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私、この世界を征服します。  作者: イイコワルイコ
3章「女神の伝説」
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【裏】第4話「依頼」




この日、ハートに2人の"異物"が入国した。


1人はロガドガ山から


1人は空から



そのどちらもが同様の黒い布で身を包み、顔を見せない。


しかし、どちらもが前日にハートに起きたことを察していた。




「………」


「あは…は…。でもこれは正当なやつだよ?」


「………」


「ギ、ギーナ…さん。…ちゃん?…様!様っ!!女王様ぁっ!」



似た格好をした2人はハート内で合流してすぐに空き家を借りて人の目を避けた。


様子が気になる子供たちが足音を消して近づくがその行為は無駄だった。中からたくさんの言い訳と断末魔の叫びが聞こえた。




「嘘は無い?」


「はぃ…ないです!」


声が裏返るカヒリ。



「それじゃあ確認するわね。ライヴァンから別行動をしてすぐ、ミフィーリアで異変。ミフィーリアを救うべく魔物を殺しながらゴルゴラに向かったら魔王幹部気取りの魔物が群れを率いていた。そのままゴルゴラの土地に巣食う魔物を全て殺して死体をまとめて燃やした。そのままハートに向かうついでにロガドガ山の道中で遭遇した魔物も全て殺した。」


「…はい。」


「その数が?」


「1088体…」


「聞こえないわ。」


「1088体です!」


すかさず快音。


それはカヒリの左頬がギーナの右手のひらによって打ち抜かれたもの。

カヒリはゆっくり座って一言。


「…歯が抜けそう…」


「やり過ぎよ。あのバルディンでさえ4桁には届かないのに。」


「でもあいつはあいつで999体だしそんなに変わらぶっ!!」


再び快音。


「次は逆の頬が"青く"なるわよ?」


「…え、青くなってんの…!?」


"赤く腫れる"を超えた場合、青くなるのだろうか。

カヒリは黒い布を外して打たれた頬に触れてみる。



「痛いのは痛いけど…」


「私が本気で殴ったとしてもあなたはそれ以上痛みを感じないでしょう?」


「…でも心は痛いよ?」


「…はぁ…でもカヒリがそうしなかったらミフィーリアは今頃…それにそのままライヴァンにも魔物の侵攻を許してしまうと…」


「………」


「そんな目で見ないの。…いい?今後は別行動しないでずっと3m以内にいて。」


「3っ…!?」


「嫌なの?」


「いいえ!」


カヒリは縋るようにギーナの腰に膝立ちで抱きついた。


「それから、今後は私がいいって言うまで攻撃しちゃダメ。反撃もダメ。」


「い…」


「分かった?」


「…はい。」


「よしよし…」


カヒリをキツく叱った後、ギーナは魔法で彼の頬を癒した。

その間もカヒリは彼女に抱きついたまま。


「ここから南西。言い争いが聞こえるわ。」


「え、甘やかしタイム終了?嘘でしょ?」


「クロア?誰かしら。」


「待ってもうちょいこのまま。」


「重要な情報かもしれないわ。」


「俺今この時間が最重要なんですけど。」


カヒリの願いは叶わず2人は服装を整え外へ。



声の主を探して歩いていると





「どうして信じてもらえないのですか!」


女性の悲痛な叫び。


喉を痛めるのが確実な声の捻り出し方で、荒々しく続ける。


「あの場にあなたはいなかった!もしその目で見ていたなら!」


「忘れたか。数日前にハートを出たキングエルの兵を」


「それが何か!?クロアとはなんの関係もない!」


「私も今朝思い出したばかりだ。あの兵は言っていた。"彼女がここまで来ることはない"と。自国に戻るとその兵から報告を受けたのも、メドルーナからキングエルの兵が連絡を取りにやってきたのと同じ日だった」


「一体何の話を!」


「キャルのことだ」


「…?」


「キャル…正しくはキャロライン・ストーン。彼女はキングエルの王族だ。それも、つい先日ライヴァンから死を伝えられたはずのな」


「……そんな…」


「我々が接していたのは本物の彼女なのか、それとも無念の死を遂げた彼女の幻なのかは分からない。どちらにせよ、危険な選択をしたのはクロア本人だ」



「もう我慢ならん!」


「ちょっと!」


「その話、俺達にも聞かせてもらうぞ!」


カヒリは声の主である男性と女性に2つの"証"を見せながら言った。


「謎の旅人か。あのロガドガ山を1人で…そしてそちらは空から舞い降りてきたと」


「俺達のことはどうでもいい。そうだろ?」


カヒリは女性に話を振った。

盗み聞きした内容からして、彼女は母親だ。

"クロア"という我が子の無事を話題にすれば彼女は必死になるはず。

この場ではカヒリ達にとっての隠れ蓑のようなものだ。



「先に確認したいのはあなたのことです。ロガドガ山を1人で抜けてきたなんて大嘘を」


「はあ?」


本気ではない。そのつもりは一切ない。


カヒリは"加減"して圧を放つ。

プレッシャーとも呼ばれるそれは彼が放つと決めたその時、彼の足下の土や葉、小石を吹き飛ばした。


吹き飛ぶ小石が近くの大木にめり込む。



「ダメよ。そんな喧嘩腰。」


「これ攻撃じゃないぞ?飛んじゃっただけだから。むしろあの石が悪い。」



「キングエルとライヴァン、2つの国で証を…頷ける。彼に本気で暴れられたら並の人間では無駄に死ぬだけだ。疑う必要はないな」


「だろ?人は外見で判断しちゃいけないって言うけどな、外見が100%大事だから。怪しい見た目したやつは確定でヤバいやつだから。」


「カヒリ。」


「もう抑えてるって。威圧してないから。」


「違う。その人…国王よ…。」


「………oh…」


国王だとは思わず、カヒリが分かりやすく汗をかいた。


「面白い旅人だ。それだけの力がありながら、旅人なのだろう?国を持つつもりもないのか」


「ある意味では既に王だから…あの、まじでさっきの攻撃じゃないから。悪くは思わないでくれ。」


「それなら!」


ここで母親が割り込む。


「そこまで強いのなら!私の息子を!クロアを連れ戻してください!」




/////////////now loading......




「滞在時間短っ!休憩も出来てない。ただめっちゃ怒られただけ。」


「怒られることしたのは誰かしら?」


「はい、ごめんなさい。」


カヒリとギーナはすぐにハートを発つことになった。


クロアの母親の頼みが、国王からの依頼に変わり、結果としてカヒリ達の目的を達成するのにも繋がるからだ。




キャロラインを連れて国を出たクロアを連れ戻す。




それは2人がハートに着く前日。


ハートでは未知の出来事が起きていた。



外から来たキャルという若者。

その若者が1人の気弱な男の子への待遇を改めさせるために決闘するまでに至った。


2人の未熟な弓使いと国を代表する弓使いの決闘は、キャルの囮化とクロアの神業により勝敗を決した…が、そこに異質な魔物が乱入した。


その魔物を排除することは、誰にも出来なかった。


その魔物は負傷したキャルと、同化した。


そして虚ろな目をして立ち上がったキャルはふらふらと歩き出し誰に止められるでもなく国を出ようとした。…しかし途中で力尽きる。


そんな彼女に加担したのはクロアだった。

まだまだ大人には程遠い彼は、キャルを支えて自ら国を出ていってしまった。


誰にも倒せなかった魔物と同化した若者に近づけるはずもなく、その場にいた誰もが声でクロアを呼び止めようとする。

それは彼の母親もそうだった。


しかし、クロアは…



「僕はキャルを守りたい」



それだけ言い残して去ってしまった。




「つい昨日のことなんだよな。しかも聞いた話の感じなら移動は早くない。ガチで探せば絶対すぐ見つかる。」


「だといいけど…この方向は境界線…魔国に向かってるのは明らかだわ。クロアって子がどれだけ強いか分からないけど、境界線を超えてしまったら…」


「だな。だからフルパワーで気配を探ってくれ。」


カヒリが言う"気配を探る"はギーナの特殊な力である。

人間の聴力の範囲を超えて音を聞くことが出来るそれは、離れた場所の会話を盗み聞きするだけでなく見知った人間の気配も同様に感じることが出来る。



「それに、キャルと同化したとかいう魔物。聞いた情報と似た姿の魔物とアグリアスで遭遇してるの。」


「は?え、は?だって話じゃ殺せなかったって…逃げてきた?」


「いいえ。あの魔物、飛べるみたいだし逃げるのは無理よ。普通に炎魔法で」


ギーナは指をクネクネと縦に動かし魔物の結末を表現した。


「普通に燃やせたのか。」


「生命力は高いと思うけど、なぜハートの人間が誰も…あ、」


「だよな。」


ここで2人は気づく。



「「火に弱い…!!」」


声が重なったところで、ギーナが何かの気配を感じとった。




「…見つけた…!キャルよ!境界線に近い!」


「じゃ、全速力だな。手!」


カヒリがギーナの手を掴むと、足音を置き去りにして2人は消えた。




/////////////To be continued...?


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