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私、この世界を征服します。  作者: イイコワルイコ
4章「世界を壊す力」
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第5話「聖なる場所」




時は過ぎて翌日の昼。



一晩を牢の中で過ごしたソフィー、チャド、リーファンだが、他の収容された人間とは明らかに違った。



「ふわぁ……すること無くて暇だね」


欠伸をして目を擦るソフィー。


石作りの壁、床。

他に何も無い空間で3人は適当に睡眠と雑談を繰り返してダラダラと過ごした。

ロガドガ山での異常な数日を思えば半日ほどだらけたくらいでは足りないだろうが、直前の無銭飲食による爆食いが効いたのか



「食事は体を作るとは教えてもらったが、ここまで影響するとは。今後は気をつけないと」


リーファンは満腹による苦しみが緩和されてから、少しずつ腕立て伏せをして体の調子を見ている。

どうやら万全な状態まで回復出来たようで。



「………」


チャドは無言で見回りの兵士を目で追っていた。


兵士の態度が牢毎に違う。

自分達の前では逃げた者がいないか人数を確認しただけだったが、別の牢の前では収容された人間に牢の鍵の束をぶらつかせて挑発しているようだった。

また別の牢の前では、近くを走っていた鼠を捕まえて食事と称して投げ込む姿も見えた。


悪人相手とはいえ、兵士にも多少の教育が必要なのではないか?


と考えていたところで。

それとはまた別の男が3人の前に現れた。



「良かったな。ギーナ様に感謝しろ」


男は見回りの兵士から鍵束を受け取ると、牢の鍵を開けた。



「え、出ていいの…?」


「ギーナ様か」


「見捨てたわけじゃなかったみたいだねぃ」



地下牢から解放され、3人は城の外で保釈を知らされた。


どうやら、事情を知ったギーナが代わりに高額な食事代と保釈金を支払ったようだった。




「これで幻だという説は消えた。カヒリとギーナは確かにこの城にいるようだね。しかも相当裕福だ。食事代に保釈金、王族に仕える仕事をしていたとしても簡単に払える金額ではないはず」


「でも、私達の立場だと今からお城の中に入れてくださいなんて言えないよね」


「それなら簡単な話だねぃ」



チャドは近くにいた城の門番に話しかけてすぐに戻ってきた。



「恩人であるギーナ様に感謝の言葉を。もし直接伝えさせてもらえるなら、今日1日教会で待つ…これで待ち合わせ場所は決めれたねぃ」


「チャド。考えは悪くないが、それだと今日は丸1日教会にいなきゃならないのでは?」


「他に行く所もないからねぃ」




/////////////now loading......





教会。

大きな扉を抜けてすぐ、最後方の長椅子の端に3人は並んで座った。


前方に構える大きなステンドグラスは太陽の光を浴びて宝石よりも綺麗な輝きを見せていた。



「懐かしいな。俺はここでキャルと別れた。それが最後だった」


「リーファンとキャル…なんか不思議な組み合わせだね。どっちも基本静かだから会話もなさそう」


「ソフィーがお喋りなだけかもしれないけどねぃ」


「むむぅ…」


「キャルは最初、俺に嘘をついていた。身分を偽って他と変わらない普通の娘だと。俺とは違うだろうけど、彼女も王であり父でもある存在との関わり方に問題を抱えていたのかもしれない」


「ステンドグラス綺麗だね…キャルも見たのかな」


「見たよ。確か俺はその時に女神様の話を…赤髪だから、"再燃のプロティア"だと…」


リーファンが思い返しながらそこまで話すと、3人は表情を変えた。

ステンドグラスに描かれている白い布を纏った赤髪の女性が女神であるならば。


「オイラ達は女神様を見つけ出す必要もあるからねぃ」


「でも、プロティア様?があの格好してたらすぐに見つかるよね」


「ライヴァンのどこかに女神様がいるかもしれない。ただ手がかりは何もない」



「今の私はあなた達からしたら女神と同等なんじゃないかしら?」



後ろから声をかけられ振り返ると


「ギーナ!」


相変わらずの黒い布ではあるが、ここまでくるとだからこそ彼女だと分かる。

ソフィーが立ち上がり駆け寄って再会を喜ぶ。



「すまない、助かった」


「感謝だねぃ。…」


「うふふ。ちなみに、全部で34000ゴールドだったわ。後でカヒリにもお礼を言ってね。」


34000ゴールド。

それは独身男性がおよそ1年で消費するのと同等の金額。

強く言ってしまえば一般的な平均年収の金額と言っても過言ではない。


「お礼を言うだけでは足りないな…」


「そうだねぃ…」


リーファンとチャドなら、稼ごうと思えば稼げる金額ではあるのだが。

知人の食事代と保釈金のためにポンと払えるかと聞かれれば。


ソフィーは自分の額に何度か人差し指を軽くぶつけて考えてから話し出した。


「ギーナ。私達ね、どうしてもやりたい事があって。協力…してくれる?」


「やりたい事?何かしら。」


「女神様を見つけて、選ばれし者?を会わせないといけなくて」


「あら…」


「それでね、私達、ロガドガ山で、アルタ様に会えたんだよ!その時にね」


「女神に直接、女神探しと選ばれし者を連れてくるように言われた。ソフィー、落ち着くんだ」


しっかり話す内容を考えていたはずだが、話すうちに思い出して興奮してきたソフィーをリーファンが落ち着くように言う。


「そう。3人でロガドガ山を…すごいわ。もしその場に私達がいたら全力で止めていたと思う。あなた達は弱くはないけど」


「カヒリやギーナほどじゃない。それは分かってるけど状況が状況だったからねぃ」


「ねえ!2人がライヴァンにいるってことはさ!…キャルは助かったってことだよね!?もしかして一旦キングエルに帰らせたとか?」


思い出したようにギーナに問いかけるソフィー。

それには思わず苦い反応を見せるギーナ。


「まだみたいだねぃ。つまり、カヒリは今城の中でキャルの世話をしている。ということだねぃ」


「ごめんなさい。それは違うわ。座って話しましょう。」



リーファンの命懸けの親子喧嘩。

ハートからの逃走とロガドガ山への誘導。

ロガドガ山での地獄の日々。

女神"許しのアルタ"との遭遇。


メドルーナでの手がかり探し。

マリタの屋敷での襲撃事件。

バルディンとの戦闘の敗北によるキャルの連れ去り。

アグリアスにて、女神"信仰のアラビタ"との遭遇。



互いに何が起きたのかを共有する。

それぞれが相応に苦労をして、女神と会っていた。



「キャル…」


「恐らくバルディン…同化バルディンは魔国に向かったはずなの。話を戻すわね。私達も女神を探してる。魔国に侵入するために。」


「バルディンを追いかけるためだねぃ。なら急がなきゃならないねぃ」


「魔国エンヅォルト…か」


「私達はアラビタ様の力…十字架を持っているわ。あなた達は?」


「え、何かもらえるの?」


当然疑問を抱くソフィー。


「オイラはメドルーナでチアン様に会った。その後3人でロガドガ山でアルタ様にも会った。けどどちらも何かもらったかと聞かれると」


「つまり、俺達ではもらえないがカヒリとギーナならばもらえる。やっぱり2人が選ばれし者だという証拠だよ」


「そうなのだとしたら…複雑な気分ね。よりによって私達だなんて。まだキャルやリーファンがそうだと言われた方が」


「俺はその資格を失ったのかもしれない。何度もアルタ様にお前は違うと言われたよ」


「…女神の力は全部集めなくてはいけないわ。今私達の元にあるのは、」



◆アラビタの十字架


磨かれた銀の十字架。

単純に売り買いしたら高そうな印象が強く、それ以外は普通の十字架。


カヒリを救ってもらった際に女神アラビタに授けられたもの。



◆ソフィーの左目


言わずもがな、ソフィーが最初から生まれ持った目。

遺伝したと聞かされていたが、真実は不明である。


ソフィー本人は目を"差し出す"ということに敏感に反応する。

当然といえば当然か。



「私の目…」


「どうすればいいのかはその時まで分からないわ。私だって可愛い女の子から目をくり抜くなんてなるべくならしたくないもの。」


「な、なるべく…」


「チアン様はメドルーナ、アルタ様はロガドガ山。でも他の女神様はどこを探したらいいんだろうねぃ」


「まずはこのライヴァンよ。再燃のプロティアがどこかにいるはずなの。国王が手がかりを隠しているんじゃないかって私達は考えたから、城の中をくまなく探していたんだけど」


「それで地下牢に足を伸ばしたら俺達が捕まっていたのか。ある意味運命的だね」


「女神様は仮の姿で人前に現れるみたいだからねぃ。チアン様も宿で体を売る宿娘に成りすましていたから、プロティア様も誰かに成りすましているかもしれないねぃ」


「そうだったの…それならもう一度城の中を調べないといけないわね。側近に召使い…もしかしたら男の姿である可能性まであるわ。」


「それ、私達は手伝えないかな?」


「城の中は難しいわね。あなた達は他をお願い。今夜また教会で会いましょう。」




/////////////now loading......





「……っ…………っ…」



目が覚めそうで覚めない。

瞼が重たい。

眠っていたいわけじゃない。

目が痛い。



「……っ………っ…………」



揺れている。

起きろと揺すられているのかもしれない。

だけど、反応出来ない。



「………………っ…………っ……」



重い。

痛い。

揺れる。


それから、臭い。

生暖かくて、あまりにも臭くて、鼻で呼吸するのを止めた。



「…っ……っ………っ…」



熱い。

お腹の少し下の方。


揺れなくなった。

臭いと思わなくなった。

重たくなくなった。

まだ痛い。



私は、誰?


生きてる?


死んでる?


それとも、今、生まれた?




ゆっくり。ゆっくりと瞼が開いていく。

目が完全に開くと、すぐ閉じてしまった。

痛みに耐えられない。

何度も瞬きをしてしまう。

瞬き1回する度に痛みが目の全体に広がる。


しばらくして、ようやく目が役割を取り戻した。



しっかりと見開いて、私は"見る"ことが出来るようになった。



「……く…らい…」


声が枯れてる。

喉が乾いてるんだと気付かされた。



ここはどこなんだろう。


今、私は、地面に仰向けになって寝てる。

背中や広がった足に石の刺さる感覚が辛い。


かろうじて、右の方に火が見えた。


「…かべ……たいまつ…」



火に照らされて見える岩の感じが、洞窟を思わせた。


遠くから音が聞こえる。

私の耳が正しければ、それは悲鳴だ。


私は誰なんだろう。

この悲鳴が確かなら、私は助けに行くべき?


私は良い人?悪い人?


どっちにしても、ひんやりして痛いだけの地面から離れたくて立ち上がることにした。


…けど立てない。


「うっ」


無理やり立てた足が石を踏んだ。


立つのはやめて、四つん這いになって動くことにした。


まずは、近くに見えている松明の火の下まで。

暖かそうだから。



「やっぱり…」


暖かい。

触れたらさすがに熱いだろうけど。


火に伸ばしかけた手が汚い。

土と泥が付いてて、肌色が茶色になってる。


…………というより、



「…あ……」


私は、何も、着ていなかった。

全身が土と泥に塗れて、とても汚かった。


お腹が痛い…気がする。



…また悲鳴が聞こえた。

それに向かって動くことにした。

四つん這いで赤ちゃんみたいに。



また松明があった。

その下に樽があった。

樽は少し大きくて、私はその樽の影に隠れるように寄りかかった。



今度は悲鳴が近くで聞こえた。




「やめろおおおお!」


《ルールはルールだろう?オレは捕食者。オマエは獲物。だから、捕まったお前の指を》


「がああああああああああっ!?」


《んむんむ…喰ったって問題ない》


「ゆる…許してくれ…頼む…妻と子供がいるんだ。見逃し」


《やっぱり子供の指の方が柔らかくて美味いな》


「あひっ、があああああああああ!」


《大人の男じゃ捕まえても楽しくない。女じゃないとな。味も含めて女の方がいい》


「……いっそのこと、殺してくれ」


《死にたいなら勝手に死ね。ぁがっ》


「ぁ」



話す声が2つ。

それから、クチャクチャという音がずっと続いてる。



《さてさて、あと2人は見つけて喰いたいな》


ペタペタって足音が遠くに行った。



聞こえた声。


捕食者。獲物。という言葉。


私にも分かる。

私は、獲物だ。


捕食者に見つかったら、同じように喰われる。



自分のことが全然分からないけど、この場所でどうしなきゃいけないのかは分かった。



逃げて。

隠れて。

生き延びる。




/////////////To be continued...


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