける攻撃をすると思っていたが、お前も神をよく分かっているのさ…なんと目障りな光…」


「っ…アルタ…!」


この場で立っているのはアルタ、レスナ、モアのみ。

モアは直立不動なため、実質2人。


カヒリとギーナは落下後に全く動かない。

ソフィーは光の影響で静かに悶えている。

チアンもソフィーと同様に光の影響ですぐには動けない。

クロアはこの中で最も早く倒れて動かなくなっていた。



「モアはカヒリとギーナの動きを止めたのさ…。これも予想していたのなら、…それはさすがに買い被りすぎか」


「いいから早く。」


「口だけは動くのさ」


「手足をガッチガチにされてるだけだ!いいから!」


「そう焦るなカヒリ。もう決着はついてるのさ」


「………」


黙るレスナ。


「とはいえ、今"神ではなくなった"のはレスナのみ。油断は禁物なのさ」


「あぁ。分かっている。感じている。体が重く、面倒な苦しみを味わっている。この私を…人間に…アルタ…っよくも…!」




「さて、今はこのアルタがお前達全員より力を持っているのさ。敵味方問わず従ってもらう」




/////////////now loading......




ハート。



国に踏み込む団体。



先頭を歩くのはアルタ。そのすぐ後ろにはソフィーとギーナ。

カヒリは両手に縄を握っていて、その縄の続く先はレスナ達を縛っていた。

女神を引きずりながら


「お前らになら気兼ねなく言う。お前ら重っ!体重やべぇぞ。痩せろ痩せろおらあっ!」


勝利ゆえのカヒリのいつものおふざけだが、それを聞いてギーナが体を跳ねさせた。


「……気をつけるわね。」


「ん?いや、これ言ってみたかっただけだから!重いと思ったことないし!程よい!程よいから!これ以上ない絶妙なやつだから!」


「アルタ様。大丈夫なのかな」


カヒリとギーナの間に言葉にし難い空気が流れる中、ソフィーはアルタに不安を打ち明ける。


「…また私以外のみんなのおかげで……」


「少なくとも今回はカヒリの奇襲の内容が悪かったのさ。気にしなくていい。それに」


ソフィーに手招きすると、アルタは耳元で


(レスナの力を抑え込むので精一杯なのさ。それですらそう長くは続かない。何が起きても怯むことなく動けるように心掛けておくのさ)


ソフィーは黙って頷いた。




ハートに入国した一行を、誰も迎えなかった。


国に住まう人々は彼らをただ見つめていた。

家の側から、作業場から、それぞれの持ち場に直立し、目で追うのみ。


「全員神に黙らされたってとこか。レスナお前最低だな。」


「人間が神を崇めるのは当然のこと」


「おぉ?お前今人間なんだろ?それって俺より下ってことだぜ?」


「ふざけたことを」


「うぇーい」


適当な会話をしながら、レスナに繋がる縄を強く引くカヒリ。

すると引きずられるレスナは逆らえず体が回転、顔を地面に強打した。


「………」


「分かるか?人の痛みが。人間ってのはな?体だけじゃなくて、なんか痛みとは別のとこから悲しみまでやって来るんだよ。なんで俺がこんな目に…って、天を仰ぐんだ。」


「………」


「神ですからーってドヤってるお前らは何が楽しい?特に感情も要らないだろ?お前ずっと真顔だしな。それに比べて人間は忙しいぞ?大人達は生活が苦しい仕事が辛いって頭抱えて、子供達はおもちゃがほしい勉強したくないって頭抱えて。ん、なんか違うな。」


「………」


「人間ってさ、先人が作ったしょうもない決まり事のせいで苦しんで生きてるんだよ。でもな、そんな面倒な日々を過ごしつつも小さな幸せを必死にかき集めてこっそり思うわけ。生きてて良かったって。」


「何が言いたい」


「良い事も悪い事も何もかも必要なんだよ。お前の意見1つで簡単に滅ぼされていい命なんてどこにもない。」


「………」


レスナはカヒリを一度睨みつけた。



「…へぇ、人間になったからか?今笑ったなお前。」


カヒリはレスナの口元の緩みを見逃さなかった。


「ギーナ。ハートの強キャラで今見当たらないのは?」


「そうね…守り手や狩人は大体揃ってるみたいだけど…」


「王なのさ」



散り散りになりながらも立ち並んでいるハートの人々。

その中に唯一見当たらない人物がいた。

国王、レイゼン・ハートだ。



「まさかとは思うけど、この女神達…俺達に負けた時のことを想定してたりする?」


「神が負けた時のことを考えるか?そんなこと考えるまでもないのさ」


アルタは否定するが、若干声に迷いがあった。


「アルタ。お前ならば分かるだろう。この私が簡単にひれ伏すはずがないと」


追い討ちをかけるようにレスナが声をかける。



「はぁ……ギーナ。カヒリと交代するのさ」


言われた通りにカヒリの持つ縄を引き継ぐ。


「どうしたんだ?」


「すまない。でも今はお前が適任だと思うのさ」


「あー、来る?」


アルタは神ではなく、人間の、幼い子供のように気まずさを漂わせた。

カヒリの問いにゆっくり頷くと、全員がその気配を感じた。



「やりやがったな…前とは別人じゃねえか…」



一行の前に立ち止まる男。

彼を見上げるカヒリとは背丈が倍はある。

そして、感想通り以前とは別人…



「国を治める王、レイゼン・ハート。女神の加護を受け、今こそ立ちはだかる悪を切り伏せよう」



「ふざけんな。お前そこそこな息子がいるだろ。その見た目だと父親じゃなくて兄貴じゃねえか。」


子供が恐れる厳つい父親の典型的な見た目…というのはカヒリが抱くレイゼンの印象だが、今のレイゼンにはそれが無い。

リーファンの兄とはよく言ったもので、双子の兄と紹介されれば納得してしまうほど若返っていた。


若返って、背が伸びている。

こんな分かりやすい異常を目の前に、カヒリが導く答えはただ一つ。




「女神共、自分達を罠の餌にしやがったな。本命はコイツ…わざと負けてレイゼンにフルボッコしてもらおうって考えてやがった。」


「カヒリ、一応言っておくのさ。女神の力を借り受けるというのは」


「いや、言わなくても分かる。モアやチアンはともかく、戦闘特化のレスナの力を貰ってるってだけでこいつは」



言い切る前にレイゼンは背に携える長剣を抜き構えた。

瞬間。彼の立つ地面がひび割れ、突風が吹き、どこからともなく大量の葉が飛来し竜巻となってカヒリ達を目指して突き進む。



「あぁ…やっべぇ。」






/////////////To be continued...


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