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私、この世界を征服します。  作者: イイコワルイコ
3章「女神の伝説」
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第1話「ハートという国」




時は進む。決して戻ることはない…はずだ。


それぞれが違う時間の感じ方で過ごしていく。


1年をあっという間と言う者もいれば、1日…もしくはそれよりも短い時間を永遠にしようとする者もいる。



「独りの幸せ」


今の私はどうなんだろう。

何かに動かされ続ける肉体。

継続的に与えられる苦痛に蝕まれる精神。


私にとって、今、時間は、



目を閉じていた方がずっと楽に思えるほど揺れ続ける視界。

その端のもっと端、絶対に気付かれまいと動く何かが私についてきてる。


私の右斜め後ろ、または左斜め後ろ。

左右を行き来しながら少しずつ私との距離を詰めてる。


……だからなんだ。


私にとって、今、時間は、



「ひぎゃぁぁぁああ!!蛾!蛾ぁ!!」



私は振り返った。

そのままバランスを崩して尻もちをついた。

ちょうど正面、赤く染まった人間が…



「ふっ!……猪の頭くらいはあったかなぁ…、これ体液?…汚ったな…回収はやめとこ……あ」


多分、私に気付かれたことに気付いた。


無言でこっちに歩いてくる。

そんなに大きくない。



「…その…大丈夫?……血だらけだよ……」


声の感じだと、女…どうだろう、男の子かもしれない。

顔を識別出来なくて、この人のことを何も知れそうにない。


「あ………倒れちゃった…」


「独りの…」



どういうわけかすごく疲れた。

目に映る全てが真っ白で、寂しくなった。




/////////////now loading......




「この者を清めよ…この者に力を授けよ…この者に勇気を…」



ゆっくり目を開けた。

瞼が痛い。


薄暗くて、でも天井は緑色に思える。

私の傍でなんか葉っぱだらけの人間がぶつぶつと


「この者を清めよ…」


「くしゅんっ」


「おぉ…神よ、感謝します。この者の魂を返していただいたことを…」


「なに…」


「まだ寝ていなさい。あなたは死んでいてもおかしくなかった。今薬と何か食べ物を持って来るから」


その人が出ていった。


ゆっくりとここがどこなのか考えてみる。


キングエルの忌々しい城ではないし、どこかの宿でもなさそう。

ふと気付いたのは、今いるのが植物で作られた建物だっていうこと。

部屋の真ん中に1本の太い木の柱があって、そこから数本の木材が木の枝みたいに四方八方に伸びてて。

その上から優しい緑の葉が被せられて天井と壁の役目を果たしてる。

私が寝かされているのは土じゃなくて、大きな1枚の葉だった。


「…起きたんだ…よかったね…その…死ななくて…これ食べる?…お腹空いてたら…だけど…」


「……ありがとう」


戻ってきたのはぶつぶつ何か言ってたのとは違う人だ。

今度は緑色の服を着て、花の冠を頭に乗せて、背中に弓を携えてて。

顎までの長さの白いサラサラな髪。

聞き覚えのある声。


渡された食べ物は葉に包まれてた。

葉を家に使ったり、服にしたり、お皿にもするのかな。


緑色のお皿には、しっかりと焼かれたお肉。

かぶりついて、歯を立てて、噛みちぎる。

少し食べにくいのは、


「……それ、ビッグブーの肉……栄養満点だけど…しっかり噛んでね…」


焼き方以前に肉が硬いんだと思った。

ビッグブーってなんだろう。


「………美味しい…?」


ずっと食事を観察されてる。

味は正直分からない。

味覚がまだ寝ぼけてるのかな。

それでも、普通の大人が食べるような大きさの2倍はある肉を獣のように貪る私を見て


「……よかったね……」


その人は勝手に安心した。



「クロア。向こうに行ってなさい」


葉っぱだらけの人が戻ってきた。

よく見れば、葉を服にびっしり纏ってるのに頭は守られてない。

毛は一切生えてない。頭の肌がこんなにスッキリ見えてるのは初めて。


「……でも、お母さん…」


「はぁ…なら邪魔にならないように大人しくなさい」


「……はい……」


「息子がごめんなさいね。ビッグブーの肉は口に合いますか?」


失礼のないように頷いた。


「食べ終えたらこの丸薬を水で流し込んでください。少し苦いけど体の治りが良くなるから」


2人の親子に見守られながら食事を済ませて、言われた通りに薬も飲んだ。


薬はとても小さかった。人差し指の上に何粒も乗せられる。

でも味はとても大きかった。主張が。


「うん…ぐっ…!?」


「体に良いから」


その苦味の強さが体に染み渡るのが嫌だと思った。

でも、今ので意識がハッキリした。


「…食事とか…色々ありがとう。…ところで、ここはどこ?」


「ここは森林国ハート。あなたのような人だと名前も聞いたことないかもしれない」


「…ハート。…ハート…!!リーファンの」


「あら、リーファン王子を知ってるなんて」


「…っ」


起き上がりたかったけど、見えない何かに押さえつけられてるみたいに動けなかった。


「まだ動いてはいけません。今日1日はこのまま休んで、それからお話を聞かせてください」


「僕……そばにいたい…」


「邪魔しないように。お話も少しだけ。分かりましたか?」


「はい……」


母親がまた外に出ていった。


葉に囲まれた家。

その出入口から見える範囲で、外は……森だった。


「……元気になったら……僕が…案内するね……」


「うん…クロア…?」


「そうだよ…僕はクロア……」


「私はキャル。…水、おかわり貰ってもいい?」


「うん……待ってて……」



クロア。

彼はまだ子供。

知らない人が怖いとかじゃないけど、話し方は恥ずかしがり屋さんみたいに途切れ途切れ。

でも、どこかしっかりしてて、優しい。


そんなクロアに時々話し相手になってもらいながら、この日は寝たり起きたりを何度も繰り返した。




/////////////now loading......




翌日。


クロアに支えられながら起き上がって、ハートという国を少しだけ案内してもらった。


森林国ハート。


この国には森がある。とても大きな森。

"ワルト"っていう特別な木は見上げても足りないくらい背の高い大木。

樹齢は何千、何万と言われてて神様の木らしく、ハートの国民はこの木を大切にしてる。


国の中で地位の高い人ほどその木を使った家に住めるみたい。

国王は城じゃなくて、木の上の方に家を建ててそこに住んでる。


私が休ませてもらった木の柱に葉をいくつも被せたようなクロアの家は一般的なもので、同じようなのがいくつもあった。


「……キャルは何が出来るの?」


「どういうこと?」


「……この国は……皆が…役割を持ってて……僕は狩人…お母さんは…」


「薬を作ってる。……」


確かに。

よく見てみれば、遊んでる子供なんていない。

子供でさえ、大人達に負けないくらい忙しくしてる。


魚や肉の下準備とか、長い葉を編んで何かを作ったりとか、大人の手伝いというよりは大人と同等の仕事を任されてる。


「私は…」


自分に出来ること?

分からない。

城で暮らしていたから、身の回りのことはほぼ全て人任せだった。

せいぜい時々手伝いを申し出るくらい。

ちょっと手伝った程度で、随分と大きな態度をとってた。


「クロア・ルカリス」


「…はい…!!…キャル……王様……」



リーファンと同じ深緑色の髪。

頭には赤青黄紫…様々な色の花で出来てる冠。


白い布。"服"の一歩手前なそれを体に纏ってる。

堂々としていて、なんか神様みたいに見えた。


ゴルゴラで戦ってた兵士や戦士よりも立派な肉体で、腕や足はそこらの木より太い。

見た目は今までで1番大きくて強そう。



「その人を紹介しなさい」


「……キャル……外れの森で……傷だらけで……だから…連れてきました…お母さんが…薬をあげたから…」


「うむ。クロア、お前は人を助けた。偉いぞ」


王様は大きな手でクロアの頭を撫でた。


「クロアの母親から聞いたが、キャル…息子を知っているのか?」


「はい。キングエルのハイドシークの森で魔物から守ってくれて、ライヴァンまで一緒に。…でも気付いたらいなくなってて…」


「…息子は剣を…長い剣を持っていなかったか」


「…確かに。長剣…"だけ"は持ってました」


王様は首を傾げた。

でも、息子さんは剣以外の金目の物を全部盗賊に盗られたんですなんてとても言えなかった。


「そうか。ならいい。息子はこの国の宝である神剣クリスティーンを持って出ていってしまった。あれを失えば…」


「あれ国宝だったんだ…」


そもそも、リーファンはまだ行方不明だったなんて。

しかも雰囲気的に私と似てる。

きっと、良しとされない形で故郷を離れてる。



「まだ十分に回復していないようだから、この国で完治するまで過ごすといい。宿は…」


「王様…僕の家……で…」


「ならばクロア、お前に任せよう。失礼のないように」


「…はい…!」



完治するまで。

私は今、どうしようもないからそう言われても焦らなかった。


一緒に旅をしていた仲間はいないし、体はボロボロだし、何も持っていない。


元気になってこの国を追い出されたら次はどうすればいい?



「キャル……家で休む…?」


「………」


ふと、クロアの背中の弓が目に止まった。



「……教えて…弓の使い方」




/////////////now loading......





捜索を打ち切り、公式に隣国の王女の死を発表した。

それは、ライヴァンなりに保身に走った結果である。


自国で確かに預かったはずの王女が行方不明になった。

しかもすぐにでも死にそうな状態で。


それをキングエルの国王が、娘の父親が知ればなんと思われるか。

相手はあの魔王と世界を分け合ったかつての勇者…多くの人間に嫌われているとはいえ、彼の怒りを買ってしまえば何が起きるか分からない。


なので、ブラウンと話し合い、この選択をした。


「私が国王に伝えます」


ブラウンは城を出る前、そう言い残した。

国王はそれにひどく安心した。


そもそも先日訪れた"2人組"の話が確かなら、恐らくブラウンはこの件の真実も偽りも国王に伝えないと考えたからだ。

何をどう伝えても、大事な娘が生死をさまよう事態にあると知れば…キングエルの国王の容態はすぐに悪化してしまうだろう。

そうなれば、下手をすれば娘より先に国王が死んでしまうかもしれない。


こちらの不手際をキングエルが知ってしまえば…その時は。


"魔王が味方している可能性のある国と戦争になる"ことの恐怖を目先に感じながら、国王は側近に命じた。



「分かってるよ。どんな用で呼んだのか。」


「すぐに探しに行くわ…キャロラインがまだ生きてるといいけど。」



側近に呼び出された2人。

その身を隠す黒い布には、キングエルの使いである証とライヴァンの使いである証が縫い付けられていた。


「ライヴァンにもこういうのあったんだな。雲に雨と雷…まあらしいっちゃらしいデザインだ。」


「報告は見つけた時か、見つからないまま数日経った時にするわ。」



「何でもいい。お前達に任せる。2人に旅支度に必要な金を渡しなさい」



「お!マジ!?自力で稼げるけど、王様にもらうってのはやっぱいいよなー!まさにって感じ。」


「もう…。有難く頂戴するわ。さ、行きましょう。」




死が発表されてからこの2人が唯一、キャロラインを探す存在となった。




/////////////To be continued...


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