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私、この世界を征服します。  作者: イイコワルイコ
3章「女神の伝説」
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第5話「再会、再来」




「…1日目。森の中で野宿することになった。チャドと交代で休んで朝になったらまたハートを目指す。待っててね、すぐにいくから」





「2日目。メドルーナからハートへの道のりはとても遠いみたい。まっすぐ歩き続けてもあっという間に日が暮れるだけでたどり着けなかった。今日も野宿…」





「3日目。どうしてなんだろう。絶対もう着いていい頃なのに。チャドもあまり喋らなくなってきた。…今日も野宿…」




「4日目。今日は川で魚を突いた。魔法で。川の水が爆発して噴水みたいになって、近くにいた動物が逃げてっちゃった。ちなみに、今日も野宿」




「5日目。腐りやすい食べ物を先に食べ切ることにした。スープは体が温まるから好き。食事中にチャドの顔に虫が飛んできたのが面白かった。……」





「6日目。私はこれからチャドとずっとこの森で暮らすのかな。道に迷ったとしてもこんなに長い間森にいるなんて思わなかった。食料はまだ大丈夫…でも足が痛いし限界。…早くハートに着きたい」





焚き火の明かりを頼りに、ソフィーは今夜も日記を書く。

突然日記を始めたのは彼女なりに何かを感じていたのかもしれない。

この森には何かある…と。


足をだらしなく伸ばして眠るチャドを見て、遠くの森の暗闇に目を移して。


自分もとっくに限界だが、チャドだってそれは同じ…いや、それ以上のはずだ。


あの大きな体で2日近くまともに食べていないのをソフィーは知っている。

食料を温存してソフィーが飢えないようにと気遣っているのだ。

その上、森を移動している間は魔物に襲われないか常に気を張っている。

実際に戦闘になったのは2回…どちらもチャドには雑魚のようだったが…




「7日目。私達は本気。絶対ハートに行って、それから…」



日記の途中、寝ているチャドとは違う位置から草木を掻き分けて移動する音がした。



焚き火の明かりに目が慣れてしまい、ここからでは相手の位置が特定できない。


ソフィーは近くにあった枝を手に取り、枝の先に火をつけた。


相手を探る…だけではない。

これを"杖"の代わりにして魔法を放つことが出来る。

日記には詳しく書かなかったが、移動中や休憩の間にソフィーはチャドに教わりながら戦闘訓練をしていた。


その結果、杖があるのとないのとでは集中力に大きな差が生まれると知った。

集中力が高いほど、魔法を放つまでの時間が短くなり威力や精度も向上する。


教科書を読んだわけではない…が。たまたま大事な基礎を学ぶことが出来たのか、ソフィーの元々の才能もあってか魔法の腕が急成長していった。



もし、チャドが動けない状況だとしても。


今のソフィーにならば



「誰!」


ソフィーが相手の位置を特定し先が燃えている枝を向けた。


それと同時に、相手もまたこちらに武器を向けていた。



「……鞭?」


そこには、鞭を構えてこちらを睨みつける女性がいた。


/////////////now loading......



「8日目。やっと。やっとハートに来れた。今はこれ以上のことはないと思う」




ついに森を脱してハートに到着したソフィーとチャド。

2人はここまで導いてくれた守り手の女性、ナムカに感謝を伝える。


ハートを案内され、国王にも会わせてもらった…が、2人は限界を超えて活動していたため挨拶もそこそこに国王の前で倒れてしまった。




「この数日、この国には不思議な訪問者が増えたな。2人を休ませてやりなさい」


国王はソフィー達を歓迎するように指示した。


武器や防具の類は、2人を助けたナムカが預かり手入れをする。

2人の世話は手が空いているクロアの母親に任されることになった。






/////////////now loading......





「よいしょ…よいしょ…」


乱れた呼吸音。

乱れた足音。


小さな体で自分より大きな体を支えながら歩き続ける。



「…キャル。ここで休んで」


クロアが声をかけるとキャルは無言で従う。

近くの木に背を預けるように座らせるとクロアは背中の弓を構えた。



「…ふっ」


素早く構えてから数秒。

矢は森の中を何にもぶつかることなく飛んで



《が》


命中した。


クロアが確認のために近づくと



「…半魚人…」


半魚人。

見分けるのは容易な種族。

真っ先に目が行くのが、頭に髪がなく代わりに薄緑色の鱗があるということ。

日光などでキラキラと反射することがこの魔物の残念すぎる欠点である。

特にクロアのように観察力に優れた者からすれば、急所の頭はここだとアピールしているのと変わらないからだ。


基本的に人間の体と形は似ている。

極端な猫背であること、手足の指の間に折りたたまれた水掻きがあること、胸の部分に呼吸するためのエラがあること、口には小さく鋭い歯が並んでいること…と、"人間ではない"のは間違いないのだが、正直魔物として決め手にかける種族でもある。




頭の鱗を突き破って貫通している矢を見て、クロアは魔物の死を確認する。


この個体はどこかで人を襲ったのか、体に合わない小さい服を無理やり着ていた。


特に戦利品になるような物もなく、クロアは考えた。



「半魚人だから、半分は魚…なのかな…だとしたら…食べれる…?」



これから先、どこまで行くのか分からない。

元気のないキャルに少しでも食べてもらわなければ…と考え、半魚人の肉が食べられるかどうかを思案する。



「とりあえず……僕が少し食べてみよう」


毒味で確認するということで半魚人の死体の処遇を決めたクロアは、首を掴んで引きずりながら戻る…と



「…キャル…!」


クロアは再び弓を構えた。


休んでいるキャルの前に立つ人影。

半魚人に仲間がいたとは…。

後悔よりも先に矢を



「今、キャルと…そう言ったかな」


その声にクロアは聞き覚えがあった。

まさかと思い、弓をその場に捨てて駆け寄ると



「…クロア。まさかこんな場所で再会するとはね」


深緑色の髪はそういない。

…違う。1人の人物しか思い当たらない。


クロアを見て優しく微笑んだ彼。


彼から得られる安らぎは、まさに王に相応しい。




「リ、…リーファン…!本当にリーファンなの…!!」


クロアは目を輝かせてリーファンに抱きついた。


「ふふ。相変わらず甘えん坊だ。…話を聞かせてほしい。なぜこんな場所に?」




結局、半魚人の肉は食用には適さないらしく捨て置いた。

代わりに、リーファンが持っていた干し肉などを食べることにした。


焚き火をして食事を…と思ったがキャルが火に近づくのを嫌ったため、3人は火から離れて食事と情報の共有を行った。



「そうか…キャルはハートを目指して森で…。クロア。ハートはね、狩人や守り手だけじゃない…多くの人に守られているんだ。国に入ることを認められていない人間は決して森を抜けられない。ハートの外からたまに来る商人だって、他国で"許し"をもらったから森で迷わずに済むんだ」


「…じゃあ、僕が見つけなかったら…」


「助からなかったと思うよ。…君はキャルの命の恩人だ。それでいて、立派な狩人にもなった。ビナ相手に決闘で勝利したなんて…彼女のことは残念だけど、成長した君のことも同じだけ祝福しないといけないね」


「………」


「クロア」


ここで、リーファンの声色が変わった。

しかしそれはクロアには意外でもなんでもないことだった。



「キャルの匂いを嗅いでごらん」


「…うん」


クロアはキャルの様子を伺う。

大丈夫かと声をかけて背中を擦り、スンとキャルの体臭を嗅いだ。

そして違和感に気づいてリーファンの隣へ戻る。



「痛いほど甘い」


「うん。甘い匂いがした…」


「ずっと。ずっと調べていたんだ。ライヴァンの教会で同じ匂いがした。あの時から、ずっと…」


リーファンが懐から取り出した手帳。

そこにはライヴァンにキャルを置き去りにしてからの彼の旅路が書かれていた。


しかしそれは、



「全部、甘い匂いと不思議な魔物?のこと…」


「そう。他国を回ってずっと調べていたんだ。何度か元気そうなキャルを見かけたりもしたけど」


そう言ってクロアに渡した手帳のページを最後の方まで捲る。


そこには、



「…あ」


クロアが声を失うほど、その魔物の姿が細かく描かれていた。


細すぎるその体は木の枝のよう。

薄く鋭い羽根は光を浴びるとステンドグラスのように煌びやかに魅せる。

そして、その魔物の散らす鱗粉はひどく甘い匂いがする…。



「こ、これ…」


「クロアも見たんだね。ハートに現れたのはこの魔物…」


「うん…」


「地名すら持たない人里離れた場所で暮らす老夫婦が教えてくれたんだ。妖精と呼ばれる魔物。またの名を…」




その時だった。


突然焚き火が消え、リーファンとクロアは火があったはずの方へ振り返る。

そこには誰もおらず、元の位置に視線を戻すと…




「……"ゼグエグ"…!」



2人の前に立つのは、首を傾げて両腕をだらしなく揺らして、負傷した足を異常な方向に曲げたキャロラインだった。




/////////////To be continued...


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