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私、この世界を征服します。  作者: イイコワルイコ
プロローグ
4/83

第4話「教会に潜む化け物」




「いてて…」



神父さんが怪しい。

私が気がついてからずっと祈ったまま。

祈ることに必死だ。



「キャル」


「このままがいい。体を動かすと痛くて」


私は床に仰向けで寝たまま。

雨に打たれた体をなるべく動かさないようにして。

ライヴァンに来た時の雨とは別物だった。

この雨を当たり前に防いでくれるのなら、ガーディアンスキンの国宝という扱いは間違ってない。



「リーファン。あれ分かる?」


「ステンドグラス…確かあれは女神だったかな。赤髪だから"再燃のプロティア"だ」


ステンドグラス。

細かく作り込まれていて、とても綺麗。

青の空に緑の大地…そして中心には白い布を纏った赤い髪の女性。

空を見上げて黒い涙を流してる。



「女神…」


「世界各地に色んな言い伝えがあるよ。もしかするとプロティアの…いや、考えすぎかな」


「え?教えてよ」


「プロティアが纏っている布がもしかしたらライヴァンの国宝なんじゃないかと思ってね」


「それってすごい」


私が落ち着けるようにリーファンが話に付き合ってくれてる。

でも自然に2人とも視線はステンドグラスから神父へ移った。


「普通あんなにお祈りで汗かくの?」


「いいや。声をかけてみよう」


リーファンが神父に近づいて、肩に手を置いたら



「や、やめろおおお!」


「神父様。落ち着いてください」


「か、神よ…私を悪魔からお守りくださいぃ…」


「悪魔…?」


「ひ、ひいいいい!」


神父はそのまま奥へ消えていった。


「キャル。何かおかしい…君はここで何か見ていないかな」


「何も。……?あ、蝶を見たかも。」


「蝶?」


「あの辺。ずーっと高い所に…」


説明の途中で頭に鋭く衝撃が走った。

思い出した内容を脳内で理解した時、神父は何も間違ってないと思った。


「キャル。キャル。しっかりするんだ」


「あ、あのね。分からないけど、い、いた。確かにここにいた…変な生き物が」


「思い出すんだ。分かる範囲で特徴を声に出してみてほしい」


「…………細くて…大きい。変な声。…それから…それから…」


私の服にまだ少しだけ残ってた。


「この粉を振りかけられて」


「………そうですか。なるほど」


「リー…ファン?」


「宿に戻るのは難しい。あなたはここで休んでいてください。神父様も悪いようにはしないでしょうから」


「待って。どこに」


彼は当たり前に外に出た。この雨なのに。





/////////////now loading......





1人の時間が長くて考え事がどんどん膨らんでいく。

神父が戻ってこないとか、リーファンが戻ってこないとか、そういうことも気にせずに私はあの城から逃げたあの時から今までのそう長くない時間のことを振り返っていた。


私がもし、ストーン一族ではなく平民なら。


宿屋で過ごした短い平和な時間を同じように得られたのだろうか…キングエルでも。


今すぐ宿屋の娘に生まれ変わりたい。


もし叶うのなら、私は誰よりも働いて



「………ダメだ。なんか気分悪い」


服に付いた粉が気になってしまう。

そうなると、変な生き物のことも思い出す。


顔も見てないのに、無性に気持ち悪くて。



「女神プロティア…私は言い伝えなんて聞いたことない」


私は勉強も部屋の中だった。

他の子供たちは教えてもらうために毎日"ふくろう教室"に通っていたのに。


女神は有名なのだろうか。

でも私の父親ほどじゃないと思う。


そして、それは突然起こった。


「眩し…」


ペンダントに付けていた発光石が今までにない強さの光を発した。

黄緑色の光はぼんやりと私のことを包んで


「もしかして」


肌が元の色を取り戻していく。

それと同じように痛みも消えていった。


「回復した…これって」


魔法?

魔法のことは少しだけ知ってる。

使える人間は本当に少なくて、魔法を使える人間は"神様の子"として大事に扱われて…


「私が魔法を?」


なんて期待はほんの一瞬だけ。

発光石の力だってことはすぐに分かった。


恐る恐る立ち上がると


「どこも痛くない」


とはいえ、外には出られないから神父を探すことにした。


教会って意外と部屋が多い。


「どこなんだろう。声もしないしどこかの部屋で寝てるのかな」


階段があったから下りた。地下まであるなんて。


自分の足音が響くのがなぜか嫌で静かに移動した。


そして地下についてすぐに物音が聞こえた。


激しく何かをすする音…?


食事してる…?


「麺類をすするのは悪いマナーだって教わった。でも確かに屋台で食事してる人のほとんどが勢いよくすすってた…ひっ」


石壁に見えた影。

どう見てもそれは、襲われて仰け反ってる人と首を掴んで襲ってる人だ。


「ど、どうしよ…」


息を止めて、静かに、静かに、その影の主を覗き見ることにした。

ドアが全開の部屋から音がする。


ドアの端をそっと掴んで覗いた。



「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、」


神父だ。

等間隔で声を発してビクビクと痙攣してる。


それから、


それから、


それから、



「………」


苦しくても呼吸出来なかった。


そこにいたのは、木の枝のように細い体で背丈が異常で透明な羽根の



化け物


《起きたね、お話をしたい。したいよ。》


ふと、声をかけられた。

私は見つかった?顔を向けられた?そんなはずない。

というより、"これ"の顔ってどれ?


解放されて床に倒れた神父は首に黒い痣があって、下腹部が真っ赤だった。

衣服を染めるほど出血してるってことだ。


でもそんなのどうでもいい。


逃げないと!!



ドアを力任せに閉めて、走った。


階段を駆け上がりながら外に出ると決心した。


あんな化け物と同じ空間にいるくらいなら雨に打たれて痛い思いをする方がいい。



「はぁ…はぁっ…」


全力疾走の勢いで外に通じる大きな扉にぶつかりながら強引に開いて


《逃げるのはよくない。よくないよ。》


「ううっ!?」


片足は外に出ていた。


でも、首を掴まれた私は教会の中へ引き戻された。


そのまま放られて床を転がった。

長椅子に激突して止まった。角に膝をぶつけて


「あ"ぁ"っっ!!」


声が出た。



《どこにある。どこにあるんだよ》


「うぅ…っく。ぁぁ…ぁあ!!」


言葉には出来なかった。

痛みに悶えて、涙も流れて、目の前の化け物に怯えて。

私は言葉を話せないほどに忙しかった。



《見つかれば全てが変わる。変わるんだよ》



見つかって全てが終わる。それが今の私だと思った。




/////////////To be continued...



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