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私、この世界を征服します。  作者: イイコワルイコ
4章「世界を壊す力」
47/83

第4話「本物の幻、幻の本物」




「もう…ダメ…」


「耐えるんだ。もう少し。もう少しだから」


「………」



真夜中に馬が2頭、全力で駆ける。

片方にはリーファンと彼の腰に抱きつき息も絶え絶えなソフィー。

もう片方には無言のチャド。


3人は十分な休息の後、ライヴァンへ向かうことを決めた。

そして出発してすぐに幸運にも馬を見つけたのだった。

恐らくゴルゴラ陥落により逃走した何者かが馬の主人で、その主人達はもういないのだろう。

乗り馬としての装備は万全だった。

そのままの格好で自由に生活していたのかもしれない。


それを3人が無視するはずはなく、馬に優しく命乞いする形で急いでもらっていた。


が、ロガドガ山を離れた直後から飢えが3人を襲った。

女神の力の効果が切れた途端、腹に穴でも空いたかのような空腹感に襲われる。

喉の乾きもまた厳しい。

"お腹と背中がくっつく"という表現が可愛く思える。

腹の中の臓器類が捻じれて今にも千切れそうで、乾燥しきった喉は口を開くと激痛が走る。


馬による移動は嬉しい誤算だったが、それでもこの有様だ。

もし、当初の予定通り徒歩でライヴァンを目指していたら。



3人は限界という概念を忘れた。

今の状態が上手く表現出来ないが、もう、ダメなものはダメなのだ。



「うぅ…こんなにお腹空いたことないよお…!」


枯れた喉でソフィーが泣き始めるが、当然涙は出ない。

可愛らしい声でもない、ただの泣き言でしかない。

そして、その気持ちを必要以上に理解し共有しているリーファンとチャドは



「………」


「………」


無言で馬を走らせた。





/////////////now loading......





夜明け。


ライヴァンの門を馬が強行突破する。

止めようとした門番は馬の勢いに負けて身を引いた。



「近くの食堂に!何でもいい!食べ物の匂いを嗅ぎつけてくれ!」


ようやく。


ようやく。


待ちに待った瞬間がもうすぐそこだと分かり、リーファンが精一杯馬に声をかける。

馬の方も必死だ。久しぶりに人を乗せたらとんでもない奴らだったのだ。

ここまで馬が協力的なのには、もちろん裏がある。

ただ物分りがいい優しい馬が人助けをしたのではない。


発見して駆け寄ったチャドは、馬を撫でながらたった一言…こう言った。


「馬の肉は美味しいらしいねぃ…」


食われてたまるかと、馬も必死だ。


必死に人間の求めるものが何かを全力で考え、



「うお!?」「あぅ…」


「っ!」


2頭が同じタイミングで嘶き、前足を上げて体を持ち上げると同時にリーファン達は地面に落とされ転がった。


チャドを乗せていた馬はチャドを睨みつけて1度だけ強く鼻息を荒く吹きかけると、2頭は逃げ去っていった。



そして3人の目の前には



「…た、た、大衆食堂…!!」


「ここは、スープが絶品だねぃ…牛の骨から何から旨みを全部使って…」


「きっとそれ…大きいお肉がごろごろ入ってるよね…」



ふらふらと立ち上がり、チャドが食堂の扉を蹴破った。


「今のオイラ達は、何だってするねぃ…」



すぐそこの調理場で今まさに牛のスープを仕上げていた女将が目を点にして3人の来客を知った。





/////////////now loading......





「はいよ。まだ開店前だから簡単なものしか…って」


「おかわり」「すまない、俺も」「あるだけ持ってきてほしいねぃ」


「嘘だろ!?何だいあんた達ぃ!!」


「こんなに美味しい食事は初めてだ」


「こんなに感動することないよね」


「この気持ち、魔物に四方を囲まれても誰1人犠牲にならずに生還した時と同じだねぃ」


「何があったんだい…」



3人は不足分を1度の食事で取り戻そうと食べ続けた。

朝になり通常の客が来る頃には朝の時間帯用に用意されていた食事の8割が消費されていて。



「ソフィー嬢、まだまだいけるねぃ。ほら、このサンドイッチを」


「あんむっ!酸っぱい果汁ソースが…美味しいっ」


「まさかライヴァンでビッグブーの肉が食べられるとは!味付けもハートのそのままだ!」



テーブルに積み上げられた皿の山。

何事かと見物客まで集まってしまう。



「あんた達、さすがにもう食べ過ぎだよ。他の客に出す食べ物が無くなっちまう。ほらこれ伝票」


テーブルの端に女将が叩きつけたそれを、服で手についた油を拭ったリーファンが見る。



「………」


「これも。女神様の。力なのかな?お腹いっぱいになることを忘れちゃったみたい」


「それは面白い冗談だねぃ…いや、冗談じゃすまないかもねぃ」


「2人とも。いや、チャド。相談がある」


「なんだぃ?」


「これを」


皿の山でちょうどソフィーにだけ見えない。

リーファンは伝票をチャドにも見せた。


そこには


牛スープ 2鍋

ステーキ 17枚

サラダ 21皿

……………

…………

……



紙を埋め尽くすメニューの数々。

そして最下部に、請求額が記載されていた。



「…7116ゴールド……!!」



「あむっ!これもおいしー!」


最後まで元気に食べ続けたのはソフィーだった。





/////////////now loading......





「これは仕方ないねぃ。素直に捕まるしかない」


「食べるのに夢中でお金のこと考えてなかった…私達どうなるの?」


「俺達が違うのは、食い逃げではないこと。食べてから無銭だと気づいてそれを告白している。事情を話せば」


「そこまで簡単じゃないと思うけど…」



兵士達により連行された3人は、城の地下牢へ放り込まれた。

3人揃って同じ部屋に押し込まれ、明かりは通路の松明のみ。

薄暗い場所で、3人はなんだかんだで幸せな顔をしながら話を続ける。


「都合よく捉えれば、こうして地下牢に入れられたことで寝場所を探す必要がなくなったのは良いことだねぃ」


「まさか死刑とかないよね?」


「いざとなれば俺が。ハートの王子だと分かれば温情くらいは期待出来るかもしれないよ」


「リーファンの親父さんが余計な手回しをしていなければねぃ」


「……だね」


暗い話をしつつも、やはり腹を満たせたのが何よりだった。

腹を撫でながら自分達の処遇を心配していると




「あとはここだけなんだよなあ。」


「そうね。暗所っていうのがまた隠し場所らしいわよね。でもどこかしら。間違って悪人が待機してる部屋に隠されてたりしたら?」


「そしたら俺が?うん。やっちゃうよ?」


「うふふ。」



どこかで聞いたような声が2つ。


それはソフィー達の牢の前を通過して



「え、今のって」


「まさかそんな。都合よく幻を見てしまったんだよ」


「こんな場所にあの2人がいるはずないねぃ」



ソフィーが反応し、リーファンとチャドは似た声を聞いたことを認めつつ否定する。

そう。こんな場所にいるはずがない。



通過した足音。

それはすぐに、引き返してきた。



「……だよな。どんな悪人がぶち込まれてるかなんて分かんないし…な?」


チラりとソフィー達を確認するのは、黒い布で身を覆うその人。



「ねぇ、やっぱり見間違えてないかも…」


「そんなわけないねぃ。もし本当だとして、そしたら向こうも悪さをして捕まったことになるねぃ」


「あぁ。それに今頃2人はキャルを連れて彼女を治す方法を探して試しているところだろうから、少なくともライヴァンに来るのはありえないよ」



「………あ?お前ら…え?ちょっ、え?」



「ほ、ほ、ほら!私達に反応してる!それにあの格好してる怪しい人なんてそうそういないよ!」


「ソフィー嬢、落ち着いて。きっと満腹で幻を見て…」



「もう、カヒリったら。なぁに?何を見つけたの?」



「チャド。すまないが、今名前まで聞こえた。さすがに幻を見た聞いたでは通らないようだ」



「なぁ、なぁて。この3人って悪人だったっけ?」


牢の中と外。

鉄に阻まれながらも、意外な形でソフィー達3人はカヒリとギーナに再会することが出来た。


「でも助けられないわよ?私達は国王に対して反逆だと思われるような行動は許されないもの。」


「あ、そっか。」



そして、あっさりと見捨てられた。




「ちょ、ちょっと!カヒリ!ギーナ!私!ソフィーだってばー!」



予想外すぎる展開の連続に、思わず叫んだソフィーの声は地下牢全体に響き渡った。





/////////////To be continued...


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