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私、この世界を征服します。  作者: イイコワルイコ
5章「世界を守る力」
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第7話「少女の幸せ」





「…あ……」


思うだけじゃなくて、口からこぼれてしまう。

恐怖だ。私の恐怖がかろうじて"声"として形になって出てきてしまう。

大量の魔物達を簡単に殺したバルディンが、目の前で突然倒れた。

これって、"力"の意味がない…ということ。

カヒリやギーナのように常識を超えた力を持つであろうバルディンが、こんなにも簡単に。

誰が、誰と、何人で来たって。


目が泳ぐ。

必死に思い出すのは、子供の頃に教わった最低限の"礼儀"。

王族らしく。王女らしく。

相手に失礼のないように…焦らず、堂々と…



「…あ…ぅ…」


出来ない。

私は情けない声を出しながら両膝をついた。

それだけしか出来なかった。

恐れて、恐れて、恐れて…ただバルディンのように簡単にやられないように…



《こちらに来なさい》



体がビクッとした。

つま先から頭の先まで震えた。

拒否する理由はない。逆らえばすぐに死ぬ。機嫌を損ねたらすぐに死ぬ。

もしかしたら、気まぐれでも死ぬ。

この国に…この城に踏み込んだ時点で私達の命は魔王の手の中。

ここは、世界で最も簡単に死ねてしまう場所。



「は、はい…」


たったの1歩に勇気が要る。

時間をかけてもいけないし、足が震えてもならない。

歩き方次第で、私は簡単に



《早く。顔を見せておくれ》



「っ!!」


心臓が爆発しそう。もしくは潰れそう。

緊張が人間の感じられる限界を超えそうで、頭が真っ白になって寒くなってきた。


玉座に1歩。もう1歩。あと何歩だろう。

これまでの道のりよりも遠くて、重い1歩。


ゆっくり時間が進んでいるように感じる。

少しずつ、玉座の右側へ進んで、もう少しで、魔王の姿が



《何を焦らしている。再会の時に》


「へ?」


玉座の隣まで来たところで私は左腕を掴まれた。

引っ張られて、目が合った。


…………………………魔王は、綺麗な目をしていた。

とても綺麗な目をしていた。


《よく顔を…》


魔王は私の顎に手を…顎ごと私の顔を動かして、じっと見ている。


手は…指は細くて…ひんやりしてる。


《何歳だ?》


「……15で…ですが…こ、今度16歳になります…」


《そうか。大きくなった》


「………」


周りが真っ黒で、魔王が着てるのも黒い…から、顔や手が浮かんで見える。

どこを見たらいいのか分からない。


《キャロライン…》


短い時間だ。

本当に短い時間しか魔王と話をしてない。

でも、得られた少ない情報だけで私の中に色んな答えが姿を現していく。


「……聞いても…いいですか…?」


《どうした》


「……あなたは…前からその顔なのですか?…それとも、私の…の…」


魔王は人間の記憶を読み取れるのかもしれない。

記憶を頼りに、親しい人間に成り済ますことが出来る力があるのかも。

じゃなきゃ、私、私、


《おかしな事を。そうだ。顔は変わらぬ…お前も同じだ。最後に見た時と変わらぬ》


「…はぁ…はぁっ…」


息が荒くなる。

嘘か本当か。


私の目の前にいる魔王は、



《怯える必要はない。お前は私の愛しい"娘"なのだから》



「…ぁ……」


その言葉で、とどめを刺されてしまった。

目を合わせた時に、分かっていた。

ほとんど外に出ないで城にいた。家族の写真を見ない日はなかった。

何度も見た、お母さんと同じ目をしてる。同じ顔をしてる。色んなことがあって薄れてもうすぐ忘れてしまいそうだった幼かった私の記憶が、それがその人だと、


《キャロライン》


「……お母…さん」



《願い、叶った。叶ったんだよ!!》



私がそれを認めると、妖精は嬉しそうに舞い上がって飛び去った。


……いつの日か、私は妖精にお母さんに会いたいと…そっか。



「…本当にお母さん…」


《よくここまで来てくれた。…ずっとお前を想っていた》


いつの間にか緊張や恐怖の全てが取り払われて、私はお母さんに身を差し出した。

お母さんは優しく、強く、抱きしめてくれた。



「お母さん…!お母さん…!ずっと会いたかった!!ずっと苦しかった!誰にも頼れなくて!」


《あぁ…》


「キングエルの人間は皆私達を嫌って、私は子供達に何度も石を投げられて…」


私はお母さんがいなかった間のことを全て吐き出すつもり。

全部聞いてほしい。何もかも。


「それで、森に逃げ込んで…でも、狼人間がいて…」


お母さんは頷いて、黙って聞いてくれる。


「初めてキングエルの外に出て…リーファンと一緒に…」






全て話し終える頃には、私の顔は流れた涙が乾いて汚れていた。

そんな私を見て、お母さんは


《頑張った。キャロライン、偉いぞ。ふふ…その顔、お前が立つことを覚えたばかりの頃に見たな》


「……」


《どうした》


「…ここに来る途中で、魔国で、お父さんの死体が、魔物が…」


順番も何もかもめちゃくちゃで伝えきれない。

今思えば、思えば、お父さんだって…あれ?


「………お父さんが魔王と世界を分け合った…って…お母さんと?」


《…あぁ。そうだ。…マクシミリアンは我を殺すことは出来なかった。これは我とマクシミリアンだけの秘密だった》


「………」


《お前と同じように、我も話をしよう。これまでの事を》


お母さんは私をもう一度抱き寄せると、子供に読み聞かせるように話し始めた。



《…我には昔、想い人がいた。それは、お前も知っているブラウン・バニンガスだ。人を恐れ疑うことしか出来ないブラウンを我は愛した。自然に2人は愛を育み夫婦になった。…しかし、ブラウンの心情は出会った時と変わらなかった。どれだけ愛のこもった言葉を交わしても、優しく体に触れても、ブラウンの目は我を拒絶していた。あの男は結局、誰も愛することが出来なかった。…そしてある時、我は別の男と出会う。お前の父親…マクシミリアン・ストーンだ。あの男は面白かった。ブラウンとは違って、どんな人間でも信じて受け入れる。道行く人間のほとんどと知り合いで、どの人間がどんな分野で優れているかを語り…いつか彼らと国を作りたいと語った。マクシミリアンの夢は、国を治める王になることだった。……笑顔で夢を語るマクシミリアンを想うようになるのに時間はいらなかった。ブラウンを支えるためだけの存在になりかけていた我は、マクシミリアンを愛し、家に招き入れ、共に生きる未来がほしいと伝えた。……あの日、あの日に全てが始まった。………我らを見たブラウンは迷いもなく我らを殺した。…そう、殺したのだ。受けた痛みは忘れない…だがそれでブラウンの苦しみは消化出来なかっただろう…命尽きるのを我は悔やんだ。最後の最後に、ブラウンが納得いくまで生きていたかった。あの男が満足するまで殺されてやりたかった。………死んだ我らを残してブラウンが立ち去ると、ゼグエグが現れた。死んだ我に話を持ち掛けたのだ…"母親になってほしい"…と。それを叶えれば見返りに我の願いも叶える…それに乗った…。魔物の力を得て蘇生し、ゼグエグの魔力を得てマクシミリアンを蘇生した。そしてゼグエグに導かれてここまで来た。魔国を治める王として、招かれた。…間もなくして、お前を授かり、産んだ。しばらくは母親として可愛がったが、魔物の王となった我には限界があった。だから、お前を人間の国へ…マクシミリアンの下へ行かせた。我の分身と共に。お前が見た写真の我の姿は魔法で作られた分身だ。…魔王が誕生し、勢力が増えた魔物達は人間の国を奪おうとした。それを反対することは我には出来なかった。ゼグエグとの約束は反故には出来なかった。自然と力を振るい、我も人間を殺して国を奪った。……そして、マクシミリアンが我の前に現れた。人間達が作り上げた最強の武具を揃え、会得可能な魔法を手に入れて…我を殺すためにマクシミリアンは戻ってきた。…しかし魔王の正体が我だと、マクシミリアンは知っていた。…その時…世界は2つに分けられた…いくつかの約束を含んで》


「…約束…?」


《1つ、キャロラインを守ること。愛する娘を守るのは親の務めだ。…2つ、"永遠"に生きること。我はマクシミリアンへの想いを約束にした。呪いという形で。我が与えたマクシミリアンの理想の国で、理想の城で、語った夢の通りに幸せに生きていてほしかった。…それは叶わなかったようだ…》


「……ねえ、お母さん。お母さんは、魔王…だから、何でも出来る?」


《…不可能はない》


「……じゃあ…私の夢、聞いてくれる?」


お母さんは私の頬を撫でてくれた。



「私、幸せになりたい。"独り"じゃなくて、皆で。家族皆で。……魔国にお父さんの死体がある。…狼人間の巣に隠してある。それをここに持ってきて、お母さんの力で生き返らせてよ。そしたら、そしたら家族皆が揃う」



《…分かった》





私は、願いを叶えた。


2つ、2つも叶えた。



1つはお母さんに会うこと。

キングエルを飛び出した時は考えもしない結末だったけど、それでもお母さんだ。

正真正銘のお母さんだ。


そして、2つ目。





「……ん〜…くぁぁ…っ!…あ、やばい…伸びると気持ちいい…!!」



相変わらず王様らしくない。

男らしさもない。

頼りない。

ふざけてる。



「……なんだ?暗いな…ブラウンー?おい、ブラウンーー!?」



でも、お母さんが愛したのが分かる気もする。今なら。



「なんなんだよ全く………あ、…」



私達の前でもう一度生き返った、マクシミリアン・ストーン。

今度は、人類の恥じゃなくて。

私の大切な家族として。



「…お父さん」


「キャロライン……と、」


《マクシミリアン…》



「ははは……は…?」




家族が揃った。

魔王と、2回も死んだ元勇者、元国王。

そして私。

普通の家族よりも訳ありだけど、色んなことが難しいけど、悩むこともあるかもしれないけど、


それでいい。それが家族だと思うから。


口喧嘩もしたい。仲直りもしたい。

家族らしいことをしたい。


私は今日から、この国で、この場所で、もう一度始める。



幸せな人生を。



独りじゃなくて。



家族と、一緒に。



………………永遠に。




/////////////To be continued...?




マルチエンディングならこれも1つのエンディングになりそう…ですが、まだ終わりません。

失踪したいがための急な最終話とかじゃないです笑

引き続き、「私、この世界を征服します。」をよろしくお願いします。

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