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私、この世界を征服します。  作者: イイコワルイコ
4章「世界を壊す力」
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第14話「幼女と悪魔」





「……で、なんだけどさ。」



土下座をしたままのカヒリ。

アルタはというと、


「ふん。まだ許してないのさ」


「本気か!?お前頭踏んでるぞ!?」


カヒリの頭を押さえつけるように右足を乗せ、僅かに体重をかけるアルタ。

見る人によっては可愛らしいと解釈出来ないこともない光景だが、両者共に見た目通りの存在ではない。


少なくとも、女神アルタにはカヒリが人間以上の何かだという察しがついているようで



「お前は黒いのさ。その身を隠す布っきれではなく魂そのものが。女神を滅ぼしにきた……違うのさ?」


「ぐふふはははは!バレちゃあしょうがな…くねえよ!んなわけあるかバカ!バカ女神!許しのアルタだろうが!少しは神らしく器デカいとこ見せてくれよ!いつまで頭踏んでんだよ!おいコラ!グリグリすんな!地面に顔擦りつけようとすんな!痛えよ!小石が痛えよ!無精髭のお父さんの頬擦りより痛えよ!!」


「……本当は痛くも痒くもないのさ。お前は人間ではない。"向こう"と同じさ」


アルタはどちらかの方向を指さすが、カヒリには見えていない。

それでも


「魔物と同じか?はは。舐めんなよ。それ以上だぜ?」


「っ」


アルタは足を退けて咄嗟にカヒリから離れる。


「これは殺気じゃない。"出すぞ"っていう脅しだ。聞こえは悪いけど敵意はない。でも、女神に力を示すならこれが手っ取り早いだろ?」


「邪悪なお前に力を授けるとでも?……っ」


アルタの頬を汗が流れる。

一瞬の圧が、女神を圧倒していた。



「俺はこの世界を正しくするためにいる。正史通り、人間が魔王を倒すためにこの力を使う。悪さしたかったらとっくに世界征服でも世界滅亡でもやってるよ。」


「……死ぬことを、ゆる」「カヒリ。俺のことはそう呼べ。」


恐る恐るカヒリに手を向けたアルタ。

彼女の言葉を遮ると


「言っておく。俺はお前達と戦ったっていい。勝つ自信があるからな。でも、魔国と人間の世界を隔てる結界をぶち破って、魔国を侵攻するにはお前達の力が必要なんだよ。…キャロラインが魔国に連れ去られて、味方もいなくて1人で何されてるか分かんねえ。あいつはこの世界の未来の一端を担う存在だ。死なせちゃいけない。」


アルタはカヒリに向けていた手を下ろした。

代わりに、左目を閉じて右目だけでカヒリの左手を見た。

彼の左手は、女神への脅迫を主張するように人間のそれから変化していく。

肌色の手が白くなり、肉の柔らかさを失っていく。


「俺は善も悪も知ってる。どちらの生き方も選べる。誰にだって与えられた当たり前の力だ。それの究極が俺という存在。世の全てを救う英雄…」


「山頂の魔物を殺したのはお前か。ロガドガ山の主である魔竜を永遠に眠らせたのさ」


「まあな。でも死んだのかアイツ。残念だな…ちょっとじゃれただけなのに。」


「カヒリ。この際お前の真の姿は問わない。女神の…この、許しのアルタの力を授かりたいのなら」


「なら?頼みごとか?」


「ここから連れ出すのさ。もう一度会いたい人間がいる」


「……目はくれない?」


「ここから連れ出せ」


「……ちぇ。分かった。でも協力してくれるんだよな?女神が人間を騙して実は非協力的だと判明したら最終手段使うからな。」



カヒリとアルタは最後まで互いを認めず疑っていた。

それでも歩み寄って。



「飛べないこともないけどこれ下山もズル無し?」


「好きにしたらいいさ。この手を離さなければああああ!?」


カヒリはアルタを肩に乗せた。

いわゆる"おんぶ"の形で来た道を戻っていく。

速度は言わずもがな


「ぶるるわあああああああああ!!」


口を開いたアルタ。しかしカヒリの速度が速すぎるせいで口は言葉を紡ぐことが出来ず、風ばかりを取り込み、空気の供給過多で呼吸に若干差し支えた。

結局叫ぶことしか出来ないが、カヒリはそれをどうしようともしない。

ただ急ぐ。ギーナとの約束のため。


本来ならばハートを経由してメドルーナを目指すところだが、今回はそうしない。

一切寄り道をせず、アグリアスへと突き進む。


「ふるるわあああああ!!」


アルタの口内は限界だ。信仰国アグリアスへ続く道でついに水分という水分が乾ききった。


「ちっ、飛ぶぞ!」


アグリアス霊道には対人間用の特殊な木がある。

この木はアグリアスへ向かう人間に対してのみ強力な効果を発揮するが、カヒリはアグリアス霊道ごとそれを飛び越えることにした。



「もわあああああああ!!」



雲に触れそう。


アルタは女神らしくない感想を脳内に浮かべた。

代わりに口は開きっぱなしで強風により唇や頬が激しく震える。


……が、アグリアスの街並みを目にしたアルタは



「もわあああああああ!!んんんんわあああ!」


カヒリに必死に訴える。しかしこの状況では伝わるはずがない。

なので、


「んが!」


「い"っ!?」


飛んだ勢いでそのまま信仰国アグリアスを越えようとしたカヒリだったが、空中で後頭部に伝わる鈍痛によりそれを断念。

仕方なく礼拝堂付近の建物の屋根に静かに着地すると、アルタを肩から下ろして



「今度はなんだよこのバカ女神!」


振り返ると額を赤く腫らしたアルタが


「ほほひ、ひぇはひはひふ!」


「は?」


「ひょひょひ!ひぇひゃひぃ!」


「あ?」


「ひぇぇ!ひゃあ!ひいぃ!!」


アルタは必死に訴えるが、水分を失い渇ききった口は思ったように言葉を伝えることが出来ない。

その様子がおかしくて、カヒリがいよいよ笑いそうになっている。


「よ、よし、えへ!っひゃ!待てよほぉ!……ひぇぇ!ひゃあ!あっはははははは!」


アルタが何と言おうとしているのか真似をしようとして自滅した。

腹を抱えて笑いだすカヒリ。


目を細めて静かに怒りを露わにするアルタは


「ひゅひゅひゅ……」


「ぎゃああああっははは!ひゅ、ひゅひゅ!ひゅひゅ!無理!もう無理!笑い死ぬ!」


「いい加減にするのさ。カヒリ。お前が感情を持たないことを許す」


「は。申し訳ありませんでした。」


アルタの言葉でカヒリは急停止。

死ぬほど笑っていたはずだが、いきなり真顔で謝罪する。


「カヒリ。お前の移動能力は悪くないが口が乾く」


「申し訳ありません。前もって口は閉じておくようにと忠告するのを忘れていました。」


「なっ……」


真顔でふざけたことを言うカヒリに怒りが湧く…が、アルタは続ける。


「無理やり足を止めさせたのはこの近くに女神がいるからなのさ」


「ひぇひゃひぃ、とは女神ということでしたか。」


「お前……」


アルタの力により、カヒリは感情を持たない。

だからこそ、真顔で弄ってくるのが余計に腹立たしくて。


「もういいさ。でも次ふざけたこと言ったら」


「分かりました。神のお慈悲に感謝を。」


アルタはカヒリに感情を返してやると



「お前どうやっても俺には勝てそうにないのな。」


「……腹痛になることを許す。催した便意が解放出来ずにもがき苦しむことを許す。このアルタに生意気な態度を示す度に」


「あ、あぁ……卑怯だぞ……そういうの違う……じゃん…くそ…いや、くそも違う……連想すんな。耐えろ……うがああ…ト、トイレ……」


「さらに激化することを許す」


「負けましたああああああ!勝てませええええん!どうやったって勝てませええええん!強すぎますう!怖すぎますぅ!アルタ様あああああ!」


「不思議なのさ。お前がそうやって苦しむのを見ると気分が晴れるのさ」


「…………」


「どうした?」


急に静かになったカヒリ。

アルタが問うと、黒い布から少しだけ見えた彼の口元はそれだけで十分に伝わってくるほど優しく笑っていた。


「では、行きましょうかアルタ様。アグリアスのどこかに他の女神様がいらっしゃるのですよね?すぐに探しましょう。」


「お、おい、カヒリ…」


態度が急変してしまったカヒリ。


「さあ、手を。まずは下に降りましょう。」


差し出された右手。アルタがその手を掴むと


「地獄に、道連れです。」


「なにを……はっ……」


続けてアルタの手の上に重ねられたカヒリの左手。

目には見えないが、明らかに体温よりも熱があった。

続けて感じた、肌ではない何かの感触。


アルタの顔が青ざめていく。



「俺の勝ちだ。アルタ。もう今後はこんな茶番無しだ。分かったな?……俺が今手を退けたら、お前は目にした光景を永遠に忘れられないぜ?踏むだけでもこの世の終わりなのに、手に擦り付けられて塗りこまれてんだから。」


「……お、お前……カヒリ……お前……お前は……人間ではないのさ……神を恐れぬ…悪魔……悪魔なのさ……!」


「ん、別に間違ってないな。」


「風呂おおおおおおおおおおおおおお!」



この日。

神にとっては一瞬とも変わらない短い時間。

その間に女神アルタは、神であることを忘れるほどに騒いだ。




/////////////now loading......




メドルーナ。



「ごめんなさい。私が事件を起こしたせいで国に入るのも厳しい状況なのを忘れていたわ。」


炎鳥に乗ったまま入国しようとしたギーナだったが、バルディンとの一件を思い出して陸路に変更した。


少しだけ森を歩いてから、隊列と言える状態で出迎えた門番と向かい合う2人。



「何者だ。我がメドルーナに何の用がある」


「…」


ギーナが言葉に詰まる。すると


「私達姉妹なんです。お母さんが重病で……姉さんはまだ体が動かせるけど顔は見せられないほどなんです。人に伝染するものではないんですけど……メドルーナにはこの病に効く特効薬が作れる人がいるって聞いて」


「お前、病人なのか」


「ゴホッ!ゴホッ!」


「姉さん!……お願いします。姉さん以上にお母さんが……お母さんが……」


対応する門番を前に、思いっきり嘘をついて涙まで流して見せたソフィー。


2人は門番達全員の同情を誘って入国に成功した。

さらに、


「この特別入国許可証があれば怪しまれることもなくなるね!良かった!」


ソフィーの名演技っぷりはギーナにとって意外だった。



国内は以前とそこまで変わってはいないが、やはり厳重という印象。

常に見張りと見回りの兵が彷徨いている。



「こんな状況だと商人も笑顔がぎこちないわね。チャドが言っていたような宿娘なんて取り締まられてしまうんじゃないかしら?だとしたらチアン様に会うのは…」


「……ギーナ。もしかして…あれ?」




路地裏の暗がり。


そこに見えるいくつもの人影。

その形は女性に見える。



「追いやられてるのね。行きましょうか。」



チャドから聞いた情報を頼りに、派手な見た目をしておらず買われる気配のない宿娘を探す。


が、



「あ、あれ?」


ソフィー達の前に姿を現した女性達は皆その特徴通りだった。

全員が生活費に困っていそうで、服も薄汚れている。



「きっと前と変わったのが大きいのよ。華やかに着飾って宿の前に立てなくなったから、稼ぎが減ってしまったのね。」



「あんた達もすぐそうなる」



吐き捨てるように1人の女性が言った。

ギーナが目を向けると、彼女は前歯が無かった。それどころか、他の歯も折れていたり曲がっていたり……



「どうする…?ギーナ」


「大丈夫よ。離れないで。」



落ちぶれた宿娘達を見て歩く2人……のさらに後ろ。

人影が1つ、迫っていた。





/////////////To be continued...


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