第7話「思い出話」
「でも、女神様ですか?って聞いても違いますって言われたらどうしたらいいの?嘘つかれたら絶対に見つけられない」
ライヴァンにいるはずの女神、再燃のプロティアを探すソフィー、チャド、リーファン。
探すと言っても、傍から見れば3人はただの観光客と変わらない様子。
街を眺め、店を眺め、道行く人々を眺めるだけ。
先にチャドが言ったとおり、女神はそのまま神の姿で存在しているわけではなく、そこらで見かける一般人と変わらない姿でそこにいる可能性がある。
たった今すれ違ったあの人が、店で服を見ていたあの人が、どんな人物でさえ今は女神である可能性が存在してしまう。
改めて女神探しがどれだけの"偉業"なのかを再認識した3人はギーナと約束した夜の時間帯までライヴァン中を歩き回った。
「難しいな。カヒリやギーナであれば、恐らく女神様の方から姿を現すだろう。俺達は選ばれし者ではないから、女神様によっては絶対に姿を見せないこともありえる」
「オイラ達は今、"保釈"された状態だからねぃ…踏み込んだ探し方は出来ないし、こうして歩き回ったところで簡単に見つかるほど甘くはないねぃ」
「チャドはメドルーナで女神様を探して見つけたんだよね?その時は?」
「その時は噂があったんだよねぃ。神々しい美女がいるらしいって。目撃した男は酒に酔っていたんだけど、路地裏に消えていく美女を見かけた。千鳥足で追いかけたらそこには美女はいなくて、代わりにみすぼらしい姿の宿娘がいたと。施しのチアン様はその名の通り"施す"。アルタ様の"許す"が広い意味で使われたように、施すも色んな意味があってそれに合わせた女神様の力が」
「チャド。あの女性は?」
リーファンが話を遮る。
優しく口を塞がれたチャドは、リーファンの指し示す方向にいる女性を見た。
それは他と変わらない、普通の花屋の娘。
夜になって店を閉めるために店先の片付けをしている。
服装、髪型、体型、顔…目視出来る範囲でその女性が女神であるかどうかを見定めるチャド。
じっと観察していると、ふとその女性の隣に影が。
「あの。お姉さん、ちょっといいですか?」
「っ?ソフィー嬢?」
「いつの間に…!」
ソフィーが女神と疑わしき女性に声をかけていた。
「ごめんなさい。今日はもう終わりで。また明日来てください。綺麗な花を用意してお待ちしていますので」
「あぁ…お客さんじゃなくて。聞きたいことがあるんですけど」
「何でしょうか?」
「その…あの…お姉さん…」
女神探しに苦戦していること。
早くしなければキャロラインが危険だということ。
あまり時間に余裕がないのは確かなのだが、まさか直接"あなたは女神ですか?"と聞くつもりなのか。
ソフィーの真っ直ぐで無謀な賭けにチャドとリーファンが思わず顔を伏せる。
「お姉さんには、おばあちゃんいませんか?長生きで、色んな事に詳しいような」
「え?…まあ、…いますけど」
「ソフィーは何を?」
「さぁ…」
少し離れて見ていた2人はソフィーの意外な質問にまだ理解が追いついていない。
「やっぱり!私、お年寄りの人に話を聞いてるんです。ほら、記録士ってご存知ありませんか?」
「あ、記録士なんですか。…分かりました。ではこちらにどうぞ」
記録士だと自分の立場を偽ったソフィー。
そのまま花屋の中に招き入れられ、
「中に入ったねぃ…」
「どうするつもりなんだ?」
扉が閉められた。
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花屋の娘はソフィーを要望通りの人物に会わせた。
「ふぇ〜…こんな時間にお客さんかい?珍しいねぇ」
「こんばんは。私は記録士のソフィーです。まだまだ新米なんですけど…。各国で長生きしてる方に話を聞いているんですよ。長寿の秘訣とか、長く生きてきてどんな思い出があるかとか」
「記録士かぃ。…ふぇ〜っ。それはご苦労さま」
「おばあちゃん。彼女に協力してあげて」
温かい飲み物をちびちび飲んで体を温める老婆。
体に沁みる熱が気待ちいいのか、飲む度にため息が漏れる。
改めて頷き、ソフィーに話を促す。
「それじゃあ、最初は…おばあちゃんはライヴァンでいつから暮らしてるんですか?」
「ライヴァンにはねぇ…嫁いできたんだ。もう旦那は"向こう"に行っちゃって…ふぇ〜…もう何年前になるかねぇ」
「すごい…。今は何歳なんですか?」
「何歳?何歳に見えるかねぇ…ふぇっふぇっふぇ」
明るく返す老婆に、ソフィーは隣に移動して老婆の手に触れながら答えた。
「そうですね…ざっと34歳くらい?」
「ふぇ〜っ!ふぇっふぇっ!もう少し若いよ」
ソフィーの冗談にそのまま乗っかる老婆。
その後もいくつかそれとなく話を聞いて、いよいよソフィーが本題に入った。
「じゃあおばあちゃん、ライヴァンで暮らすようになってから…女神様について噂とか聞いたことありますか?ほら、ここの教会にも女神様が…ね?」
「ふぇ〜…プロティア様だねぇ?随分遠回りしたもんだ。最初からそれが聞きたかったんだろう?」
「あ…」
老婆の目つきが変わる。
睨まれたソフィーは老婆の豹変ぶりに勢いをなくしてしまう。
「あたしゃねぇ、昔、女神様に旦那を取られたんだ。"向こう"に連れてかれて、2度と帰ってこなくなった。何度もあの教会に通ってお願いした。旦那を返してくれってねぇ」
「………」
「再燃のプロティア。女神様は1年間毎日通い続けたあたしの前にようやく姿を現して話をしてくれた。なぜ旦那を取ったのか。それは、あたしの病気のせいだった…。自分じゃそんな病気にかかってるなんて分からなかったんだけどねぇ?後に流行り病にもなった病気で、このままじゃ先が長くないと分かった旦那は、女神様に頼んで自分の生命を燃やした。そしてその生命の力をあたしに差し出したんだ。…ふぇ〜。あたしは女神様と旦那のおかげでこれまで生き延びた。旦那との結婚式が昨日のようだよ。なのに、あたしはもう103歳。見た目はずっと若い。体もまだまだ動く。こうして長話も出来る。孫も大きくなって、そのうち孫の花嫁姿も見られるだろうねぇ。…それでも、それでもねぇ…」
老婆は泣きだした。
「どんなに長く、健康で生きてもね、あたしが隣にいてほしいと願うあの人は、もういない。花のように咲く君の笑顔が好きだと言ってくれた旦那は、もういない…ああぁ…」
「お、おばあちゃん…」
「女神様女神様って、確かに神の力はすごい…計り知るもんじゃない。でもねぇ、それが人を幸せにするかと聞かれれば、少なくともあたしは違うと答える」
「………おばあちゃん。プロティア様は、その時…おばあちゃんとお話をした時、どんな姿でしたか?服装とか髪型とか」
「…そんなこと聞いてどうするんだい?」
「女神探し、ご存知ですか?女神の逸話を聞いて真相を知ろうと世界を旅する人達のことを言うのですが。…実際に女神様に会えた人の体験談は彼らにとって貴重な情報になります」
「シスター…。そう、修道女の格好だったねぇ。深い赤の髪で。教会の地下から」
「…っ!!おばあちゃん、ありがとう。本当に!」
ソフィーは慌てて老婆に礼を言い、握手をして、さらに慌てて花屋から飛び出していった。
「…記録士なのに紙も持ってないのは確かに新米っぽいねぇ。話を覚えてられなかったら雇い主に怒られるだろうに。気の毒だ。…ふぇ〜」
老婆はソフィーの記録士としての違和感に気づいていた様子だったが、それよりも温かい飲み物の心地よさが勝った。
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教会。
昼に約束した通り、ソフィー達に遅れてギーナが合流した。
「ギーナ。カヒリは?」
「別行動よ。本当はずっと一緒にいたいんだけど」
「カヒリも呼んできて」
「…そう?」
到着してすぐ、カヒリも呼んでくるようソフィーに言われたギーナ。
なら、と胸に手を当てて祈ると
「…ぅおおおおおおおお!何事だあ!!」
夜の教会にカヒリの声が響き渡る。
「呼んだわよ?」
「来るの早いね…」
「え、マジで何?何で呼ばれた?緊急だよな?」
「分からないわ。ごめんなさい。」
「ま、まあいいや。で?」
「ソフィー嬢がプロティア様の手がかりを見つけたみたいなんだよねぃ」
チャドが話を切り出す。
続けてソフィーが得意げに
「私のお手柄なんだから」
「でも、花屋の娘に目をつけたのはリーファンだよねぃ」
「え!?そうだけど…」
「どっちでもいいから!ほら、手がかりは?」
カヒリが催促する。
「この教会の修道女。それが手がかりだよ。その当時の姿のままならば、ステンドグラスと同じように赤髪の女性だ」
「当時の姿…な。」
「おばあちゃんの話だから…」
リーファンが大体のことを話すと、カヒリとギーナは2人でこそこそと話す。
「よし、じゃあこの教会を探そう。ここで修道女なんて見たことないけどな。」
「確かに。俺も前に来た時には見かけなかった」
「この教会で探し物をするなら地下一択よね。みんなで降りましょうか。」
早速地下に降りた5人。
そこへ神父がやってきて
「あなた達、ここは」
「神父さん、俺達は怪しい者だ。否定はしない。」
「はい?」
「ギーナ。」
「分かったわ。」
カヒリに言われてギーナが魔法を使う。
神父はそのまま失神して倒れた。
「だ、大丈夫かな…」
「心配すんなよソフィー。さぁてと。米粒ひとつ見逃さないレベルで探せよ?再燃のプロティアを。というかプロティアに関係しそうなアイテムをさ。」
「教会だし、プロティアも十字架なのかしら?」
「物を探すのか。次は」
少し疲れた様子のリーファン。
昼からソフィー達より多くの人を観察していたせいで目を酷使していたのがここに来て効いているらしく、目を押さえながらゆっくり探索を始めた。
「ソフィー嬢、リーファンの側に。疲れてるみたいだからねぃ」
「うん」
カヒリ、ギーナ。
リーファン、ソフィー。
チャド。
3組に分かれて地下を調べはじめた。
/////////////To be continued...




