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私、この世界を征服します。  作者: イイコワルイコ
2章「独りの幸せ」
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第9話「娯楽大国メドルーナ」




誰かを探す時、なかなか見つからない。


誰かから隠れる時は、簡単に見つかるのに。




賑わいはじめると外を出歩く人が増える。


その前にソフィーに追いつきたいけど、



「もう見失った…足速いな」



チャドは門で待ってる。

ソフィーと合流して、門に向かってそのまま次の目的地へ


「どちらへ行かれるのですか?キャロライン様」



「……え」


ソフィーを見つける前に私が見つかった。

ほらね。って思った。


兵士を2人連れてる。

自身も頑丈な装備に身を包んで、腰には剣も。


「私達と共にキングエルに帰りましょう。マクシミリアン王は恐らく長くは持ちません…せめて最期を看取ってあげ」


ブラウンだ。

見たことのない怖い顔だった。

なるべくいつもの感じで話してるけど、声に前みたいな優しさは無かった。


そして、ブラウンが話してる途中で、視界の左半分が真っ白になった。


瞬間、光が目の前を突っ切った。

どうにかそれを目で追うと、光は屋台を真っ二つに引き裂いて突き進む。

その奥の宿屋に大きな穴を開けて建物を貫いてもまだ消えなかった。


突然の出来事にその場にいた誰もが固まる。

そして全員が私と同じように光を目で追っていた。


「キャル」


弱く左手を引っ張られた。

そのまま彼女についていく。


やっぱり、探すより見つかる方が早かった。




/////////////now loading......




逃げた先はマリタさんの屋敷。

事情を話すとすぐに中に入れてくれた。


そして、ここに来たのが間違いだとも思った。



「ソフィー、あ、でも」


「いいから、まずは2人で話すといい。落ち着いたら庭においで」



マリタさんは用心棒と共に庭へ。


私はマリタさんの書斎でソフィーと話すことにした。



「ソフィー」


「ごめん。…でも、キャルが連れていかれそうだったから…なんでだろう、あんなに魔法が強く出せたの初めて」


「私も驚いた。死ぬかと思ったくらい。…今頃大騒ぎだよ」


「そうだね…」


別に私達の関係が悪化したわけじゃないけど、2人で控えめに笑った。

それから、ソフィーは真剣な顔で


「ごめん」


「もういいよ。戻ろう。チャドが門で待ってるから」


「……行けない」


「え、行けない?」


「キャルはチャドと行きなよ。…私、チャドとは一緒にいたくない。もう嫌」


「そんな…」


「私はこの国で暮らすことにする。これでも…きっと…大丈夫だから」


……ソフィーはどうしてもチャドと一緒にいたくないみたい。

だから行けないって言ってる。

それなら、逆も選べるのかな?


チャドとここで別れたら、ソフィーと旅を続けられる。


ってことなのかな。


ソフィーがチャドか自分かどちらか選べって言ってるような。

そんなふうに邪推する私を置いて、ソフィーが部屋の外へ。


「マリタさん呼んでくるね」


一人残されて、私は一旦考えるのをやめた。

書斎を探索することにした。

どうやって読むんだろうってくらいに大きな本が棚に並んでる。

難しそうな本もあるし、絵本もある。


机にはマリタさんの若い時の写真が飾られてた。

………あれ?マリタさんの隣に写ってるのは…



「落ち着いたかい」


マリタさんが書斎に入ってきた。


「ソフィーは?」


「メドルーナに残りたいと言われた。そして彼女が手伝いを申し出たから、今は庭の手入れをお願いしてる」


「………」


「何があったのか…。今度は朝とは逆に、お嬢さんの話を聞くとしようか」



マリタさんにチャドとソフィーの関係性を話した。

そして、恐らくどちらかを選んで旅を続けることになることも。



「ほっほっ。…チャドさんがいれば、襲われても安心だろう?彼はお嬢さんに守ると約束したのだから、安全は保証されているようなもの」


「…でも」


「あの子がいれば今度は守ってくれる人がいない。まあ、この国で護衛を雇うことも出来る。その為にこっちで金銭的な援助はしてあげられるだろう。でも分かっておいてほしいのは、所詮金で繋がっただけの関係は簡単に崩れる。いざという時に頼れるのは」


悪い考えばかり巡る。

一緒に旅をする相手が、

チャドでなければいけない理由はあるけど

ソフィーでなければいけない理由はない


チャドは戦えるだけじゃない。

男だから、頼れる面が多い。

そして知名度の高さや兵士であることの利点も大きい。


ソフィーは戦えないこともないけど…

私より非力だし、何かあれば2人で逃げるか2人とも…

女だけ…しかも子ども2人で旅をするのはわざわざ危険に身を寄せてるようなもの。



「チャドさんももう1人のお嬢さんも、どちらがメドルーナに残るとしてもうちで面倒をみてやることは出来るから、お嬢さんは好きに悩んだらいい」


絶対にどちらかなのだろうか。

どうにか仲直り…もしくはソフィーに無理強いすることで3人で旅を続けることは出来ないのかな。



「お嬢さん…いや、キャロライン・ストーンさん」


「……っ!」


私はキャルとしか名乗ってない。

マリタさんはそれでもお嬢さんとしか呼ばなかったのに。


「すまないね。写真に気づいたようだからね。…言ったろう?大金を得たのはキングエルの国王からもらったからだと…繋がりはまだ一応残っているんだよ。でも慌てなくていい。ブラウンに突き出すようなことはしないよ」


「……信用出来る?」


「もしその気だったらブラウンはとっくにお嬢さんを連れ戻していたよ。寝てる間にでも」


「………」


「お嬢さんの敵じゃない。だから自分から明かしたんだよ…さて。すぐには出発出来ないだろうから、ここでゆっくりしていきなさい。しっかり考えて答えを出すといい」


「…ありがとう」



思わぬ形で旅を続けられなくなった。

足が止まった。


私は許可を得て、書斎の本を読むことにした。

いっぱいあるから…退屈しないよね、きっと。




/////////////now loading......




キャロライン達がマリタの屋敷に逃げ込んだ頃、ソフィーの襲撃によって国の一部が大騒ぎになっていた。



商人達が一斉に宿屋へ引っ込み、その後宿屋も戸締りを厳重にする。


外を出歩くのは"力"のある者のみとなった。


起きた問題に対処すべく、メドルーナの国王が私兵を向けたのだ。



「向こうを探せ、第2、第3部隊はついてこい」


メドルーナという国に仕える兵士の装備は特殊だ。

統一性がなく、武器も恐らく同じものはない。

それは、国王に忠誠を誓った兵士の出処が同国内に限った話ではないから。

この国で暮らすにあたって、力を持つ者は雇われる必要がある。

商人など個人を守る者、宿屋など店や建物を守る者、そして国王及び国を守る者。

雇われることで金を稼ぐのだ。


世界中から集まった兵士達は、各々の自己流を極める。

そのため、装備に統一性はない…が、実際の強さは他国よりも確かなもの。

1人1人が使い捨てでなく、一軍を率いることが出来るだけの実力を備えていた。



建物の間、路地裏…襲撃した犯人を探し回る彼らとは別に、ブラウン達もまた対応に必死だった。


魔物と人間が戦っているのに、このままでは人間同士でも戦いに発展しかねないからだ。



「再度伝える。我々はキングエルから」


「何度言われようと先には行かせん!」


「王族関係者だぞ!」


「関係ない!そこまで言うなら国王直々に来るべきだ!」


メドルーナに城はない。


国王は他の裕福な国民と同じように、大きな屋敷で暮らしている。

それは、そこが国王の居場所だと知られないようにするため。

外観だけでは確かに区別は不可能。


そこにわざわざやってきて接見を申し出るブラウンの話を用心棒の男は一切聞き入れない。


「そうか…キングエルにそのような態度をするのか、メドルーナの人間は」


「どうとでも。メドルーナの兵力は今どこよりも強い。戦って勝つのは我々だ」


「…生意気な」



ブラウンは身を引いた。


「ブラウン様。これからどうしますか?」


「キャロライン様がこの国にいるのは間違いない。門で待つ」


「分かりました」





雰囲気が変わったことに、門で待っているチャドも気づいた。



「門番さん。人が減ったように見えるのは気のせいなのかぃ?」


「気にすることはないさ。あんたはずっと俺達の前で突っ立ってたんだから。国内で悪さをした奴がいると、毎回こうなる。別に珍しいことじゃない」


門番に問題ないと言われて、チャドは納得した。

そしてその場から動かず、キャル達を待つ。




/////////////now loading......




夕食。


屋敷にいる人が全員集まって食事をする。

マリタさん達は変わらず人が多くて楽しそう。


ソフィーも、時々私を見ると切ない表情だけど…一応は楽しそうにしてる。


私は悩みたくなくて本のことで頭をいっぱいにしていた。


直前まで読んでいたのは戦闘術に関するもの。

武器の相性だとか、武器ごとの間合いだとか、体格差や疲労、負傷による力量に差がある場合の立ち回りだとか。

戦えないからこそ興味が湧いた。


今のところ、私の中では遠距離攻撃が可能な武器が強いと思ってる。

狙いが正確である必要はあるけど、遠くから相手を選ばず一方的に攻撃出来るのはどう考えても有利…でしょ?



食事を終えると、私は書斎へ。


ソフィーは召使い達と一緒に屋敷の仕事。


どうしてだろう、私達の関係まで悪くなってしまったような。




「次は何を読もう…」


その事も考えたくなくて、別の本を探す。

語学に関するもの…違う。

チャドと旅を続ける…違う。

料理に関するもの…違う。

ソフィーと旅を続ける…違う。


「ああもう!!」


どうしても考えてしまう。考えたくないのに。



ふと、小さな本が目についた。




「独りの幸せ」


内容は、1人の男の自伝的なものだった。

少しずつ読み飛ばしながら、それでも内容を拾っていく。


15の時、父親の暴力に苦しみ、母親に知らない顔をされて悲しみ、独りになることを選んだ。

旅先で人に親切にされても、それは表面上の優しさで誰もが仮面を付けているのだ。

時には人を護衛し、時には物を売り、時には人に襲われ、時には物を盗られた。

どうあがいても"生"は苦しい。悲しい。

ある時、1人の女と出会った。

女は優しくしてくれた…それを疑ったが、女は態度を変えない。

もしかしたら、本物の"愛"を見つけたのかもしれない。

だから彼女に尽くした。尽くされた分だけ…いや、それ以上に。

いつしか2人でひとつになった。そう、家族になった。

家庭がある。帰る場所がある。そこで、自分を心から愛して待っている人がいる。

どれだけ幸せに思っただろう。

…それも、長くは続かなかった。

2人の記念日に贈り物を抱えて帰った。

それを迎えたのは彼女と別の男だった。

正確には迎えてはいない。帰ってきたのが想定外だという顔をしていた。

生まれたままの姿をする2人を、殺した。

父親にされたのと変わらない暴力で。

彼女は死ぬ前に、許しを求めてきた。

母親にされたのと同じように、無視した。

また、独りになった。

独りのままなら、余計な苦しみはない。

独りのままなら、悲しむ理由がなくなる。

独りのままなら、自由なのだ。

独りの幸せ。

独りの幸せ。


_________________著



「………」


著者の名前を、私は見なかったことにした。

知ってはいけない名前だ。

どうして。どうして。


書斎を飛び出して、ソフィーを探す。

他の召使いに居場所を聞いて風呂場へ向かった。



「ソフィー!!」


「ど、どうしたの?」


「お願い!私と来て!今すぐ一緒にこの国から出なきゃ!!」


「え?え?でも…」


「お願いだから!許せなくてもいいから!チャドと3人で!早く!早く!!!」


「キャル…?」


もどかしい。急ぐ気持ちが先走りすぎて、自然と涙が視界を濁していく。


「おね…がい…」


「キャル!しっかり!ねえどうしたの!?キャルってば!」




気がつくと、私はベッドで眠っていた。

隣にはソフィーがいる。

私を優しく抱きしめて眠ってる。

彼女の温もりを感じて…でもすぐに思い出した。


すぐに逃げなければ。



「ソフィー。ねえ、ソフィー…」


声をかけても、揺らしても起きてくれない。

咄嗟にソフィーに一緒に来てほしいと言った。

特別な理由などなくても、一緒にいたかったんだと思う。

それが本心だった。


でも、それはあくまで私の気持ち。

彼女が一緒に行く理由にはならない。


そう思って、悲しくなった。



「…今まで、ありがとう…」


ソフィーの頭を撫でた。

彼女が優しく笑った気がした。



着ていた服に着替えて、屋敷を出ることにした。

中は暗いけど、壁伝いに歩けば出口は分かる。




屋敷の扉を開けた。

外の方が明るい。

昨日みたいにうるさくないのが不思議だったけど。


「チャドは門で…もう待ってないよね」


一日中待たせてしまった。

もしかしたら、私達を探して…たらこの屋敷にも来てるはず。

そっか。



「門は…」


何も持ってない。

でもこのままで行かなきゃいけない。



夜なのにお店が一つもない。

人もいないし、静かだ。

代わりに、松明が何本も寂しく立って道を照らしてる。



来た時とは別の、メドルーナの門が見えた。

こっちの門番も武装してない女性なのかな。


………違う。武装してる。



「止まれ」


「私はハートに行きたい。ただの旅人」


門番は2人。他に誰もいないみたい。

私を見ながら2人で小声の相談。


「昼頃に騒ぎがあってな。お前は武器を持っているか?」


「持ってない。それに、武器を扱うことも出来ない。どっちか手に持ってるの貸してよ」


門番の1人が剣を貸してくれた。

嘘でもなんでもなく、重たくて満足に持ち上げられない。


「あー、こりゃ確かに」


「待て、魔法はどうだ。確か魔法による襲撃だっただろ」


魔法…そうか、ソフィーの魔法…。


「魔法は使えない。ほら、火の鳥よ!…ね?」


ギーナみたいに、動作だけ真似して格好つけて…でも実際には何も起こらない魔法の演技を見せた。


「火の鳥ってお前…!」「だな…!」


門番の2人は笑いはじめた。

相当気に入ったみたいで、私の真似をしてまた笑って、そのうちお腹を抱えて地面を転がりながら笑ってた。


「火の鳥よ!ぎゃーっはっはっ」


「やめろもう腹がぁっ!はひっひーっ!…ね?ひぃひーっ!」



「行ってもいい?」



「勝手にひいっ…しろっひっひ!」


「むしろ早く消えてくれ!笑い死ぬ!ぎゃーっはっはっはっ!」



門を通過した。

アグリアスから来た時みたいに、少し進んだ先から森が広がってる。

…魔物に襲われないはずないか。


門番の武器を奪ってくればよかった。

まだ笑い声が聞こえる。



「止まりなさい」


突然前から声をかけられた。

知ってる声だった。



「…ブラウン」


「無防備な姿で行かせません。私と共に帰りましょう。あなたの帰りを家族が待っているんです。マクシミリアン王は」


「やめて」


「冒険ごっこはもう十分楽しんだはず。外の空気も十分過ぎるほど吸ったはず。これ以上何があなたを駆り立てる!」


ブラウンは1人だ。

一瞬だけ見回してみたけど、他に人の気配がない。



「…来ないで」


「強引にでも連れ帰るつもりです。今は分からなくても、家族がいることの有り難みが分かる日がいつか必ず来ますから」


「その目、父親と同じ?」


ブラウンの足が止まった。


「私、ブラウンが怒ってるの見たことなかった。でも、今日初めて見た。…怒ってるんでしょ?私に」


「何を…」


「私があなたじゃない人を頼ることが憎い?」


「……キャル、私と帰りま」




「怒りのままに殺すの?奥さんと同じように。……独りの幸せ、読んだよ。…ブラウン・バニンガス」



/////////////To be continued...


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