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私、この世界を征服します。  作者: イイコワルイコ
2章「独りの幸せ」
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【裏】第2話「2人の目的」




「雷雨国ライヴァン到着っと。門の外さ、もうちょい気使ってほしいよな…びしょ濡れなんだけど。」


「仕方ないわよ。この世界では雨具は充実してないもの。」


「キングエルは特に言う事なかったよなー。一応森も調べたけどまぁ…」


「でも私は変だと思ったわ。狼人間が果物を寄越せって言ったのよ?お前の肉を食わせろとかなら分かるけど。」


「それマジで言ってたら俺あの森燃やし尽くすけどな。」


濡れた服を気にかけながら入国した黒い布を纏った2人。



「ギャンブルはメドルーナだもんな。キングエルでやったみたいに贅沢するのは難しいか。」


「だとしたら、素顔晒けだしてイチャイチャなんて出来ないわね…残念。」


「ちょっと国王脅してお金稼いでくる。」


2人にしか伝わらない意味不明な冗談を交わしながら、適当に屋台で軽食を買って観光を始めた。



「すげぇよな…オーロラじゃんほとんど。」


「綺麗よね、さすが国宝。」


「売ったら一生贅沢しても使い切れないような金額になりそう。だって未知過ぎるだろ、たしかあれって」


「余計なこと言わないの。」


「はーい。」


空を見上げ、手元の紙に書き込んでいく。


「早速書いてるのね、新婚旅行記。」


「…絵心欲しい。」


「それは魔法でも難しいわね…あ、教会に寄りましょう?」



2人は教会に寄ることにした。

入る直前、


「濡れたままはよくないから、えいっ」


柔らかな風が2人を包む。

あっという間に


「中までカラッカラ。」



教会の中には少ないながらも人がいた。


椅子に腰掛け、静かにしている。



それでも入って最初に目につくのはやはり。



「ステンドグラス。」


「大きくて綺麗ね。」


「再燃のプロティアだな。対魔法防御効果、破壊後も再燃の力により復活する…いぎゃいっ!」


この場に不適切な発言をする男に、女は手を伸ばす。

手を伸ばして、布で隠れた顔…その余計なことばかりを喋る口の中の舌を摘んだ。


「ダメよ。本当に。」


「こへんひゃはい(ごめんなさい)。ほうひはへん(もうしません)。」


人目につかない最後列の端に2人で座ると、女は少しだけ顔を見せて


「気をつけて。」


ようやく舌を解放され、男も少しだけ顔を見せて


「ごめん。…でも、俺達以外は何言ってんのか理解も出来ない内容じゃん?ダメかなぁ…」


「そうやってついつい口に出してたらその内大変なことになるわ。」


「…じゃあ黙ってるから、代わりにステンドグラス描いて。」


「分かったわ。じゃあその間、余計なことしないように私に抱きついてて。」


「………。」


「そこはくすぐったい…でもいいわ。そうしたいならそれでも。」


「教会で淫らな扱い方すんのやめてくれない?俺だってちゃんとそういうことは」


「出来たわ。」


「あ、はい。」


色は付いていないものの、女はステンドグラスを正確に書き写した。


「プロティアは泣かないんだよな。人々の喜びは優しく見守って、人々の悲しみは…あ、これは止めないやつ?」


「それは言い伝えとしてあるからセーフね。」


「ふぅ…プロティア…でもこれは泣くんじゃない?せっかくのステンドグラスがさ、現在進行形で修復中なんだし。」


「………、なんでも、割れたステンドグラスと同じ素材が用意出来ないみたいね。特別な素材なのかしら。」


「それどこで聞いたの?え?ギーナさん?ずっと隣にいたじゃん。」


「今よ。"耳をすませば"少し離れてる人の」


「いよいよ魔女以上の魔女だな。」


「お褒めの言葉をありがとう。」


ついていけない領域だと知り話を切り上げると、



「次はどうする?宿確保しとくか。でもこないだ泊まったとこは嫌だな。」


「ブラウン達に囲まれたものね。また呼ばれる可能性もあるし別の宿にしましょう。でもその前に、城ね。」


「はーい。」



教会を離れ、2人はライヴァンの国王に面会する目的で城に向かった。


顔も見せない2人組がそう簡単に国王に会えるはずが…と思いきや、とてもスムーズに王の間に案内される。



「貰っといてよかったな。」


「一瞬嫌な顔されるけど、どこに行っても通じるわね。」


以前キングエルで国王に強引な面会をした際、話のついでに"キングエルの使いの者"である証を貰っていた。


星の形にリンゴが描かれた金製のそれは、手でギリギリ握ることが出来るほどの大きさ。



厳つい装備をした兵士に守られながら、国王が登場し玉座に座る。

2人と国王の間に5人の兵士が壁のように立つ。

そして国王から口を開いた。


「何用だ。キングエルからの使いとは」


「どもっす…いだっ!?」


「王様、突然の無礼をお許しください。」


「構わ…ん?」


「私達はキングエルの公式な使いではありません。恐らくは、この城を出る頃には私達は"ライヴァンの使い"だとも名乗ることになるでしょう。」


「何が言いたい」


「俺達はこの世界の異変を正すために来た。ってことで、魔国以外の全ての国を回って調査をしてる。」


「……ほう。話を続けなさい」


ここで改めて国王側の警戒が解かれ、兵士や側近が端に移動して待機する。


場に漂う緊張感も解かれることになるのだが、それは2人にとっては何とも思わないものだった。


「キングエルの国王は今、死が近いほど衰弱しています。お気づきでしたか?」


「なんだと?…前に会った時には」


「だよな。健康状態を隠すとしても無理があるほどなんだよ。」


「それから、魔国には人間は侵入出来ません。境界線という名の結界があるとはいえ、魔物がこちらに来られるのにその逆は許されないなんて」


「ふむ…」


「国王は?何か知らないか?周りで変なこと起きてないか?」


「……"守護神の肌"(ガーディアンスキン)。ライヴァンの国宝なのだが、最近その力が弱まりつつある」


「は?」


「ええ。そのようですね。ここに来る途中で聞きました。ガーディアンスキンがその力を失えば、その時はライヴァンの終わりだと国民が嘆いています。」


「噂に過ぎん…と言い切れないのが苦しいな。して、異変を正すというお前達は何を考え、何をするつもりか」


「それはだな……分からん!」


「カヒリ…!」



場が凍りつくが、カヒリは話を続ける。



「まずは全部回って問題点を全部知らなくちゃいけないからな。この感じだとそれぞれの国が何かしらデカい問題抱えてる流れだろうし。共通点とか色々分からないと動きようがないだろ。」


「お前」


「何ですか王様?」


「カヒリと言ったか。お前はもし、国の抱える問題を解決する方法が財政難ならばどう解決する?」


「お金なら稼げばいいじゃん。メドルーナで賭け事したりっだぁい!」


話の途中で肩を叩かれ悶絶するカヒリ。


「…別に賭け事だけじゃない。他国に持ちかければいいんだよ。あんたの国に必要なものをあげるから代わりに金くれよって。どこだってそういうもんだろ。売るもん無けりゃ指名手配されてるやつ片っ端から捕まえりゃいいし。」


「そうか。ならば、問題を解決する方法がたとえ勇者でも敵わないような力を持つ邪悪な存在を倒すしかない場合はどうする。見たところ私の兵の方が立派な肉体に見えるが?」


「は?なに、王様はこの布が透けて見えてんの?だとしたらぶっ飛ばすよ?」


「違うわ。もっと単純に見て。」


2人とは違い兵士の方が背が大きく、筋肉質だ。

"見た目で明らかに強そう"という素人目線な評価だ。


「あー。ならどんなやつでもぶっ殺すだけだよ。口悪いけど、殺すしかないじゃん。」


「戦えるのか?」


「お?この感じ、国王と喧嘩する流れ?」


「カヒリ、やめなさい。」


「ここまで話を聞いてやったのだから、自分達に偽りが無いことを証明しろ。前に出なさい」


王の言葉に従い、屈強な体を鎧で包む1人の兵が2人の前に立った。


「ハンデやるよ。両手使わないのと両足使わないの、どっちがいい?」


兵は無言で構える。


「何をしている。カヒリに武器を与えろ」


「あ、要らない。むしろ邪魔。」


カヒリはギーナに少し下がるように合図を出し


「来いよ、マッチョメン。」


挑発に乗り兵が盾を突き出しながら剣を振る。

威圧的な攻撃を涼しい顔で回避するカヒリ。


「お前それじゃあチャンバラごっこしてる子供のが速いぞ?もっと鋭く、体の一部を断ち切るつもりで!」


それを聞いてムキになったのか、兵の剣は乱暴になっていく。

芯のブレた一閃。直後の突きに合わせてカヒリは兵の突き出した剣に飛び乗ってみせた。


「今のとこ機動力のアピールは十分だよな。じゃあ攻撃力も見せるとしますか!」


「ちゃんと加減して!」


「分かってるよ。ちゃんとな。」


カヒリが足先を器用に動かすと剣は兵の手を離れた。

剣から軽く飛んで離れると、彼は空中で"止まった"。


「どうよ?時間はやるから盾構えな。ガッチリな。」


兵が目を見開いて驚く。


そして


「14%!!」


振り抜かれたカヒリの蹴り。

兵はその場から消えており、玉座の真横を抜けて後ろの壁にめり込んでいた。


「あちゃぁ…いや、でも死んでないよ!致命傷かもしれないけど!」


「………!」


驚いたのは国王だけではない。


その場で唯一この展開を読めていたギーナがカヒリのこめかみ部分に拳を這わせる。


「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「手加減の意味は?」

「うぎゃあああ!!」

「もし"消し飛んでたら"?王様は私達をどう思う?」

「頭割れる!頭蓋骨がメリメリ言ってる!!」


そんな2人のやり取りを見て…というわけではないが、国王が笑いだした。


「素晴らしい。実に素晴らしい。手加減をしてこれだけの力があるのなら、全力を出せば勇者にも匹敵するだろう…!」


「いや、勇者とかうわああああああ!!」


「分かった。いいだろう。お前達に協力しよう。」




この後2人は国王に気に入られ、これ以上ない歓迎をされた。


無期限で城を宿として利用出来るようになり、食事もいつでも用意してもらえる。

そして、"ライヴァンの使い"と名乗ることも許された。



「痛い…」


「ごめんなさい。でもやり過ぎよ。」


「ギーナもな?強化魔法使った?」


「そうね、ストロング・フィストってとこかしら。」


「おう、いよいよだなそれ。」


「うふふ。本物ほどじゃないけど。」


「次はミフィーリアだな。拠点も出来たし、明日から捗るぞ。」


「そうね。」


「あれ、どしたの?」


2人のために用意された部屋には十分な大きさのベッドが2つ。


しかし、ギーナはカヒリのベッドに入った。


「一緒に寝たいの。」


「分かるよ。俺達はシングルベッドが適切な大きさだもんな。」


「うふふ。でも、本当に気をつけてね…。軽い気持ちでペラペラ喋ったり、誰かを挑発したり…。心配しちゃうから。」


「……うん。」



カヒリにとっては、ギーナの"優しいお叱り"こそが最も効くのであった。





/////////////To be continued...?


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