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私、この世界を征服します。  作者: イイコワルイコ
5章「世界を守る力」
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第2話「無知の幸せ」




「他に誰もいない広い城内を1人で回る…。狭くはないけど室内での戦いには慣れていないな」



キングエル。

カヒリに後を任されたリーファンとチャドの2人は、カヒリに渡された金で装備を整えて城に戻った。

リンゴの木の下、荒らされた国王の墓を拠点にまずはリーファンが城の中へ。

ほぼ確信に近い仮説ではあるが、城内に魔国に通ずる"道"があるのであればそれは見つけておきたい。



リーファンは今まで着ていた身軽な服は変わらず、その上から羽根のように薄くて軽い鎧を着ている。

が、それは胸から腹までの範囲しか守れない。

体の動きが鈍らないことにこだわった結果、他は肘当てと膝当てのみ。

その代わり一つ一つは最高級品で用意する事ができた。



「俺達は女神様を探す役目も預かっている。ここはチャドと協力して良い結果を……結果を…」



リーファンはとある部屋の前で足を止め、何となくその前をウロウロする。



「上層の部屋ではないけど、妙に気になる。扉に施された細工が…来客用か…?」


国王が過ごしていたであろう部屋、王族に関係のありそうな部屋、キャロラインに関係しそうな部屋。

そのどれでもなく、それらの部屋がある階とは違う階の一室。

先に確認すると両隣の部屋にはこの城で仕えていた使用人達が使っていたであろう控室があった。ということはこの部屋もと考えたい所だが、やはりこの部屋だけ扉の作りが違う。間違いなく手間と金がかかっている。


目立たない場所に実はとても重要なものが隠されている…というのはよくあること。

なのでリーファンはもしかしたら…と警戒を強め、武器を構えて扉に手を



「…暗いな」


もちろんどの部屋も暗い。城内もリーファンが燭台に火をつけて回らなければ暗いままだった。

しかし、気になって開けたこの部屋の暗さはどこか違う。何かが違う。



「よし、これでいい。……これは…」



部屋を明るくしたリーファン。

彼が見たのは、部屋の真ん中で存在を主張する大きな円形のテーブル。


…だけだった。



「何も無い…。テーブルのために絨毯がある。でもその2つだけだ。この部屋には何も無い…」



リーファンは考えた。

国王が死んだ。他に王族もいない。代わりの者が現れるかもしれないが城で仕事をしていた者達は一度はもれなく全員失業するわけだ。

そうなれば、ただ故郷に帰るだけ。家に帰って次を考えるだけ。

…なのだろうか。

皆がいなくなる。この城から誰もいなくなる。のであれば、多少物を盗っていったところで同僚ですら何も言わないのではないか。

キングエルの民に見られたところで、王族に対してあれだけの悲しい評価をするくらいだからむしろ応援するだろう。


扉の豪華さから、恐らくこの部屋にはそれなりに金品があったのかもしれない。

この部屋は、使用人達の最後の給与として払われた部屋なのかもしれない。



「…そこまで考えても否定される。キャルだけではなく、彼の父親もまた…周りを驚かせる人のようだ」


部屋の隅に家具の置かれていた形跡はない。

埃の溜まり方から見ても、やはりこの部屋は最初からずっとこのままなのだ。


では、何の部屋なのか。

考えを深めるほど、自分達の目的に関係する部屋だという考えが正答だと思う。



「このテーブルは部屋の中で組み立てたとしても大きすぎる。部品を運び入れることも出来ないだろう。それに、天板には繋ぎ目がない。どうやってここに…」


テーブルに触れながらその周りをゆっくり歩き回る。

力を抜いて下ろした剣が絨毯を優しく引っ掻く…。



「本来ならこのテーブルの下に隠していると考えるだろうが、もしかしたら」


天井を見上げる。


「……違った。ならやはり床下に」



テーブルを退かして、更に絨毯を捲りたい。

しかしテーブルの大きさは確かに部屋にはあっておらず、1人でどうこう出来る物でもなく、そもそもどうやってこの部屋に運び入れたのかが分からない。



「仕方ない。誰もいないからこその選択肢だ」



リーファンはテーブルを切断する事にした。

改めて構えたそれも、新しく用意したもの。

比較的よく見かける仕様の通常の大きさの剣だが、リーファンは鍛冶師に注文をした。

それはなるべくハートで作られる武器の仕様に近づけるため。


使い慣れたそれと同じとまではいかないが、使い勝手は十分。



「舞い散れ…はぁっ!!」



試し斬りの相手がテーブル…というのは何とも言えないが。

想像以上の結果になり、一振りで綺麗に八等分されたテーブルを見たリーファンは


「驚いた。キングエルは戦闘の機会が少ないはず…なのにとんでもない名匠がいたようだね」



テーブルの残骸を蹴り飛ばし、絨毯に刃を差し込む。

適当に切り開いて、手で捲る…とそこには整えられた石の床。


そして、黒い太線で描かれた何かの一部が露出した。




「嫌な予感がする。ここは一度チャドを…いや」



忘れてはいない。この城の中では人々はどうしても仲違いしてしまう。

それを抑える王がいなくなってしまったから。


リーファンは一旦、絨毯を全て取り除くことにした。

額に汗を浮かべて体が熱を逃がしたいと要望する頃、この部屋の全貌が明らかになった。



「この手の知識は…とはいえ、これは本物の…魔法陣だ…」


円形。それは奇遇にもテーブルと同じ大きさだったかもしれない。

円の内側には複雑で気味が悪い文字の羅列と神経質さが伺える美しい曲線の数々。

その魔法陣が意味するものは



「…消えり…来たれり…清め汚せ…解き放て…己が……」


それ以上は声に出さない。

最後まで読み上げた場合の万が一をリーファンは直感で危惧する。


「これを魔国と無関係だと言う方がおかしい。でも、これを機能させるのなら」


城の中からこれを発動する"誰か"がいなければ。


「ということは、……ということは…」


使用人の誰かが魔物の味方をしていた。


「まさか。ダメだ。1人でもこの城に長居は禁物かもしれない。おかしな事ばかり考えてしまう」


リーファンの脳内には"答え"が浮かんでいた。


この魔法陣を利用していたのは、使用人ではなく"国王"なのだと。

死体は消えた。恐らく魔国に運ばれた。しかしそれは国王にとっては計画通りで。


いつかカヒリ達との会話に出た死者を蘇らせる存在が魔国に。


ありえないと否定しつつも、本気でそう考えてしまう。


悪い噂とはいえ、国王が勇者だった頃に…もし本当に魔王と世界を分け合ったなら。

もし、何かしらの約束をしていたら。

もし、マクシミリアンが死後に魔王側に寝返るようなことがあれば。



「…チャドと交代しよう」


リーファンは無理やり思考を停止した。



/////////////now loading......




誰が見ているわけでもない。

しかし、傷一つない新品の鎧で身を守る大男はどうしても人目を気にする。

そして時々頭上のリンゴに目を向ける。



「あの赤くなってるのとか、食べ頃だと思うんだよねぃ…」


宝石と同等かそれ以上の価値を簡単に叩き出す、キングエルの国王だけが所有するリンゴ。

所有者がいない今なら黙って収穫して食べてしまっても良いのではないか。


欲と静かな戦いを繰り広げるチャドは、自慢の愛斧"サンダーボルト"の手入れをして気を紛らわすことにした。

リーファンと装備を整えに行った際に研磨はしてもらったが、やはり最後は自分で磨き上げてようやく仕上がるものだとチャドは考える。


鏡面のように自分の顔を反射する刃に小さなため息。


「全く。お前は10年以上戦い続けても変わらないねぃ。初めは振るだけでも命懸けだったのに、今ではどんな武器より振り心地が良い。…聖騎士の名をいつかは…と思っていたけど、今は大将軍でも満足だねぃ」




自分に近づく気配を感じ、目を向ける。

と、チャドは目を丸くした。



「…リーファン…?」



彼の前に戻ってきたリーファン。

しかし、どうにも様子がおかしい。


真っ先に目に飛び込んできたのは、彼の目の下のクマだ。

さっきは健康的な顔をしていたのに今は眠ることすら出来ない重病人のようで。


なのに歩き方は問題ない。だからこそ違和感が増大していく。


「大丈夫…なのかぃ?」


「チャド」


チャドは磨いていた斧をすぐに振れるように握った。

もしかしたら、城に長居したせいでリーファンは人を選ばず目についた者を襲うような精神状態なのかもしれない。



「チャド。交代を…いや、この城から離れるべきかもしれない。いや、俺は…」



見た目の異変とは違い、思ったより正常な彼を見て安堵する。


「リーファン、中にいるのはあまり良くないみたいだねぃ。魔国と通じ」「その事だ。その事なんだ」


チャドの話を遮り、リーファンは続ける。


「君はどう思う。もし、キングエルの国王…勇者マクシミリアンが人間を裏切る選択をしたら」


「…何を見つけたんだぃ?」


「魔法陣だ。あれは間違いなく魔国と城内を繋ぐ"道"になる。ただ、城の中から魔法陣を機能させなければそれは叶わない」


「ん…うん。なるほどねぃ。城で働く何者かが魔王側の人間だった…というよりも、」


「それだけじゃない。自分が死んだ時に死体を運ばせる際にも魔法陣を機能させる必要がある。今となってはキングエルの民の国王に対する評価は…間違っていない…と考えている。…恐らく、キャルは無関係だろうけどキングエルの王族は…マクシミリアン王は…」


「……あ。そういえば」


「どうした。何か心当たりが」


「どうかねぃ…。でも、キャルがたまに話に出してた"ブラウン"って名の執事が」


「…俺も聞いたことがある」


「彼は国王の死後、どこに行ったんだろうねぃ?」


「関係者…ということか」


「それはどうだろうねぃ。…丁度いいから本人に聞いてみるとしようかねぃ」


チャドが立ち上がる。

リーファンがチャドの視線の先を追うように振り返ると、そこには人影が。




「我が城に何用か。生憎茶葉を切らしている…もてなしに期待しないでもらいたい」



「まさか、城に残っているとはねぃ。鍛冶師のとこで見たいくつかの防具はあなたの物だったんだねぃ。同時刻に同じ鍛冶師に注文していたなんてねぃ…」



2人の前に完全に姿を現した。


彼の両腕には、手の甲から肘の辺りまでを守る部分的な防具。

彼の両足には、足首から太ももの辺りまでを守る部分的な防具。

首から黒い首飾りを垂らし、どこかの誰かさんを真似たように焦げ茶の布を纏っている。

しかし誰かさんとは違って顔もちゃんと見える。



「どちらも存じ上げている。人類を代表するような屈強な男が2人も…改めて問う。我が城に何用か…」


両手を広げて手のひらを下にし前に突き出す。

それを見て



「何用か…そうだねぃ。言っても言わなくても結果は同じだから…省くとしよう。リーファン、無理はしなくていい」


チャドは少しだけ歯を見せて緩く笑った。

リーファンは一応彼の後ろに立ち、いつでも対応出来るように待つ。



「"大将軍"が相手か」


「オイラの首を手土産にする気かぃ?」



「…ミラージュ・オンブリード」


突き出した両手から黒と紫の火花を散らしながら2本の剣が現れた。

彼はそれを握ることなく、さらには触れることなく上に向け、合掌すると2本の剣も重なった。


それを見てチャドは自慢の斧を担ぐように肩に乗せる。

次第に斧の刃に黄色い光が宿り、サンダーボルトの名を体現する。



「大将軍、チャド・サンダーバーグ」



一切剣には触れずに、手を振る。

その身振りに合わせて宙に浮いたままの剣が付き従うのを確認して、



「深焔魔将、ブラウン・バニンガス」





/////////////To be continued...


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